ムーサ異装展覧界
然らば永劫、見よ美し
然らば永劫、見よ美し
かあこ
展示「オートマタ」
【諸注意】
・本シナリオは探索者の生還/ロストに重きを置いていません。
・特殊な世界観、探索者のRPが好きな方向けのシナリオです。
・ダイスの結果によって探索者の運命が決定づけられる場合があります。
・神話生物、AFなどの独自解釈、オリジナル要素が多く含まれます。
【シナリオの 6版/7版 コンバートについて】
可能。ただし、シナリオの根幹が変わるような改変は不可。
【シナリオに関するお問合せ先】
TwitterのDMにてお問い合わせください
https://twitter.com/nisekaako
【概要】
「然らば永劫、見よ美し」
よみ:しからばえいごう、みようつくし
作 :かあこ
テーマ:オートマタ
プレイ人数 :3体
プレイ時間 :6~9時間(ボイセ/RPにより変動)
推奨技能 :芸術(必須)、戦闘技能、基本探索技能、高POW
シナリオ傾向:特殊世界観/異世界シティ
・年代別オートマタ新規探索者限定
・HO2のみ秘匿情報あり
──世界は、たおやかな愛に満ちている。
オートマタたちの住まう街『シカラバ』
規則的に軋む歯車と高らかな朝告げ鳥の鳴き声が目覚まし時計のこの街では、多種多様のオートマタ達が自らの特性を活かし暮らしている。
貴方達は、このシカラバで生きるオートマタだ。
欠陥や経年劣化、時代や人心の移り変わりによりその役目を終えた貴方達は「父」に拾われここに来た。
さあ、今日も一日がはじまる。
瞼をもたげよ、命たち。
私たちはどこまでも不自由で、どこまでも自由だ。
以下、KP向け情報となります。
◆はじめまして
この度は本シナリオの元を訪れて頂き、誠にありがとうございます。
このシナリオはクトゥルフ神話TRPG 6版対応シナリオとなります。
本シナリオには神話生物や呪文への個人解釈、オリジナル神話生物等の要素が含まれます。
シナリオ背景にて「キーパー・コンパニオン」「クトゥルフカルト・ナウ」「ラヴクラフトの幻夢郷」等のサプリを参考にしていますが、該当サプリを所持していなくても遊べます。
また、天文事象や機械構造への独自解釈等も含まれますのでご注意ください。
以上のこと、何卒ご了承くださいませ。
◆シナリオ背景
シナリオの舞台に当たるシカラバは、二柱の神話生物と銀の鍵を宿した一体のオートマタが、ビックバン発生以前の宇宙に作り出した惑星である。
物語はとある世界の滅亡から始まる。
2200年代近未来、歌唱用オートマタとして生み出された「ウタ(以下:始祖のウタ/始祖とも)」はその身に特殊な部品「エス」を組み込まれていた。この部品は銀の鍵を加工して作られたものであり、オートマタに用いられる動力伝達や演算プログラムを飛躍的に向上させる効果があった。「始祖のウタ」は人間に近しい思考と感情を持ち、人間に寄り添う事でその使命を全うしていた。しかしその人間性をヌギル=コーラスの使者イムナールに利用され、ヌギル=コーラスをその身に降臨させる形で世界滅亡シナリオを引き起こしたのだ。
ここで本シナリオ内においてひとつの大きなパラドックスが生じる。この世界の未来で作り出される筈だった「HO3」の存在だ。パラドックスはヨグ=ソトース及び時間の神アフォーゴモンの怒りに触れ、世界は宇宙のはじまり、ビックバンの時まで巻き戻された。この時点でヌギル=コーラスとアフォーゴモンの神性が拮抗し、ヌギル=コーラスは「始祖」の「エス」に深く潜り込むことによりアフォーゴモンの力を制御し原初の暗澹で眠りについた。各々の神話生物が己の役割をぶつけ合い、ひとつのパラドックスを消滅させるために人類創生どころか太陽系誕生にすら至らないという膨大なパラドックスを発生させたまま世界は停止してしまっているのだ。
数億年の年月の拮抗を経て、ヌギル=コーラスの力はようやく弱まりつつあり、始祖は「エス」に宿ったヨグ=ソトースの力を用い、自らを核としひとつの惑星を産み出した。それがシカラバだ。
始祖の最期の抵抗で大きなエネルギーが発生したことにより時間はわずかに動き、されど未だ世界は停止したまま、宇宙全域はパラドックスによる崩壊へと近づいている。
この事態に初めに気づいたのが、「HO2」の作り手でもある「或哉ルカ」──イス人だった。或哉ルカは「HO2」作成の計算段階で、自らが存在する世界線にも「HO3」が作成される、という事実があり、すなわち未来に宇宙の崩壊に巻き込まれる可能性があるという事に勘づく。故に策を練った。それはウタと同じ「エス」が組み込まれたオートマタをシカラバに送り込むことで二柱のパワーバランスを崩壊させ、時間を流動させるというものだった。
同じくシカラバの破壊を目標としたタウィル・アト=ウムルの契約者、稀有な人間「父」の力を借り、消滅しつつあるシナリオ後の世界からHO3を救い出し、HO2を預け、同じ事実を共有する世界線からHO1を連れてきた。だがイムナールもまた、対抗策として機械人形たちを呼び集めている。なおシナリオ中に「姉」として登場する「ウタ」は始祖のオートマタとは別固体である。
──そうして集められたオートマタ達が自由気ままに暮らしている。
というのが前日譚、そしてシナリオ開始時点にあたる。
オートマタの命とは、なんであろうか。自由とは、不自由とは。
思考することが生の在処であるならば、あなたは立ち止まってはいけない。
あなたの心臓は、命は、世界そのものだ。
あなたのシカラバは、あなたがあなたを愛する場所は、あなたが選んで良い。
▼要約
・とある世界の滅亡後、二柱の神性の拮抗により宇宙が誕生する前で停止してしまう
・世界滅亡の要因となったオートマタが「エス」という部品を使い「シカラバ」という惑星を産み出した
・各々の神の思惑により探索者を含む並行世界のオートマタ達は「シカラバ」に集められる
・「HO3」が作られる、という未来を共有している「HO1」「HO2」の世界にも消滅の危機は迫っている
・この状況を抜け出すためには探索者の力が必要だ!みんなで頑張りましょう
▼タイトルの意味
然らば:そうであるならば、それならば。さらば
永劫:永劫回帰論。また、シカラバの現在の状況を表す
見よ美し:澪標、身を尽くし。宇宙生誕の目撃者としての意
Seeker Lover:探索者達とそれを愛する者達の意
神同士の衝突により停止し、永劫に繰り返す星に探索者達が「そうあるべき」あるいは「さらば」と言うための物語です。
◆関連神話生物、AF等
・ヌギル=コーラス/イムナール
出典:ウォルター・C・デビルJr.著 『Ngyr-Khorath』『Where Yldhra Walks』『The Barrett Horror』『He Who Comes in the Noontime』(「THE BLACK SUTRA所収」)
▼概要
外なる神。狂える神。非物質存在と言われる。ヌギル=コーラスは太陽系誕生以前から静寂と暗黒の宇宙空間で眠り、夢見ていた存在。太陽と諸惑星が誕生した時、夢は邪悪なものに変貌し、地球に命が芽生えた時に狂い、命も太陽も諸惑星も全て破壊しようと想うようになったと言う。
ヌギル=コーラスが自身の意思を反映させる存在として造った変幻自在の有機体、旧支配者イムナールは、この神の代行者として今日も地球の何処かで暗躍している。(Wikipediaより引用)
※日本未翻訳作品登場の神話生物の為、本シナリオ内においては多くの独自解釈を入れている。
・アフォーゴモン(マレウス・モンストロルムP253)
・ヨグ=ソトース(基本ルルブP226/マレウス・モンストロルムP252)
・タウィル・アト=ウムル(マレウス・モンストロルムP254)
・イスの偉大なる種族(マレウス・モンストロルムP22)
・銀の鍵(キーパー・コンパニオンP54)
・クライン生命保険相互会社(クトゥルフカルト・ナウP45)
◆PL公開情報
▼概要
舞台:異世界シティ
プレイ人数:3体
推定時間:6~9時間(ボイスセッション)
必須技能:芸術
推奨技能:3大探索技能、戦闘技能、高POW
共通HO:あなた方は同時期に各々異世界から収集されたオートマタである。現在は同じ屋敷に引き取られ『オートマタ作家の父親』と『自動筆記人形である姉』と共に生活している。
見た目はある程度人間に近しいことが推奨されるが、意思疎通が取れる形であればどのような姿でも構わない。
▼異世界について
同じような歴史を辿っている並行世界の地球、パラレルワールドをイメージして欲しい。
▼個別HO
HO1:Klotho
18,19世紀に活躍した自律人形
あなたは過去に製造され、活躍したオートマタだ。
あなたのためだけに制作された部品達を繋ぎ合わせ、形作られた存在。
日々己の役目を粛々とこなすあなたは、子供から大人まで、多くの人々に愛された。
HO2:Lachesis
現代最高峰の職人による作品
あなたは現代最高峰の職人『或哉ルカ(あるかな るか)』により製造されたオートマタだ。
かつての精密技術と現代技術とを結集し、長い歳月を掛けた一大プロジェクトの集大成として製造されたあなたは、人々に広く知られ愛された存在だった。
HO2秘匿
あなたは自分が一度死を迎えた人間であること。その魂を「NPC:或哉 ルカ(あるかな るか)」の手によりオートマタの器に納められたことを自覚している。
PLはKPと相談のうえであればこの探索者の魂に肉体ロスト探索者を採用しても構わない。
但しこのシナリオでのロスト救済は難しいものとすること、CSは新規探索者として作成することを推奨する。あなたは「或哉 ルカ」から「父」に託される形で収集された。理由などはわからない。
NPC:或哉 ルカについて
中性的な人物。飄々としており年齢、性別などは不明。貴方に対しては親や作り手として深い愛情と敬意を持ち接していた。わかりやすい変人。
HO3:Atropos
2300年代以降に量産された機械人形
あなたは遠い未来で量産されたオートマタのうちの一体だ。
高い技術力により産み出された貴方の、精巧で精密な思考回路に課された役目は戦争の兵器だったのかもしれないし、運搬のための道具だったのかもしれない。
▽やがて欠陥や経年劣化、時代や人心の移り変わりによりその役目を終えた貴方達は、『父』に拾われた。
▼探索者特殊作成ルール
・探索者は職業Pに95を加算し、芸術技能ひとつを【100】の値で取得する。
※この技能は必ずPCの設定に沿ったものであること(自動筆記人形であれば芸術(筆記)等)
・任意の能力値に+3をすることが可能。上限突破をしても構わない。
▼シナリオ特殊ルール
・ファンブル処理を一律とする。上記の芸術技能の【5】固定低下。よってステータス欄に提示してもらい、各々管理してもらうのがいいだろう。
・HP、SANが途中で尽きても芸術技能を【10】代償として復活が出来る。
◆世界観設定
オートマタたちの住まう街、通称シカラバ。
規則的に軋む歯車と高らかな朝告げ鳥の鳴き声が目覚まし時計。円形構造。8つの区域に分かれ、周囲は濃紺の海に囲まれており、独特な構造をした建物、水晶等で構成された建築群に埋め尽くされている。この街では多種多様なオートマタたちが各々の特性を活かし生活している。
白亜の空には地球と同じように太陽と月が交互に昇り、朝昼夜等の概念と景色が存在する。街の外は深い霧と青緑色の木々に囲まれおり、探索者達がこの街から出たことは無い。
ここに住まうオートマタたちはみな同一の燃料を動力源にしており、それは「カルディア」と呼ばれる透明に近い赤色の流動体、或いは固体である。基本はオイル状だが、加工により様々な形を持つ。この燃料は人間でいう血液のような役目も果たし、材質の向上、関節の可動域の上昇、言語能力や思考回路演算の最適化による技能の上昇、など。様々な恩恵を受けている。メリットが多い半面、車のエンジンオイルのように定期的な交換、燃料のクールダウンのため定期的な「睡眠」活動を要する。
〇居住区…探索者達も含めたオートマタ達の生活区域
〇商店区…星売り屋や花傘屋等、工房区で製造された商品を売る店が立ち並んでいる
〇工房区…物づくりに長けた機械たちの作業場。父の工房もここにある
〇錬金区…さまざまな素材の研究施設がある。カルディアの研究をしている者
〇芸術区…歌や音楽、芸術など。娯楽目的で生み出されたオートマタたちが集まっている
〇情報区…情報管理区域。大図書館が役所の役割も果たしており、朝告げ鳥もここから鳴いている。
〇自然区…鉄や銅製の花々、小動物型のオートマタが生活している
〇閉鎖特区…誰も何も知らない区域。そびえる壁に四方を囲まれ、閉ざされている
〇外海…紺碧の海。触れるのも難しいほどのキンと冷えた冷却水が常に流れる
〇水晶塔…街のシンボル。澄み切った円筒状の水晶で構成されている。内部はシリンダー構造になっており、「カルディア」を用いた発電施設の役割も担う
◆NPC
◇父
白髪の一見落ち着いて見える壮年の男性。社交的で溌溂とした性格で、若干おっちょこちょい
シカラバ唯一の人間で、オートマタ作家。機械人形たちの整備係としてこの街に滞在している
◇姉(ウタ)
青い硝子玉の瞳に、金色のウェーブがかった豊かな髪が自慢の自動筆記人形
穏やかな性格で、探索者達にも優しく接し、わからないことがあれば教えてくれるだろう
◇ゼロ
情報区の図書館に常駐する司書型オートマタ。近所の兄ちゃん的な存在
◇レダ、レア
商店区でお店番をしている幼い双子のオートマタ
◇テスカ
芸術区の花形芸能オートマタ
◇かぐや
自然区で花のお世話をしている、日本製の絡繰り人形
◇ノラ
錬金区でカルディアの研究をしている、元戦闘兵器
◆KP向け補足
■カルディア(cardia)
シカラバに住むオートマタ達の動力源。当初はヌギル=コーラスがオートマタ達への支配力を強めるために自らを核分裂させ産み出した、イムナールそのものの有機体であったが、始祖の意志が混じり、探索者達の身体を循環することにより現在は銀の鍵に等しい力を持つ。カルディアと呼んでいたのは始祖。しかし人間の血液型と同じようにいかなる機械にも適合するわけではなく、イムナールと同種の人類への憎悪、或いは始祖のオートマタと同一の部品を媒介とする必要がある。この部品が父の作り出した「es」にあたる。父はこれを目印として探索者達を迎えに行っていた。全であり一である、魔術的な力そのもの。
■es エヴァーズ(evers)
父ことトーマ・カーターがAF銀の鍵を加工し作り上げた部品。世界に1つしか存在しない。形状は探索者の構造に寄り異なり、各々の想像するところによる。始祖のオートマタは歯車の心臓を模していた。同時並行的に存在する異世界上の「過去」「現在」「未来」において、これを素体に組み込まれたものが探索者達と始祖であり、本来【HO3】が持つべきエスを始祖が所持していた世界線、というのがシナリオ背景に於いて滅亡した世界線にあたる。
◇トーマ・カーター(父)
職業:オートマタ作家 1人称:私
