ムーサ異装展覧界
STROBE
STROBE
茶々丸
展示「写真」
【諸注意】
・このシナリオはロスト探索者限定のシナリオですが、
救済シナリオではありません。ただし、このシナリオ終了後も
ロスト探索者専用のシナリオや救済シナリオに参加することはできますので
永久ロストの可能性もありません。
・一部神話生物の独自解釈が含まれます。
また、物語はフィクションであり、実在のものとは関係ありません。
【シナリオの 6版/7版 コンバートについて】
可能。ただし、シナリオの根幹が変わるような改変は不可。
【シナリオに関するお問合せ先】
TwitterのDMまたはboothのDMにてお問い合わせ下さい
Twitter:https://twitter.com/matumaru1232?s=20
booth:https://matumaru1232.booth.pm/
【概要】
「STROBE」
よみ:ストロボ
作 :茶々丸
テーマ:写真
プレイ人数 :1人~4人
プレイ時間 :4~6時間(人数やRPによって変動)(オンラインボイセ基準)
推奨技能 :無し(ただし<写真術>を振る機会は必ずある。初期値でも良い)
シナリオ傾向:ロスト探索者限定シナリオ、特殊クローズド
舞台 :現代日本を想定しているが、別の時代の人間でも参加可能 キャラシ:ロスト探索者限定
とある時代の人間達は、 「写真に写ると魂が取られる」と言ったそうだ。
まだその地に来たばかりの「カメラ」というカラクリ箱は、撮影のために長時間同じ体勢を保っていなければいけなかった。 その後の疲れる様や写真にそのままそっくりの姿を映し出せてしまう異様さから 「魂を取られる」などと言われていたそうだ。
「...あぁ、突然長話を失礼いたしました。 ところで、館内は撮影禁止となります。
ここで記念撮影などいかがですか?」
これは、生と死の狭間にある 「たった一瞬」の話。
以下、KP向け情報となります。
【シナリオ概要】
シナリオ「STROBE」
ロスト率:もう死んでるよ!
人数:1人~4人
時間:4~6時間(人数やRPによって変動)(オンラインボイセ基準)
傾向:ロスト探索者限定、特殊クローズド
舞台:現代日本を想定しているが、別の時代でもOK
キャラシ:ロスト探索者限定
推奨技能:無し(ただし<写真術>を振る機会は必ずある。初期値でも良い)
「よければ、ここで記念撮影などいかがですか?」
「さぁ、最高の一枚を!」
シナリオ注意事項
・このシナリオはロスト探索者限定のシナリオですが、救済シナリオではありません。ただし、このシナリオ終了後もロスト探索者専用のシナリオや救済シナリオに参加することはできますので永久ロストの可能性もありません。
・また、救済シナリオではありませんがENDによって他探索者や探索者が生きていた現実に影響を少しだけ与える可能性があります。といっても世界滅亡とかでは無くとても小さな事です。ご安心下さい。
・一部神話生物の独自解釈が含まれます。また、物語はフィクションであり、実在のものとは関係ありません。
共通ハンドアウト
貴方達は既に死んだ者たちだ。
シナリオでロストした探索者、または何らかの理由でロストした探索者が参加できる。
世界線は問わないので世界崩壊などの探索者も使用可能だ。
ただし、「魂も無くなっている」という状態の探索者は参加不可となる。
以下は簡単な参加可能な探索者の一覧である。
【参加できるロスト探索者確認表】
・肉体的に死亡した探索者:参加可能
・自殺した探索者:参加可能
・SAN0になった探索者:参加可能
・異形化、神話静物化してしまった探索者:参加可能だが、探索者の自我が残っている場合は不可
・神話技能がカンストしてしまった探索者:参加可能
・探索者の世界が滅んだ形でロストした探索者:参加可能
・神話生物、あるいは神格によって魂ごと消されてしまった探索者:不可
・ニャルラトホテプの人間化身になった:不可
・アザトースの宮殿に連れて行かれた:不可
セッション開始前に
KPはセッション開始前に、以下のテンプレートを提出してもらったCSの探索者に沿ってPLに記入してもらう。記入してもらった探索者の死因は導入の描写で追加し、死因と大切な思い出の両方を最後の逃走ラウンドで描写することがあるかもしれない。
ただし、必ず必要なものでは無く、あくまでもロスト探索者を使用するシナリオとして物語を引き立たせるものであるため、KPが必要無いと思ったり、時間が無い場合(突発卓など)は、テンプレートを記入せずそのままシナリオを開始しても良い。
【シナリオ開始前テンプレート】
【探索者の死因】
※ネタバレになりそうな場合、簡単な記載で構わない
→
【探索者の大事な思い出】
※家族の思い出、学生時代の思い出、他セッションでの思い出、他のPCや関係している人間との思い出...など
→
シナリオ背景
事の発端は探索者が住んでいた世界とは別の世界線での話。
その世界線の「覚醒の世界(普通の現実世界)」に住んでいた男性「早美 真(はやみ まこと)」はある時肉体ごとその世界線のドリームランドに迷い込んでしまい、ドリームランドから出られなくなってしまった。
真はその後、ドリームランドの都市「セレイファス」で暮らすことになったが、元々写真家であった彼は、カメラやそれに類似したものを作成できないかと考え始める。ドリームランドは覚醒の世界と文化が異なるため、機械を一から作成するのは難しく、また、ドリームランド自体は人の夢から出来上がった世界である以上、写真に写るものは通常の写真と異なることがあった。
そこで真は、ドリームランドの魔術を用いて、カメラに類似した魔術道具を作成することに成功する。彼が「アイ」と名前をつけたその魔術道具(アーティファクト(AF))は、元にした魔術の影響により生物の魂を写真に封じ込めることもできる恐ろしい道具だったが、真はあくまでもドリームランドの風景を写真に収めたかっただけだったため、その昨日は使用せず「アイ」を使ってドリームランドの風景を写すことにした。
しかし、そうやって時が流れたある時、その世界線に存在する覚醒の世界がアザトースの招来によって滅んでしまう。夢見る人が居なくなっていったことにより、ドリームランドも荒廃の一途を辿っていくことになってしまい、真もセレイファスを出てどこか遠い場所で死ぬことを決め、最期に荒廃するドリームランドを旅して回っていた。
彼は今まで自分の暮らしていたドリームランドを写真に収めながら最期の旅を続けるが、その中で「ストゥード」の神殿にたどり着いてしまった。真はストゥードと接触してしまい、ストゥードはその目覚めから奇跡を起こしてしまった。
元々人類を生み出したとも言われていたストゥードの奇跡は、目の前にいた真だけが存在する一つの世界を作り出してしまい、さらに、彼の所持していたカメラ「アイ」に魂が宿ってしまった。
真とアイだけが残された「小さな世界」は、彼ら以外何も無い場所だったが、当然、夢見る人が二人しかいないこの小さな世界のドリームランドは、真やいままでアイが撮影してきた情景を反映させた世界となっていた。これに気づいた二人は、さらに別の夢見る人や魂を連れてくることで、ドリームランドは姿を変えるのでは無いかと考え様々な人間や、死者の魂をこの世界に呼び寄せた。
この小さな世界に写真を飾り、やがて「写真展」としてたくさんの客人を招き、そして客人達として呼び出された魂たちも、最初は驚いたものの、真達に協力するようにして、その世界で写真を撮り、本人達はちゃんと元の世界に返していた。
様々な写真はドリームランドに反映され、ドリームランドはさらに形を変えていき広大な世界に姿を変えていった。真もアイも二人でその美しい景色に見惚れたが、ある時事件が起きてしまう。
招いた客人の中の一人の女性が、不思議な空間に呼び寄せられた事に混乱し、真の話を聞かずに「この男を殺せばここから出られる」と思考し真を殺害してしまう。
魂の宿っている「アイ」は、その光景を目の前で見て彼もまた錯乱してしまい、人の魂を封じ込める機能を有しているアイは女性の魂を写真に封じ込めてしまった。
さらに、アイは真の死体を写真に写し彼の魂もドリームランドに閉じ込めると、アイはまだ「真は死んでいない」と思い込むようになってしまい、自らを「マコト」と名乗るようになる。彼は真が望んだ美しい風景を求め、ドリームランドをさらに美しい世界にするために死者の魂を呼び寄せるようになる。
今までは真と共に小さな世界を案内した後元の場所に返していたが、アイは真の魂を封じ込めたドリームランド自体が衰退するのを恐れ、呼び寄せた死者の魂を写真に封じ込め続けた。
元々真と共に集めた写真や、合意の上で撮影した魂の写真などを飾って「展覧会」を名乗り、彼はこの小さな世界で「マコト」として魂を集め続けていた。
そこで、今回やってきた客人が探索者達である。
探索者たちがマコトの正体に気が付き、そしてドリームランドに存在する「早美 真」の魂を見つけ出すことができれば、この世界に束縛されずに済むだろう。
決して生き返るなどといった奇跡はこの物語に存在しないが、彼らが探索者のおかげで本当の事を思い出した時、真の魂とアイは、探索者に写真の撮影を求める。
この最後の撮影は、探索者が望むのであれば現世の誰か一枚を写真を残すことことが可能であり、死んだ後に、残してしまった人や、まだ生きている友人や知人に写真を送ることができる。
もちろん、探索者が望まないのであれば、それはどこかの異世界にある「アノマリオノール博物館」という所に寄贈、または保管されることになるだろう。
その博物館の案内役の女性は、この撮影現場をしっかりと見ているのだから。
NPCや登場神話生物
▶マコト(※アイ)
【ステータス】
STR:10
CON:12
DEX:18
POW:20
APP:13
INT:17
SIZ:13
<目星>:10%
<写真術>:75%
【詳細】
※最初は「マコト」と名乗るが、彼の本当の名前は「アイ」である。
・この小さな世界に唯一存在している住人。美術館のようなこの建物の「管理、及び案内役」を名乗っているが、その正体は「早美 真(はやみ まこと)」の作り出した魔術道具(AF)が、ストゥードの奇跡により魂の宿った姿である。
・自信を作り出した真のことを溺愛しており、そのせいで真が死んだことを受け入れられず、自身が「マコト」だと名乗って展覧会を続けている。真が以前行っていたように他の世界から人を招いているが、真が死亡してからは、真のためと、夢の世界を広げるために連れてきた魂を無理やり写真に閉じ込めている。
AFの力はの残したままの彼は、撮影した生物の魂を写真に封じ込めてしまう力を持つ。
(ドリームランドの呪文「魂盗っ人」を一部参照)
▶早美 真(はやみ まこと)
【詳細】
・元々探索者が住んでいた世界とは別の世界線の人間。
とある事象をきっかけにドリームランドから出られなくなってしまい、時間の無い都市「セレイファス」で暮らしていた。その際に魔術に少しだけ触れており、AFの「アイ」を作り出した張本人。カメラに「アイ」を言う名前をつけ、そしてアイの事を家族のように大切にしていた。
・シナリオ内ではアイに撮影された魂だけがドリームランドに束縛されているが、アイが急遽撮影したため魂の反映がうまくいっておらず、ぼやけて記憶の一部を失っている。
探索者が撮影された彼の写真(遺影)を見つけてあげることで、記憶を思い出すことが出来る。
▶ストゥード
(サプリ「ラヴクラフトの幻夢境」p142).
