矛盾深まる土地規制法案――数百万人の私権制限の恐れ。入管法に続き廃案しかない
与党が衆院採決強行した法案は立法事実なし。安保を口実に政府の恣意的運用許す
馬奈木厳太郎 弁護士
5.実態調査に「密告」推奨の手法。個人情報を広く共有の可能性
3つめです。利用実態の調査方法についてですが、審議では、政府は、「不動産登記簿等の公簿の収集による氏名、住所、国籍など、土地等の利用者等の把握だけでなく、現地・現況調査や報告徴収を通じた土地等の利用実態の把握、特別注視区域における事前届出制度を通じた土地等の買手の利用目的の把握などを行う」と答弁し、あわせて、「重要施設を所管又は運営する関係省庁、事業者や地域住民の方々から機能阻害行為に関する情報を提供いただく仕組みも今後検討する」としました。
政府は、これを「土地利用状況調査の一環」としていますが、まるで「密告」を推奨するような手法であり、調査について定める法案第6条の範囲を超えるものといわざるをえません。
また、調査によって得られた情報については、「内閣総理大臣は、目的を達成するために必要があると判断させていただきました場合には、本法案に基づき収集した土地等の利用者等に関する情報について、関係行政機関等の協力を得つつ、所要の分析を行うこともあり得る」とし、個人情報が内閣府以外の行政機関との間で共有される可能性があることも明らかにしています。
調査にあたっては、内閣府には沖縄を除いて地方支分部局がないことから、他の機関などに外部委託することも想定されており、個人情報保護の観点からも懸念が存するところです。

東京電力福島第一原発=2015年4月、福島県双葉郡浪江町、筆者撮影
6.機能阻害行為の特定を拒否。勧告されるまでわからない
4つめ。機能を阻害する行為がいったい何を指すのかという点についても、政府は、「安全保障をめぐる内外情勢や施設の特性等に応じて様々な対応が想定されることから、どのような行為が機能阻害行為に当たるかを一概に申し上げることは困難でございます」としたうえで、「予見可能性の確保をするという観点から、想定される機能阻害行為につきましては、閣議決定させていただきます基本方針において可能な限り具体的に例示する」との答弁に終始し、何が機能を阻害する行為なのかについて具体的に特定することを拒否し続けました。
基地建設反対や基地監視活動など憲法上保障された活動にも適用されるのではないかとの問題意識からの質問も多くなされました。
たとえば、いかなる行為が処罰対象となるのか、その判断基準が条文から読み取れなければならないという、明確性に関する最高裁判決なども示しながら、この法案では判断基準が読み取れないので、明確性が確保されないのではないかという質問もなされました。

米軍属に沖縄県民が殺害される事件が起きた。追悼とともに、海兵隊の撤退と日米地位協定見直しなどを求めた県民大会には6万5000人が参加した。翁長雄志知事(当時)は「みなさん、負けてはいけない」と怒りを表した=2016年6月、筆者撮影
政府は、「特定の行為を普遍的な機能阻害行為として法案に例示することは必ずしも適当ではない」、「予見可能性の確保の観点から、閣議決定する基本方針において、想定される行為を具体的に例示をする」としましたが、司令部機能を阻害する行為とは何を指すのかとの質問には、「安全保障をめぐる内外情勢や施設の特性等に応じて様々な対応が想定されるため、一概にお示しすることは困難である」と答弁したため、「司令部機能を阻害することはどういう行為ですかというふうに聞いたら、一概には答えられないと。これじゃ、予見可能性なんて誰も持てない」と追及されることになりました。
これに対し、担当大臣は、「命令を行う前に勧告をすることになっております。この勧告を行う際に、土地等の利用者に対して、どの行為が機能阻害行為に該当しているのか、これは明示的に示されることになります」と答える始末で、勧告されるまではわからないということが明らかになりました。
基地や原発への活動に影響懸念。「適用すべき」と杉田水脈議員
結局、基地建設反対や基地監視などの活動、原発再稼働反対の活動などに今回の法案が適用されることがないのかという点については、単なる座り込みを続けている場合には適用がないという担当大臣の答弁以上には、明確な答弁はなされていません。

米軍ヘリパッドの建設に反対する住民=2016年7月、沖縄県東村高江地区、筆者撮影
一方で、自民党の杉田水脈議員からは、「全国から派遣される反対派の人々によって起こる交通渋滞や、プラカードを持った活動家が道路を占拠するなどによって救急車などの緊急車両の通行の妨げになるなど、そういった影響も耳にしております。また、フェンスに結ばれたリボンやガムテープで留められた横断幕、そして派遣された人々に支給されているお弁当のごみなどが風に飛ばされるなどして基地の中に入ってしまうことも十分に考えられます。不法占拠による座込みや道路交通法を無視した抗議活動についても、本来であれば、この法案によらずとも取り締まることができる行為でありますが、本法案に照らしてみても、一見して直ちに重要施設の機能を阻害しているように見えなくても、そこから派生する影響等も十分に考慮して、本来の目的を果たしていただきたい」と、辺野古での座り込みなどの活動に対しても、この法案を適用すべきだとの意見も示されました。