テクノロジーとデータの活用を通じてより安全な国境往来を目指す
国際文化会館は、スイスの非営利組織「コモンズ・プロジェクト」(The Commons Project; TCP)との連携のもと、テクノロジーとデータを活用して安全な国境往来を推進します。
コモンズ・プロジェクトとは
コモンズ・プロジェクト(TCP)は、米ロックフェラー財団の支援を受けて設立された非営利組織で、スイスに本部を置き、米国をはじめ世界各国で活動しています。世界経済フォーラムとの連携のもと、テクノロジーとデータを活用して地球規模の課題を解決することをミッションに、現在は新型コロナウイルスの流行を受け、国境往来時に検査結果(将来的にはワクチン接種履歴)を示す世界共通のデジタル証明書「コモンパス」(CommonPass)を発行する取り組みを推進しています。
日本では、2020年7月に国際文化会館内に事務局が設置されました。国際文化会館理事長の近藤正晃ジェームスはTCPグローバル副会長と評議員を、また同理事の宮田裕章氏(慶應義塾大学医学部教授)はTCPグローバル評議員と日本代表を務めています。
コモンパスとは
コロナ禍の安全な国境往来に向け、渡航者の健康状態が受入国の入国基準を満たしていることを検証し、検査結果をデジタル証明する仕組みです。具体的には、(1) 検査結果やワクチン接種証明書が信頼できる医療機関から発行されているか、(2) 検査結果が受入国の入国基準を満たしているか、をコモンパスが検証し、イエス/ノーで示します。その際、検証の根拠となる渡航者の健康データは第三者には開示せず、プライバシーも保護します。
コモンパスの特徴
企業や特定の政府ではなく、国際的な非営利団体であるTCPが、公共性を第一に運営します。
感染の広がりや検査結果の精度向上、ワクチン開発などの状況に応じて変化する各国の入国条件に柔軟に対応することができます。
本人の明示的な同意を得た上でのみデータの利用や共有がなされ、また個人を識別できる健康情報は検査実施機関またはユーザーの端末にのみ保存されます。
枠組みの構想設計には50を超える国々から、民間企業、市民社会、医療関係者、政府関係者などさまざまなステークホルダーが参画しています。
コモンズ・プロジェクト日本委員会
安全な国境往来に向け、日本国内におけるTCPの活動や国際的な連携を推進します。
代表:
・宮田 裕章 (慶応義塾大学医学部 教授)
委員(ボードメンバー):
・大曲 貴夫 (国立国際医療研究センター 国際感染症センター長)
・近藤 正晃ジェームス (公益財団法人国際文化会館 理事長)
・塩崎 彰久 (長島・大野・常松法律事務所 パートナー弁護士)
・関 治之 (一般社団法人コード・フォー・ジャパン 代表)
・細田 直樹 (日本放送協会 制作局〈第2制作ユニット〉社会・文化 チーフ・プロデューサー)
・森 亮二 (弁護士法人英知法律事務所 パートナー弁護士)
・和田 照子 (一般社団法人日本経済団体連合会 国際経済本部長)
アドバイザー:
・新浪 剛史 (サントリーホールディングス株式会社 代表取締役社長)
・船橋 洋一 (一般財団法人アジア・パシフィック・イニシアティブ 理事長)
・村井 純 (慶應義塾大学 名誉教授)
データサイエンスなどの科学を駆使して社会変⾰に挑戦し、現実をより良くするための貢献を軸に研究活動を⾏う。専⾨医制度と連携し5,000病院が参加するNational Clinical Database、LINEと厚労省の新型コロナ全国調査など、医学領域以外も含むさまざまな実践に取り組むと同時に、経団連や世界経済フォーラムと連携して新しい社会ビジョンを描く。その一つは、いのちを響き合わせて多様な社会を創り、その世界を共に体験する中で⼀⼈ひとりが輝くという“共鳴する社会”である。
厚⽣労働省保健医療2035策定懇談会構成員、厚⽣労働省データヘルス改⾰推進本部アドバイザリーボードメンバー。
2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)のテーマ事業プロデューサーに就任。
協力団体(パートナー)
コロナ禍における安全な国境往来を目指すコモンズ・プロジェクト日本委員会の趣旨に賛同し、その活動に協力する団体一覧です。(五十音順)
・(公社)経済同友会
・在日米国商工会議所
・(一社)新経済連盟
・全日本空輸株式会社
・定期航空協会
・(一社)日本IT団体連盟
・(一社)日本医療情報学会
・(公社)日本観光振興協会
・(一社)日本経済団体連合会
・日本航空株式会社
・日本商工会議所
・(一社)日本旅行業協会
・(一社)日本臨床検査医学会
FAQ
なぜいま安全な往来の仕組みが求められているのでしょうか?