【詳細】
・ドリームランドのグレードオールドワン。玉ねぎのような形をした存在で、大きな口をもっている。神殿で深い眠りにつくこの神は、その眠りから目覚めると奇跡を起こすと言われており、この神は奇跡を起こさないように神官が神殿を守っているのだが、早美 真が訪れた際はドリームランドが衰退していたため、神官もいなくなっており、早美真が接触してしまう。その結果彼だけの小さな世界が誕生し、AFであるアイにも魂が宿ってしまった。
今シナリオで直接この神格は登場しないが、真の記憶が反映しドリームランドでぼんやりとしたシルエットを確認することが出来る。
▶リボンをつけた謎の女性
【詳細】
・今シナリオには直接登場はしない「アノマリオノール博物館」の学芸員の女性。
この空間に間接的に関わっている不思議な存在。明確な目的はこのシナリオでは明かされないが、探索者とは敵対することは無く、最終局面で彼女に会えば助けてくれるだろう。
・彼女の本当の名前は不明。
しかし、早美 真とアイは彼女の事を知っており、博物館に写真を寄贈したことがあるため深い関わりでは無いものの、それをきっかけに知り合い同士ではある。
シナリオ
シナリオ内での表記は以下の通り
・=小さな点は区切りとして使用されている。
探索箇所以外に場所の状況や各シーンの内容が記されている。
(例: ・この場所は静かな場所であり、特に調べられる場所はない。 など)
◆=各探索箇所や各シーンの区切りポイント
(例:探索箇所:◆机、◆本棚、◆落ちているメモ など)
◇=イベントシーンや特別な処理など
(例:戦闘や一定の条件で発生するシーンなど)
※KP情報 と描かれた場所はKPがよく読んでおくべき場所
PLには描写を行う指示もあるが、基本※KP情報の部分は文章として貼り付けたりしないこと。
枠で囲ってある場所はシナリオ内情報。
メモや魔術書など、探索中に探索者その情報を見つけたら、開示する。
太線になっている部分は、重要な場所である。
<>=技能を表している。
0:独白
※KP情報
今シナリオは一人でも複数人でも参加可能なシナリオのため、「貴方」と一律して記載しているが、ソロでは無い場合は「貴方達」と描写した方が誤解を招かないカもしれない。
【描写】
ーーそれは、昔の話。
いや、つい最近の話かもしれないし、君たちの知らない未来の話かもしれない。
それは君たちがどの世界のどの時代に生きていたかによるが、少なくとも、この世界にとっては遠い場所で聞いた小話だ。
その時代の人間達は、「写真に写ると魂が取られる」と言ったそうだ。
まだその地に来たばかりの「カメラ」というカラクリ箱は、長時間同じ状態を保っていなければいけなかった。
その後の疲れる様や写真にそのままそっくりの姿を映し出せてしまう異様さから「魂を取られる」などと言われていたそうだ。
しかし、この話を何故したかといえば、あながちこれも間違いではないと思ったからだ。
写真に焼き付けられた情景と表情の一つ一つは、白黒であれ色鮮やかであれそこにあったたった一瞬をもう一度呼び起こさせてくれる。
それは、死んだ人間にもう一度会えると言っても間違いではないのかもしれない。
….ところで、館内は撮影禁止となります。
なので、ここで記念撮影などいかがですか?
「さぁ、最高の一枚を!」
クトゥルフ神話trpg 第6版シナリオ
【STROBE(ストロボ)】
1:導入
【描写】
ーーそれは最期の瞬間だった。
自分の意識が途絶える前のたった一瞬を、確かに貴方は覚えていた。
最期の時に何を思ったのだろうか、それは貴方にしか分からないことであり、そしてこれからそれに答えを返すことも、その意思を汲み取るものもいなくなっていくのだろう。
自分の生きた証も、貴方が行ったことも、貴方が立ち向かった事象も、貴方という意識が描き消えていくこの暗闇で薄れて行ってしまう。
...いずれそのまま無に還るのだろう。
そう思い、魂は何もない場所で漂っていた。
しかし、ふと、感覚が呼び覚まされると、遠くから声が聞こえてくる。
◆導入
・描写終了後、探索者は全員<聞き耳>を行う。
見ている情景はそれぞれ違うものであるため、探索者たちは同じ場所にいるわけではないが、成功した場合聞こえてくる声は同一のものだ。
<聞き耳>成功情報
後ろから、女性の声が聞こえてくる。
「こちらの作品は、特別な招待を受けた皆様のみご観覧できます。どうぞいってらっしゃいませ。」
…と、その声を最後に貴方が後ろを振り向けば、一瞬そこに大きなリボンを付けた女性が立っていたような気がした。
・失敗した場合も、そちらに振り向くのであれば、リボンをつけた青い髪の女性の姿を見ることはできる。
2:ようこそ!真(シン)の世界へ!
【描写】
ーーふと、貴方は再度瞼をもたげ、意識を呼び起こした。
目覚めこそ二度とないはずの貴方にとって、それ自体がおかしなことだと自覚できるが、何故か死んだはずの自分たちは、見慣れているであろうその姿で見知らぬ場所に立っていたのだ。
感覚は確かに存在し、そして同時に再び動き出した貴方の思考が、このおかしな状態を理解してしまうだろう。<SANC0/1>
※KP情報
探索者たちは全員自分の死亡原因や最期の瞬間を覚えていて良い。
ただし、SAN0の探索者の場合は魂だけこの場所に来ている状態になるため、
「死ぬ瞬間」ではなく、探索者がSAN0になる直前の出来事までは覚えているという扱いになる。神話技能がカンストした探索者や、自我を失い人外となってしまった探索者も、SAN0探索者と同じ処理となり、「自我があった時の最期」までを覚えている状態となる。
そのため、SANを失ったロスト者が参加している場合は、直ちにSANを初期値に戻すこと。
ただし、これは現実の身体には影響しないため、このシナリオのみでの処理になる。
◆案内人の「マコト」という男
【描写】
ーー探索者たちが戸惑っている中、男性の声がふと聞こえる。そちらに目線を向けてみれば、そこには不思議な格好をした男がこちらを見て微笑んでいた。
服装は異国、または少し前の時代を思わせるような不思議な格好であり、何より目につくのは彼の身体のあちこちに貼られた写真が目につくだろう。それも、目の部分には目の写真が貼られ、腕の部分には腕の写真が貼られていたりと、同じ部位や場所に同じ写真が貼られているようだ。彼自身の瞳は閉じられているが、写真の瞳は開いておりこちらを見ているようにも思える。
少し不気味ではあるものの、男自体に悪意は感じられず、彼は貴方を見るとすぐに頭を下げ、こう言うだろう。
「ようこそ!「真(シン)」の展覧会へ!今回のお客様は〇名(プレイヤーの数)ですね。ようこそおいでくださいました。ここはどの世界戦にも属さない小さな世界です。」
「申し遅れました。僕は「マコト」と申します。この展覧会の案内と管理を行っています。なにとぞよろしくお願いします。」
「マコト」と名乗った帯びて男は挨拶を終えると、再度貴方に悪意の無い優しい笑みを向けて見せた。
展覧会というものに全く覚えは無いが、確かに周囲を見渡してみれば、この建物の内装は美術館のような作りをしていることに気が付く。額に飾られた写真がいくつも展示されているようで、彼が言っている「写真展」にはふさわしいと思うだろう。
そんなな事が頭に過ぎるが、目の前の「マコト」という人物はさらに話を続けた。
「さて、さっそく案内に移りたい所なんですが、突然の事で混乱されているでしょう。
案内の前にお聞きしたいことなどありましたら、僕の答えられる範囲であればお答えいたします。」
彼はそう言うと再度、優しく微笑んだ。
・ここで、探索者は<アイデア>を行うことができる。
<アイデア>成功情報
彼の写真は同じ場所に貼られているものの、彼(マコト)とは別の人間の写真であることに気が付く。
3:案内人
※KP情報
ここからは、彼に聞きたい事を質問することができる。
以下は彼に質問した際の回答例だ。彼は真相に迫ること以外は丁寧に答えてくれるだろう。
もし、探索者が何も聞かなかった場合もこの世界について(回答例の一番上)は少し話してくれるだろう。それ以外話したいことなどが無くなった場合は、◆展覧会の案内の描写を行う。
◆質問と回答例
Q:ここはどこ?
A:「ここは貴方が暮らしていた世界とは別の「小さな世界」です。どの世界にも属さない異世界と言ったほうがいいでしょうか。ここには生きている人の魂が迷い込んだり、貴方のような死者の魂が迷い込んだりすることがあります。その場合は、この展覧会を案内した後にちゃんと元の在るべき場所に返しますからご安心ください。ただ死者を生き返らせることは僕にもこの世界にもできないことなので、天国までの寄り道だと思っていただければ。」
Q:展覧会?
A:「はい。こちらでは僕の撮影した写真や他の世界の方から寄贈された写真を展示しております。貴方が住んでいた世界以外の世界からも写真もありますよ。此処に迷い込んだ方々は、この展覧会の案内を僕が行っています。順路に沿ってこの世界の出口に到着すれば、問題なく元の在るべき場所に帰ることになります。」
Q:自分たちは死んだはずでは?
A:「そうですね...あまり進んでこちらからその話はしないようにしていますが、混乱を避けるために真実を告げますと、貴方のその最期の記憶は間違いではありません。ここは生きている者、死んでいる者、等しくその魂が迷い込む場所です。」
Q:魂が迷い込むってどういうこと?
