新型コロナウイルスワクチンの接種予約で、病院が男性に発行した領収書。右下の合計額240円を請求された(画像の一部を加工しています)

新型コロナウイルスワクチンの接種予約で、病院が男性に発行した領収書。右下の合計額240円を請求された(画像の一部を加工しています)

 新型コロナウイルスワクチンの接種を京都市内の病院で予約した高齢者から「病院でお金を請求された。ワクチンは無料のはずでは」という声が京都新聞社に寄せられた。政府も「ワクチンは無料で接種できる」としている。なぜ請求が発生したのか理由を取材した。

 声を届けた男性(80)によると、5月中旬、ワクチン接種の予約を取ろうとかかりつけ医のいる市内の病院に電話。「予約は来院時に」と言われたので、同21日に病院を訪れて主治医と面談し、7月下旬に1回目の接種を予約したという。


 ところが帰り際、会計で「再診料」として診察代240円を請求された。疑問に思って窓口のスタッフに「おかしいのでは」と尋ねたが、明確な返事がなかったため、やむを得ず支払った。男性は「予約を取っただけなのに」と憤る。


 病院側はなぜ診察代を請求したのか。この病院を取材すると、持病がある人に対し、接種が可能か確認するため、主治医が診察してからでないと予約を入れない仕組みにしているという。男性の場合も病歴などの確認をしたため、診察代を請求したという。


 ただ、男性に事前に診察代が必要なことを伝えていなかったことから、240円は返金する予定という。しかし、あくまで「診察は必要」との立場は変わらず、病院の事務長は「受診のついでに予約も取れて『手間が省けた』という人もいる。ワクチンを打つ代わりに診察代を取ろうとした訳ではない」と強調する。


 ワクチン接種は予診も含めて無料で、接種当日に医師が予診票に基づいて体調を確認するルールとなっている。京都市の担当者は「『予診の予診』をやってはいけないという決まりはない。診察が必要とした医師の判断に対し、市から指導などはできない」とする。京都府ワクチン接種対策室も同様の見解だ。


 国はどうか。厚生労働省予防接種室は、患者からの依頼や同意の下で医師が接種前に事前に診察することは「あり得る」とした上で、単に予約を取りに来た人に不要な診察を行うことは「不適切と言わざるを得ない」と明言する。3日の参議院厚生労働委員会でもこの問題が取り上げられ、担当局長が同趣旨の答弁をした。


 男性は国の見解に納得した上で、「持病を分かっているからこそのかかりつけ医。私が受診した医療機関が行ったことはいわば『二重予診』で、診察代を払っていても少額のため黙っている人も多いのでは」と疑問を呈する。


 診察代を請求した病院を運営するのは厚労省所管の独立行政法人。東京にある法人本部に法人全体として同じような対応をしているのか尋ねると、担当者は「法人は介在していない。それぞれの病院に任せている」と話した。