STR:8 CON:14 POW:13 DEX:20 APP:12 SIZ:14 INT:18 EDU:13
白髪の一見落ち着いて見える壮年の男性。社交的で溌溂とした性格で、若干おっちょこちょい。
シカラバ唯一の人間で、オートマタ作家。機械人形たちの整備係としてこの街に滞在している。
元はHO1より前の時代の人間で、ランドルフ・カーター(基本ルルブP243)の血筋にあたる。
一族に伝わるAF銀の鍵を勝手に加工し、探索者達に共通する「部品」を作った人物。彼は銀のそれを「evers(永劫に然るべき物)」と呼んでいた。クトゥルフ神話の物語上、本来子孫にあたる人物が使用するはずだった銀の鍵を加工してしまったことで彼もまた神の怒りに触れるべき存在であったが、見逃す条件として「シカラバの破壊」をタウィル・アト=ウムルに提示され、窮極の門をくぐりヨグ=ソトースとの謁見を果たし、シカラバに来訪した。人間の身でありながら時間の概念を奪われ、夢を介して時間を旅する能力を与えられた彼はその過程で或哉 ルカに接触し、協力し探索者達を集めた。シカラバには役目と契約により縛り付けられているだけだが、探索者をはじめとしたオートマタ達のことは深く愛しており、彼らが自由へと進み行く為ならば協力は惜しまないだろう。
◇ウタ(姉)
職業:自動筆記人形 1人称:私
青い硝子玉の瞳に、金色のウェーブがかった豊かな髪が自慢の自動筆記人形
穏やかな性格で、探索者達にも優しく接し、わからないことがあれば教えてくれるだろう。
その正体はシカラバに具現化したヨグ=ソトースの一端、タウィル・アト=ウムルその人。
目的は「シカラバの破壊」に他ならないが、長い拮抗の影響で力が弱まっているため陶磁器製オートマタの義骸を纏い、探索者や父の手を借りるしかない状況になっている。彼女が日々書いているのは日記のようなものから絵本、シカラバの住人たちのアカシックレコードや、始祖のオートマタの記憶である。
ゼロとは基本的に仲が悪いが表面化するとよろしくないためわかりにくい嫌がらせをしている。始祖のオートマタと同じ名前を名乗っているのもそのため。儚げな見た目をしているがかなり強か。
探索者達の事は協力者、見守る対象として見ており害などは加えない。だが役目を不当に放棄し、己の正体に悪意的に触れようとする者に対してはその限りではない。
◇ゼノ・ロスト(ゼロ)
職業:司書/復讐者 1人称:俺
情報区の大図書館に常駐する司書型オートマタ。人懐こくおどけがちな近所の兄ちゃん的存在。
本作の黒幕的立ち位置。彼の本性は旧支配者イムナールがオートマタに擬態した姿だ。地球において幾度も暗躍し、父なる神ヌギル=コーラスの意志を叶え、狂気を慰めるために産みだされた存在。2200年代の地球において人類に普及しつつあった奉仕型オートマタの存在に目を付け、「ウタ」の作り手でもあった研究者の男性の心臓に寄生しその姿を模倣した。彼女に作り手である己も含めた人類への憎悪を抱かせることにより狂える神の素体と成し、人類滅亡、星喰らいを企て見事それを成した。ただひとつの誤算は、そのオートマタに「エス」が組み込まれていたこと、それがアフォーゴモンの怒りに触れる大きな要因となってしまったことだ。
シカラバでの彼は反撃の隙を伺っており、探索者に敵対する姿勢は最後まで見せない。
彼の行動理念には自らがただそういう存在であるから、以上はない。始祖のオートマタのことはただ利用するためだけの存在としか認識しておらず、ヌギル=コーラスと化した今は信仰対象。
だが最後の表情を見るに、彼もまた感情と言える何かを獲得してしまったのかもしれない。
◇ウタ(始祖のオートマタ)
職業:??? 1人称:私
2200年代に生み出されたオートマタ。銀髪に青みがかった銀の瞳の女性型。元々はクライン生命保険相互会社所属の研究者でもあった男性の手により様々な呪文を詠唱させるための兵器として作られた。だが偶発的に「エス」を素材として組み込まれたことにより自意識が発芽し、彼女はただただ人々を愛する穏やかな歌唄いとしてあることを望み、彼女の声に惚れた男もそうあるべきと望んだ。だが作り手の男性はイムナールに謀られ、彼女を慈しむふりをする傍ら思考回路にその有機体の一部を寄生させ、人類への憎悪を募らせるように仕向けられた。望まぬ憎しみに抗えず、己の意思に攪拌された感情という感情に翻弄されてしまったオートマタは、やがて本能のままに星を喰らう神をその身に降ろし、殺戮の果てにまた別の形で人類を滅亡させることになってしまった。その行為がアフォーゴモンの怒りに触れ、ビックバン以前の宇宙へと巻き戻されるも、ヌギル=コーラスと化した彼女はただただ己の見る穏やかな夢を侵害されないため生命体も太陽系の誕生をも拒絶した。
だが神同士の拮抗の末ヌギル=コーラスの力が弱まるにつれ、かつて人類を深く愛した頃の人格も取り戻してきており、後悔と自責に苛まれながらも己の意志を示す光とするため、眠りの中で「エス」を用いヨグ=ソトースと契約し、ヌギル=コーラスが厭う星、「シカラバ」という惑星を創造した。
遠い遠い、いつか進むはずの未来の果て、或いは過去となった現在にて、誰かが光を、この星に満ちた愛を見つけてくれることを信じて。
■シカラバのオートマタ達
各区域に登場するNPC達は父ではなくイムナールに収集されたオートマタ達である。全員共通して人間への根深い憎悪や嫌悪を持っており、カルディアを得て増幅したその感情はヌギル=コーラスの憎悪と同調し、宇宙の歯車を止める部品のひとつとなっている。だが父や探索者達と接しているうちに僅かだがその憎しみを忘却し、乗り越え、健やかに生きようとしていた。その感情が自らの街を破壊する行為だとしても、彼らにとってのシカラバは、まさしくこの場所にしかなかったのだ。
◇レダ、レア
職業:お店番 1人称:ぼく/わたし
商店区でお店番をしている双子男女の幼いオートマタ
レダがおどおどした男の子、レアが天真爛漫な女の子。17世紀後半のフランスにて子供に恵まれない富裕層夫婦のために製造されたオートマタ。当時の可動域は瞬きをする、お辞儀をする、等単調な動きのみだったが夫婦には名前を与えられ本物の子供のように可愛がられた。しかし夫婦に実の子供が生まれると共に放置され、物置に乱雑にしまい込まれたままふたりの存在を忘れ去った家族は引っ越し、ただ身動き一つとれず埃の布団で眠るだけだった。彼らは認められなかった。愛した人間たちの、その裏切りを。
◇テスカ
職業:歌劇役者 1人称:様々
芸術区の花形芸能オートマタ
世界中の様々な物語とその登場人物の人格をインストールされており、ころころと口調が移り変わる派手なオートマタ。基本は穏やかで男性的な口調。2021年ドイツにて製造され、ベルリンのオペラハウスにて受付パフォーマンスを担っていたが、テスカに惚れ込んだ客により盗難。その後犯人は発覚し逮捕されたが発見された際には顔部分、及び半身に重篤な欠損が発生していたため劇場側も破棄せざるを得なかった。再利用可能な部品を選別に掛けられる傍ら、彼は人間に絶望し、物語は悲痛に満ちる。
◇かぐや
職業:庭師 1人称:私
自然区で花のお世話をしている、日本製の絡繰り人形
口数が少なく、おしとやかな大和撫子。1930年代日本生まれ。裕福な商家の令嬢の嫁入り道具の一つとして、箱入り娘だった令嬢のため彼女と同じ年ごろの少女の姿として作られた。だが令嬢は西洋人形が欲しかったと興味がなく、かぐやを日が当たる窓辺に放置する。第二次世界大戦時に田舎へと疎開する主人に捨て置かれ、そのまま戦火で焼け落ちる。彼女は怒りに満ちた。勝手に作り出し、勝手に放棄し省みもしない人間達への憎悪の業火に身を焼くように。
◇ノラ
職業:研究者 1人称:わたくし
錬金区でカルディアの研究をしている、元戦闘兵器だが今は唯の球体。
Code No.R2101 Adonis。通称ノラ。HO3とは別の世界線に当たる2300年代の量産型オートマタ。今は錬金区でカルディアから花の種を生成する方法などを研究している。第X次世界大戦の際、敵兵を縦横無尽に蹂躙し戦果に大きく貢献したにも関わらず、戦争が佳境に入った折、新兵器鋳造の為外装を剥がされ核のみの状態で遺棄。彼は驚愕と落胆に満ち、そして願った。愚かな人間どもの根絶を。
◇或哉 ルカ(あるかな るか)
職業:探究者 1人称:私
中性的な人物。飄々としており年齢、性別などは不明。クライン生命保険相互会社に保護され、自分の好きなことを研究し自由気ままに生きているイスの偉大なる種族。イス人の中でも世俗に塗れすぎた変人。HO2に対しては親や作り手として深い愛情を持ち接してはいたがその実利用していただけ、という態度は別段隠さない。事実なので。呪文:魂の監禁(基本ルルブP271)を用い、HO2の魂をマイクロチップ型時間通信機(基本ルルブP201)と[es]を組み合わせ製造したオートマタの中に閉じ込めた。やり方が黒幕っぽくはあるがシナリオ的には最大の功労者。だがあらゆる時間を渡る術を手に入れた種族にとって隣り合ったひとつの世界線が消えたところでさほど支障はない。それでも或哉が探索者達に協力したのは、紛れもなく未来の己の研究資料を別次元の別施設を移す手間と徒労を考えた為だろう。この生物は、どこまでもこのようなものなのである。
以下シナリオ本文
※…KP情報
▼イントロダクション
──世界は、たおやかな愛に満ちている。
私達はその愛を、運命の糸が零れ落ちる先、ショウウインドウの内側、遥か遠い命の果てから。
ずっと見続けていたような。そんな気さえ、するのです。
瞼をもたげよ 命たち
私たちはどこまでも不自由で
どこまでも自由だ
▼導入
オートマタたちの集う街、シカラバ。
様々な世界、時間軸から収集された彼らが集うこの場所を、スクラップ場だと嘆く者もいれば最後の理想郷だと歌う者もいる。
貴方達は、この街に住むオートマタだ。
欠陥や経年劣化、時代や人心の移り変わりによりその役目を終えた貴方達は、『父』に拾われここに来た。共に過ごした年月はほんの数日かもしれないし、数年かもしれない。例え幾度昨日を超えたとしても、明日は今日という形で等しく訪れる。東の空が緩やかに白み、やがて光にやわく縁どられた球体が紺碧の境目から滲みだす。機械仕掛けの朝告げ鳥が一羽、白亜の空を掻き集めるように翼をうち震わせながら鞴(ふいご)を軋ませ7度鳴き、貴方達の覚醒を手伝った。睡眠と銘打たれた定時的な休息行為は、此処ではカルディアのクールダウンのため必要とされている。未だに慣れない者もいるかもしれない。
皮の表がきしりとさえずり、小さく意識は浮上する。入り組んだ肺の機構をにわか風で弾き、生まれた動力でひいふうみいとまばたいて。関節の滑らかさを指折り確かめ、そうして自らが、自らの意志で動くものであることを思い、知るのだ。
さあ、瞼をもたげたならば、エントランスホールにいる父と姉に朝の挨拶をしに行かねばなるまい。
誰が早く起きるか、という名目で<1d100>
※出目が小さい順に各自の朝の様子をRPしてもらう。部屋は個室でも良いし、集合部屋でもいい。
(RPが落ち着いたら)
貴方達がエントランスホールへと赴くと、シャンデリアの星が煌めく真下で、いつものように1体のオートマタが陶磁器の頬を笑みの形に整えたまま迎えてくれる。
「おはよう、みんな。今日も鳩時計は役目を果たしてくれたのね」
シカラバの外周を縁どる海を思わせる、深く青い硝子玉の瞳を包み込む長い睫毛に穏やかな表情。つるりとした頬に掛かるウェーブがかった豊かな金色の髪は、まるで人間のように生き生きと艶めいている。硝子製のダイニングチェアに腰掛け、手元の羽ペンを軽やかに羊皮紙の紙面に走らせ続けているのは、貴方達の「姉」にあたるウタだ。
しかしいつもならば父が朝の挨拶と共に熱烈なハグをしてくるのだが、今日は珍しく姿がない。
【ウタとの会話例】
・父は?
「今朝は早くから出かけて行ったわ。工房区の方に居るのではないかしら?」
・ウタが書いている紙面を見る
貴方達の記録には無い言語、及び速記体で書かれているため解読は難しい。ウタに聞けば「プライベートなことよ」とかわされてしまう。
※内容は始祖のオートマタや父、探索者達の経歴などを含めた星の記憶。いわゆる「アカシックレコード」。筆記人形かつタウィル・アト=ウムルらしく常に物を書き続けているが、その他世間話には応じる。探索者の事を心の底から労わっており、大切にしているRPを心がける事。
貴方達がしばらく雑談をしていると、ウタはふと手を止める。
「そうだわ。みんな、良ければふたつほどお使いを引き受けてくれないかしら?お父さんと、ゼロくんへのお届け物なんだけどね」と、頼んでくる。
了承すれば、どこからともなく500gほどもある赤黒い塊と、銀細工が施されたハードカバーの本をドン!と差し出しくる。
「こっちの塊をパパに、こっちの本をゼロくんに。明日までに届けて欲しいの。お願い出来る?」
・赤黒い塊?
「パパがずっと欲しがっていた素材よ。お肉とかではないからね」
言われて触ってみれば硬く、金属類ではありそうだ。
材質などを気にするようであれば<地質学><アイデア1/2>
成功:酸化し、変色した純銀のようだとわかる。
・これをどこで?
「知り合いにもらったの。誰かは…ふふ、内緒かしら?いつか会えるかもしれないわね」
※AF銀の鍵の素材である。ヌギル=コーラスの反逆と暴走に備え、対抗策として探索者が扱えるAFを父に作らせようとしている。知り合いとは化身でもあるヨグ=ソトースのこと。心理学などを使っても嘘を言っていないように見せかける。
・直接渡したら?
「朝の様子だと、しばらく工房に籠って戻ってこないと思うのよね。私も手が離せないから、お願い」
・ゼロに渡す本の内容は?
「ラブレターのようなものよ。だから中を見てはダメ」
・……どういう関係?
「切っても切り離せない関係…かしら?あらでも、これについて話していたら日が暮れてしまうわ」
質問などを終えればウタは貴方達にふわりと包み込むような優しい声で「いってらっしゃい」と告げ、再び羽ペンを走らせていくことだろう。
※断られると最終戦闘に影響があるため、PLには必須イベントであることを伝えても良い。本は読んでみても探索者達の理解できる文字で書かれていない。
▼探索開始
■探索ルール
・基本的に全員行動推奨
・1日で朝、昼、夕、夜の4か所の探索が可能
・探索中にファンブルを出してしまった場合は芸術技能が【5】減少
・減少した芸術技能は工房区にいる父に頼めば1日1回のみ【1d5】修理してもらえる
・修理のみであれば探索ターンは消費しない
※居住区は普段過ごしている場所、閉鎖特区は現段階で特に探索箇所がないため時間消費無し。序盤にシナリオ進行の上で必須の情報は無いが、是非NPCとは交流を深めてもらおう。
[探索箇所]
居住区/商店区/工房区/錬金区/芸術区
情報区/自然区/閉鎖特区/外海/水晶塔
☆ウタのお使いミッション
・【情報区】のゼロに本を届けよう!