A:「先ほど申しました通り、ここはどの世界にも属さない世界です。この世界には意図せず様々な魂が迷い込むことがあるんですよ。眠っている間に夢を通じて生きている人間の魂が迷い込んだり、貴方のような死んだ人間の魂が迷い込んだりします。最近は死者の魂が多いでしょうか。でも僕が意図的に呼んでいる訳ではないので、全ての把握はしていないんですよね...すみません。」
※KP情報
実際はマコトが死者の魂を呼び寄せているため、この発言は嘘である。
しかし、マコトは直接的に言えば人間では無いため、<心理学>を行おうとしてもその不思議な佇まいからうまく理解することが出来ない。
Q:目を閉じてるけど、前見えてる?
A:「見えていますよ。ご心配なく!少し身体が不自由なので瞳を閉じたままですが、ご了承ください。」
Q:貴方の身体についてる写真、別の人の写真?
A:「おやこれですか?あぁ、変な格好で驚かれてしまったでしょうか。これは私の写真ですよ?まぁ、この展覧会には特に関係のないものですからお気になさらず。」
※KP情報
先ほどの<アイデア>の情報で疑問に思い問いかける人もいるかもしれない。
彼が身体に貼っている写真は「早美 真」の写真である。
しかし、この時点で彼に聞いても上記の返答のようにごまかされてしまうだろう。
◆展覧会の案内
・ある程度質問返答を行うか、探索者が特に話したいことなどが無くなった場合、彼は探索者に対してこの展覧会(写真展)の案内を行うだろう。
「では、そろそろ案内に写りますね。ゆっくりご観覧下さい。」
彼は、そう言うと探索者を案内するため、前を歩き始めるだろう。
4:第一展示
【描写】
ーー彼に案内されながら美術館らしき場所を進んでいく。
貴方にとっては異質さを放つ「小さな世界」と彼が言っていたこの場所は、本当にこの施設以外に何もないのか、入口も出口も、そもそも窓すら見当たらなかった。
ここが閉鎖的な空間なのか、それとも外というものが存在しないのかは分からない。
しかし、ふとあたりを見渡していれば、必然にも飾られた写真、すなわちこの展覧会の作品が目に映る。写真展と言うにはふさわしいといえる美しい作品ばかりであり、額に飾られているその一つ一つが、まるで窓の無い閉鎖的なこの空間に、別々の風景を映し出す窓のようだと感じるかもしれない。被写体を様々な姿で映し出しているそれらに、写真に興味があろうがなかろうが、貴方の視線を釘付けにしてしまうには十分なほど確かにそれぞれの「美しさ」をもったいた。
この瞬間だけでも目に焼き付けられるようなその美しい情景を前に、貴方は様々な情景を映し出したこの美術館をゆっくりと進んでいった。
ふと、とある場所で彼が立ち止まる。
「ここからは第一展示、第二展示、第三展示と別れています。第一展示からご覧になっていただきますが、第一展示から第三展示まではかなり作品が多いため、展示内のどの作品から観覧されるかはお客様にお任せします。ごゆっくりご観覧下さい。」
そういって彼は貴方を「第一展示」と案内板があるスペースへと案内する。第一展示は他とそう変わらないように見えるが、今までと比べて、一部ぼやけた写真や、ぶれている写真などが見受けられることに気が付くだろう。
・この場所は探索者がどの作品から見てもよい。
見れるのは少年の写真、少女の写真、森の写真、黒い写真の4つだ。
◆少年の写真
【描写】
ーーおそらくその家庭は裕福だったのだろう。
部屋に並べられた画材や道具などにも目線は行くが、それよりもその写真の中心にいる少年は、よりはっきりとその情景をとらえていた。
カメラ目線ではなく、その少年は目の前の大きなキャンバスを見つめ、クジラの絵を描いていた。
その表情はいずれ大作になるだろうと夢見ているようで、輝かしいその瞳の虹彩まで、しっかりと映し出された作品だ。
◆少女の写真
【描写】
ーー少女は輝いた瞳で、その場所を駆けていた。
ブレも無く、しっかりと被写体をとらえている色彩あふれた写真であるにも関わらず、確かにその少女が背景に見える遺跡の前で、次の冒険に向かおうと走り出しているその情景を感じ取ることができる。まるで今にも動き出しそうなほどの臨場感とともに、さらに背景に映った壮年の男性の「やれやれ」といった表情が、少しほほえましいようにも見える作品だ。
◆森の写真
【描写】
ーー遠目から見ればそれは暗い森の写真に見える。
しかし、作品をよく確認するのであれば、中央にぽつんと小さな明かりが見えた。
明かりの正体はどうやら焚火のようで、二人の男性がその焚火を囲んでいた。
格好からして兵士だろうか、しかしこの写真がどのような状況かは分からず、さらに若者のうち一人の顔はこの暗がりのせいでぼやけて写真にはしっかりと映っていないようだった。
◆黒い写真
【描写】
ーーそれは近づいてみても他の写真と違って何を映し出しているのか分からなかった。
ぼやけ、ひどくぶれてしまっているこの作品には、ほとんど黒い暗がりのような場所に、小さな青い球体が映っているようだった。
ただ、それが本当に球体なのか分からず、わずかに発光しているようにも見えるこのぶれた写真は、見方を変えれば地球を映し出した衛星写真のようにも見えるだろう。
※KP情報
第一展示の写真は全て早見 真やアイが撮影したものでは無く、別の人物から寄贈されたものである。実際に受け取ったのは「早美 真」のため、アイ(マコト)はこの写真についての詳細は知らない。
なお、この写真は全て別の世界のとある事象と関連しているため、このシナリオ内ではどのような写真なのかは分からない。
5:第二展示
【描写】
ーー彼の案内に連れられて先へと進んでいけば、先ほどよりもさらに広い展示スペースに通される。その場所は奥に通路が見える以外に壁を覆いつくすほどの写真が展示されておりよくよく見てみると、どうやらこのスペースを構成している四方のパネルには、一つのパネルごとにテーマ分けされているようだった。テーマは「動物」「子供」「建物」「人間」の4つのテーマになっており、どの場所から見るかは貴方次第だろう。
・この場所も好きなテーマから観覧してかまわない。
見れるのはテーマ「動物」、テーマ「子供」、テーマ「建物」、テーマ「人間」の4つだ。
◆テーマ「動物」
【描写】
ーーパネル一面に展示された小さな写真の一つ一つは、様々な動物の写真を映し出していた。
かわいらしい猫の写真や、元気よく走り回る犬の写真、大自然の中でたくましく生きる様々な動物から、一面に広がる青色の中を泳ぎ回る魚まで色とりどりの生物の写真が展示されていた。
・この展示に対して<目星>または<アイデア>を行うことができる。
<目星>または<アイデア>成功情報(どちらも情報は同じ)
飾られた動物の写真の中に、一部見たことのない生物が写りこんでいることに気が付く。
透明になりかけた透けた動物、不思議な形の魚、クラゲのような奇妙な形をした浮遊生物、飛行する怪物じみた特徴を持つものなど、奇妙な生物達の写真が紛れ込んでいることに気が付くが、どうやら作り物ではないようだ。
・もし、<目星>や<アイデア>に成功した後に詳しくマコトに聞こうとする場合は、マコトは「あぁ、この写真ですか?先ほど申した通り、ここは貴方の世界とは違う場所に属している小さな世界ですから、この場所の外、まぁつまりこの世界以外にも様々な世界や、夢の世界、僕たちは「ドリームランド」と呼んでいますが、そこを渡り歩いて写真を撮っているんですよ。だからそこで出会った生物なので、貴方はご存じないかもしれませんね。」というだろう。
ドリームランドというものについて詳しく聞こうとしても、「まぁ、後に分かりますよ」とごまかさせるだろう。
◆テーマ「子供」
【描写】
ーー子供をテーマにした場所には、他と同じように多くの写真が飾られているようだ。そのどれも幼い顔を持つ被写体をしっかりととらえており、産声をあげる赤子の写真から、母親の乳を吸う動物の子供の写真もあるようだ。無邪気に笑う幼い子供たちの写真は、まるで貴方にむかって笑いかけているようだ。
・この展示に対して<目星>または<アイデア>を行うことができる。
<目星>または<アイデア>成功情報(どちらも情報は同じ)
写真たちの中に、一部奇妙な写真を発見する。
家族写真の中に写る子供の兄弟のうち一人の影が無い写真だったり、子猫達の中の一匹が、空中にういている写真だったり、公園の遊具らしき場所で遊ぶ半透明の子供の写真など、写真としてあり得ない風景ではあるものの、この写真も作りものでは無いようだ。
<SANC0/1>
・この写真についてもマコトに詳しく聞くのであれば、「あぁ、この写真ですか?ご本人達にはちゃんと許可を得ていますよ。簡単に言ってしまえば、今の貴方と同じような子達でしょうか。「写真を撮って欲しい」と頼んできたものですから。」
※KP情報
この心霊写真のようなものは、この小さな世界のドリームランドで夢を通じて子供達の記憶を撮影したものだ。なので、マコトに「幽霊が見えるのか」などと聞く場合は、「間違って這いませんが、少し違いますかね...?まぁ、この先を見ていただければ分かりますよ」と言うだろう。マコトはドリームランドに行けることはまだ言おうとはしないからだ。
死んでしまった子供達の魂は、この世界のドリームランドにいることに特に抵抗はないため、白黒写真では無い。なお、子供達を撮影したのは「早美 真」であるため、後にドリームランドで子供達に聞いても、「マコト」のことは知らない。
◆テーマ「建物」
【描写】
他のテーマと異なりその「建物」をテーマにしたパネルは、生物はほとんど写っていなかった。
貴方が暮らしていた国から、異国の様々な建造物を映し出しているその写真たちはその美しく捉えられた建物の装飾や伝統的な作りが臨場感は無くとも独特の迫力と美しさを持って展示されていたのだった。
・この展示に対して<目星>または<聞き耳>を行うことが出来る。
<目星>または<聞き耳>成功情報(どちらも情報は同じ)
ふと、色とりどりの建造物や施設などの写真の中に、一つだけ白黒の写真があることに気が付く。写真をよく見てみると大きな神殿のような建物が見え、その神殿の奥には台座のようなものがあるようだ。台座の上には何かが鎮座しているように見えるが、ぼやけてよく見えない。
しかし、貴方がその写真に目線を向けていると、どこからか「たすけて...」という男性の声が聞こえてくる。声はマコトとは別人のもののようだ。<SANC0/1>
・マコトに聞いても、その写真については「あぁ、その神殿の写真ですか。その神殿には神様がいたって話ですよ」という程度しか言わず、神様というもについては詳しくは知らないと言う。
声について聞いても、「そんな声しましたか..?」と首をかしげるだろう。
◆テーマ「人間」
【描写】
ーー人間をテーマにした展示は、想像通り様々な「人」を映し出したものだった。
しかし、想像していたものとはいえ、やはり確かな色彩を持って映し出された様々な人間の生き様と人生の断片であるその風景を前に、貴方はふと自分が生きていたあの時を思い出すかもしれない。
家族が笑う写真、仕事をしている人々の写真、ただ映し出された当たり前にあるはずの人生の情景を前にして、もう生きることの出来なくなった貴方はそれを本当に窓の外から除いているだけのように思えたかもしれない。
・ふと、写真を見ていると一つだけ白黒の写真があることに気が付く。
その写真に写る女性は、だらんと垂らした髪で顔が見えなくなっており、また、その恐ろしい見た目に加え、その手に持っている包丁を見てさらに背筋が凍るかもしれない。
写真とは言え、かなりリアルさに凝っているこの作品は、本当に撮影者に殺意を向けていたのではないかと心配になってしまう程だ。
この写真に対して<目星>または<アイデア>を振ることが出来る。
<目星>または<アイデア>成功情報
その写真の女性を見ている目線が下であることに気が付く。女性はカメラ目線では無く、カメラよりも少し上を見て包丁を向けているということが分かるだろう。
・このことについてマコトに聞こうとしても、マコトは「...?そのような作品ありましたっけ...?」と答える。探索者がもう一度作品のあるパネルを確認しても、その女性の写真だけ無くなっている事に気が付く。<SANC0/1>
・全てのテーマを観覧し終えたら、マコトは「では、次は第三展示です。是非とも貴方に見て欲しいので、僕に付いてきて下さい」と微笑んで探索者をまた奥へと案内する。
怪しいフレーズだが特に嘘を付いていたりはしない。
6:第三展示...?
