安保上重要な土地の取引 規制の新法成立 参院本会議

安全保障上重要な施設周辺での土地取引を調査・規制する新法が16日未明、参院本会議で成立した。与党や日本維新の会などが賛成した。外国資本が自衛隊基地の隣接地や離島の土地を購入して不適切に利用する事態を防ぐ。2022年度から運用を始める。
立憲民主、共産両党が参院に提出した森屋宏参院内閣委員長の解任決議案は15日、参院本会議で与党などの反対多数で否決された。両党が出した水落敏栄参院議院運営委員長の解任決議案も、16日未明の参院本会議で否決された。
新法は自衛隊基地や海上保安庁の施設、原子力発電所などから1キロメートルの周辺を「注視区域」に指定する。自衛隊基地の中でも司令部機能をもつ場合や無人の離島など、安全保障上さらに重要な土地は「特別注視区域」と定める。
国が土地や建物の所有者の氏名や国籍、賃借権を調査できるようにする。所有者が外国と関係が深い場合は利用目的の報告を求める。特別注視区域では200平方メートル以上の土地を売買する場合は取引した人や団体の氏名や住所、利用目的の事前届け出を義務付ける。
電波妨害やライフラインの遮断といった恐れがあると判断すれば、利用中止を勧告・命令する。命令に従わなければ懲役2年以下か罰金200万円以下を科す。特別注視区域の無届けや虚偽報告には6カ月以下の懲役か100万円以下の罰金を科す。
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- 渡部恒雄笹川平和財団 上席研究員ひとこと解説
これまで日本が安全保障に影響する土地利用について、規制なしに放置されてきたことを考えると、遅まきながら動きだした第一歩といえます。これだけ日本をとり囲む安全保障環境が悪化し、一方で国境を超えた投資やビジネスなどが活発化している中で、規制の欠如は安全保障だけでなくビジネスの信頼性維持にも良くないはずです。ただしこの法律の実効性は十分ではないという評価も多く、今回の法律はあくまでも初めの一歩と考えたほうがいいでしょう。
(更新) - 峯岸博日本経済新聞社 編集委員・論説委員ひとこと解説
「外国資本による不適切な土地利用」とは、例えばスパイ組織やドローンなどによる機密情報の盗聴・盗撮やテロの拠点化、離島の不法占拠などが想定されます。基地や原発などの重要施設周辺の調査や行動規制を可能にする法律で不透明な土地利用への歯止めを目的としています。 一方で、法律に反対する人々は、規制の対象となる施設や行為が曖昧なため、例えば沖縄の米軍基地周辺の運動といった集会や表現の自由まで脅かされるのではないかという懸念を示しています。国家や国民の安全環境を守るための法整備は意義があると思います。「規制は必要な最小限度」となっており、目的外の運用を不安視する国民や企業への丁寧な説明も必要でしょう。
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