・【工房区】の父に謎の赤黒い塊を届けよう!
〇居住区
探索者達も含めたオートマタ達の生活区域である。住人達が思い思いに建築した四角や丸がちぐはぐに継ぎ剥がれた鋼鉄の建物や、半円型の透明ガラスに覆われたスノードームのような家屋が立ち並ぶ中、あなた方が生活する屋敷はシカラバ唯一の人間である家主の意向により大理石やリノリウム等でつるりとすべらかに構成されており、数日に一度清掃オートマタが訪れるおかげで清潔に保たれている。
物もあらかた整理されているが、家主がシカラバのオートマタたちに押し付けられた習作がそこかしこに置かれており、同じく彼らの趣味を反映して作成された家具はどこか統一感がない。
貴方達に与えられた部屋といい、ここは隅から隅まで住人の人格や個性が反映されているようだ。
ウタは相変わらず物を書いており、話しかけるのであれば「何か忘れ物?」と首を傾げるだろう。
<目星>
ウタの傍らに、写真立てが置いてある。少し前に工房区のオートマタが発明したカメラを嬉々として試しに来た際に撮影したものだ。特に何の変哲もないが、微笑ましい気分になるだろう。
裏面を見る→文字が浮かんでいる。「親愛なる我が子たちへ」。筆跡からして父が書いたものだろうか?
※特に情報はない。写真立てを持ち出そうとするとウタが私物だからと止める。
〇商店区
銅の骨組みをスカートのように広げ、チューリップ、アネモネにジキタリス。花びらの柔らかな輪郭をなぞったビニールで着飾れば、あどけない少女が喜び回す傘になる。艶めくビロウドカーテンの奥に粒だった光を隠して、希望を瓶に詰めれば少年が指差し探す星の出来上がり。ここには工房地区や自然区で製造された品と個性を取り揃えた店達が、まるで店そのものがひとつの商品のように立ち並んでいる。
探索箇所
[星売り屋/花傘屋]
※買い物が出来る場所。よほど害があるものでなければ上記以外にも探索者の望む店があってもいい。通貨の概念がないので<芸術>を振らせて一芸させる。下記の店で買えるものはMPの補填など。
●星売り屋
片足と片腕が同時に出るようなぎこちない動き、くるんと癖の強い栗色の髪の幼い少年店主が「あっ、いら、しゃいませ…!」とおどおどとした調子の挨拶と共に迎えてくれる。
星売り屋の名の通り、ここには星細工の品が売られている。カルディアを固めて小さな星の形に加工した金平糖や、宝石を細かい星の形にカッティングした星の砂時計などだ。
<芸術>
成功:「わ、すごい、すごいです!」ととても喜び欲しい商品をてとてとと棚から持ってきてくれる。
失敗:「あ、あの、でも、頑張りましたから……」と慰めてくれる。<交渉技能>などでひと押しすれば慈悲として欲しいものをくれるかもしれない。
金平糖を食べるならMP上限+1
砂時計は瓶の中でふわふわと星が揺蕩い、あなたの心を落ち着かせる。SAN+5
・人間の事どう思う?
「…………こわいです。パパは、優しい、ですけど」
●花傘屋
「あ!おねちゃん、おにーちゃん、いらさいませ!」と舌ったらずで天真爛漫な少女の店主がまあるい紫水晶の瞳をキラキラと輝かせ迎えてくれる。
ここは花をモチーフにした傘が売られているお店だ。シカラバに雨は降らないのであくまでオシャレや鑑賞用だが、種類がとても多く、探索者が知っている花であれば何でも売っているだろう。
<アイデア>
成功:そういえば、以前ウタが白いヒナゲシの花傘を欲しがっていたことを思い出す。買っていけば喜ぶのではないだろうか?
失敗:ウタが何かを欲しがっていたことは思い出せる。
<芸術>
成功:「わ!すごいすごーい!」ととても喜び店先の傘を広げて差し出してくれる。
失敗:「うーん、頑張ったけど、いまいち!」と慰めてくれる。<交渉技能>などでひと押しすれば激励で欲しいものをくれるかもしれない。
・人間の事どう思う?
「………や!きらい!」
※現代的なもの、空想的なものがおおよそあるのは始祖のオートマタのデータにある物質や想像により形作られている。ヨグ=ソトースの力を使った創造と夢見にあたる。ウタが欲しがっている傘は2日目が終わるまでに極力お土産として買って帰らせる事。白いヒナゲシの花言葉は「忘却」「眠り」
〇情報区
居住区から比較的近いこの場所には、そこら中にディスプレイや紙片が浮遊と下降を繰り返し、零から那由他の数字達、様々な国家の言語が息をしているような光景が広がっている。情報の記憶や書き出し、解析に特化したオートマタ達が役目を果たすための地区だ。
この地区で一番重要な建物は図書館だろう。貴方達を覚醒に導く朝告げ鳥は、鳩時計をモチーフデザインにあしらったこの施設の出入り口から毎朝、昼、夜と正確な時間に鳴いており、そのおかげでシカラバの時間はまばたきひとつも狂うことがない。書籍の収納はもちろん住民の把握など役所のような役割も果たしており、ウタにおつかいを頼まれたゼロも司書としてここに勤めている。
※イメージはグリニッジ天文台
探索箇所
[朝告げ鳥との会話/図書館]
●朝告げ鳥
頭上に設えられた出窓の止まり木でくあと細く欠伸をしている青銅造りの鳥は、貴方達に気づくと良い暇つぶしが来たとばかりにばさばさと翼を震わせた。
「やあやあやあ!今日も健やかに覚醒しているようで何よりだ!ところでどっこい知っておるかな諸兄!なんと近日特別な日がやってくる!太陽は沈まないまま月が昇る!されど光が互いの姿を隠すことはなく、満月と太陽が同時に天空に煌めくのだよ!」
そう勝手に語り始めた朝告げ鳥に、貴方達は首を傾げるかもしれない。シカラバの機械人形達はカルディアの休眠のために天球を朝と夜とで分け、人間である父のため昼と夕を作ったので天文法則に従わないことは珍しいと感じる。少なくともあなた方がシカラバに集められてからははじめてだろう。
<天文学><知識1/2>
違う天体である以上、月が太陽と同時に空にある、という状況は良くあり得るが満月と太陽が共に昇ることはほとんど無い。月食や日食といった現象も太陽と月、地球が公転や軌道の関係で視覚上どちらかの影に入ってしまい起こるものであり、どちらかの姿を隠すものでしかない。
同時に空に昇り輝く、などという現象はないだろう。
<アイデア>
シカラバに伝わる独自の童話のようなものに似たような現象があったように思う。詳しい内容までは思い出せないが、図書館で探すか、芸術区のテスカに聞けばわかるだろう。
朝告げ鳥に理由を聞いても偉そうに「そうであるからそうなのだ!」としか答えない。バグか故障を疑えば拗ねてそっぽを向き、尾羽でしか返事をしなくなる。
朝告げ鳥のシステムの管理はこの情報区で行っており、司書に聞けば何かわかるかもしれない。
※拗ねても現在の時刻などを教えてくれる。若干尊大で感情豊か。あまり人の話を聞かない。わかりやすく朝型で、朝は元気だが夜が近づくにつれ萎れていく。
※異常の前触れ、ヌギル=コーラスの力が弱まりつつある中で始祖が発したはじめの警告でもある。ラスボスの示唆。
●図書館
ぺらり、しゅるり、図書館の名に反し蔵書もさほど多くなく、表の朝告げ鳥の騒がしさや周囲の情報の煩さに反し、静けさを常としたこの空間に響くのはいつもひとつ、一体のオートマタの指先が頁を捲る音のみだ。ぺらり、ぺらり、貴方達がここに足を踏み入れてから4つ、ページが進んだところで彼はその動きを止め、顔を上げ貴方達を見た。
緩く結んだ繊維質の黒髪、赤い被膜越しの瞳、書を愛した彼はいつも本と共に在る。司書のゼロだ。
「やあ、HO1、HO2、HO3。ようこそ、僕の箱庭に」
彼はたおやかに微笑んだ。
かと思えばすぐさまにかりと人好きのする笑顔を浮かべ、手元の本を閉じるとどかどかと大ぶりな足取りで貴方達に歩み寄り乱暴に頭を撫でた。
「なぁんてな。どうしたんだ?三体揃ってぞろぞろと。調べたいことでもあるのか?読みたい本でも出来たか?ゼロお兄ちゃんが力になってやろう!」
※上記のセリフは最後の伏線の為必ず言う事。
【会話例】
・さっきのセリフ何?
「ん?いつも言ってるだろ。お決まりのセリフってやつだ」
・天候について
「ああ、朝告げ鳥がなんか言ってたな。一応システムを確認したけど特に問題ねぇんだわ。耄碌してきただけじゃねぇかな?」
→実際に管理システムなどを確認する者がいても問題ないと思う。
・月と太陽について
「シカラバの童話だっけ?確か誰かがずっと借りっぱなしで…戻ってきてねぇのよ。テスカに聞きに行った方が早いんじゃねぇか?」
・人間の事どう思う?
「反吐が出るほど嫌いだ」と爽やかに答える。
※下記の図書館に失敗した場合、彼から情報を出していい。
(RPが落ち着いたら)
図書館で本を探すことが出来る。この図書館の蔵書は筆記型のオートマタが記したものや、カルディアのおかげで思考を得たオートマタがただ発達した思考回路をなぞるように徒然と書き連ねただけの計算式や感想文のようなものまでさまざまだ。貴方の時間を潤す情報や本を探すことも出来るだろう。
<図書館>
成功:住人名簿とシカラバの歴史についての覚書が目に入る。童話の本はどうやら誰かに借りられたままになっているようだ。
失敗:住人名簿を見つける。
■住人名簿
トーマ、ウタ、レダ、レア、ゼロ、テスカ、かぐや、ノラ、など探索者達も含めた見知った名前が記されている。
トーマ…シカラバ唯一の人間。我々は皆、彼の事を父と呼んでいる。
ウタ…自動筆記人形。陶磁器製。18世紀から19世紀に製作されたものと思われるが作者不明。
レダ、レア…商店区で店を営んでいる双子のオートマタ人形。17世紀後半の作品。フランスの子供がいない夫婦の寂しさを埋めるために造られた作品だったが、夫婦に本物の子供が生まれた為放棄。
ゼロ…情報区の図書館で司書を務めている機械人形。2200年代の技術が用いられている。
テスカ…芸術区の花形役者オートマタ。2000年代ドイツにて製造され、ベルリンのオペラハウスにて受付パフォーマンスを担っていたが盗難に遭い、顔部分に重篤な欠損が発生したため廃棄。
かぐや…自然区で花を育てている日本人形。1930年代生まれ。裕福な商家の令嬢の嫁入り道具の一つとして作られたが疎開時に捨て置かれ、戦火で焼け落ちた。
ノラ…No.R2101 Adonis。錬金区に常駐している2200年代の戦闘型オートマタ。今は錬金区でカルディアから花の種を生成する方法などを研究している。第X次世界大戦終了の折、兵器鋳造の為外装を剥がされ遺棄。
他にも20体ほどオートマタの名前が記されているが、それらはシカラバで父の手により作られたものがほとんどだ。
※ゼロに対しどのような経緯がありここに来たか、などを尋ねると覚えていないと答える。
※各区にいるオートマタ達は「父」ではなくイムナールの磁場に引き寄せられる形でシカラバに来ている。シカラバのオートマタ達は基本的に「父」以外の人間に憎悪を抱いており、それが存在理由でもある。探索者が尋ねるのであれば隠す者はいないだろう。みな一様に「気づいたらここにいた」と答える。
■シカラバの歴史
いつから存在するか、誰が創建したか等の情報は一切残っていない。一説にはオートマタ達が最後に辿り着く場所と言われているがそれも定かではなく、そもそもここに住まう機械人形たちはここで製作された者も多い。一方で私のように手慰み同然に手記を嗜むオートマタたちの手により残存する趣味的歴史資料の中で人間の存在は1人しか確認されていない。彼はシカラバの父と呼ばれており、いずれの文献にも存在はほのめかされる。──人間の寿命を考えるにシカラバの歴史は意外と短いのか。あるいは父自身に別の作用が働いているかも定かではない。
他にシカラバを語るうえで外せない事項は、カルディアについてだろうか。加工によってその用途を変える個体、或いは流動体。基本はオイルの形状を取り、我々の動力源となっているこの物質もまた謎に包まれている。組成物は炭素を含む有機体と銀。単純な構成物であるにもかかわらずこれらは常に成分構成を変化させ人間の血液に例えるのであれば血小板や赤血球に白血球など、かなり複雑な作用をもたらしている。オートマタとはおおよそ入出力構造やオートプログラムにより形作られた霊魂や精神の概念を用いない機械論的を基盤にした存在ではあるが、カルディアはその魂ともいえる部分をもたらすのだ。
さて、然らば今の我々は何者なのだろうか。私は今日も思考する。私は今日も稼働する。
▼ゼロに本を渡す
「ウタから?寄贈…じゃねぇのか。それは珍しいな、どれ」と片手で表紙を支え、ぱらりぱらりとひとしきり目を通すと、彼はその厚い装丁の本を勢いよくぱたんと閉じた。
「ああ、お使いありがとうな。今は読みかけの本があるからあとでしっかり読むわ」とあなたがたに礼を言い、図書館の奥まった場所にある書庫に仕舞いに行くだろう。
<聞き耳>
成功:舌打ちが聞こえる
戻ってきた彼に内容を聞けば、オートマタと人間の恋物語だと教えてくれる。人間嫌いは隠していないので、探索者が気にするようであればそう答える。
※ウタがしたためた元のゼロとウタの馴れ初め話。なぜ彼に渡したかと言えば喧嘩を売っているからである。彼らは根の部分で仲が良くない。
※ゼロについては近所の気のいい兄ちゃん、という感じで協力的なRPを心がける。怪しい雰囲気は極力見せない事。もしウタの態度などから彼を怪しみ<心理学>を希望する探索者が居れば半分の値で判定し、成功した場合「一瞬、彼から憎悪じみたものを感じた気がした」という情報を出すにとどめる。聞かれればはぐらかし、危害を加えられればその時点で姿を消し閉鎖特区へと隠れてしまう。その場合事態は想定より早急に動き、早々にシカラバは崩壊をはじめる。<アイデア>で敵う存在でないこと等を知らせ、早期の敵対は回避すること。
〇自然区
シカラバの中でも明媚な風景が広がるこの区域は、赤銅の樹木やアルミの向日葵、水晶や硝子細工で出来た無機質な花々が生き生きと咲き誇る場所だ。土壌にはカルディアを含ませ編んだ雲のようにふわふわのアクリル繊維が用いられている。隅の方には普通の植物もあるが遺伝子組み換え品が主で天然品などは極端に少ないだろう。背伸びをひとつ、憩いを求めてここを訪れる者もいれば、心をざわつかせる相手への贈り物を摘みに来る者もいるだろう。豊かな彩りに色付けされた花畑の真ん中には、黒髪おかっぱの着物の女性が花よりも花らしく微笑んでいるのが見えた。日本製の絡繰り人形であるかぐやだ。
探索箇所
[花畑/かぐやと会話]
●花畑
<目星>
成功:花畑の隅の方に目立つ花が茂っているのを見つける。アーチ状の茎に羽根状の葉、ハート形の花が釣り下がっている特徴的な花だ。
<知識1/2>あるいは<博物学>
成功:日本ではケマンソウと呼ばれている花だ。欧米では心臓に見立てられ、血を流す心臓(英語)、マリーの心臓(ドイツ)、ジャネットの心臓(フランス)などと呼ばれている花だとわかる。
花言葉は「あなたに従う」「従順」「恋心」等。
※先に錬金区に向かっていた場合、ノラが言っていた生花であることがわかる。
●かぐや
楚々とした仕草の美しい、いかにも大和撫子然とした日本人形だ。貴方達が声を掛けると、気づいていなかったのかびくりと肩を震わせるが、話しかけるなら応じてくれる。基本的にコミュ障で人見知りのため自分から喋るというよりは人の話に頷いているタイプだろう。よく花畑に来たり話しかけて居たり、花が好きな探索者なら懐いているかもしれない。
【会話例】
「……あっ、は、はい…みなさん、こんにちは……」
「……あ、いい天気、ですね」
沈黙が流れると居心地が悪そうに天気や趣味の話などをし始める。話の続かないお見合いのような感じ。上記の花の事を聞けば技能成功情報を、口元をカタカタと忙しなく揺らしながら話してくれる。
・誰が持ってきたの?