・第二展示を全て見終わった所で、<目星>か<アイデア>を行う。
失敗した場合、もう片方で判定しても良い。どちらも失敗した場合でも、「扉がある」ということは確認出来る。
<目星>または<アイデア>成功情報
外れた通路の奥に別の扉が見える。
一見すると非常口のように思えたが、よく確認してみると扉には鎖や数々の南京錠がかけられ、かなり頑丈に閉ざされているものだと感じる。
また、扉自体に「関係者以外立ち入り禁止」と書かれたプレートが取り付けられていることにも気づくことが出来るだろう。
・もし、マコトに扉の事を聞こうとするのであれば、先ほどまで探索者を案内していたマコトの姿は無くなっていることに気が付く。次の◇第三展示に飾られた写真?の描写を行う。
◇第三展示に飾られた写真?
・探索者が扉の存在に気が付き少しよそ見をしていると、振り向いた瞬間にマコトの姿は無くなっている。
【描写】
ーー探索者達が進んでいくと、「第三展示」と案内のあるスペースにたどり着く。
気が付くと先ほどまで探索者を案内していた「マコト」の姿は無くなっており探索者達が戸惑っていると、ふと一つの写真が目に映った。
第三展示にはたった一つだけ写真が飾られているだけで、近づいて見てもひどくぼやけているそれは何を写しているのか分からなかった。しかし、しばらくするとそのぼやけた写真の向こうに、自分のよく知る風景や思い出が見えたような気がした。
貴方の生前の記憶であり、貴方にとって「生きた」という物語。
死んでからこそ自覚したそれを前にして、また写真はぼやけてしまうが、その記憶を追ってか、はたまたその記憶を拒もうとしていたのか、どちらにせよ貴方の身体は、気は付くと勝手に動き出していた。
この写真と同じように一瞬意識がぼやけると、貴方が瞬きをしたほんの一瞬で、貴方は「第三展示」のその先に立っていたのだ。
...そう、その写真の向こう、知らない世界であるはずなのに、貴方がつい先ほどまでみていた色彩の中に貴方は立っていた。
・探索者のMPを-1した後、次の描写を行う。
7:写真世界か、それとも
【描写】
ーー遠くで少女が、楽しそうに遺跡の周りを走り回っている。
遠くで少年が、鯨の絵を大きなキャンバスに描いている。
その大きな森に囲まれた場所で二人が囲んだたき火の煙が、空へ空へと何かを求めるようにして登っていけば、遠くで黒く星空も瞬かぬ夜空のような所に、青い球体が見えたような気がした。
貴方の周りは色彩の無い白と黒で出来た美術館の壁や天井では無く、色鮮やかな情景たちであった。
前方には大きな森が広がり、どこか遠くに見知らぬ生物が飛んでいくと、子供達の声が聞こえてきた。さらに奥から、大きな摩天楼が見えた。しかし、そのどれもが貴方が一度見たものであることを、はっきりと覚えていたのだ。なぜなら、
それは全てつい先ほど見た情景だからだ。そう、あの写真の向こう側の世界に、貴方も迷い込んでしまったかのようだと気づいてしまうだろう。
その美しくも奇妙な体験を前に目を奪われたか、または動揺か、それとも感動か、そちらにせよ貴方はまだ立ち尽くすことしか出来なかったのだった。
<SANC0/1d2>
...貴方がその景色に唖然としている中、すぐに声が聞こえてくる。
どこから聞こえてくるか分からず、姿も見えないが、声は確かに「マコト」のものであることが分かるだろう。マコトはそのまま貴方に対して話を続ける。
「改めてようこそ!真(シン)の世界へ!」
「この場所は僕らが「ドリームランド」と呼んでいる場所になります。貴方が住んでいた世界にもドリームランドは存在していまして、簡単に表すと、その名の通り「人やその世界の生物の夢」から構成された世界なんです。」
「ですが、先ほど申した通りこの小さい世界には僕しかいません。なので、様々な世界から受け取ったり撮影した写真をあの世界で「展覧会」という名目で飾ることで、その写真の情景がこの世界のドリームランドに映し出されるのです!....あ、写真は夢を見ないのになんで映し出されるのかという質問は、色々複雑なので今は伏せておきますね!話も長くなりそうなので!」
一方的にマコトは話した後、さらに続けるだろう。
「長々と失礼いたしました。僕はそちらには行けませんので、これからの説明をさせていただきますね。この世界は先ほどの展示と同じ配置となっております。」
「今貴方が立っているのは第二展示の辺りだと思いますから、テーマ分けされた区域を越えて行けば第三展示に向かえるはずです。第三展示の先でお待ちしていますので、こちらを持って第三展示までお越し下さい。」
彼がそう言った直後、貴方の手元に何かが現れていることに気が付く。
そこまで重くはないものの、しっかりとした作りの機械は、おそらく「カメラ」だろうか。
しかし、現代日本を生きている探索者であれば少し古いデザインであると思うかもしれない。貴方がそれに目をやると、マコトは丁寧にそのカメラらしき機械の説明をすると、このように言うだろう。
※KP情報
もし、ここで現代日本以外の時代から来た探索者がいる場合は、カメラだと気づくことは出来ないが、マコトが「これは、正しく使えば見ている情景をそのまま映し出すことができる道具ですよ。」と説明してくれる。完全に理解できないかもしれないが、マコトが丁寧に使い方を教えてくれるため、使用方法は分かって良いだろう。
「その機械の説明は以上です。この世界にご案内している方にいつもお願いしているのですが、それで何かを撮影してほしいのです。先ほども説明しましたが、この世界は飾られた写真によって美しく姿を変えます。」
「なので、貴方の撮影する写真を寄贈して欲しいのです。しっかりと写って無くても大丈夫ですし、写して欲しいものに指定はありません。もし難しいようでしたらこの世界を観覧するだけでも構いませんので、どうぞ楽しんできてください!」
マコトは話し終えると、一方的に彼の声は聞こえなくなってしまうだろう。
※KP情報
マコトの声は此処で聞こえなくなってしまうため、彼に何か質問などを行うことは出来ない。
しかし、探索者が周囲を見渡すのであれば、たしかに展覧会にあった写真と同じような配置で様々な風景が見えることに気づく。
現在は第二展示のため、このままテーマ「動物」▶「子供」▶「建物」▶「人間」の順で進んで行けば第三展示まで行けると思うだろう。といっても、こちらでは写真では無く実際に風景として現れているため特徴表:「方向音痴」の探索者は迷子になったりするかもしれない。
カメラについては古い見た目をしているが、仕様は現代のデジタルカメラとあまり変わらない。
ズームしたり、ボタン一つでシャッターが切れるような作りになったりと見た目とは釣り合わないような性能である。しかし、デジカメではないので、撮影したものを確認は出来ない。
8:動物たちに連れられて
【描写】
ーー探索者達が突然の事に戸惑っていると、ふと足下から鳴き声が聞こえてきた。可愛らしい声の元を辿って足下を見てみれば、そこには貴方を見上げる猫たちの姿があった。それだけではなく、猫の周囲にはいつの間にか犬や豚、ウマやロバなど、様々な動物が木々の間から顔を覗かせ、その周囲は広い森になっていることに気が付くだろう。
さらに上空から様々な鳥たちがこちらに飛んでくると、そのうちの利口な鳥たちが、カタコトで断片的な言葉ではあるが探索者に話しかけて来ることだろう。
「マコトニ、ツレラレテキタノカ?
ココハ、「ドリームランド」!マイゴニナッタラ、イケナイ!
