新型コロナ感染拡大を封じ込める緊急事態宣言のなか、お家で迎えたゴールデンウィーク。ここ数週間ほど、筆者が外に行かずに「観光」と「運動」を満喫できているのは、Nintendo Switch用ソフト『リングフィットアドベンチャー』のおかげだったりします。
▲自然豊かな野原から水車のある風景までバリエーション豊かなコースの数々。毎日走っても飽きません
2019年10月の発売直後は予約を忘れて入手できず、たまたま某量販店で予約販売を見つけてから配送されてきたのが12月のこと。それから約5か月、1日も欠かさずプレイしています。輪っかコントローラーことリングコンを引っ張ったり押し込んだり上げ下げしたり、レッグバンドを太ももに巻いてバーチャルで走り込む日々です。
筆者はずっとスポーツジムに通ってはいたものの、水泳やスタジオレッスンばかりで筋トレは苦手でした。そんなトレーニング属性だけに、はじめリングフィットにはさほど惹かれていませんでした。
そんな筆者が、日常のルーチンである起床する、歯を磨く、ご飯を食べる、に加えて「リングを持つ」が加わるほどハマり、このゲームのためだけに安くはないJoy-Conを買い足しました(前のは反応が悪くなっていたから)。それはリングフィットが任天堂らしく、とことん「ゲーム」だからです。
ファンタジーRPGとトレーニングの絶妙な融合
これまで筆者が筋トレと縁遠かったのは、そこに「エンディング」がないからです。毎日決まった回数のバーベルを持ち上げ、スクワットをこなし、腹筋を鍛え上げる...............。この終わりが見えない鍛練に耐えられるようなメンタルの強さがなく、少しやってもすぐ投げ出していました。しかしリングフィットはとことん、頭からしっぽまで「ゲーム」です。「闇のドラゴンことドラゴが支配する世界を救うため冒険の旅に出る」というガチの王道ファンタジーRPGです。リングコンを持ってジョギングの動きで移動し、フィットネスやヨガの動きの要素を取り入れた「スキル」という技で魔物と戦う。筋肉を動かす=世界を救うことであり、ちゃんとエンディングもあります。
▲ステージによっては「ほぼバトルのみ」のことも。時間当たりの運動量は効率いいです
そしてRPGとは「積み重ねていく」システムのことです。「戦う」や「魔法」コマンドをくり返し、経験値を溜めてレベルを上げていき、新たなスキルを獲得していく。それはよく考えたら強度が上がってふだん動かしてない筋肉が悲鳴を上げることなんですが、「積み重ねたこと」の喜びがしんどさを上回っていく。筆者のようにサボリ癖のある子をその気にさせる上で、RPGって最強のシステムじゃないでしょうか。
室内でカラダを動かすゲームは本作が初めてではなく、むかし初代プレステ用の『ダンスダンスレボリューション』にハマったこともありました。が、「PARANOiA」のステップを踏んだ翌日には、マンションの階下からの反応が怖かった......。リングフィットにはジョギングを屈伸運動で行える「サイレントモード」が用意されていて、さすが日本の住宅事情をよく分かってらっしゃる。
▲膝を屈伸するだけで「走った」とみなし、床にドスドス足音が響かないサイレントモードのありがたさ
満遍なく鍛えられるスキルマップの巧みさ
RPG仕立てについてはターン制バトルなどをなぞっているだけでなく、スキルの獲得も今どきのスキルツリー風味の「スキルマップ」方式。レベルアップごとにたまるスキルポイントとコインを一定額支払って入手していくんですが、1つ取るごとに枝分かれして「これの次はこれか、ないしコレ」と選んでいくやり方です。目当てのスキルを取るには、途中にある目当てでないものも取らざるを得ない。それぞれスキルには攻撃範囲とダメージ、そしてうで/はら/あし/ヨガの種類分けがあります。その中でもお買い得に見えるのが、ヨガのスキル。「立木のポーズ」はボス戦で大火力が期待でき(ヨガなのに火力)片足で立って上体をゆっくり倒す「英雄3のポーズ」は3体の敵を効率よくなぎ倒すのに向いています。
そうしてヨガばかり使って展開を進めていくうち、「属性」なる概念が登場します。これはうで=赤やはら=黄など、同じ色のモンスターにはダメージに倍率がかかって利きやすいというもの。
▲足(脚)=青なら同じ色の敵に大ダメージ。逆に無属性の敵は「どの色でも攻撃が通りにくい」のでやっかい
やはりRPGという「ゲーム」だけにクリアしたい欲が湧いてくるため、勝つためなら!と「あし」のスクワットに手を出す。すると同系統のバンザイスクワットも魅力的に見えてくる......ということで、いつの間にやら一番キツいマウンテンクライマーを取っていました。
▲スキルのほか攻撃力+10や連続行動、体力アップなどが取れるスキルマップ。コンプリートしたのでやることがない...
ゲーマーであれば魔王を楽に倒せる最強の剣を取るために、何十時間もの回り道も厭わないもの。できるかぎりシンドい思いをしたくない、そのために床に手をつき脚を交互に引き寄せて息をゼーゼーさせるなんて平気だという矛盾した行動を取らせるリングフィット。これぞゲーミフィケーションですよね(違うかもしれない)。
▲コース上で拾ったり店で買える素材から、体力回復などさまざまな効果を持つスムージーが作れる。ゲーム内の主人公は回復してもプレイヤーの疲れは取れません
リングはドラゴのストーカー?