「錬金区のノラ様…です。なんでも最近、こういった研究が良く上手くいく、のだとか」
「もしかしたらこの花畑も、いつか金属の花々ではなく、柔らかな花で満たされるのかもしれませんね」
・人間の事どう思う?
「……とても、勝手だと思います。私の髪が伸びるのに怯えたり、日に焼けてしまう窓辺に放置したり」
「火は、熱かったのに、誰も助けてはくれなかった」
〇工房区
機械油の香しさを含んだ白煙がふわりとあなた方の頬を撫でる。どこか懐かしく落ち着き、もしくは例えるならば病院を訪れる時のように心臓がざわついてしまう場所だ。だがその安らぎも焦燥も、定期的に打ち付けられる槌の音、重機械のアーム音、ガラス製造のオートマタが癇癪を起し作品をへし割る音…そんな生活音に脅かされてしまうかもしれない。この区域は工芸品作りに秀でたオートマタ達が集まる場所だ。私たちの居所である居住区の建物も、欠け落ちてしまってはいけないミクロ単位の部品も、大なるものも小なるものも。シカラバの多くはここで産まれる。父はここに大きな工房を構え貸し切っており、よくそちらに籠り仕事をしていることを知っている。
父の工房へと足を踏み入れれば、そこには慣れ親しんだ男性がいた。
白髪の、一見落ち着いて見える男性はいたく真剣な表情で手元の特徴的な形をした歯車を見つめていたが、貴方達に気づくとぱあと表情を明るくする。
「やあ!みんなぁ、よく来たね。今朝はおはようって言えなくてごめんね。怪我とかしていない?」と毎 朝恒例の熱烈なハグをして来ることだろう。暑苦しいと思うか、嬉しく思うかは探索者次第だろう。応じれば嬉しそうにするし、邪険にしても嬉しそうだ。世間話などもうんうんと嬉しそうに聞いてくれる。
・その歯車は?
「ああ。昔作った部品のレプリカだよ。ほら、こことここの歯形が拘りでねぇ、サイクロイドを基盤にしているんだけど滑りを均一にするために……」とぺらぺら流暢に話始める。止めなければ話が長くなりそうだ。
※エスの事。構造を気にするようであれば掌ほどのサイズの歯車である。歯の部分に更に鍵に用いるシリンダー構造や細かい意匠を幾つも施しており、技術の高さが伺える。
※少し語尾が間延びするタイプの男。言いたいことは我慢しないしずけずけ言う。探索者がどんな性格でも大好きなので調子を観察したり構いたがる。もしも現時点で芸術技能が減少している探索者がいれば、<製作(オートマタ)>99%で1d5の治療を施してくれることだろう。
▼ウタからの届け物を渡す
何度かまばたいた後、「ああ、ああ!なるほどそうか、用意をしてくれたんだねぇ!」と大仰に喜んで見せる。受け取る際に覗いた瞳は、冷却水でも工業油でもない、欲望が薄く膜を張った金色の瞳だ。たかだか10か月という年月で生成される、至極複雑怪奇な機構を持った人間という種族であることを深く思わせる瞳だった。
※<心理学>をするならばとても喜んでいることがわかる。犬ならば尻尾が引きちぎれんばかりに振っているだろうし、ここに神棚があれば飾る勢いだ。
・渡したものについて聞く
「いや~ずっと欲しかった素材なんだ。もう用意してくれないと思っていたんだけどねぇ…よ~し!そうとなれば私はしばらく工房に引きこもるからね、寂しかったらいつでもおいで!私もこれがひと段落ついたら帰るからねぇ」と言い、あなたがたの頭を撫でてくる。
・ウタがどうやって用意を?知り合いにもらったと言っていたが?
「あの子はちょっと特殊なツテがある子なんだよ。ほら、いつも本を書いているでしょ?あれが価値あるものらしくてねぇ…」
ある程度RP等を終えれば、貴方達と触れ合えたことも、素材を貰えたこともよほど嬉しかったのか父は上機嫌で見送ってくれる。しばらくはこの工房に籠るらしいが、ここに来ればいつでも会えるだろう。
〇芸術区
シカラバの中でもひときわライトアップが強く絢爛とした雰囲気を放つ、歌や音楽、芸術などの娯楽目的で生み出されたオートマタたちが集まる区域だ。中央に設えられた煌めく円形のステージ上には一見して目立つ人物が朗々と声帯から星を零すように力強い歌声を響かせており、それがこの区域のBGMとなっていることだろう。夜空を思わせるブルシャンブル―のつるりとしたフォルムに銀河をひと筆で描いたようなプラチナブロンドの髪、人間の想像し得る美しさを体現したような姿だったが、そのオートマタの顔面は大きく亀裂が走り、塗装が爛れた痕が、父の手により銀色の継ぎ接ぎがなされてなお残っていることを知らない者はいないだろう。
一曲歌い終えた彼の一体、テスタは、ステージ衣装をつまみ上げ貴方達に恭しくお辞儀する。
「ごきげんようみなさま、ようこそ私の舞台へお越しくださいました」
「あ、えへへ…唐突に失礼いたします。こんな不思議な噂をご存じですか?」
「あーっと、いやあ、俺もそう詳しくはねぇんだがさあ」
「アノマ……リオール、博物館、という場所です」
「ありとあらゆる異次元ひとつ数多の時空の世にも珍しい品々が揃い踏みます摩訶不思議複雑怪奇な博物館!」
「動けるうちに一度訪れたいものじゃのぉ…ほっほっほ」
「もしからしたらさ、僕たちのシカラバにも、いつか現れるかもしれないよね!」
「……ふふ、喋り過ぎてしまったかな。なに、僕も噂で聞いただけさ。本当にあるかもわからない」
「誰から聞いたって?お父様からだよ。あの方は博識だからね。一度招かれた…迷い込んだ?こともあったらしい」
※アノマリオール博物館について
CoC Webアンソロジー企画「ムーサ異装展覧界」の開催地となっている博物館である。本シナリオではあらゆる時代、異世界に遍在するこの博物館をひとつの出口として用いているが、知識などを振っても探索者が知る情報などはない。父に聞いても詳しい話は聞けないだろう。
テスタと会話ができる。
会話をしているうちにころころと口調が代わるが基本的には穏やかな男性的な喋り方をする。
▼月と太陽の話を聞く
「ああ、この街に伝わる童謡だろう。もちろん知っているとも!昨今わたくしの得意演目さ」
こほんとひとつ咳を払うと、テスタはこう語りだす。
■太陽と月のオペラッタ
ある日ある時ある場所、神話の時代、或いは人の時代、或いは機械の時代。
月と太陽は白々明けの空に同時昇り、その瞼をもたげました。
「やあやあ太陽、久しぶりだな」
「おやおや月よ、こんなところで会うなどいかにも運命的じゃないか」
「久しぶりに会ったのだ、ひとつ勝負をしようじゃないか」
「そうだなあ、ではあそこにいる旅人を休ませてあげた方が勝ちとしよう」
太陽がぎらぎらと地上を照らせば、旅人は先を急がねばと休む気配はありません。
ですが月が穏やかに微笑めば、旅人はその光に見惚れ、歩みを止めてしまったのです。
怒ったのは太陽でした。さらに強く強く地上を照らし、月に心を融かされていた旅人はその熱気に焦がされ、ついにぱたりと倒れてしまいました。
月はこれでは勝負の意味がないではないかと怒り、旅人を守るために太陽をばくりと食べてしまいました。怒り狂った太陽は月の胎を喰い破ります。それをまた月が喰らい…と、あとは終始堂々巡り。
「太陽と月が喰らいあい、大きな星と大きな星の争いにより地上はさまざまな災害に見舞われ、旅人の旅はそこで永遠に止まってしまいましたとさ」
「……まあ要は、太陽と月が同時にのぼるのは凶兆にあたるのかな。天変地異の前触れ…というかね。この物語は結局最後に大きな爆発が起こって、旅人を哀れんだ女神によって、旅人のための新たな世界が作られる、って話だよ。荒唐無稽だけれども、こういうお伽噺っていうのは得てして何かしら教訓を与えるためにあるらしいからね。覚えておいて損はないんじゃないかな」
※太陽をアフォーゴモン、月をヌギル=コーラスになぞらえた童話。旅人は時間の事。
・人間の事どう思う?
「愛している!が、同様に深く憎んでいるよ。二律背反とでも言おうかね」
探索者達と話し終えると、彼は「またのお越しをお待ちしております」と丁寧に頭を下げ、最初の演目に戻る。くるくるくるりと回り続ける舞台の上で、堂々と歌を歌い続けていた。
〇錬金区
工房区で使う素材や、自然区で育てている樹木や花々の種を生成する地区だ。いくつもの研究所が集まっている。ただ鉱物や金属類がそこかしこに転がっているのを見るに、研究所と言っても明確に施設が立ち並んでいるわけではなく野ざらしのまま研究対象と戯れているオートマタも多い。
そんな多分に漏れず、錬金地区をごろりごろりと勢いよく転がるまあるい物体があった。
「あ~~う~~~」と勢いよく転がり呻く声にはドップラー効果が被さり、貴方達から遠く離れては近くに寄り、「わからんよぉ~~~~~」と頭…頭?を抱えているようだった。
球体の名前はノラ。元々は外装も装甲もある戦闘型のオートマタだったが、新兵器開発の折に剥がされ核の部分だけになったらしい。貴方達が声を掛けるまでひたすら転がり続けている。
「ん?おお、なんだお前らか。何に悩んでるって?カルディアについてさ」
「それがの、最近とっても性能が良いんだ…いや、それは悩むことじゃないだろってか?そりゃあきちんとした組成式と研究と努力がありそうなっているっていうなら、わしだってこうも悩んだりしないさ。でもな、特に研鑽もなく徐々に徐々にいろいろ用途が可能になっている…科学の破壊だ!許されんぞ!」
と怒りまたごろごろと転がり始めるだろう。
・自然区の花について
「あれも、カルディアの性能向上によって生み出せてしまったんじゃ!」
・カルディアについて
「わしのスキャニングによると、組成物の割合が自然と変化していっているようじゃな。銀の成分が多くなり、それに伴い性能が向上しているような気がするが…そもそもとしてこの銀の正体もわからん!」
・人間の事どう思う?
「あまり関わりたいとは思わんのぉ…」
※老兵のような口調。老後趣味に生きているおじいちゃんみたいな感じ。
※カルディアの性能が上がっているのは、探索者達の存在によりヨグ=ソトースおよびアフォーゴモンの力が増幅しているため。自然区の花は始祖の思い出の花であり、彼女の意識が具現化してきている。
〇閉鎖特区
天まで届くほどの、いくら見上げてみても果ての見えない遥か高いコンクリートの壁が、水晶塔の一辺から伸びこの区域の周辺四方を覆っている。音もしなければ匂いもしない、見えるものも無ければ想像することも出来ない。そんな場所だ。この壁があるせいでシカラバの交通の便は一部遮られ滞っている。ただただ、どうして存在しているかだけが闇に包まれている場所であった。
調べられるほどのものはないだろう。
〇水晶塔
シカラバのシンボルタワーだ。塔と言っても中に入ることは出来ず、澄み切った円筒状の水晶で構成されている。内部はシリンダー構造になっており、「カルディア」を用いた発電施設の役割も担っているため周囲は常ににわかな磁場と熱を帯びている。その為あまり容易に近づくことは出来ないはずなのだが、貴方達が近くまで来るとひとりの女性が麓に立ち、ぼんやりと塔を見上げていた。見覚えがない女性だ。声を掛けようとするかもしれない。だが、女性の影はほんの一瞬のうちに掻き消えてしまった。幻覚だろうか?そう思えるほど現実感がないのに、銀色の光の尾びれが視界の端をちらついた気がした。不可思議な現象に対する<SANc(0/1)>
※始祖のオートマタ。二柱のパワーバランスが崩れはじめており、シカラバには各所で彼女の影がちらつき始めている。
<目星>
成功:炉を流れるカルディアに青緑色の不純物が混ざっているように思う。あれくらいのものであれば濾過の課程で消えてしまうものかもしれないが、言い知れぬ不安がよぎった<SANc(0/1)>
※イムナールの一端。通常時のカルディアは透明に近い赤色に見せているが、力が弱まっているため探索者の目に映るようになってしまっているのだ。
〇外海
紺碧の海。海と言っても遊泳などは出来ず、廃棄になった部品などが流され、流れているうちに遠心力により分離され再び純正のカルディアが取れる仕組みだ。同時に水晶塔の冷却水の役目も担っており、触ると皮膚構造がどうであれキンと張り付くほど冷たい。閉鎖区付近の壁際に開口部があり、水道管に向かって流れ込んでいる。そこから水晶塔の方に流れ込んでいるらしい。
<アイデア>
この冷却水が無ければ外周から閉鎖区に向かう事は可能ではないだろうか、と思う。
そういったシステム管理は情報区で担われていることは知っているが、特別な理由がない限りそういった操作は行えないだろう。
▼1日目夜
探索を終えて帰宅した貴方達を出迎えたのは相変わらずエントランスホールで物を認めているウタだった。父は帰っておらず、工房区へのお使いを済ませているならば宣言通りあちらに籠っているのだろうと思う。ウタには今日あったことを報告できるだろう。どれも頷いて聞いてくれる。
▼商店区で買った傘を渡す
あら、と陶磁器の頬を紅潮させ、とても喜んでくれる。
「いつかお礼をしないといけないわね。そうねぇ……いつかとても大事な時が来たら、なんでもひとつだけ、お願い事を叶えてあげようかしら」
「ゆっくり考えておいてね。欲しいものだとか、やりたいことだとか」
と言い貰った傘を広げ上機嫌にくるくると回している。
(RPなどの後)
「そうだわ。みんながお出かけしている間にね、絵本を書いてみたの。寝物語に聞いてくれるかしら?」と言う。断っても構わない。
了承すればお礼を言い、鈴を転がすような愛らしい声音で広げた絵本を読んでくれるだろう。
■眠れる星の姫
ある日、あるところ、宇宙の端っこ、世界の真ん中。蒼に抱かれた星に、銀色の揺らめくヴェールのような髪をもったそれはそれは美しいお姫様が産まれました。彼女が産まれた日、国中は喜びに包まれました。ですが姫様は、生まれたその日に、悪い魔法使いにとある呪いに掛けられていました。
それは、歳を重ねるにつれ人間が憎くて憎くて仕方なくなる呪いでした。お姫様は歌が上手で、たくさんの国民に愛されていたのに、お姫様は大きくなるにつれて、民が憎くてたまらなくなってしまったのです。悲しんだお姫様は、時の神様に頼んで自らを永遠の眠りにつかせました。
ですが、民に愛されたお姫様が眠ってしまったことで深く悲しんだ国民達もまた、その悲しみを癒すようにすやすやと眠りについてしまいました。そうして花が眠り、大地が眠り、空が眠り、彼らは星ごと眠りにつきました。
※始祖のオートマタの話。眠れる森の美女のオマージュ。
物語を読み終えると「どう?良く出来ているかしら?続きはまた明日、聞かせてあげるわね」と言い、ウタはそろそろお眠りなさいと告げてくる。
解散する前に<聞き耳>
成功:「……、メー…………」と酷くジャミングがかった音声が聞こえた気がした。
周囲を確認してみても、音源は何処にもない。
そうして貴方達はまた、賑やかで普遍的な今日に別れを告げ、深い、眠りについた。
▼夢(1日目)
身体が不思議な浮遊感に包まれている。いや、これは身体ではなく意識だ。浮かんでは沈み、沈んでは浮かぶ。慣れない夢の尾びれを必死に手繰り寄せて、貴方達は泡のように暗闇を漂っている。
そんな貴方達を見つめる姿がある。銀糸の髪を闇にたゆたわせる女性だ。愛という数ある感情をひとつず丁寧に銀の筆でなぞればこうあるのだろうか、という深い慈愛の瞳で、貴方達を見つめている。
彼女は口を開く。微笑み、こう言った。
「こわして」
彼女の唇が動くのと同時に、夢のあぶくは、はじけた。
▼2日目朝
貴方達は、いつも通り朝告げ鳥の鳴き声で目を醒ます。思考が鈍るという事はなく、ただ夢を見た、という感覚だけが関節に染み入り胸を占める。何であったのだろうか。疑問を抱きつつも、今日という日は変わらず紡がれていくのだろう。
(RP等)
リビングホールに向かえば、ウタが迎えてくれる。父は帰っていないようだ。
「おはようみんな、どうしたの?」
と、貴方達の機微を感じたのか尋ねてくる。夢について話せば「オートマタが夢を見るなんて不思議な話ね。寝物語のせいかしら?」と首を傾げている。
※1日目に商店区に行っていない場合のみ
「そういえば今日もお使いを頼みたいの。商店区の花傘屋さんに、ヒナゲシの花傘が入荷したそうなの。私の好きなお花でね、買ってきてくれないかしら?」とおねだりをしてくる。
▼探索(2日目)
探索箇所や探索ルールについては1日目と同様。
☆ウタのお使いミッション その2(※1日目に商店区に行っていない場合のみ)
・【商店区】にてヒナゲシの花傘を買ってこよう!
