近年、男性の童貞喪失年齢の高年齢化に注目が集まっています。厚生労働省国立社会保障・人口問題研究所が、平成22年に約1万人を対象に行った出生動向基本調査(結婚と出産に関する全国調査)によると、20~24歳の独身男性の童貞率は40.5%。社会人として女性と向かい合う時期に約半数近い男性が、セックス経験がないのです。
30代独身女性の4分の1のが処女
理由として考えられるのは、女性と仲良くなるチャンスがつかめない、仲良くなったとしても、それ以上の進展をどう望んでいいかわからないようです。幼い頃から誰かに勝つ、負けるといった競争意識が均され、誰かより秀でた存在になろうという意識、言い換えると頑張っている姿を女性に見せて、他の男よりもモテたいと思う気持ちが減少しているのだろうと推測できます。
しかしこれは、男性に限った問題ではありません。
同年代で育った女性の高年齢処女も、ひっそりとながら色濃い問題として掲げられています。同じ調査によると、30~34歳独身女性の処女率は23.8%。晩婚化が当たり前になっている近年、30代の独身女性の約4分の1が処女という結果が出ているのです。
「セックスするなら、やっぱり自分好みにしたい」などと宣う、童貞独身男性の希望的観測には沿っているのでしょうが、彼らが思うほど、女性の高年齢処女率上昇は軽々しく喜ぶものではないと考えます。
女性の性がオープンになっても、マイナスイメージはまだ消えない
男性はセックスを話のネタに考える傾向があります。
「30歳まで童貞だったら魔法使いになれる」
セックスをネタに面白おかしく捉えられる男性ならではです。10代早々に童貞を捨てれば、あるいは経験人数が多ければ、英雄的存在として羨ましがられますね。
しかし女性はそうはいきません。
処女喪失が早ければ「マセている」と後ろ指を指され、人数が多ければ「ビッチだ」と白い目で見られ、高年齢処女になれば、女性としての存在価値そのものを疑問視される……。女性の性がオープンになってきているとはいえ、こういったマイナスイメージはまだまだ消えず、ゆえに高年齢処女の問題は、女性にとって想像以上に大きな壁となって立ちはだかります。
「壁」と言いましたが、この壁は外定要因だけで作られるものではありません。30歳近くまでセックスする機会に恵まれなかった女性の、心の中にも「壁」はそびえ立っているのです。
未経験がためにセックスへの期待値が高まり、処女喪失が恋愛の絶対的理由となってしまっている。また、年齢経験値による理想や条件が、処女高年齢化をますます加速させてしまっていると考えられます。
手を伸ばした先にちょんと触れた人が理想の人かも
「適当な相手ならセックスしなくていい、初体験は私を受け入れてくれる素敵な男性とでなきゃ」
そう思う気持ちがわからなくはありません。しかし男性から見た30歳処女とは、訝しい存在です。女性にどんな理由があったにしても、それを男性はよしとはしません。なぜならセックス経験のある男性ほど、その年齢に見合ったセックスをして欲しいと思っているからです。
つまり先に書いた「セックスするなら、やっぱり自分好みにしたい」童貞独身男性の希望的観測とは、セックスしたことがない男の現実逃避でしかないのです。置き換えると実は、女性の「初体験は私を受け入れてくれる素敵な男性と……」と同じ、言ってしまうと現実逃避なんです。
いつか私を丸ごと愛してくれる素敵な男性が……なんて待っているだけでは、理想の男性はあわられません。理想を求めて手を伸ばした先にちょんと触れた人が、もしかしたらその人かも? 現実はその程度です。
この状況を打破するに見るべきは現実です。求める男性の現実だけでなく、自分自身が置かれている現実を受け止めなくてはなりません。男性にとって訝しがられる存在になっていること。なにより自分の理想が邪魔をしていること。それらを受け入れ、自ら望んで初めて、自分に合った理想の男性がこちらを向いてくれるのです。
言い方を変えれば、トラウマとも言えなくもありません。男性を求めるのが怖い、嫌われるのが怖い、と。
しかし、怖いとその場から動かなくては現実は変えられません。誰かが変えてくれる現実なんてどこにもないし、誰かに変えられた現実は結局、できない言い訳を後付けするきっかけにしかすぎません。
心に抱える「怖い」をどうしたら取り除けるか。現実的に考える必要があります。
自分は何が怖いのか、書き出して認識してみる
何が怖いのか、どうしたら怖くなくなるのか。書き出してみましょう。誰かが変えてくれることではなく、自分のアクションで変えられることを書き出してください。おそらくそれは、自分が認めなくない自分自身のはずです。しかしそれを自己認識することで、怖くなくなる答えも見えてくるのです。
そしてそれはいつか、パートナーになる人との共有必須事項です。だって恋愛は、強いてはセックスは2人でするもの。お互いを知るためのコミュニケーションなのですから。
女性が抱えているセックスの問題を共有出来ない、2人で問題解決の努力ができないパートナーとは、その程度の関係性しか作れません。その人とはセックスの縁がなかったと思っていいでしょう。
そんなことくらいで別れるなんて……と思うかもしれませんね。いえいえ、セックスこそ言葉に見えない人の本質が見える行為です。自分が認めたくない自分自身の姿。それはセックスでオーガズムを受け入れる自分の姿になります。快楽に身を投じて、快感に身を委ねている卑猥な自分。そんな姿を受け入れてくれないパートナーと、幸せな未来が築けるはずがありませんから。
そうやって自分の「怖い」を認識すれば、「怖い」ごと全部受け止めてくれる人を引き寄せます。スピリチュアル的な話をしているのではありません。自分自身が現実を受け止めた努力の結果なのです。
(小室友里)