コノサキニ、コドモタチガイル!ソコマデ、アンナイシヨウ!」
※KP情報
鳥は探索者の知っている言語で会話を行ってくるが、鳥はインコや鸚鵡などと言った現実でも人の言葉を話すことが可能な種であるため、SANCは発生しない。
この場所は5:第二展示で見た◆テーマ「動物」の展示が反映されているエリアである。
そのため、このシーンでは動物しか存在しない。
探索者は聞きたいことがあるかもしれないが、話せるのは鳥だけであり、あまり詳しいことは話してくれない。探索者が何か質問するのであれば「コドモタチノホウガ、キットクワシイ」と伝えるだろう。
動物と会話をあまり行うことはできないが、彼らに案内してもらうことで、子供達の村に案内してもらうことが出来る。
◆遠くで見える何か
・動物達に案内されて先へと進んでいくと、探索者たちは遠くに
大きなシルエットを見つける。以下の描写を行う。
【描写】
ーー探索者達が動物たちに案内されて先へと進んでいくと、ふと、遠くに何かが見えた。
森の向こうに見える青空に写ったそれは、ぼんやしとしたシルエットでしか無く、肉眼では「大きなもの」ということしか分からないだろう。
そんな時、ふと貴方は無意識に手元のカメラに目線を向けた。
マコトの説明を思い出した貴方は、もしかしたらこれで写せるかもしれないと思うだろう。
・ここで<写真術+20>を試みることができる。
<写真術+20>成功情報
遠い空の向こうに見えたシルエットに対してズーム機能を使ってレンズ越しに見てみる。撮影もしっかり行えるが、貴方がカメラ越し確認出来たのは、玉ねぎのような丸まって先端がとがった大きな身体に、短い足がいくつも生えた生物であることが分かるだろう。
カメラ越しでも全貌は分からなかったが、それは空高くへと飛んでいってしまった。
・失敗した場合も、写真を撮影することはできる。
しかし、どのような形をしていたまでかは分からなかっただろう。
※KP情報
このシルエットはグレードオールドワン「ストゥード」のシルエットである。
しかし、早美 真の記憶から反映されたものなので本物ではない。
◆動物たちに案内された先
・探索者が写真術を終えた後、動物たちにそのままついて行けば、子供達の村へにたどり着くことが出来る。
かわいらしい小さな家の並ぶ場所で、遠くには人間から動物まで様々な子供達の姿が見える。
・動物たちは探索者をそこまで案内すると、森の方へと帰って行く。
最後に、鳥が探索者に対して「マコトノヨウスガ、サイキンオカシイ。コドモタチナラ、クワシイコトヲ、シッテイルハズダ。」と教えてくれるだろう。
9:子供達の村
【描写】
ーー動物達が去った後、気が付くと、貴方の周りには既に沢山の子供達が集まっていた。
その手には人形を抱えていたり、はたまた子犬など別の子供を抱えている子がいたりと様々だが、共通するのは人間であろうと動物であろうと此処には貴方を除いて「大人は一人も居ない」と言うことだろうか。
子供達は貴方を見上げると、「こんにちは!まことさんに案内されてこの夢の世界に来たの?」
と嬉しそうに無垢な笑顔を浮かべながら話しかけてくるだろう。
※KP情報
このシーンでは子供達に対して質問などを行うことが出来る。
先ほど動物たちが言っていたように、子供達は「早見 真」と関わりがあるため、探索者が聞けば知っていることは話してくれる。ただし、此処のシーンは強制では無く、出口を探す事に急ぐ探索者や、子供と関わるのが苦手な探索者も居るだろう。
質問などが無い場合は、すぐに◇子供達の不安の描写を行って良い。
◆子供達に対する質問例
Q:ドリームランドとは?(ここはどこ?)
A:「まことさんから聞かなかった?人や動物の夢から出来てる世界なんだって!でもね、私たちは写真撮ってもらったから、ずっとここに居られるんだよ!」
Q:写真を撮ってもらったとは?
A:「えっとね。まことさんの持っている黒くて大きなカメラで写真をとってもらうと、その写真にたましいが入っちゃうんだって!でもね、そうするとこの世界にずっといられるし、まことさんも「そうしてほしいってお願いした人しか写さない」って言ってたよ!だから私たちはおねがいして写真とってもらったの!」
※KP情報
「マコトの持っていたカメラ」と聞いて、今探索者達が持っているカメラを思い浮かべるかもしれないが、探索者が今持っているのは普通のカメラであり、子供達が言っているのは「早美 真」がカメラとして持っていた「アイ」のことである。子供達に聞いても「そのカメラじゃないよー」と答えてくれるだろう。
Q:まことさんはどんな人?
A:「やさしい人だよ!この世界の唯一の住人さんで、この綺麗な夢の世界に色んな人を招待してるんだって!カメラ似詳しくて、写真家?っていうらしいよ!」
Q:まことさんはどこにいるの?
A:「わからない!私達もずっとあってないのー」
◇子供達の不安
・ある程度子供と話終えた後に、描写を行う。
もし子供に質問が無い場合はすぐにこの描写を行っても良い。
【描写】
ーー子供達は無邪気な笑顔で楽しそうにしているが、よく見てみると一部の子供達が不安そうな顔をしていることに気が付く。
探索者がそちらに気が付き目線を向けるならば、そこに居た子供達も探索者の視線に気が付いたのか、互いに不安そうな子供達同士は顔を見合わせ、お人形や小動物の子供を抱えたまま、探索者の方に寄ってくると、こそこそと小さな声で話し始めた。
「お姉さん(お兄さん)、まことさんにつれられてここにきたんでしょ?さいきんね。まことさんの様子がへんなの。」
「前はよくここに遊びに来てくれたのに、最近はこなくなっちゃったし、いままではこの場所に生きているひとや死んでいるひとの魂を連れて来てこの世界を見終わったらちゃんと元の世界に返してたみたいなんだけど、なんだか最近死んじゃった人の魂しかここに来ないし、そのひとたちもこの世界から出られていないみたいで...」
「もしかしたら写真にみんな閉じ込められちゃってるかもしれないって話をしてたんだけど、私たちはここから出られないからわからなくて...だから、お姉さん(お兄さん)も気をつけてほしいの。」
「この先の建物がいっぱいあるところの先に、大人がいっぱいいるところがあるんだって、その人達なら大人だからなにか知っているかも」
そう子供達は忠告してくるだろう。
子供達の不安そうなその表情は、嘘を付いているわけではないようだ。
ふと、周りの子供達も「マコト」についてどこか不安や考えも持っているのか、辺りでその話ばかりを始める。
「もしかしてまことさんのことかなぁ?」
「まことさん、さいきんこないもんね。」
「ちゃんとごはんたべてるかなぁ、すごくほそくてはだもまっしろなのに」
「もしかしたら髪の毛までまっしろになったりして!」
「まことさんに失礼だぞ~!」
・ここで、探索者は<アイデア+20>を行う。
<アイデア+20>成功情報
貴方は子供達の話している「まこと」という人物が、貴方が先ほどまで話していた「マコト」という人物とは特徴が一致しないことに気が付く。
男性ではあるが、子供達は「黒い髪で白い服を着ていた」「黒くて大きなカメラをもっていた」「少し小さな背丈だった」と、貴方が話していた白黒の長い髪に不思議な服装をしていた「マコト」とは体格や服装が異なっているようだ。
・子供達の不安そうな声を聞いた後、探索者が他に子供達に聞きたいことなどが無ければ、子供達は探索者に手を振って別れる。村からは出ないものの、探索者が次の場所に向かう所までは見送ってくれるだろう。
※KP情報
子供達は「早美 真」しか知らないため、「マコト」の特徴を挙げても「誰?知らない人ー」と答える。
10:様々な建物の隙間から
【描写】
ーー子供達との会話を終えた後、貴方はさらに先へと進んでいくだろう。
子供達が住んでいたあの小さな家々とはまた違う作りをした建造物が見えてくると、さらにその風景は姿を変えていく。
日本独特の民家を超え、イタリアなどで見るオシャレな作りの店などを横切れば、遠くに摩天楼が見えることに気が付くだろう。気が付くとビルの並ぶ大きな町の中心に貴方は立っており、その風景には一切生物は存在していないように思えるだろう。
しかし、ふともう一度その景色を見渡すと、すぐ近くの路地裏に立っている「何か」を見つける。
最初が貴方以外の人間だと考えたかもしれないが、それは人の形だとなんとなく認識出来る程度で、まるでぶれた写真のようにその輪郭がぼやけていた。
その人のような「何か」は、貴方の方に気が付くと、まるで貴方はを案内するようにその先へとゆっくり進んでいくだろう。
<SANC0/1>
◆路地裏に立つ「何か」
・路地裏に立っている輪郭のぼやけた何かについて行けば、その先に扉が少し開いた小さな家を見つける。それと同時に先ほどの「何か」は見えなくなってしまう。外観としては普通の家のように見えるが日本の建造物では無さそうだと感じるだろう。
・中に入ると、大きな部屋が一つあるだけで、その部屋は写真を現像する為の暗室であることが分かるだろう。また、暗室の奥には数台のカメラが置かれた棚や工具などが置かれている。
どのカメラも大事にされてきたのかしっかりと手入れがされているが、棚に一冊のノートがあるのに気が付くだろう。
ノートには一枚の写真が挟まっており、写真には黒くて大きなカメラが写されている。
どうやらこのカメラについての説明があるのか、このノートの書き手の日記と共にカメラについて書かれている。以下は抜粋したものだ。
【だれかのノート(説明書)】
現実世界にいた時みたいに、「ドリームランド」と言われたこの世界の写真をとることができないかと考えたけど、文化の違うこの世界でそもそも機械を一から作り出すことは「夢見」という想像から物を作り出す技術以外では困難だった。
夢でできている世界だからか、この世界でカメラを作り出せたとしても、映るのは想像の物とは違っていたり、現像できなかったりした。そこで、僕はこの町の外から持ち込んだ「魔術」をいうものを利用した媒体を作り出した。正確には魔術道具だが、僕の思う「カメラ」に最も近い機械のようなものを作り出すことができた。