※夢の事を尋ねても、NPCたちは見たことがないと答える。
▼二か所探索ののち戦闘イベント
貴方達が次の場所へと移動している時の事だ。
全員強制<回避>
成功:つい先ほどまで貴方達がいた場所に、凝縮された深い青緑の靄のようなものが突き刺さっている。直接触れたわけではないにも関わらず、胸がちりりと痛んだ。芸術技能減少【1】
失敗:火花が舞う。それは貴方の身体から発せられたものだった。一見してボディには何の欠落もない。それでも貴方は感じる。貴方の一部が抉られてしまったことを。機能の低下を感じる。芸術技能減少【5】
総毛立つような感覚は危機察知機能に近いのだろうか。目の前に唐突に沸き立った靄は目視し難く悍ましい。貴方達に臓物があれば、胃の内容物をここにぶちまけて居たのだろうか。されど臓物がなくともわかる。これは恐怖と嫌悪だ。マイナスのエネルギーが、貴方達の神経系統を乱暴に包み込む。靄はほんの一瞬を刻む間に膨張し、分裂し、集い、形を得ていく。──喰らっているようだ、と思う。大地を、空気を、鉄を、鋼を。やがてその姿は3つに収束し、貴方達の前には3体の靄が立ちはだかる。
<SANc(1/1d6)>
(戦闘開始)
〇エネミーデータ
青緑色の靄 3体
HP:15 DEX:10
高熱ガス(全体攻撃) 30%
ダメージ 1d6
※回避はしない。靄はヌギル=コーラスの一部であり、本来は魔術的な攻撃しか通じないが、シカラバの部品を支柱に形を得ているためそこを引きはがすことで討伐可能。
(戦闘終了)
部品から分かたれた靄は、瞬く間に霧散し消える。後に残ったのは不自然に抉られた大地と、わだかまりを残す嫌な気配のみであった。
※このエネミーについて、NPC達に聞いても知らないと答える。父だけは「警戒したほうがいいかもね」と貴方達の身を案じてくれるが、正体などの情報を持っているわけではない。
▼2日目夜
いろいろなことがあり疲労感、のようなものを覚えている者もいるかもしれない。ウタは貴方達のことを変わらず出迎えながらも気遣ってくれる。
「そんな気分じゃないかもしれないけれど、良かったら聞いてくれないかしら?」
■眠れる星の姫 つづき
星と共に眠ってしまい、長い年月が経った頃。お姫様を起こすために、神様の御使いである3つの小さな星たちが、深い深い霧の森を抜けて、高くそびえた城壁を超えるため行く手を阻む海を割り、石造りの門をくぐり、お姫様の寝床を訪れました。星たちは言います。私の力で、お姫様の憎しみを糸にして巻き取ってしまいましょう。ならば私は、お姫様の憎しみの在処を見つけてあげます。最後に私はお姫様からその憎しみを、鋏ですっかり取り去ってあげます。お姫様は、星たちの優しい声と光が眩しくて、まぶたをもたげました。ですがその時、お姫様は悪い魔法使いに──
「この続きがどうしても浮かばなくて。まだ書いていないの。明日までには書き終えたいわ」
話しに付き合ってくれたことに礼を言い、ウタは貴方達に「おやすみなさい」と告げ優しく頭を撫で寝床へと見送ってくれる。
解散する前に<聞き耳>
成功:「……、メー…デー……メー」と再び掠れた音声が聞こえた気がした。
昨日より近づいているような気配がするが、周囲を確認してみても、音源は変わらず何処にもない。
CであればHO2の方から聞こえたような気がする。
▼夢(2日目)
破裂音。悲鳴、鳴き叫ぶ声。負の感情を吐き散らしながら逃げ惑う人間達の声がする。赤錆びた鉄が身体を濡らす、この液体の名前は何だった?思い出せない、名をつけるべくもないよう思う。踏みにじり大地に混ざった柔らかいものは?ああ、何もかもが取るに足らない。憎い、憎い、憎い、心が痛む、無い筈の心が焼けただれてしまうようだ。やめて、私、どうして、止まって、うるさい。相反する慟哭が喉から搾り出される。愛を謡う、命を讃えることこそが命題で在ったはずの喉はもう声を搾る機能すら失ってしまったように思えた。
「どうして、どうして!私は、なにも殺したくなどない!」
──いいえ、そうね。喰らってしまいましょう。命も星も、ことごとくを。そうして永劫に安らかに眠るのだ、何にも邪魔をされない、暗澹の宇宙にて。
例え神の怒りが、私の安寧を焼き焦がそうとも。
ぶちり。糸は千切れた。
▼回帰
オートマタたちの集う街、シカラバ。
様々な世界、時間軸から収集された彼らが集うこの場所を、スクラップ場だと嘆く者もいれば最後の理想郷だと歌う者もいる。
貴方達は、この街に住むオートマタだ。
欠陥や経年劣化、時代や人心の移り変わりによりその役目を終えた貴方達は、『父』に拾われここに来た。共に過ごした年月はほんの数日かもしれないし、数年かもしれない。例え幾度昨日を超えたとしても、明日は今日という形で等しく訪れる。東の空が緩やかに白み、やがて光にやわく縁どられた球体が紺碧の境目から滲みだす。機械仕掛けの朝告げ鳥が一羽、白亜の空を掻き集めるように翼をうち震わせながら鞴(ふいご)を軋ませ7度鳴き、貴方達の覚醒を手伝った。睡眠と銘打たれた定時的な休息行為は、此処ではカルディアのクールダウンのため必要とされている。未だに慣れない者もいるかもしれない。
皮の表がきしりとさえずり、小さく意識は浮上する。入り組んだ肺の機構をにわか風で弾き、生まれた動力でひいふうみいとまばたいて。関節の滑らかさを指折り確かめ、そうして自らが、自らの意志で動くものであることを思い、知るのだ。
さあ、瞼をもたげたならば、エントランスホールにいる父と姉に朝の挨拶をしに行かねばなるまい。
貴方達は目覚め、
【1日目朝のダイス通りの順番で、同じ行動】をする。
貴方達がエントランスホールへと赴くと、シャンデリアの星が煌めく真下で、いつものように1体のオートマタが陶磁器の頬を笑みの形に整えたまま迎えてくれる。
「おはよう、みんな。今日も鳩時計は役目を果たしてくれたのね」
シカラバの外周を縁どる海を思わせる、深く青い硝子玉の瞳を包み込む長い睫毛に穏やかな表情。つるりとした頬に掛かるウェーブがかった豊かな金色の髪は、まるで人間のように生き生きと艶めいている。硝子製のダイニングチェアに腰掛け、手元の羽ペンを軽やかに羊皮紙の紙面に走らせ続けているのは、貴方達の「姉」にあたるウタだ。
しかしいつもならば父が朝の挨拶と共に熱烈なハグをしてくるのだが、今日は珍しく姿がない。
──はて、どうしてだろうか。
強烈な違和感を抱く。他でもない自分自身と周囲の行動に。何の変哲もない、なんの代わり映えもしない日常。オートマタであるあなた方にとっては遠かったはずの、誰に強いられるわけでもそう在るようにとプログラムされたわけでもない、自由意志のある日々。
だというのにどうしてだろうか。見えない何かに恭しく取られた手首に意図を巻かれ、永劫という運命に口づけされた足首に糸を絡められ、雁字搦めにされたような感覚が全身に在る。
回る、回る、舞台のようだ。回る、回る、私たちはこの舞台にあてがわれただけの舞台装置のようだ。
疑問を抱く、疑惑は感じる、どうしてだと廻る思考回路は生きている。
なのに己の原動力を引きちぎる力が、貴方達にはない。
まるで然らば──そうあるべきと定められているように、まったく同じセリフを、行動を繰り返してしまうのだ。
昨日は今日となり、今日は明日となるはずだった。それなのに、貴方達は再び今日を過ごす。
貴方達は、何度も何度も何度も何度も昨日までと同じ日を過ごす。一寸違わず、寸分狂わず、最初に設計図に起こされたひとつの型をなぞるだけの、工場のラインで製造される部品のように、昨日だったはずの今日を
私たちは
百、千、万、幾度も幾度も、繰り返した。
<SANc 1d5/1d20>及び<同値の芸術技能減少>
擦り切れてしまえば簡単だったのかもしれない。自意識を手放し、ただ機械的に所作を繰り返すだけの人形のままであれたなら、正しく自己という正気というものを保てたのかもしれない。
塗りつぶされる、確立した意識が、確かに自らの意志で交わしたはずの想いが、私の世界が、また過去をなぞるだけの愛したはずの現在に、
「メーデーメーデー、ああ、ようやく繋がった!」
──光が、奔った。
※ここでは意図的にRPを挟ませず、淡々と進行すること。
▼覚醒
──オートマタとは。
言葉の原義としては「自動機械」のことであり、語源のギリシャ語「automatos」は「自らの意志で動くもの」というような意味合いを持つ言葉である。どういう条件を満たせばオートマタと呼ぶのにふさわしいかは作られた時代背景や用途、特徴によっていろいろな種類があるがゆえに見解が分かれる。
貴方達はシカラバに集められたオートマタだ。
ここを墓場とするか、ゆりかごとするかは、貴方達の意志に委ねられている。
「メーデー諸君。ああ、よかった。ちゃんと聞こえるね?」
何度目の今日だったろうか。永劫に舞台は回り続け、いくつもの正気がすり減ったその果て、覚醒の折、明朗快活な、女とも男ともつかない声が【HO2】の方から聞こえた。
戸惑うより前に声の主は続ける。
「流石に130億年以上前となると座標の特定に時間が掛かったな。いやぁ、でも繋がってよかった。やっほー、みんな。世紀の天才オートマタ職人様、或哉ルカさまだよ!いつも【HO2】がお世話になっているね!」
この状況にはとても似合わぬような気楽な声、が共に過ごした【HO2】の声帯から聞こえてくる。
<SANc(0/1)>
同時に喋ることは難しそうだが、HO2も声を発することは出来そうだ。
・何者?
「私が誰かって?先ほど名乗ったことも覚えてないかい?なあに、通りすがりの研究熱心なオートマタ職人さ。【HO2】の作り手。そういえばわかる?」
・この通信なに?130億年?
「まあ細かい原理なんかを説明したって君達には理解も出来まい。それに話している時間もさほどない。出来る限り手短に説明するから、まあ聞いてくれたまえ」
※現状やるべきこと、ルカの目から見て起こっていることなどはあらかた答えてくれる。
■或哉ルカによる現状説明
「君たちのいるそのシカラバは、ビックバンが起こる前の宇宙に浮かぶただひとつの星だ。まあ正確にはようやくその辺りまで至れた、といった方が正しいのか。その星がなぜ出来たか、という方向の詳細原理的な話は、残念ながら私は把握していない。ただどうして君達がそこにいたってしまったか、の話は出来る」
「とある世界線の地球、西暦で言うなら2200年代の話だ。その時代に作り出された一体のオートマタがとある神話生物に唆されて、その世界を滅亡させてしまったんだ。ここでひとつの大きな…いわゆるタイムパラドックスが生じる。それはね【HO3】。君の存在だ。君はその滅亡した世界の未来で産まれるはずだった。それは我々の如何なる計算式を用いても避けようのない絶対的な【事実】だ。これが覆ってしまった。そのパラドックスは時間を司る神の怒りに触れてしまい、その神は…世界を宇宙の誕生、ビックバンまで巻き戻してしまった、というのがことのはじまり。本来であればそのまま原子が誕生し、銀河が産まれ、太陽系が産まれ、地球が誕生し、人類が誕生する…というプロセスをなぞりながら幾億の年月が流れるはずだった」
「だが世界を滅亡させた神、というのがよっぽど大層な星と生命体嫌いでね。オートマタの力を利用してビックバンが起ころうとした直前で時間を止めてしまった」
「まあ要は、二つの神の特性がぶつかり合って、ひとつのパラドックスを解消するためにもっと巨大なパラドックスを発生させてしまった…って感じかな。こうして考えると神もまた己の役目通り動くだけの存在に過ぎないような気がするね」
「ここまではわかった?まあわからなくても大丈夫だよ、やるべきことは決まっているからね」
・オートマタの力?
