「落日」の日本、ここへきて「優しいアニメ」ばかりが“大人気”になるワケ

マーケターがヒットを分析したら…
小島 健輔 プロフィール

「スーパーカブ」のTVアニメで目につくのが、なけなしの奨学金を節約して本当に必要なものだけ最低価格で購入する主人公の消費生活で、地元スーパーのシーンではレトルト食品の「59円(税別)」という激安価格、ホームセンターでセフティゴーグルを購入するシーンでは「1,100円(税込)」というお手頃価格がフォーカスされ、バイク用品店で雨中走行に不可欠なレインスーツを購入するシーンでは「5,980円(税別)」という価格に主人公が暫くたじろぐ姿が描かれる。

バイク用品のほとんどは人伝にもらうか「アップガレージ」や「ハードオフ」などリユース店で購入しており、新品に手を出すシーンは稀だ。そんな節約生活に共感したり、身につまされる人も少なくないのではないか。

 

吉永小百合のドラマのような

ローカルではなく人情味の残る都会の下町を舞台に、親に縁がなく青森から一人で出て来てスーパーのキャッシャーで生計を立てる対人恐怖症の内向的な若い娘が、孤独の壁を取り除いて世界を広げてくれるパートナーとの出会いを夢見る中、競技ダンスの若いリーダーと出会ってダンスに夢中になっていく姿を描くのが「シャドークロス」。

同じ競技ダンスをテーマとしても、「ボールルームへようこそ」が男性リーダーを主人公に競技者の研鑽と葛藤の成長を描いたのに対し、「シャドークロス」は自分だけの“王子様”とともに女の子が夢を実現していくラブ・ストーリーという性格が強い。

「シャドークロス」の舞台は北区の十条で、十条商店街やスーパーの人々も関わって温かい人間関係が広がっていく。日本がまだ貧しかった60年代の下町を舞台にした青春映画、例えば吉永小百合の可憐な姿が記憶に残る「キューポラのある街」などにも通ずる貧しさの中の温かさや直向きさが感じられるが、当時のような政治色とは無縁で楽しめる。

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