様々な失敗を超えてようやく作り出せたこのカメラが、なんだがこの時間の無く変わりのない日々の中で久々に「うれしい」と思えた。まるで家族にすら思えるほど愛着の沸いてしまったこのカメラに、子供みたいな考えだが「アイ」と名前をつけることにした。番号で呼ぶのもなんだかかわいそうだから。僕の大切な家族のようなものだから。
「アイ」は込めた魔術作用により、他の機械よりも瞬時に風景を映し出すことができる。
もちろん、デジタルカメラではないので、フィルムから現像しなきゃだけど、「アイ」には映し出せるフィルムの上限は存在しない。撮影を行えば行うほど情景をその媒体に封じ込める。
しかし、魔術を用いたせいで危険な機能も使用できるようになってしまった。
それは「魂の束縛」を用いた機能であり、その状態(モード)で映し出した人間や動物の魂を、写真に封じ込めてしまう。その写真を破壊または、燃やしてしまえば、封じ込められた魂は外に出ることができるが、できればこの機能は使いたくない。忘れないようにメモを残しておく。
あと、この写真は他とは違い、束縛された魂がそれを拒んだ状態で撮影されてしまった場合、白黒の写真として撮影されるようで、逆に魂が封じ込められることを受け入れる場合は、通常通りカラー写真となるみたいだ。
◆「何か」は助けを求める
・探索者がノートを見終えたと同時に、そこには先ほど見えた「何か」が立っている。ノートを見終わった後描写を行う。
【描写】
ーー貴方がそのノートを全て見終わったと同時に、ふと後ろからの視線を感じた。
貴方が振り返ると、そこには先ほどの「何か」が立っていた。
この至近距離でもぼやけるその姿は、人だとぼんやり認識出来る程度だろう。
おそらく「彼」は、ぼやけたその輪郭にしてははっきりとした声で貴方に話しかけた。
「....ここまで来てくれたんだね。ありがとう。
色んな人に助けを求めたんだけど。皆この姿を見て逃げてしまったんだ。」
「君...は、そのノートを見たのかい?僕にはぼやけてよく見えなかったんだ。記憶が曖昧で、僕は自分の名前を思い出すことが出来なくて...」
「でも、この世界にいてはダメだ。この世界には沢山の魂が閉じ込められている。君を助けてあげたいんだけど、何も思い出せなくて今の僕では力になれない...」
「だから、君に頼みたいことがあるんだ。この世界のどこかに、僕の写真があるはずなんだ。多分、それを見つけられたら僕はちゃんと思い出せると思う....から、それを探してほしいんだ。僕はここから遠い場所にいけなくて....」
※KP情報
この輪郭もぼやけた「何か」は本当の真である「早美 真」の魂だが、アイが不安定な状態で写真に写したため魂自体もうまくドリームランドに反映されず記憶を一部失っている。そのため、彼に何か詳しい事を聞こうとしても彼はほとんど答えることができない。彼の頼みを了承するのであれば、彼は探索者に頭を下げて礼を言うだろう。この部屋はこれ以上調べられる場所はないが、部屋を出ようとする際に、以下の描写を行う。
【描写】
ーー貴方がこの部屋から出ようとした際に、ふと「何か」は呼び止めた。
「あ、そうだ。僕の写真なんだけど、おぼろげに覚えている事があって、少し怖かったんだけど、包丁を持っている女の人がこの先に居るはずなんだ。なんで包丁を持っているかは分からないけど、彼女なら何か知っているかもしれない。」
と、教えてくれるだろう。
「何か」は探索者を見送ると、視界から消えてしまうことだろう。
・探索者が先へ進んでいく場合
次の描写を行う。
11:愚かな人間より
【描写】
ーー建物の隙間を縫ってたどり着いた場所は、様々な「人間」で満たされた街だった。
笑顔で両親の手を握りはしゃぐ子供とその家族、学生達はどこかへと遊びに行くのか友達同士のその楽しそうな表情を浮かべ、仕事に行くであろうサラリーマンの疲れ切った表情や、周囲で世間話をする老婆達の会話さえ、この空間では色を確かに持っていた。
しかし、その景色の中央に一人だけ色を持たぬ女性がいることに気が付く。
女性はその包丁を握りしめたまま、辺りを見渡し何かを探しているようだった。
◆白黒の女性
・探索者が話しかけるのであれば、包丁を所持しているものの、特に殺意などを向けたり突然襲いかかってくることはない。しかし、その雰囲気は不気味で写真で見たものと同じような恐ろしさがある。
・女性は「何よ....さっきからずっと見ているけど、何か用...?」と、低くゆっくりとした口調で話し始めるだろう。彼女に何か聞こうとすると、彼女ははじめに「それより、「真(まこと)」.....真はどこ.....あの男....私をこんな所に閉じ込めて...」と定期的に呟いているのが分かるだろう。彼女にその「真」について聞くと、「真....あの男よ.....私をこんな所に閉じ込めたのよ....あの男だけは許さないわ...」と恐ろしい声で答える。
・「写真を探している」「(先ほどの「何か」の特徴をあげて)その写真を探している」などのワードを出すか、ある程度女性と話した後に、ふと女性は思い立ったようにとある場所を指さす。
指し示す方向を見やると、そこには一つの扉があり、「関係者以外立ち入り禁止」と書かれたプレートが取り付けられている。
探索者は、この扉が先ほどの展覧会の時に見た扉であることに気が付く。
女性はその扉を見ながら、「写真は分からないけど、よくあの部屋に白黒の長い髪をした写真をつけた変な男が入っている所を見たわ....。何かを隠しているのか分からないけど、すごく周りを気にしているみたいだった...」と教えてくれるだろう。
※KP情報
女性が指さした扉は6:第三展示...?で発見した扉と同じ位置にあり、南京錠が掛けられてないことを除けば構造も同じであると気づけるだろう。
また、女性が言っている「白黒の長い髪をした写真をつけた変な男」は、先ほど探索者を案内していた「マコト」と特徴が一致することに気づけていいだろう。
探索者はここで彼が「マコト」という名前ではないということに気づけるかもしれない。
(彼の本当の名前は「アイ」だからだ)
女性はアイについては知らないため、その男について聞いても知らないと答え、また、その男が「マコト」という名前の男で無いことを伝えてくれるだろう。彼女が知っているのは「早見 真(はやみ まこと)」のことだからだ。
・それ以外の事を女性に聞いても、「知らないわ」と答えるくらいだ。
女性から離れるか、ある程度話を終えた所で、次の◇忽然と消えた人間の描写を行う。
◇忽然と消えた人間
【描写】
ーーふと、貴方に向かって女性は大声を上げた。
先ほどまでの静かで不気味な雰囲気とは一変し、彼女はまるで狂ったように言葉を続けた。
「ねぇ!待ってよ!貴方なら知ってるんでしょ!真はどこなのよ!今度こそ見つけないといけないの!あの男が私たちを閉じ込めたのよ!でもどうしてでれないの!?あの男は、真は、確かに私があの時に殺.....................」
まるで言葉を遮るようにして、突然、貴方の目の前に立っていた女性はおろか、周囲の人間達の姿が無くなっていた。まるでこの世界に貴方だけが底されたように、この風景の中にいるのは、貴方とすぐ近くにある扉だけだった。
扉を無視して、マコトの言っていた順路に沿って先に進むことも出来るが、先に進んだ場合、もうここには戻れないかもしれない。貴方はふとそのように感じてしまったのだ。
<SANC1/1d2>
※KP情報
・このまま順路に沿って歩いて行くのであればEND3となる。
扉に入るのであれば、次の描写を行う。
扉に鍵などは掛かっていないため、そのまま入ることができる。
12:遺影
【描写】
ーー扉を開いた瞬間、貴方の鼻についたその匂いは、焼け焦げた香りに似ていた。
しかしその香りは何かが焦げたものではなく、誰かの為にあげられた線香の香りであることに気づいたのはあまりにも色彩の無いその風景を黙視したからだった。
...色の無い世界の中心に、彼の写真があった。
黒と白で飾られた額と式場の中で、色を失った花々が彼の遺体が入っているであろう場所の周りに添えられている。
しかしその中に彼の遺体自体は見当たらず、亡骸すら残っていない彼の死を証明するのは、目の前にある写真、否、その遺影だけだった。
誰も居ないお葬式、
貴方だけがいるこの空間の中、瞬きをした瞬間にいつのまにかその「何か」が現れていた。
先ほどと違いはっきりとした輪郭を持っているが、その色彩は無く、また、その遺影に写る人物と同一人物であると気が付くだろう。彼は悲しそうに微笑むと、口を開いた。
※KP情報
彼の台詞は以下の通りだが、RPを挟んでPCと会話しながら以下のことを伝えても良い。
「ありがとう。僕の写真を見つけてくれて。おかげで思い出すことができた。僕は早美 真(はやみ まこと)。君と同じ死者の魂だ。」
「多分この名前を聞いた時、もう一人の「マコト」を君は聞いたことがあると思う。でも、彼は「マコト」では無いんだ。君がこのまま進んで行けば、君はこの世界に閉じ込められてしまう。彼は死者の魂を此処に閉じ込め続けているんだ。彼らの魂は白黒の写真になって飾られている。あれを破壊しないといけないんだけど、僕はこの夢の世界に閉じ込められているんだ。」
「最後に、君にもう一つ頼みがあるんだ。彼に、君に「マコト」だと名乗った彼に、「早見 真」は死んだ」と、伝えて欲しい。彼には辛いことだというのは分かっている。でも、彼がそれを認めないと、君はこの世界から出られないんだ。」
「君の為に....そして「アイ」のために、どうか.......」
彼は底まで告げた時、扉の開く音が聞こえたカと思うと、早美 真の姿は消え、周囲は突然の暗闇に閉ざされた。<SANC0/1>
・SANC後、次の描写を行う。
13:真実
【描写】
ーー暗闇に閉ざされた瞬間、後方から靴音が聞こえてくる。
後ろを振り向けば、そこには貴方を案内した「マコト」の姿があった。
マコトは貴方を最初に案内した時と変わらない笑みを浮かべながら、まるで逃げ場を隠すように出入口の前に立っていた。
「案内し忘れていましたね。申し訳ありません。こちらは関係者以外立ち入り禁止になります。館内を案内しますから、ここから一度出ていただけますか?」