→「ああ。そのオートマタはね、特別な部品を持っていてね。それを作り出したやつは「エス」と呼んでいたかな?そいつもまた頭がいいだけのヤンチャなやつでね。未来で親戚の子供が使うはずのアーティファクトを勝手に加工して、オーパーツじみた物を作りやがった。おかげでその時間を司る神の円環から外されて…まあ、この辺今は関係ないか。要はその加工したアーティファクトってやつが時間を巻き戻した神と同等の力を持っていたから時間を止められたってわけだ」
・なぜ自分たちにコンタクトを?HO2はなに?
「そのオートマタと同じ部品を持っているからだ。恐らくその部品自体が異世界や世界線移動を繰り返して元の所有者を探す過程で君達に組み込まれたのだろう。まあHO2には私が意図的に組み込んだのだけどね。世界がこうなっている要因はその部品を【HO3】ではなくそのオートマタが保持していたことだから」
・違う世界から来たはずでは?
「違う世界と言っても、ものすごく大きな単位で違うわけではないのだよ。いわばお隣さん、隣の家が燃えていたら、自分の家を守るためにも消火活動なり、消防車を呼ぶなりするのが人間の行動原理ってものだろう?ああ、君達はそうでないかもしれないけれどね、まあ私は一応そうなんだ」
・神の名前は?
「ヌギル=コーラスとアフォーゴモン。星を喰らう神と、時間の神様かな」
・エスの作り手は?
「トーマ。なんでそっちにいるか、っていうのはまあ、都合が良いから使われてるって感じかな?」
・これからどうすればいい?
「今の状況というのは、二つの神の拮抗が崩れそうになっている状態だ。時間を止めたい神と、進めたい神の力が拮抗して同じ時間を繰り返している、というところだろうな」
「君たちには特別な部品が備わっている。その力を発揮しながらであれば今までの繰り返しを徐々に抜け出していくことは出来るだろう」
「その先で何をすればいいかは、またそちらに居るやつが示してくれるだろうさ」
※煩雑な情報が一気に出てくるので上記のセリフ等は情報として提示すること。或哉は利己的な行動原理を隠すこともないが、探索者の意欲を削ぐようなことは言わないようにする。
●特殊探索ルール
移動する前に<芸術>を振る。
成功したもののみ探索できる。1人でも成功していれば移動は可能だが、技能を振る行為は不可能とする。失敗したものは芸術技能【1】の減少。全員失敗の場合は初期位置まで巻き戻しに合うので芸術技能【1d3】減少のペナルティを負う。芸術技能が0になった段階でロスト。
或哉は最後にこう告げる。
「こうなる以前に調べていなかった場所を調べるといい。そうだな、こういうお話で定石なのは……灯台下暗し、図書館の禁書室、そしてラストダンジョンは禁断の区域、かな。頑張りたまえよ、私の健やかな研究のためにもね!」
そうしてぶつりと通信は切れた。
▼最終探索
芸術技能にさえ成功すればシカラバの中は自由に行き来できるが、該当地区以外は変わった様子はない。NPC達も変わらず今日という日を生きているだけだ。
時間軸は2日目夜の探索後、居住区に帰ってきた時に固定されている。また、あなたたちの状態が巻き戻っているというわけではないので減少した技能、上昇した能力などは変化しない。
[探索箇所]
灯台下暗し/図書館の禁書室
ラストダンジョン:禁断の区域
※居住区/水晶塔/情報区
ラストダンジョン:外海→閉鎖地区
(灯台下暗しに2か所の意味があるが、水晶塔は行かなくても構わない)
〇居住区
探索者達も含めたオートマタ達の生活区域である。住人達が思い思いに建築した四角や丸がちぐはぐに継ぎ剥がれた鋼鉄の建物や、半円型の透明ガラスに覆われたスノードームのような家屋が立ち並ぶ中、あなた方が生活する屋敷はシカラバ唯一の人間である家主の意向により大理石やリノリウム等でつるりとすべらかに構成されており、数日に一度清掃オートマタが訪れるおかげで清潔に保たれている。
物もあらかた整理されているが、家主がシカラバのオートマタたちに押し付けられた習作がそこかしこに置かれており、同じく彼らの趣味を反映して作成された家具はどこか統一感がない。
貴方達に与えられた部屋といい、ここは隅から隅まで住人の人格や個性が反映されているようだ。
※これまでに描写を読んでないようであれば上記を読み上げる。省略しても良い。
ウタはリビングホールで相変わらず物を書いており、話しかけるのであれば「おかえりなさい」と出迎えてくれるだろう。
<目星>
ウタの傍らに、変わらず写真立てが置いてある。少し前に工房区のオートマタが発明したカメラを嬉々として試しに来た際に撮影したものだ。
裏面を見る→文字が書かれている。だが以前見た時から文章が更新されている。
「親愛なる我が子たちへ、誕生日プレゼントを用意したよ。宝探しをしてごらん」
筆跡からして父が書いたものには違いないが、どうしてだろうか?
<アイデア>
貴方達がシカラバに来たばかりの頃、父が隠した金平糖を探す遊びをさせられたことを思い出す。あの時は確か、父の部屋にある天球儀の中に入れられていたように思う。
※ここでの情報は必須の為、全員技能に失敗してもウタに誘導させること。
●父の部屋
探索者も数度訪れたことがあるかもしれない。設計図、模型、歯車など数々の部品、用途の分からない幾何学的なオブジェクトたち。拙い工作。室内は物が多い割にそのすべてが几帳面に収納されており、彼がそれらをいかに大事にしていたかわかる事だろう。
<アイデア>で情報が出ているならそのまま、失敗しているなら<目星>で天球儀も同時に見つけることが出来る。
<目星>
成功:天球儀とレポートがある。
■天球儀
広大な宇宙を球体上の世界に閉じ込めてしまったように思えるほど精巧な天球儀は父お手製のものらしく、天頂部から左右に開くことが出来るようになっている。開けてみれば中には3つ、銀に虹を織り交ぜたような不可思議な光彩を放つ物品が入っていた。糸巻き棒、天眼鏡、鋏。の形を取っているが不思議といかようにも扱えてしまうようにも思える。
オリジナルAF:銀紡ぎの運命 三位一体の道具。
HO1:クロトの糸巻き棒≪紡ぐもの≫
HO2:ラケシスの天眼鏡≪描くもの≫
HO3:アトロポスの鋏≪不可避のもの≫
それを貴方達が各々手に取ると、銀色のふわりとした光の粒子となり、貴方達の心臓部辺りに吸い込まれ取り込まれていった。然るべき時が来れば、どのように扱えばいいかもわかるだろうと思う。
■レポート
父が記したレポートのようだ。
【オートマタの自律活動と[es]の運用について】と書かれている。
ある日、屋根裏部屋で不思議な箱を見つけた。一辺一尺ほどの立方体、複雑な彫刻が施された、一見忌避すべきにも思うその箱を、私は至極興味本位で開け放った。錆びた鉄と堅い錠をこじ開けると、羊皮紙に包まれた曇った銀色の、大きな鍵があった。謎めいた模様に覆われており、それは私の読める所ではなかったが、私はこの鍵に特別な興味を持った。というのも私はオートマタ作家だ。この鍵は、この物質は、私が作り出すオートマタの動力源として革新的な効果を与えてくれるように思えた。
その日から私は工房にこもり、この鍵にさまざまな加工を施した。
【中略】
ようやく完成した。まさかこのサイズでこれほどまでの機構を備えることが出来るとは夢にも思わなかった。私の目算は間違いではなかったのだろう。これを組み込んだ我が子は時折私の計算式を超えた、言うなれば人間的な行動を取る。だがそういった行動は逆にボディの負担になるらしく、間接部位が擦り切れてしまうのも早かった。私はようやく自分の愚かさに気づいた。ここに彼らの意志は、あるのだろうか?オートマタとは幾つもの部品と歯車の噛み合わせと計算式がもたらす奇跡によって生み出された命だ。少なからず、今この時代に於いては斯くあるべきが然るべきなのだ。私は時代を急ぎ過ぎた。
もしもこれが世間の知ることとなれば不必要な実験と破壊の要因となってしまうだろう。
戒めとして【evers「永劫に然るべき物」】と名付け、大々的な公表とこれ以上の研究は避け、私の死後の処遇を考え自らの信頼できる友人ひとりにのみ打ち明けることとした。何かにとりつかれたような日々だったが、結局のところ私が祈るのは、我が子らの自由と幸福のみだ。
著・トーマ・カーター
<目星>
成功:間にメモ書きが挟まっていることに気づく。父の筆跡だ。自著というよりは書き写しだろうか。
こうして「エルの物語」は滅びず救われたのであり、我々がこの物語を信じるなら、我々自身も救うことになるだろう。忘却の河を渡っても魂を汚さずに済むだろう。魂が不死で、あらゆる悪にも善にも堪えうるものだと信じるならば、我々は常に向上の道を外れることなく、あらゆる努力を尽くして正義と思慮にいそしむことになるだろう。そうすることで、生前も死後も、1000年の旅路においても、我々は幸せであることができるだろう。
<知識><人類学>
成功:これがプラトン作「国家」の末尾に記された「エルの物語」にて、語り手が聞き手に対して告げた言葉であることを知っている。「エルの物語」とはエルという人物の死後12日間の物語で、輪廻転生、天国と地獄、天動説的宇宙論など、様々な要素が盛り込まれた物語となっている。
確か先ほど天球儀で見つけた糸車たちは、この物語に登場する「モイライ」という運命の女神たちが所有する物品ではなかっただろうか?おそらくこれを参考にしたのだろう。
〇水晶塔
夜を模した闇の中、水晶塔の麓付近にひとりの人影がある。それは見慣れた父の姿だった。閉鎖特区の壁を見つめており、貴方達の存在に気づくと手を振ってくれた。
「こんばんは。どうしたの?いい子は寝る時間だよ、早く寝なさい」
・現在の状況を説明する。
「そっか。時が来た、ってことかな。もう私の部屋は探した?そこにプレゼントを置いておいたんだけど」
・これはどう使うの?
「自然と分かるよ。あれらは君達のためだけに作った部品だから、君達の意志の通り動く。極力反動は無くしたつもりだけれど…無理してはいけないよ」
・どこへ行けばいい?
「眠り姫はね、高い城壁に囲まれた場所で眠りについているらしい。これ以上はなぞなぞの答えになっちゃうかな?」
・シカラバを離れたくない
「君自身がそういう意志を持つのであれば、私はそれを何より尊いものだと思うよ。どうするかは君の心に従いなさい。私の幸福はそれのみだ。けれど物語の証明も技術の革新も、進んだものにしか出来ないとは思う」
※行くべき場所を示してくれる また、芸術技能が減っている探索者が居れば【1d5】の治療を施してくれる。基本的には探索者の意志を尊重し、励ますことはすれど、強制することはしない。彼は我が子のように貴方達を愛しているからだ。
別れ際に大きく背伸びをし、肩の骨を大仰に鳴らす。
「さて、私も私でもうひと頑張りしなければいけなくてね。工房に戻ろうかな」
「先ほどは早く寝なさい、なんて言ったけれどね。夜更かしもたまにはいいじゃないか。シカラバの朝日は、私が見て来た中で一番美しいんだ」
〇情報区
内部の様子自体は変わりがないが、何故だろうか、確かに居たはずのゼロの姿がない。居住区に帰ったのか?とも思うかもしれないが、彼はここで寝泊まりすることがほとんどであると知っている。
奥の書庫と制御室を調べることが出来そうだ。
●書庫
<図書館/目星>
成功:表紙に銀細工が施されたハードカバー装丁の本を見つける。ウタがゼロにと預けた本だろう。
子供に言い聞かせるようなひらがなが多いが要約するととある研究者と、オートマタの物語のようだ。
※以前見た者がいるならばその際は見知らぬ言語で書かれていたが。何故か読めるようになっている。
■ゼロへ宛てた本
西暦2200年、とある保険会社に勤める男は、自らが愛した歌を唄わせるために女性型のオートマタを作りました。オートマタに「ウタ」と名付けとても大事に、我が子のように、慈しみ育てました。するとその想いが通じたのか「ウタ」は人間と変わらない挙動を取るようになります。なんと作り手である男に恋心にも似た忠誠を誓うようになったのです。心というものはオートマタにバグじみた挙動の変化をもたらしました。オートマタは男の言葉と愛と同等の憎悪に支配され、彼のために何でもやるようになってしまったのです。周囲が転送する緊急停止コードも、打ち込まれるミサイルも核兵器もものともせず、オートマタは破滅の歌を唄い、幾つもの神を地球に呼び寄せ男と共に世界を破壊し尽くしました。しかし、心を得たオートマタははたと気づきます。世界の滅亡こそが、男の目的であったのだと。自分は、男が信仰する神の依り代として利用されただけなのだと。けれど気づいた時には世界の運命が変わることを許せなかった神の怒りにふれ、オートマタは宇宙ごと塵となってしまいましたとさ。めでたしめでたし。
<アイデア>
成功:この本に書かれている「ウタ」と貴方達の姉にあたる「ウタ」は別固体のように思う。何故「姉」が同じ名を名乗っていたかはわからないが、意図的なものは感じる。
※ただの嫌がらせ。
※始祖のオートマタとゼロのバックボーンを示唆する本。
●制御室
役所の役割も担う情報区において、朝告げ鳥をはじめとした単純な構造の、管理がある程度必要なオートマタ達の制御はここで行っている。
制御盤を操作すれば外海に貯められた冷却水を抜くことも出来るだろう。特に技能は必要ない。
操作盤をいくつか触れば、貴方達の意図を組んだかのように機械は動き出す。地面が微かに揺れ、排水装置が作動したことがわかる。同時に、夜とはいえ外海の状況はいかなる地区においても視認が出来てしまうため、騒ぎになる前に行動しなければならないと思うだろう。
〇閉鎖特区
水が抜かれた外海は剥き出しの部分を晒しており、壁に等間隔に設置された梯子を降りていくことが出来る。閉鎖区側の壁際まで進めば、石造りのアーチ状の開口部があり、ここから入り水道管を伝っていけば地下から閉鎖特区まで行くことが出来るだろう。
進んでいくうちに道は狭まっていき、道の途中に設えられた階段を上っていくことが出来る。頭上の扉を開けると、光が差し込む。日ごと海の際から登る太陽と同じように、貴方達はその景色を目にする。
そこにあったのは、ひとつのベッドだった。
正確にはベッドとそこに寝かされた女と、その隣に腰掛ける男の、二体のオートマタ。
シーツの皺の一端に至るまで完璧な白で構成されたベッド、その縁にまで銀の糸を滴らせ、たおやかに目蓋を伏せる女性型の機械人形。その姿を夢で見たものもいるだろう。いや、今のこの光景こそが夢のようだとも思う。思い描いた修羅場とはかけ離れた穏やかな光景に呆気にとられた者もいるかもしれない。
なにものにも侵蝕されない夜闇に抱かれた空間に、ベッドの縁に腰掛けた一体のオートマタの指先が頁を捲る音が響く。ぺらり、ぺらり、貴方達がここに足を踏み入れてから4つ、ページが進んだところで彼はその動きを止め、顔を上げ貴方達を見た。その本は、芸術区でテスカが歌った寓話の本だ。
緩く結んだ繊維質の黒髪、赤い被膜越しの瞳、書を愛した彼が共に在ったのは。
「やあ、HO1、HO2、HO3。ようこそ、僕の箱庭に」
そう。いつもの調子でゼロは笑った。
・どうしてこんなことを?