新型コロナウイルスの感染拡大による渡航制限は、グローバルに活動する個人・団体・企業に甚大な影響をもたらしています。2020年7月に世界経済フォーラム第四次産業革命日本センターが経済産業界を対象に実施したアンケートでは、グローバル企業の実に7割が、海外出張や海外出張者の受け⼊れが厳しくなったことにより、事業に何らかの悪影響があったと答えています。また5割が、海外出張や海外からの出張者受け⼊れが難しくなったことによる経済的損失が発生していると答えています。
日本の経済界のみならず、多くの国やセクターが同様の問題に直面するなか、安全な往来のためのグローバルな枠組みについて人々が国境や分野を越えて議論することが急務となっています。
この構想にはどこの国が参加しているのでしょうか?
50を超える国のステークホルダーが参加しています。日本・アメリカ・カナダ・イギリス・ドイツなどのG7諸国のみならず、中国・インド・ブラジル・南アフリカなどの新興国も参加しています。
日本が参加する意義は何でしょうか?
2021年にオリンピック開催が予定されている日本では、200以上の国・地域から、選手と関係者だけでも数万人規模、観客も含めれば(過去の大会を参考にすると)数百万人規模の人々が世界中から訪れることが予想されます。オリンピックを開催できるような、安全な国境往来の仕組みを日本が打ち出せるかという点で、日本に注目が集まっています。
日本は、開かれた国際貿易・国際交流の受益者であり、推進者でもあります。コモンパスを通じて安全な国境往来を世界的に実現する上で、日本はリーダーシップを発揮することが期待されています。
また、人々のプライバシーに配慮する国として、特定企業による情報独占や国家による監視社会とは異なる、「国際的な公共財としてのデータ活用」のモデルが示せる国でもあります。
さらに、この構想をめぐるグローバルな議論では、人々がスマートフォンを持っていることを前提に話が進められがちですが、日本には他国に比べてスマートフォンの保有率が低いという特徴があります。“スマホ”を持たない層を含め、より多くの人々をこの構想にどう包摂していくのか、日本の視点は極めて重要です。
一般渡航者がコモンパスを使って渡航することはすでに可能ですか?
コモンパスは現在実証フェーズにあります。一般の方々が本格的に利用できる状況になりましたら、このHPでお知らせいたします。
メディア掲載
国内
※宮田裕章代表が「ご意見バン!」として出演し、コモンパス構想について紹介
海外
TCP Internationalのウェブページをご覧ください。
【お断り】WHOでは、「検査には誤差があり、陰性は証明できない」との科学的な見地から、陰性証明と検査結果証明を区別し、前者の用語は使わないように国際的に要請しております。よって、コモンパスでは「世界共通の検査結果証明書」と表現しております。
関連資料(世界経済フォーラム第四次産業革命日本センター 提供)
トピックス
コモンズ・プロジェクトと日本の航空会社が、日本の国際旅行再開に向けてデジタル健康証明「コモンパス」を試験的に導入(2021年3-4月)
日本の航空会社2社と共同で、コモンズ・プロジェクトが開発したコモンパスを用いたデジタルヘルス・パスの実証実験を実施しました。→プレスリリース(日本語)
プレスリリース(英語)
コモンパスとPHRアプリ「ウィズウェルネス」、国内初のデータ連携を実装(2021年3月)
TCPと学校法人東邦大学および H.U.グループホールディングス株式会社の連結子会社である株式会社医針盤は、東邦大学羽田空港第3ターミナルクリニックにおいて、コモンパスと、スマートフォン向けPHR(Personal Health Record)アプリ「ウィズウェルネス」とのデータ連携を実装しました。→プレスリリース
「ワクチン証明イニシアチブ」が始動(2021年1月)
TCPでは、マイクロソフト、オラクル、セールスフォースなどのIT企業や、アメリカ屈指の総合病院メイヨークリニックなどの医療団体と連携し、「ワクチン証明イニシアチブ」(Vaccination Credential Initiative)を始動しました。アフターコロナ時代の安全な国境往来に向け、ワクチン接種履歴に関するデジタル証明書の開発を進めます。
国際空港評議会との連携(2020年11月)
世界のおもな国際空港の管理者の団体である国際空港評議会(Airports Council International, ACI)がコモンパスと連携することが発表されました。→プレスリリース(英語)
海外における実証実験の実施(2020年10月)
ロンドン、ニューヨーク、香港などのハブ空港を結ぶ航路で、コモンパスの実証実験が行われました。→プレスリリース(英語) / TCP Internationalウェブページ
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