彼は変わらない口調で貴方に告げるだろう。しかし、瞼を閉じたままこちらを見やる彼は確実にこちらを見透かしているような不気味さを感じたのだ。
...貴方は先ほどの「早美 真」の言っていたことを思い出す。
貴方は、ここで本当のことを言わなければ、自分はここから出られなくなるかもしれない。
※KP情報
ここからは、NPCに対して自由にRPを行う。
マコトは基本的に探索者に対して今までと同じように丁寧な口調で展覧会に戻るように言うだろう。また、「マコト」という名前やこの世界に他の魂を閉じ込めていることを告げても、彼はごまかしたりとぼけたように何も知らないフリをするのだ。
彼に対して、「君は「マコト」ではない」、「早美 真」、「君は「アイ」では?」などのワードを発した場合、彼は「何故...それを...」と、明らかに表情や態度が一転し、動揺し始める。
「真は死んだ」、またはそれに近しいワード探索者が発した場合、◇「早美 真は死んだ」ことを伝えた場合 の描写を行う。
もし、探索者がここで何も思いつかなかった場合は、<アイデア>を行わせ12:遺影で早美真が言っていたことを再度描写してもいいかもしれない。
彼の最期の頼みは、「早美真は死んだ」ということ伝えてほしいというものだ。
探索者がここで何も言わずアイの言いう通りにした場合は、彼はそのまま展覧会に探索者を案内する。その場合はEND3にて終了となる。
◇「早美 真は死んだ」ことを伝えた場合
【描写】
ーー貴方がそれを告げた瞬間。
彼の動きが突然停止した。しばらくの静寂の中、貴方の呼吸音と、かすかに聞こえる機械だけが聞こえていた。
彼は再度探索者の方に顔を向けると、今まで閉じられていた彼の瞳が開かれる。
しかし、そこにあったのは眼球ではなく、不気味な色合いを持つレンズのようだった。貴方は彼と目が合ったその一瞬で、今までに無いほどの恐怖を覚えた。
「あれの視界に入ってはいけない。さもなければ、自分もここから消される。」
まるでこの世界で同じ末路をたどった犠牲者達の念を感じ取ったかのように、貴方のことを見やる現状の彼が「危険」だということにすぐ気が付くだろう。
彼はそんな貴方の目の前で錯乱したように叫んだ。
「死んでいません...!僕の神は...!創造神は...!僕の「マコト」は...!死んでなんかいません!たしかにこんなに綺麗に映せているでしょう!?夢の世界なら彼も生きている!こうして現実にも「マコト」としてここにいる!僕はマコトです!「アイ」なんて名前は知りません...!あぁ、貴方もこの素晴らしさが分からないんです!貴方もこの世界の一部になるんです!!!」
わけのわからない言葉を並べた彼は、人間の瞳ではないそこから大量の涙をこぼし、しかしその表情で狂ったように笑いながらその体が膨張し始める。
そこには今まで映しとった人間の恐怖を浮かべる顔や、生きとし生ける生物の一部、子供たちの笑顔、様々な建造物や、ありとあらゆる人間の部位など、今やその美しさはどこにもない情景の集合体が、彼の形を失いそこに顕現する。
それでも、確かに残ったのはその中央に存在する彼の大きな瞳であり、貴方を確かに捉えようと、そのレンズを貴方に合わせようとしてくるのだ。
<SANC1/1d4>
14:映し出される恐怖
・◇「早美 真は死んだ」ことを伝えた場合 の描写終了後、探索者は<聞き耳>を行う。
<聞き耳>成功情報
どこからか、何かが外れたような金属音が聞こえたような気がした。
鎖の音なども聞こえる限り、何かの施錠が外れたのだろうか。
・直後、探索者の元に「早美 真」の必死な声が聞こえてくる
「現実での部屋の鍵が外れたみたいだ...!逃げて!アイに映されてはいけない...!白黒の写真たちを見つけ出してそれを破壊して...!そうすれば彼は止まるはずだ..」
※KP情報
その声の後、「早美 真」の声は聞こえなくなってしまう。これより逃走ランドとなるためKPは下記の【逃走ルール】をPLに開示すること。
◆逃走ラウンド
【逃走ルール】
・探索者は、指定されたロールに成功し続けることで遠くに逃げることができる。彼に撮影されてしまえば、探索者もこの世界に閉じ込められてしまうだろう。
・「マコト」の視界に入らないように逃げる場合は、まずは夢の世界に映し出された様々な情景を利用する必要がある。
探索者は1d6を行い、目の前に現れた情景を利用する。
1d6で情景を決定後、KPが提示した技能やロールに成功すれば判定は成功扱いとなる。
何の判定を行うかは情景によって変わる。判定に成功後、また1d6を行う。
これを逃走ロール成功の条件を満たすまで繰り返す。
判定に成功した場合はマコトの攻撃は行われない。
・判定に失敗した場合、「マコト」は攻撃(撮影)ロールを行う。
「マコト」の視界に入った時点で彼は<目星>を行い、成功した時点で彼の<写真術>を行う。
ロールにすべて彼が成功してしまった場合、強制的にエンディングへと移行するため注意。
・判定に3回成功した場合すれば逃走ロール終了となる。
ただし、1d6のロールは一度決定した数値は使用できない。つまり、チャンスは6回までとなる。
また、人数が複数人の場合は、全員のうち半分のPCが判定に成功すれば成功扱いとなる。
(二人であれば一人でも成功すればOK、四人であれば、二人成功でOK。
三人の場合は一人成功でOKとする。ソロの場合信じるのはお前だけ!頑張れ!)
※KP情報
逃走ロール中、「マコト」に対してRPを行っても良い。
彼は基本的に早美 真が死んだことを否定し続けるが、真実を再度突きつけたり、KPが
良いRPだと思った場合は、ロールにプラス補正を与えても良いだろう。
1d6で情景を決定する際、PCの死期の情景などを描写する場合はPLに記入してもらったテンプレートを参考にするといいだろう。
以下は1d6で決定した出目によって反映される情景の描写例と探索者が行う判定である。
なお、複数振れる技能がある場面では片方の技能に失敗した後、もう片方の技能にも挑戦して良い。
(例:<目星>と<聞き耳>ロールが振れる場合、<目星>に失敗しても<聞き耳>に挑戦することができる。)
1d6の計6回のロールの中で成功3回未満だった場合、またはマコトが<目星>からの<写真術>に成功してしまった場合は、END2となる。
【1d6で決定する情景の描写例と判定】
【1】探索者の思い出
判定:<POW×5><アイデア>
描写:貴方の目の前に、自分の大切な思い出が実体化し守ってくれる。
PLがセッション開始前のテンプレートを記入していた場合、それにそって描写すると良いだろう。
【2】誰かの思い出
判定:<目星><心理学>
描写:探索者達が逃げた先には、動物、子供、建物、人間、様々な風景や生物の輪郭が入り交じり、もはや原型を保てていない不思議な世界となっていた。
この夢を世界を保っていた情景のほとんどは、他人の者であり、元々その記憶を持っていた人間達が、遠くで色を失った写真として消えていく。
探索者は、もし自分も彼に写されてしまえば、彼らと同じ末路を辿ると感じるだろう。
【3】「彼」の思い出
判定:<写真術+30>
描写:探索者の前方に、「早美 真」らしき姿が映る。
そこには黒く大きな一台のカメラを持って、「アイ」と名前をつけて大事そうに手入れをしている姿だった。探索者がその情景を見た瞬間、後方の「マコト」の姿がぴたりとと止まる。
【4】真が元々暮らしていたドリームランドの情景
判定:<クトゥルフ神話><オカルト><POW×5>
描写:遠く、砂漠のような荒れた土地が見えた。
まるで夢を見る人間がいなくなってしまったかのような寂しい土地に、ぽつんと大きな神殿だけが取り残されていた。
そこには「早美 真」らしき男性が神殿の入り口にある大きな台座を見ており、台座の上にいるぼやけた何かが動き出した瞬間、情景はかき消えてしまう。
しかし、マコトもそちらに気を取られたようで、隙が出来るだろう。
【5】誰かの姿
判定:自動成功
描写:ふと、探索者の目の前に一人の女性が立っている。
深く、しかし光に透けて青く見える美しい髪をリボンで結んだ女性は、探索者が此処に来る前に見た女性(0:導入)であることに気が付くだろう。
女性は「トラブルが発生したようですね。私が案内いたしましょう。」と言って探索者の手を取る。
【6】探索者の最期の思い出
判定:<SANC1/1d6><SAN0の場合はPOW×5>
(発狂、またはSAN0探索者がPOW×5に失敗した場合、判定は失敗扱いとなる。)
描写:KPは探索者の死因を元に最期の記憶の描写をする。
死亡前の探索者の姿が、現在の探索者を庇う、などといった描写でも良いだろう。
なお、別シナリオのネタバレになってしまう場合などは、細かく描写しなくても良い。
◆逃走ロール終了後
・探索者が判定に3回成功した場合、6:第三展示...?で見た写真が見える。その先には探索者が最初にマコトに案内された美術館らしき場所が写っており、その写真に飛び込めば、展覧会の第三展示に戻ることが出来るだろう。奥に南京錠の掛けられている扉があるが、南京錠が全て外れていることに気が付く。
部屋に入るのであれば以下の描写を行う。
【描写】
ーー探索者がその扉を開くと、あの夢の世界にあった扉の先とは違い、そこは葬式の会場でも色を持つ夢の世界とも違う場所だった。家具のほとんど置かれていない小さな部屋が一つだけで、他に部屋や扉なども見受けられない。部屋の中央には唯一の家具とも言える小さなテーブルが置かれ、テーブルの上のキャンドルスタンドで揺らめくロウソクの炎は、この部屋の唯一の光源として、奥の壁を照らし出していた。
その壁には白黒の写真が額にも入れられずに大量に貼られていた。
その写真のどれもが、苦痛の表情や悲しい顔をしており、望んで写されたものは誰一人としていないと感じるだろう。
彼らこそが、この世界に閉じ込められてしまった魂達だと確信したとき、後ろから声が聞こえる。
「やめて!それだけは....!その写真だけは....!」
マコトはここまで追って来ていることに気が付く。
貴方はこの部屋で完全に逃げ場を失うだろう。
さて、どうされますか?