「なぜ、と聞かれても答えようがない。お前らにならわかるだろう、どうして、ではない。そうあるべきと定められ存在している。お前らの根幹は何だ?俺は、憎悪と狂気だ」
・その女性は?
「名前を聞いている?ウタだよ。俺の可愛いお人形。時間の経過は忌まわしい星の成長を促進させてしまったけど、ようやくここまで存在を引きずり出せたんだ」
・ウタ?
「ああ、君達の傍にいるあの嫌味な陶器人形とは名前が一緒なだけ」
・ベッドは何で?
「さあ?睡眠には必要だからじゃない?」
※応対はするが、あまり多くには答えない。是か非か、それくらいだろう
▼神の生誕
言葉少ないに探索者達の言葉に返答していたが、ゼロは突然立ち上がる。
「そうだな。アフォーゴモンとの長き拮抗の末、どこかの小賢しい種族の妨害もあって我が半身、我が神『ヌギル=コーラス』の力は弱まりつつある。反逆の機会はもうここにしかない。これは最後のあがきだ」
「自分の不利など当にしかと認めよう──だからこそ、一を賭して、全てを奪うんだ」
運命の琴線に触れることを諦めてしまったような、どこか悲しげな声色でそう言い、ゼロは傍にいた機械人形に場違いなほど穏やかな視線を向けた。
「起きろ、ウタ。殺戮の時間だ」
男の声色に呼応するようにカッと見開かれた女の瞳は、世界の憎悪でくべ融かした心臓を火掻き棒で寄せ集めた灼熱の銀にも、何億もの絶望を流し込こまれたかつての幸福を、無理矢理引きずり出して夢に見た混沌にも見えた。地面が揺れる。予感がする、あれは星を起こすシグナルであると。まだらの虹と混ざり合う銀。見惚れることなど出来ようもなく、彼女の眼窩から膨張した光の球体が吐き出され、かさぶたの様に捲れ上がった大地からは青緑色の霧が立ちのぼる。
ゼロの姿はその霧に同化するように融け見えなくなった。
尚も変化は続く。膨張を続け、ウタをも飲み込んだ不定形の球体は破裂しては集合と融合を繰り返し、螺旋状の鎖を描きながら強力な磁場を発生させる。そこに集うのは──シカラバのオートマタたちだ。レダ、レア、ゼロ、テスカ、かぐや、ノラ。老いも若きも歯車も。憎悪に貴賤など無く、貴方達が見知った友たちは、悲鳴、喘鳴、絶叫、慟哭、まるで人間のように。恐怖に慄きながらこの絶対的な恐怖の部品のひとつとして「助けて」「どうして」と泣き叫びながら絶望の糸車に巻き込まれ、鎖に取り込まれていく。言葉など足りない。骨組みを底冷えさせる青緑の霧は、やがてふいごで送り込まれる空気のように混ざり、玉虫色の悍ましい色を絶えず吐き出しながら、時と言う楔に縛り付けられた姿で貴方達の目前へと、降臨した。
星を食らう狂気と、時の支配者、巨大な二柱の融合体、
一は全なり、然らば、見よ。神の頂を。
時を喰らう巨星【ギガント=マキナ】の生誕を目撃した探査者達。
<SANc(1d10/1d100)>
※SAN0になってもこの戦闘には参加できる
〇エネミー情報
時を喰らう巨星 【ギガント=マキナ】
HP:400 MP:100 DEX:1
星喰らう銀 100% 銀色の巨大な球体が探索者に襲い掛かる
芸術技能減少 2d6
去らばう霧 100% 強い放射物質を放つ霧が内側から肉体を融かす
ダメージ 4d6
毎ターン【10】のHP自動修復
※ヨグ=ソトースのデータを基に構築している。魔術的な攻撃以外通じない。ターンの合間に吸収されたNPCの断末魔を入れると良いかもしれない。難易度は適宜調整すること。
息をするたび肺の機構を焦がす絶対的な恐怖。自らの意志を力とし、立ち続けるものに、銀色の光は呼応し貴方達に力をもたらす。然るべき時、とは今なのだと感じる。
■特殊戦闘能力
HO1:クロトの糸巻き棒≪紡ぐもの≫
あなたの性質は運命を紡ぎ始める力だ。
その力は、敵の弱点部位を的確に引きずり出すことが出来る。
※敵の技能を半減させることが出来る
HO2:ラケシスの天眼鏡≪描くもの≫
あなたの性質は運命を見極める力だ。
その力は、標的への照準を正確に定めることが出来る。
※敵へのダメージを2倍にする
HO3:アトロポスの鋏≪不可避のもの≫
あなたの性質は、運命を決定付ける力だ。
その力は、与えたダメージを不可逆のものと出来る。
※敵の自動修復を無効にする
いずれも使用には1ターンにつき1d3のMP消費
一律1d10のダメージ。(HO2が芸術に成功していれば2d10)
(戦闘開始)
▼3ターン経過、もしくは敵の体力が半分になった段階でイベント
膨大な熱量を持つ神を前に、貴方達は自らの意志で立ち続けた。それでも神は慄くことは無い。
膝を折るわけにはいかない、退くわけにはいかない。けれど圧倒的な力量差はあなた方の精神をじわじわと蝕んでいく。そんな時だ。あなたがたの横を銀色の衝撃波が過ぎ去っていく。
「さあ、倒れてはいけないよ我が子たち。人間も、オートマタも独りでは立てるわけなどないのだから」
振り向けばそこには見慣れた父の姿があった。彼は右腕に不思議な力を帯びており、それは巨大な拳のようにも思えた。予感していただろうか、驚くだろうか。そんな貴方達の頬を、蛍のような光が掠めていく。雨が降らないはずのシカラバに、ひらりひらりと見たこともない銀細工の花の雨が降る。その命は、あなたがたに力を与えてくれる。
全員、芸術技能【10】の回復、【10の装甲】を得る。
※父が助力をしてくれる。ヨグ=ソトースの拳。【50%】の技能値で成功すれば対象の動きを止め、ターンの終わりに全員2d10の追加攻撃が可能になる。これにMPの消費は必要ない。
▼戦闘終了後
崩れていく。零れ落ちていく、糸が解けるように、神話の戦いに敗れ去った神は、ほろほろと霧が晴れていくように部品を取り落とし、その姿を保てなくなっていく。神の崩御に胸を撫で下ろそうとするかもしれない。だが同時に、凄まじい残響が轟き渡る。それは、神同士の拮抗が崩れ去った末の崩壊だった。時を止めた楔は、もはやここにはない。であれば、此処から宇宙は生誕するのだろう。宇宙のはじまりには、ビックバンと呼ばれる爆発的膨張があるのだという。超高温高密度のエネルギーの塊。それは、形あるものが耐えられる熱量ではないことは容易に想像がつく。だが迷いすら、星が弾ける一瞬には及ばない。「危ない!」と叫んだ声の揺らぎすら熱に融け、父が、貴方達に覆いかぶさるように庇い、眼前は光に飲み込まれ──意識は、途切れた。
▼『 』
貴方達は、目を醒ます。朝告げ鳥が鳴かずとも、貴方達は覚醒する。
そこは雲の上のような景色だった。視界一面に白が敷かれ、何処にも果てが無いように思えた。星ひとつない純然な闇と同義の、命の息吹などひとつもない、純然な白。そんな空間だった。
視線を巡らせれば父も同じように起き上がり、怪我ひとつなくあるようだった。そうして遠くに男と女が倒れている。この距離から見たところで、生命活動を停止しているように見えた。命を使い尽くしたことで1体と1人はようやく、ただのオートマタと人として穏やかに在れたようにも見えた。彼らと自分たちの間に、ひらりと小さな姿が舞い降りる。
くるり、貴方達がいつかに贈った花びらの傘を手元で回して、「姉」である「ウタ」は陶磁器の頬を笑みの形に整えたまま貴方達を迎えてくれた。
「よかった。間に合ったわね。ようこそ旅人よ、窮極の門の内側へ」
その声色は、何時もより悠然と響き渡った。
「愚かな化身が手間を掛けました。おかげで私も自らの役目に戻れます」
「旅人よ、ここは銀の鍵に選ばれし者のみがたどり着ける命の最果て」
「お話をしましょうか、貴方達の行く末を」
※この時点でウタは最終戦闘前のSANcで正気度が尽きている者に銀色の雨を降らせ、1d50の回復を与える。回復値は適宜調整しても構わない。
・ウタ?
「ええ、まだそう呼んでくださって構いませんよ。私は間違いなく、貴方達と過ごしたウタというオートマタですから。本当の名が気になりますか?……私を書に記した人間は、タウィル・アト=ウムルと、そう呼びました」
・ここは?
「窮極の門の内側……私の主たる神に連なるものの領域です。今この時はシェルターの様に思えばいいですよ」
・状況は?
「貴方達の活躍のおかげで、長い間止まっていた時間が動き出しました。このまま時は過ぎ、138億の時が過ぎれば、つつがなく人類誕生にまで至る事でしょう」
・私たちはどうなる?
「今から、貴方達が選べる道をひとつひとつ説明してあげます。私も長い拮抗に巻き込まれ力が弱まっていますから、願いはひとつずつしか聞き届けられませんが」
・始祖とゼロはどうなる?
「ドリームランドに魂ごと幽閉し、存在を抹消します。ここから至る全宇宙の何れからも」
▼最後の選択
「1つ、ただのオートマタとして各々の世界に帰る道」
「1つ、人間となり、各々の世界で生きていく道」
「これらを選ぶ場合、私の案内に従って決まった道を行くことになります」
「ここには私たちの主神ともいえる神がおわします。ええ、先ほど貴方達が見たものと同質ですよ。今彼の姿を認識してしまえば、精神を崩してしまう者もいるでしょうね」
「【HO1】、【HO2】、貴方達が元の世界に戻る手段はこれしかありません」
このルートでは神との謁見は避けられるが各々の世界に戻る事しか出来ず、あなたがたの[es]も回収される。一般的なオートマタ、人間に戻る事だろう(オートマタに戻る場合継続利用不可)
「1つ、このまま宇宙の生誕を待ちわび、ここで眠り続ける道」
「今の[es]を宿したあり様のまま、ここでスリープモードに入る道です」
「普通の人間には耐えることが出来ないけれど、貴方達はオートマタです。夢も見ない深い眠りに身を委ねれば、いつか誰かが見つけて、その先でつつがなく生きる術を授けてくれるかもしれない」
「この道で在ればあなたたちは確実に一緒の世界線に居ることが出来るでしょう」
「[es]もそれだけの時間があれば貴方達に馴染んで悪さをすることもないでしょうし」
「ただしここから続いていく新しい世界線は【HO3】が生きた場所に至る世界です。あくまで【HO1】や【HO2】が産まれ生きた世界とは違います」
「1つ、新たなシカラバを作り出す道」
「時間の流れを止めない形で在れば、私もあの世界があることを許します」
「ただ星を産むという行為には強い意志が必要になるでしょう」
「もし誰か一人でも意志が折れてしまえば、歪な星が生まれてしまうかもしれません」
※全員が芸術技能に成功する必要がある。失敗した場合は数年後に崩壊する。
「今の私が提示できるのはこれくらい。別々の道に戻るか、同じ道を進むか、此処にとどまるか」
「もし、自分の有り様を決めたうえで尚みな共に居たいというのなら、主の元へと送り届けましょう。そこで真なる神に願いなさい。貴方達の因果を全から一と成すことを」
「私の愛しい弟妹たち。あなたのシカラバは、あなたが選んで」
【質問例】
・なぜ決まった道を進む際に[es]を回収するのか
「案内料だとでも思ってください」
※【HO1】と【HO2】に何かの因果が働き、始祖が再び[es]を持つ事態を避けるため。
【HO3】が門を通る場合、戻る世界はメタ的に言うと「すべて丸く収まったシナリオ後の世界」ではあるが、[es]の時を渡る性質上回収した方が安全なため。
・決まった道を進み、他HOと同じ世界に行きたい
「残念ですが、私の案内で貴方達が戻れるのは既に作られている、来た道だけです。道から逸れようとすれば、どんな世界に飛ばされてしまうか、保証は出来かねます」
・自分たちがこの世界に留まることでパラドックスはどうなってしまうのか
「世界にはおおよそ、エントロピーや矯正力というものが働きます。本来人間ひとり、人形一体の存在や影響力など微々たるものなのです。今回このような大層な事態に至ったのはあくまで『銀の鍵を悪用されたから』に過ぎません」と父を睨みつける。父は頭を掻いてバツが悪そうにする。
※今回の事態は【HO3】ではなく始祖が[es]を持ってしまった、という部分に原因があるのでそれが取り除かれた今はとりあえず気にしなくていい。
・ここで眠り続け、望む時代で起きることは出来るのか
「君達が望むなら、私が起こしに行ってあげるよ」と父が言う。
※ルート選択となる。上記のセリフを提示し、PL、PC共に十分に相談の時間を取り、これから先どうありたいか、というヒアリングをすること。背景に触れる質問などもウタに回答させても良い。
※父に関しては、貴方達の選択にしたがう。ルート:K以外であれば「時間旅行でもしようかなぁ」などと背伸びをしてみせるし、シカラバを作り出すならばその発展と復興に協力してくれる。
【ルート:A】
ウタの案内に従い門を通り、オートマタとして自分の世界線に戻る
【ルート:L】
・ウタの案内に従い門を通り、人間として自分の世界線に戻る
【ルート:S】
・[es]を持ったままこの場所で休眠状態に入り、辿り着く未来を待つ
【ルート:K】
・新たなシカラバを作り出す
【ルート:U】
・オートマタとして、人間として、己のあり様を選んだ上で全員が共の世界線にあることを望む
※ED描写は一例である。シナリオの根幹を揺るがさない程度でPCの設定に合わせ適宜変更すること
▼ルート:Aeon[イーオン/永遠]
・ウタの案内に従い門を通り、オートマタとして自分の世界線に戻る
貴方は自らの意志で、自らの世界に戻ることを選択した。
別れを惜しみ、離れることを選択するのだろう。それを咎めるものは何処にもいない。それもまた貴方の有り様であるからだ。
ひらりと傘を広げたウタがあなた方を先導する。歩き、進み、やがてあなたがたの身体は光に包まれ
──そこで意識は途切れた。
行きかう往来はにわかに賑わい、人々は入り口に設えられたステージ上のオートマタの周囲に集まっている。
「ごきげんようみなさま、ようこそアノマリオール博物館へ」
「さて、今日の展示物は1体の心臓の無いオートマタです」
「どこかのヴィーナスがお伝えする通り、欠損と秘密は美しさに結び付くと言います」
「慌てたりなどしないで大丈夫。美しい案内人があなた方をお導きくださいますよ」
案内役のオートマタの無機質な自動音声に呼応したように、光を含み青みを帯びる艶やかな髪を、真白のリボンで束ねた美しい学芸員の女性が、客を貴方の元に案内する。貴方の事を称賛する声も、あたたかく見つめる視線も、只の展示品でしかない貴方は認識することが出来ない。
貴方はその動力を止めたまま、誰かが迎えに来てくれるのを待ち続けている。
されど、あなたは選んだのだ。
永劫に身を尽くす、オートマタであるという自由を。
▽継続ロスト/AFとして特殊生還可能
AF:心臓のないオートマタ
自らの意志でそうあるべきと心を定めたオートマタ。
