旬の食材を無駄なく、手間かけ 「らくらく精進」終えて

聞き手・佐藤美千代
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 禅寺の住職が、家庭でも作りやすいおかずを紹介する「西川和尚のらくらく精進料理」が終わった。2014年5月に京都版でスタートして以来、約7年続いた連載を、西川玄房和尚に振り返ってもらった。

 どこでも手に入る材料で誰でも作れるものを、と始めて、気がつけば、ずいぶん長くやったもんだね。精進と言ったって特別なことは何もなくて、ちょっと肉魚を避けてもらえばいい。私は難しいこと、よう言わん。みなさんは、修行のために料理をするわけじゃないものね。楽しくなくちゃ、おいしくない。興味を持ってほしいから、精進から少し離れるかなと思う料理も取り上げました。

 言ってきたのは、当たり前のことばかり。その季節にとれる野菜を中心に、素朴な材料で、気候や風土に合ったものを作り、食べる。旬の食材ほど栄養があって味もいい。根っこや葉っぱも捨てずに使う。食べる人のことを考え、心をこめて、すり鉢ですったり、ふきんで絞ったり。「無駄を省いて手間を省かず」というわけです。

 代表的な食材といえば豆腐やね。畑の肉と呼ばれる大豆が原料で、栄養が豊富。そのまま食べるのはもちろん、汁に入れたり、揚げたり。すり鉢ですって作る、ニンジンの白あえや五目ひりょうず、ぎせい豆腐も紹介しました。

 おからのいなりは、豆腐を作るときに出るおからを主役に、残り野菜も活用できる。みそ味のけんちん汁のような国清(こくしょう)汁には、本来は捨ててしまう、米のとぎ汁も加えます。

 精進カレーライスは、若い人に食べてほしい。肉ではなくコンニャクを使うから、脂肪が固まることがなく、夏、冷やして食べてもおいしいのが自慢です。オクラ、トマト、厚揚げのくずとじは、熱々を食べて汗をかき、暑さを払おうという料理です。

 うちの畑ではいろんな野菜を育てています。相手は生き物だから、水をやったり肥料をやったり、楽しいよ。土を耕すことで、実は虫やミミズの命を奪っている。野菜だって命はあるし、肉や魚を食べなくても、生き物の命をいただいて人間は生きている。感謝の気持ちを忘れずにいたいね。

 今はおかずでも何でも、買えば手に入る。けれど、コロナで外出しづらい時こそ、家にある材料で料理をしませんか。レシピ通りにする必要は全くないし、気候や条件が違うから同じようにはできあがらない。面白がりながら、工夫して自分の味を作ればいいと思います。

 これまで読んでいただいて、ありがとうございます。興味のある方は、ぜひ料理教室に来てください。(聞き手・佐藤美千代)

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 にしかわ・げんぼう 1939年、岐阜県生まれ。同県の瑞龍寺専門道場で修行した。84年から妙心寺の塔頭(たっちゅう)、東林院京都市右京区、075・463・1334)住職。東林院精進料理教室を開いている。編書に「誰にでもできる精進料理」(淡交社)など。