※KP情報
中央にあるロウソクの火で写真を燃やせば、END1となる。
もしそのアイデアが思いつかなかった場合は、KPはヒントとしてこの部屋の描写を再度行うと良いだろう。
エンディング分岐
※ここからエンディング分岐となる。分岐の条件は以下の通り。
▶END1
アイから逃げ切り、灰色の写真を全て燃やした場合
▶END2
逃走ロールに全員失敗してしまった場合
▶END3
遺影を見つけずにそのまま進んだ場合
END1
【描写】
ーー白黒の写真に火をつけた瞬間、色彩の無かったその写真達は、最後に真っ赤な色を帯びて焼け焦げていった。
その一瞬の赤色が放った光彩は、写真のほぼ全てを黒い塵へと変えてしまうが、その写真からまるで解放されたように、貴方の目の前をまばゆい光が、通っていくとそれは在るべき場所へと還っていった。
貴方に向かって「ありがとう。」と聞こえたその声たちは、きっと先ほどの写真に閉じ込められていた魂たちだろうと、そう感じ取れたのだった。
一枚も残らず焼け焦げてしまった写真を見て、マコトは貴方の後ろでようやく動きを止めた。いつの間にか彼の姿はあの不思議な格好をした男性に戻っていたが、人間のものではない瞳から涙をこぼして、彼は震える声で言葉を発した。
「あぁ......なんてことを.....」
「でも....分かってはいたんだ....真(まこと)はもう帰ってこないって.....それでも僕は真と一緒にいたかったんだ。真が臨んだ夢の世界をもっと美しい世界にしたかった!そのためには他の魂をここに閉じ込めるしかなかった.....」
「.....でも、僕は、真が望んでもいないのにこんなことをしてしまったんだ...もうこんな事はしない。君も元の在るべき場所に返すよ。ただ、最後に一つだけ君にお願いしたいことがあるんだ。」
彼はゆっくりと瞳を閉じ、そして泣くのをやめた。
いつのまにかマコトの手元に黒くて大きなカメラが収められており、
彼はそれを貴方に渡すと、このように続けるだろう。
「これは「アイ」だ。僕の本当の姿。僕がもうこの姿で此処にいる必要は無くなったから、最後は真と一緒にいたいんだ。そのカメラで、僕を撮影してくれないかな。」
彼はそう言って涙を拭うと、瞳を閉じたままだったがしっかりと貴方を見やった。
その言葉に、裏や悪意は一切感じられず、彼の最後の願いなんだろうと貴方は思うだろう。
・探索者は<写真術+50>を行う。
※KP情報
この写真術に失敗しても撮影は行える。
成功した場合は、シナリオ終了後に<写真術>に1d10の成長を得ることができる。
【描写】
ーーシャッターが切られた一瞬で、まばゆい光と共にその姿が映し出される。
貴方が再度カメラから前方に目線を向けると、マコト、いや、「アイ」の姿は無くなっていた。
貴方は誰も居なくなったこの部屋で、全てが終わったことを認識すると、ふと貴方の意識も遠のいて行く。
またあのときと同じように暗闇の中を彷徨うのかと思考した瞬間、突然貴方の眼前は真っ白になった。
※KP情報
ここからはエンディング1のみの特殊な処理となる。
PCによってここから先の回答は異なるため、KPは「ここから先の描写はエンディングに関係せず、探索者の思考を優先してRPして良い」と先に伝えると良いだろう。
◇最高の一枚を
【描写】
ーー貴方が再度瞼をもたげたその場所は、真っ白な空間だった。
貴方以外に「早美 真」と、三脚で固定された先ほど見たあの黒くて大きなカメラがあり、真ははじめに「良かった。意識が戻ったみたいだね。」と、探索者の無事を確認すると、次のように話をもちかけた。
「ありがとう。君のおかげで僕は記憶を取り戻せた。そして、アイも僕の死を認めてくれて、最期にこうやって会うことが出来た。本当に君のおかげだ。感謝してもしきれないよ。」
そう真が話し始めると、続いて彼の横に設置されたカメラから、聞き覚えのある声が聞こえてくるだろう
「先ほどは本当に申し訳ありませんでした。これ以降、あの空間に残された写真や閉じ込められた写真も全て元の世界に返そうと思っています。貴方にどうしてもお礼がしたいと真に提案したのですが、僕には死者を蘇らせたり、願いを叶えたりする力はありません。」
その声は「マコト」と名乗っていた彼の声、そう、「アイ」の声だった。
その声はカメラから聞こえてくるものの、もう貴方の魂を写そうとしている訳では無いようだった。
早美 真は話を続けた。
「だけど、ぼくらでさっき話し合って、一つだけ出来ることがあると知ったんだ。君がよければ....なんだけど...」
「君の写真を撮影させてほしいんだ。あっ、もちろん、ちゃんと彼は普通のカメラの状態だから、魂を取ったりはしないよ。君がもし届けたい相手が居るなら、君の写真を誰かに渡すことが僕らなら出来る。」
「もし、渡したい人がいなかったら、とある人に君の写真を見せたいんだ。ダメかな...?」
真はそのように話すと、最後にアイがこのように告げた。
「まぁ、つまり、ここで記念撮影はいかがですか?...ってことですね!この世界ももうすぐ無くなります。こんな機会二度とないでしょうから。...貴方にとっても、僕らにとっても。」
※KP情報
この提案を了承するかは、探索者によって異なるだろう。
写真を撮影し、誰かに渡すのであれば、KPは「PCが望む人間に自分の写真を渡すことが出来る」
と言うのを伝える。これは別のPLのPCどでも構わない。
もし、PCが渡したい人間がいないでも、写真を撮影するのであれば彼らは貴方の写真を大切にするだろう。もし撮影しない場合でも、彼らは撮影を強要しない。
以下は誰かに対して写真を送った場合の描写となる。もし写真を送らない場合などは一部描写を省いて描写する。
◆撮影終了後
【描写】
ーー撮影が終わった後、真は貴方の写った写真を見せてくる事だろう。
どうやって現像したのかは分からないが、この不思議な空間の中で写された貴方の最後の写真は、きっとこれから誰かに届くのだろう。
「とても短い時間だったけど、君とこうやって話せたこと、写真を撮ったこと、君に助けられたこと、僕らにとっては大切な時間になった。本当にありがとう。」
「では、またいつか!」
最後に貴方は真とアイに別れを告げ、真っ白になっていく景色の中で、手を振る彼を貴方を見送る彼の姿だけがぼんやりとした視界に残り続けた。
それすら見えなくなった頃に、また貴方は深い深い眠りについたのだ。
….どこかの世界のどこかの時間軸で、ある朝、貴方が望んだ人間の元に便箋が一つ届くだろう。
彼(彼女)がその便箋を開いた時、その便箋にはたった一枚だけ、写真が入っていた。
それは、貴方の最後の、誰かの「最高の一枚」だった。
ストロボのようにたった一瞬の出来事だった。
それは貴方と彼ら、そして誰かの大切な時間となったかもしれない。
END1にてシナリオを終了する。
【END1 詳細】
探索者がもし誰かに写真を送ると決めた場合は、探索者の写真が望む人間の元へ送られる。
AFなどではないが、渡した人物の持ち物に追加して良い。
別PLのPCに送る場合は、シナリオ名を伏せて「写真が送られた」ということを伝えて良い。
(シナリオ名を上げてそのことを伝えても良い。このシナリオ自体でそれは禁止してないが、
ネタバレだと思うPLは多いと思うため、なるべくシナリオ名は伏せ、また、SNSなどでおおやけにしないこと。)
探索者は通常通りロスト探索者として扱う。
ただし、最後の<写真術+50>に成功した場合は、写真術に+1d10の成長を行う事が出来る。
永久ロストではないので、同じようにロスト探索者が使用できるシナリオや救済シナリオに参加が可能だ。
END2
【描写】
ーー貴方は彼から逃れようと走り続けた。しかし、それは叶わず、ついに貴方の眼前には様々な風景をかき混ぜた狂気的な姿が見えた。その中心にあるレンズは確かに貴方の事を捉える。
貴方はついに逃げることも身を隠す場所も失ってしまい、まばゆい光が放たれた直後、自分の最期を悟るだろう。
….しかし、何も起きなかった。
不思議に思いふと瞼を開くと、一瞬、貴方の目の前に男性の後ろ姿が写った。
その姿が「早美 真」であることを認識した瞬間、目の前にいた「マコト」....いや、「アイ」は、それ以上動かなかった。
「あ.....真............?」
「アイ。もうやめて。僕はこんな景色を君に写して欲しくないんだ」
彼はその言葉を最期にこの世界からかき消えて行く。
夢の世界で姿を失った真を見て、アイの姿に異変が起きた。
貴方の目の前にあるレンズはひび割れ、まるで写真を破くように塊になっていた様々な風景が剥がれ落ちていく彼の姿があった。
やがて、そこに残ったのは一つの黒くて大きなカメラだった。ボロボロになったそのカメラには
何故か水が付いている。
まるで涙のようにひび割れたレンズを滑り落ちると貴方の耳元に、微かな声が聞こえてきた。
「ごめんなさい....」
確かにその声は目の前の壊れたカメラから聞こえて来た。
「アイ」と名前をつけられたカメラは、それ以上話さなくなってしまい、直後、周囲の景色は崩れていく。
今まで写されてきた情景が無くなっていき、写真にあったはずの色彩も無くなっていけば、やがて白黒写真のようにかすれた眼前の景色の中で、貴方はゆっくりと意識を手放した。
「貴方のおかげで彼は自分のしてきたことを自覚したようです。きっとこれ以上あの展覧会に写真が寄贈されることはないでしょう。」
「申し訳ありませんがあの世界は閉館のお時間となりました。ご観覧ありがとうございました。」
薄れていく景色の中で、最初にであった女性がそう言った。
貴方はその意味が何を示すのか分からぬまま、死者の世界を彷徨い続けるのだろう。
...いつか光る「一瞬」に光を求めるように、魂は暗闇の中でまた眠り続けた。
END2にてシナリオを終了する。
【END2 詳細】
本来であればマコトによって魂を映し出され魂を写真に閉じ込められてしまうが、
今回の探索者だけは見逃してもらえる。
アイは自分のやってきてしまったことを自覚し、以降は死者を魂を集めるのを止めるが、
真の魂は探索者を庇いドリームランドから消えてしまう。
以降探索者は通常通りロスト探索者として扱って良い。
永久ロストではないので、同じようにロスト探索者が使用できるシナリオや救済シナリオに参加が可能だ。
END3
【描写】
ーー貴方はそのまま順路に沿って進んで行く。
しばらく進んで行くと、建造物も生物も見当たらない真っ白な空間にたどり着いた。
ついに色彩の無くなった空間の中心にはマコトが立っており、彼はにこりと微笑むと、探索者に向き直る。
「お疲れ様でした。カメラは回収いたしますね。」
彼はそれだけ言うと、貴方の手元にあったカメラは無くなっていた。
貴方を見やる彼はゆっくりとその瞳を開こうとするだろう。
再度見てみれば、この空間に出口のようなものは無く彼のその微笑みも少し不気味に感じられた。
逃げようとしても身体が動かず、彼がついに目を見開こうとした時ふと誰かの手が貴方の視界を覆った。
「アイ。やめて。」
どこからか、
マコトとはまた別の男性の悲願にも似た声が聞こえた。
直後、視界が真っ暗になっていく貴方の
「......失礼いたしました。貴方は特別に在るべき場所へ返しましょう。助かりましたね」
そう言って、ため息をつくマコトの声だった。
貴方の視界が完全に閉ざされた後、貴方はまた最期の記憶を抱えて、何も無い場所を漂い続けるのだった。
...誰も居ない博物館。
そこには寄贈された小さな写真があった。
一人の学芸員は、その写真を見つめながら、
「また、どこかで最高の一瞬を。」
と、独り言のように呟いた。
END3にてシナリオを終了する。
【END3 詳細】
本来であればマコトによって魂を映し出され魂を写真に閉じ込められてしまうが、今回の探索者だけは見逃してもらえる。
しかし、これからも同じようにいくつもの死者の魂があの小さな世界に囚われ続けるかもしれない。
以降探索者は通常通りロスト探索者として扱って良い。
永久ロストではないので、同じようにロスト探索者が使用できるシナリオや救済シナリオに参加が可能だ。
【シナリオクレジット】
一部写真の描写を提供していただきました。
同じく「ムーサ異装展覧界」に参加されていますので、良ければそちらも遊んでいただけたら幸いです!
「少年の写真」「少女の写真」「森の写真」
提供:ジャック様(https://twitter.com/MeiTanteiJack?s=20)
シナリオ:「静なるテロリスタ」
「黒い写真」
提供:つきのわむく様(https://twitter.com/tukimeguri?s=20)
シナリオ:「爛爛」
以下の画像は企画「ムーサ異装展覧界」開催期間内において、セッション目的でのみ利用可能。
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