私は受動喫煙問題の相談を4年ほど経験しています。あまり世の中に明らかになっていないようですが、受動喫煙問題について、以下のことが言えると考えています。
「相談の大半以上が住宅での受動喫煙の問題である」「住宅の受動喫煙で苦しみを訴える方に最も多く見られるのは、中高年の女性で、主婦もしくは単身」「受動喫煙の苦しみを増幅するのは孤立の問題」「解決の窓口、出口の少なさが大きな問題になっている」「経済的に裕福であっても受動喫煙の問題に遭わないとは限らない」「がまんしていると苦しみはひどくなる」
在宅の機会・時間が長く、社会的な交渉力が強くない人ほど苦しみを負いやすいこと、解決の道筋が見つかりにくいことがさらに問題を深めていることが明らかだと思います。
そのような問題に対して、市民団体は、相談の窓口としての機能、個々の問題を聞き取り法律などの専門家にバトンを渡すこと、コミュニティを形成することで孤立の問題の解消にも寄与することなどの役割を果たすことが可能です。しかし、圧倒的に数が足りていないのも現状です。
受動喫煙の問題に対して、行政が今すぐ・将来それぞれにするべき対策があります。
今すぐできることは、とにかく「現在起きている苦しみ」への迅速な対応です。地方自治体が受動喫煙の相談窓口を持つことで、解決の道筋を見つかりやすくなり、自治体としての取り組みも進みます。市民団体との協働関係も重要な要素になります。また、すでに定められている喫煙禁止場所により多くの掲示を出すことは、低コストで一定の効果が上げられる方法です。
将来に向かってするべきことは、敷地内で喫煙がないことを前提とした賃貸住宅物件を増やすよう、制度や補助金を定めることであると考えます。
受動喫煙の問題に対しては、現実的な解決に的を絞ることが大切であると考えます。喫煙の倫理的な「悪」について論じることや、表現物からの喫煙描写の排除を求めることは、問題の解決に対して遠回りを強いることになり、進めるに値しないと考えています。