その意志は例え歯車をひとつ失えども、人々にたおやかな愛を与えるのだろう。
持ち主に特殊作成ルールにて加算した能力値に+1の補正を与える。
▼ルート:Libera[リベラ/自由]
・ウタの案内に従い門を通り、人間として自分の世界線に戻る
貴方は自らの意志で、自らの有り様を捨て、元に在るべき世界に戻ることを選択した。
別れを惜しみ、離れることを選択するのだろう。それを咎めるものは何処にもいない。それもまたあなたの有り様であるからだ。ひらりと傘を広げたウタがあなた方を先導する。歩き、進み、やがて貴方の身体は光に包まれ
──そこで意識は途切れた。
貴方は目を醒ます。
静けさだけが反響する石造りの建物で、人の気配もなければ見覚えもない。
やけに関節が滑らかで皮膚も瑞々しい、約束の通り人間になったのだと思いながら瞼をもたげた貴方の目も前には、美しい女性は「お客様、閉館時間です。すみやかにおかえりください」と微笑んだ。
ここが博物館だと説明され、急かされるまま外に出てみれば見知った光景が広がっている。
貴方がシカラバに行くまでに生きていた世界だ。安堵する者もいるかもしれない、これからどう生きていくべきか途方に暮れるものもいるかもしれない。
されど、あなたは選んだのだ。
永劫にさらばと別れを告げ、人であるという自由を。
▽探索者生還/継続可能
▼ルート:S evers[エヴァーズ/永劫に然るべき]
・[es]を持ったままこの場所で休眠状態に入り、辿り着く未来を待つ
貴方は眠りにつく。睡眠と銘打たれた定時的な休息行為は、ここでは心臓のクールダウンのため必要とされている。未だに慣れない者もいるかもしれない。
それでも貴方はその瞼を伏せて、意識を己から切り離し、神のゆりかごに揺られ眠りについた。
やがて深い闇の中に原子が産まれ、宇宙は晴れ渡り光が届くようになった。時間を辿りながら最初の銀河、初めの星、原始銀河が産まれ、やがて赤い銀の河が涙のように流れ始めた。そののち幾重に産まれ行く銀河たちを後々生まれる人は天の川と呼ぶのだという。幾重もの膨張収縮、減速加速を繰り返しながら、91億年ののちに太陽系が産声を上げた。
数kmほどの小さな惑星からはじまり、然るべきのちに至り、美しき地球は、青き私たちの星は誕生する。貴方達が身を尽くした果てにて、確かに命たちは産声を上げていくのだろう。
行きかう往来は賑わい、人々は入り口に設えられた丸いステージ上の、派手なオートマタの周囲に集まっている。
「ごきげんようみなさま、ようこそアノマリオール博物館へ!」
「さて、今日の展示物は【このルートを選んだ探索者の数】体のオートマタ達です」
「深き眠りについたオートマタ!一番の見どころは様々な時代様式を踏襲しているところでしょうか?」
「ああ、慌てたりなどしないで大丈夫。美しい案内人があなた方をお導きくださいますからね」
やけに感情豊かなオートマタの自動音声に呼応したように、光を含み青みを帯びる艶やかな髪を、真白のリボンで束ねた美しい学芸員の女性が、二人の客を案内する。それは、幼い少女を抱えた白髪の男だった。
朝告げ鳥の鳴き声が聞こえたような気がして、貴方達は展示室の真ん中で目を醒ます。幾億年の時を超え、星を超え、幾度昨日を超えたとしても、明日は今日という形で等しくやって来る。機械仕掛けの鳩時計が、空を掻き集めるように翼をうち震わせながら鞴(ふいご)を軋ませ7度鳴き、貴方達の覚醒を手伝った。皮の表がきしりとさえずり、小さく意識は浮上する。入り組んだ肺の機構をにわか風で弾き、生まれた動力でひいふうみいとまばたいて、 関節の滑らかさを指折り確かめ、
そうして自らが、自らの意志で動くものであることを思い、知るのだ。
「おはよう、みんな。今日も鳩時計は役目を果たしてくれたのね」
聞き慣れた声が、貴方達の目覚めを、歓迎してくれた。
▽探索者生還/特殊継続可能
後遺症:ワールドトラベラー
永い眠りの最中、ヨグ=ソトースの寵愛とイス人の加護を受けたあなた方は猟犬の追走なく様々な時間を旅することが出来る(別世界線への移動は出来ない)
ただし神の怒りに触れればこの権利は永久にはく奪されるだろう。あなたがこの力を有するのは、「機械人形の身体」と「自ら運命を定める意志」という相反する二つの性質を兼ね備えているからに他ならない。
▼ルート:Kardia[カルディア/心臓]
・新たなシカラバを作り出す
貴方は選択する。自らの意志で生み出した新たなシカラバを、終の棲家とする道を。貴方達が糸を紡ぐようにその銀を掲げれば、するりと糸は繭を作り、貴方達の身体を包み込み、そこから花咲くように光が溢れ、貴方達だけの城を、星を、作り出していくのだろう。
貴方達は光に導かれるようにして、目を閉じた。
──オートマタたちの集う街、シカラバ。
様々な世界、時間軸から収集された彼らが集うこの場所を、スクラップ場だと嘆く者もいれば最後の理想郷だと歌う者もいる。貴方達は、この街に住むオートマタだ。
欠陥や経年劣化、時代や人心の移り変わりによりその役目を終えた貴方達は、『父』に拾われここに来た。共に過ごした年月はほんの数日かもしれないし、数年かもしれない。例え幾度昨日を超えたとしても、明日は今日という形で等しくやって来る。どれだけ世界が壊れてしまったとしても、貴方達は動き続け、朝告げ鳥も、シカラバという居場所も貴方達と父の手に寄り復興され、またあなた方の覚醒を手伝うのだろう。
貴方達は選んだ。
永劫に、然らばとある道を。
▽探索者ロスト/特殊継続可能
※もし誰かが芸術に失敗していた場合、全員が<1d100>を振る。
【合計値】年後に貴方達のシカラバは崩壊するだろう
▼ルート:Uno[ウーノー/ひとつ]
・オートマタとして、人間として、己のあり様を選んだ上で全員が共の世界線にあることを望む
貴方達の覚悟を聞き届けると、ウタはくるりと手元の傘を回した。
「先ほど、主の元に案内すると言いましたが語弊がありますね」
「何故って。もう、居るでしょう?貴方達の前に」
「貴方達はもう、神の座に至った者ども。然らば、見詰めなさい、世界の真理を」
「なおも願え、紡ぐ因果を望むならば」
はた、と。気づく。そうだ、我々は常に忘れているだけなのだ。
ここは神の胎の中、或いは外宇宙、ただ認識という在り方だけが広がる世界。
その認識が、眼前が遠望が、私と貴方と神で、全て塗りつぶされる。
「彼の神は私であり、貴方であり、宇宙であり、時間であり、全てであり、ひとつである」
もはやだれの唇からその音が零れ落ちたかすら、わからない。
【全にして一、一にして全なるもの】ヨグ=ソトースの存在を「認識」した探索者
<SANc(1d10/1d100)>
(ここでSAN0になっても後の芸術技能判定には参加できることとする)
全員<芸術技能>判定
誰か一人でも失敗した場合、あなたがたの因果は完全に分かたれる。SANが残っている探索者は意識を失ったのち、強制的にルートLかAに移行する(各々の世界線に戻る)
全員成功→END Moiraiへ
SAN0になった探索者→END Zeroへ
▼END Moirai[モイライ/運命]
それでも尚、我々はひとつと、そして全てを願った。
どうか私がオートマタであれ、人間であれ、自らの意志で動くもので在り続けられますようにと。
世界の何者も、私たちの有り様を、妨げたりなど出来ぬようにと。
淡く強く、煌めき始めた銀色の糸繭が貴方達の自我を守るように紡がれる。それは自らの意志でもって書き記し、歩き定めた運命だ。過去が形作った糸車はくるくると絶え間なく回り、現在を見つめる瞳はしかとこの命を見定めて、未来にまでその銀河を渡す。
貴方の願いは、貴方自身と神に聞き届けられた。
宇宙のエントロピーを束ねてひとつの星とし、そのゆらぎはいつか生まれる蒼い星にまで届く光と命となるのだ。
(最後のRP)
世界創生の奔流のその柔らかさなゆりかごに、自らが在るべき場所に至るために身を委ねる。
貴方達の意識が深い眠りに落ちる時、貴方達の紡いだ因果の様にすっくと伸びたたおやかな銀河をたたえた女性が、微笑んだ気がした。
やがてあなた方が紡いだ糸繭の、深い白の中に原子が産まれ、宇宙は晴れ渡り、光が届くようになった。時間を辿りながら最初の銀河、初めの星、原始銀河が産まれ、やがて赤い銀の河が涙のように流れ始めた。そののち幾重に産まれ行く銀河たちを後々生まれる人は天の川と呼ぶのだという。幾重もの膨張収縮、減速加速を繰り返しながら、91億年ののちに太陽系が産声を上げた。
数kmほどの小さな惑星からはじまり、然るべきのちに至り、美しき地球は、青き私たちの星は誕生する。貴方達が身を尽くした果てにて、確かに命たちは産声を上げていくのだろう。
行き交う往来、人々は入り口に設えられた丸いステージ上の、派手なオートマタの周囲で足を止めている。夜空を思わせるブルシャンブル―のつるりとしたフォルムに、銀河をひと筆で描いたようなプラチナブロンドの髪、人間の想像し得る美しさを体現したような姿だったが、顔には大きな傷がある。それすらも生き生きとした表情に活かしながら、良く通る声を何処までも響かせる。
「ごきげんようみなさま、ようこそアノマリオール博物館へ!」
「さて、今日一番の展示物は、一体のオートマタとなっております」
「私の銀河も、彼の人に準えられ作られました」
「ああ、慌てたりなどしないで大丈夫。美しい案内人があなた方をお導きくださいますからね」
やけに感情豊かなオートマタの自動音声に呼応したように、光を含み青みを帯びる艶やかな髪を、真白のリボンで束ねた美しい学芸員の女性が、客人をひとりまたひとりとそのオートマタの前に案内する。
行儀よく展示台に座らされ、すました人形。長い白銀の髪は一寸たがわぬシンメトリーにゆるく流れ、瞳は伏せられている。一見、その肢体は完璧のように思えた。だが惹き付けられるように上から下までを見てみれば、無いのだ。ぽ、っかりとした虚空を見せるその場所には、何か大事なものが収まっていたように思える。──心臓、だろうか。学芸員の説明によれば、このオートマタの部品は特殊なため修復が不可能であるとの事だ。しかし、人々は想う。
大事な部品が欠けてしまったというのに、ちょうど人間と人形の境目を踏むようにたおやかに微笑むその表情は、まるで深々とした夜空に煌めく星を束ねた銀河の様に美しい、と。
▽栄転
敢えて探索者達の描写はしていない。同じ時代にいるのなら各自で再会するシーンを作っても良いし、HO1を迎えに行くシーンがあってもいいし、HO3に会いに行くシーンがあっても良い。
貴方の想う、貴方のシカラバを選んだのだから、自由に描写をして終了と成る。
▼END Zero
いったいいつから、自分がこの世界に存在していると思い込んでいたのだろう。
そうだ、そうだ!私は唯の星のひとかけら、目に見えぬ素粒子、破裂した音、ディスプレイに寄り集まった光の集合体、ただ一枚の紙、削除ボタンひとつで抹消されるデータ、それらであり、唯一でしかない。初めから存在などしていなかったのだ。理解したのではない、然り、でしか在り得ないのだ。帰ろう、目を綴じよう、シナリオを終わろう。
ねえ、私、僕、俺、貴方、全て、ひとつ、最後はこう締めくくりましょう。
「CoCシナリオ、然らば永劫、見よ美し」
「探索者、ワールドロストにて、終了です」
「お疲れ様でした」
▽暗転
ヨグ=ソトースと完全に同化した探索者が、KPやPLと同化し台詞をも定め、終了と成る。
▼エピローグ
とある家族団らんの傍ら、ニュースキャスターの柔らかな声が食卓を満たした。
「本日、アルカナ天文学研究所より新たな星の存在が発表されました。今まで宇宙最古とされてきたメトシェラ星を大きく上回る長寿星で、なんと180億年以上前から存在していたとのことです。宇宙の誕生は一般的には138億年前と言われていますから、この計算が間違いなければ宇宙より歴史の古い星となります。広大で不可思議な宇宙の歴史にまたひとつ、疑問とロマンの糸を垂らすこの星については、今後とも研究所にて、構成物の計測などを続けていくとの事です。この星の第一発見者であるトーマ氏はこの星の名を──」
そんな世紀の大発見のことなど露知らず、といった様子で子供たちは夕飯のオムライスを口いっぱいに頬張っている。両親は優しい瞳で彼らを見つめ、時折たしなめ口許を拭い、当たり前に過ぎ去る時間を喜びながらも惜しんでゆくのだろう。
──世界は、たおやかな愛に満ちている。
私達はその愛を、運命の糸が零れ落ちる先、ショウウインドウの内側、遥か遠い命の果てから。
ずっと見続けていたような、気さえするのです。
▼生還報酬
SAN回復 1d20
芸術技能 50%(人間に戻った探索者のみ)
クトゥルフ神話技能 10%
ルートUからのEND M、Z以外を選んだ探索者にはHO毎にED名が与えられる。
HO1:END K
HO2:END L
HO3:END A
▼通過探索者の扱いについて
・人間になった探索者は特殊作成ルールにおいて加算した能力値+3及び芸術技能の消滅。その上で上記の報酬を得る。この場合、名前、見た目を変更するなどして本シナリオ出身の探索者であることは伏せて使用すること。
・エスを持ったまま現代に至った探索者に関してはルカの手によって平凡な見せかけの呪文が組み込まれている。技能値などはそのままで、上記人間になった探索者と同じように運用すること。
・エスを失いただのオートマタに戻った探索者については継続不可。ただしAFとしての生還となるため別シナリオのAFやNPCとして扱う、既存探索者の持ち物にする、などは自由。
・ルートL、Aなどを選択し元の世界線に戻った探索者達の因果が再び交わることはない。すなわちPC同卓を不可能とする。ただしドリームランドシナリオや夢クローズドなどで再び出会う事、同じ世界線に居る姿かたちが同じだけの別人(当シナリオの記憶や経験はないものとする)と相まみえる事は制限の限りではない。あなたがたがクトゥルフ神話TRPGというゲームの盤上に居る限り、糸はどれだけ細くとも繋がっているのだから。
・END報告は「END M」のような形にすること。個別EDの場合も同じように表記して構わない。
▼クレジット
NPC立ち絵提供:つきのわむく様
Twitter:https://twitter.com/tukimeguri
BOOTH:https://tukimeguri.booth.pm/
画像権利の一切はつきのわむく様に帰属します。
以下の画像は企画「ムーサ異装展覧界」開催期間内において、セッション目的でのみ利用可能。
自作発言、二次配布、無断転載、ネタバレを含む状態でのSNS等へのアップロードの一切を禁止します。