- 2021年06月11日 12:16
政府は早急に消費税ゼロ、粗利補償を実施すべき
田原総一朗です。
菅内閣の支持率が急落している。5月28~30日実施の日経新聞では40%、5月22日実施の毎日新聞ではなんと31%である。もちろん、その要因は新型コロナ対策の失敗だ。
欧米に比較すれば、感染者、死者数ともに桁違いに少ないのに、 医療の逼迫状態が続く。 国民は長期間にわたり自粛を求められ、 経済は大打撃を受けている。 日本はどうすればいいのか。
6月1日、 僕は京都大学大学院教授の藤井聡さんと、 緊急シンポジウムを行った。 藤井さんとは、 『こうすれば絶対よくなる!日本経済』 という共著を出している。 4月20日号でも紹介したが、 藤井さんの論は明解だ。 政府は早急に 「プライマリーバランス規律を撤廃し、 コロナ終息まで消費税をゼロにする。 さらに、企業に対する粗利補償をすべき」 だと主張する。
プライマリーバランスとは、 国の基礎的な財政収支のこと。 プラスなら「黒字」であり、 マイナスなら「赤字」ということだ。 このプライマリーバランスの「黒字化」に こだわるのをやめよ、と提言している。 日本は中央銀行を持ち、 「円」という通貨を発行している。 だから中央銀行を持つ政府は、任意に、 いつでもいくらでもカネをつくり出すことができる 能力と権限を持っている。 だから政府はつぶれない。 政府が「自国通貨建て」の借金によって、 破綻や破産をすることは考えられないというのだ。
藤井さんの言う「粗利補償」とは、 業種を問わず 売上が減った分を補償せよ、ということだ。 日本では、飲食業など、 自粛要請の対象となる業種には補償があるが、 対象とならない業種は、 いくら減益となっても補償がない。 これだけ国民の経済活動を 制限しておきながら、である。
藤井さんは、 「これではまるで国民への虐待」と言い切った。 世界の多くの国は、 このコロナ禍で減税を実施している。 たとえばイギリスは、 飲食・観光業などを対象に20%⇒5%、 ドイツは標準税率19%⇒16%としている。 また、業種を問わず所得補償を行っている国も多い。
さらに医療について、 藤井さんは言う。 「10兆円ある予備費を使って、 民間の病院がコロナ対応すれば儲かる、 という体制を作っておけばよかった。 または、国立の医療施設を作ればいい。 今の感染者数で『逼迫』はおかしい」。 僕もまったく同意見だ。 病院の確保に、 なぜ10兆円もの予備費を使わないのか。 「政府はこのコロナ禍を、 有事と捉えていなんです。 だからプライマリーバランスの呪縛が効いたまま、 コロナ対策のための予備費も、 何も有効に使えていない」
また、オリンピック開催についても議論した。 毎日新聞の世論調査では、 「中止すべき」「再延期」を合わせて6割超、 朝日新聞では8割を超えている。 藤井さんは、 「元厚労省医系技官の木村盛世さんが、 日本の感染状況を『さざ波』だと表現しましたが、 政府は公式見解として、 『さざ波』ではなく『津波』のようにとらえている。 だから『緊急事態だから自粛しろ、 お酒を飲むな、大きなイベントもやるな』 ということになる。 『津波』が公式見解なのに、 『さざ波』だとして、 オリンピックをやるのは、 筋が通らない。 筋が通らないのだから、 国民が怒るのは真っ当なことだと思う」と言う。
今回のシンポジウムは、 藤井さんの論を 多くの国会議員にも聞いてほしいと、 衆議院議員会館で行った。 呼び掛けたところ、 80名の与野党の議員と、秘書をあわせて116名が 参加してくれた。 一人でも多くの政治家に、 このコロナ危機を有事と捉えてほしい。 「生き金」と「死に金」という言葉がある。 今こそ、 国民のために「生き金」を使う時だろう。 それがアフターコロナの、 経済回復につながると僕は思う。
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