リングフィットのストーリーは「闇のオーラをまとうドラゴン(ドラゴ)を解き放った主人公が、リングコンそっくりのリングと一緒に冒険の旅に出る」という単純極まりないものです。おおむね行く先々で無理なトレーニングを強いられる人々を救ったり、腹筋で道をふさいでいる岩を砕いて交通を回復させたりと、ちょっと世界観は脳筋にもほどがありますが勇者ファンタジーの王道です。
しかしリングとドラゴの関係にただならない濃密な何かが漂っています。そもそも貧弱な体を嘆いていたドラゴを鍛えてやるよき友だったリングは、闇のオーラに取り憑かれたドラゴ(取り憑かれる前とトレーニング狂が変わってない気もしますが)を友達だからと封じ込めていた間柄です。
リングは道中では主人公(プレイヤー)が何をしても「よくやった!」「あと一息!」と褒めたり励ますばかり、失敗しても一言もけなさないいいやつです。リングがいなければ辛いトレーニングは耐えられないといっていい。こんなトレーナーが現実にいたら欲しいよ本当に。
▲いきなりコイバナを始める元ラスボス
その爽やかさが印象づけられているだけに、道中での言葉の端々に「ドラゴを助けてやらなければ......」という言葉が熱っぽく、ほとんど粘り気さえ感じられるのです。ただの友人のことばかり、そこまで四六時中考えていられるのか......?
そう前フリを重ねておいて、とあるボス戦。「 お前を止めるためなら、俺はどこまでもお前を追いかける!」と語るリングに、「知ってるか?それをストーカーというんだ......」と返すドラゴ。あっ(察し)。そこから妄想が捗りまくり、筋肉にも弾みがつくってモンですよ。
そして3周目、マスターフィットネス
この4月に緊急事態宣言が発せられたのは、ちょうど筆者がリングフィット2周目の半ばぐらいにさしかかった頃です。そう、このゲームには2周目以降があるんですね。
もともとフリーライターで家で原稿を書いている万年テレワークのため、特に仕事には影響なし。でも、通っていたスポーツジムは閉鎖されてしまい、運動不足の大ピンチです。せっかく半年かけて8kg減らしたというのに、今さらリバウンドしてなるものか。そうだ、リングフィットの運動量を2倍に増やしてしまえ。
ただ、スキルマップを一通りコンプリートしてしまったため、新しいトレーニング方法はもはや出てきません。「好みのもの」や「キツくないもの」「キツいけど重点的に特定箇所を鍛え抜ける」以外にも手を出さないと飽きが来てしまう。2倍運動するには、好き嫌いしていられません。
▲こまめにスキルセットを変えるのが長続きの秘けつ。キツかったウシロプッシュも楽しみになってきました
だもんで、一度やってから絶対にやらないと心に決めていたワイドスクワットなどをやってみると、コレもあり?と思えたのは我ながら驚きました。コースの中にある「腰を沈めてスクワットにより飛距離が伸びるジャンプ台」ほかの仕掛けを地道にこなしているうちに、筋肉が仕上がっていてキャパが備わっていたわけです。
そして2周目ともなれば、1周目のファンタジーから「魔王を倒してからも、なおも筋肉を極めんとする求道者」のお話へと様変わりします。ネタバレになりますがドラゴも主人公のことを認めてトレーナーみたいな協力的な立場となり、セリフも優しくなっていく。コースもCG演出もほぼ1周目のままなんですが、ドラゴとリングが互いの異性の好みをバラして慌てたり......主人公、お邪魔じゃね?
色々あって(中略)現在は3周目のマスターフィットネスへと到達しました。レベルも300をとうに超えてしまい、それでもカンストしない作り込みをした任天堂もタガが外れています。中ボスに当たるマスター4の方々(すでに仲良し)から「もう仕上がってる」だの「まだ鍛えるのか」だの呆れられてますが、緊急事態宣言が終わる前に終わるわけにいかんのですよ。
とはいえ、すでに運動強度はMAXの30でこれ以上は上げようがありません。前は「早くステージクリアになってくれたら」とヒィヒィ言いながらプレイしていましたが、今では「終わったらどうしよう。終わらないでくれ」という思いでいっぱいです。
すでに「1回使ったスキルは、規定のターン数が経過しないと再使用できない」制限も外れ、マウンテンクライマーを3タテでも4タテでもやり放題。キツいものばかりやれば、プレイ時間は引き延ばせるはず。
それでもカラダは慣れてくるもので、ボス戦でわざと単体攻撃用ではなく、複数攻撃用で一発当たりの火力小さめのスキル縛りで攻略。ああ、ステップアップだとなかなかダメージが通らないなあ!ドラゴ、まだ倒れないでいてくれよ!俺を失望させるな......悪役のセリフですね。
▲トレーニングを終えると「本日の運動結果」が表示。強度30にして1時間ほど動くとクタクタ
そんなこんなで、現在の総プレイ時間は約72時間(あくまで「トレーニングでカラダを動かした合計時間」であり「ゲームを起動した時間」ではない)、レベルは330ほど。俺たちのリングフィット道はまだ始まったばかりだというと打ち切りっぽいですが、実際まだ3月の無料アップデートで追加された「リズムゲーム」がほぼ手つかずなんですよね。
まだまだリングフィットは品不足で入手しづらくはありますが、筋トレ嫌いの筆者を約5か月も続けられた面白さ、飽きの来にくさは本物です。全国、いや全世界でリングコンがみんなを健康にしますように。
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