侵色

侵色01.png

侵色

エバ

​展示「万華鏡」

【諸注意】

・本シナリオにおける事象は全てフィクションであり、実在の施設等との関係は一切ありません。
・神話生物に対する独自解釈を含みます。

【シナリオの 6版/7版 コンバートについて】

可能。ただし、シナリオの根幹が変わるような改変は不可。

【シナリオに関するお問合せ先】

作者TwitterのDMまでお問い合わせ下さい(https://twitter.com/Evi_TRPG)

【概要】

 「侵色」

 よみ:しんしょく

   作  :エバ

   テーマ:万華鏡

プレイ人数 :1人

プレイ時間 :1-3時間(ボイスセッション)

推奨技能  :目星(+ある程度のpow)

シナリオ傾向:継続探索者限定/ホラー要素あり

晴れた日の抜けるような#0095d9い空には、たんぽぽの綿毛の様な#ffffffい雲がふわふわと漂っている。街路樹の#00552eの葉は、陽光を受けてきらきらと朝露をきらめかせる。
色で満ちた世界をあなたは生きている。
さあ、おいでなさい。
ねえ、そしてご覧なさい。
あなたのよく知るそんな世界が、あなたの知らない世界に変わってしまうその様を。

ようこそ、色彩の展覧会へ。
どうぞごゆっくり、お楽しみ下さいませ。

以下、KP向け情報となります。

概要

プレイ人数: 1人
推定時間: 1-3時間
推奨技能: 目星
難易度: 低/ロスト: あり(極低)
条件: 継続探索者
備考: 探索者がペースメーカー等の体内機器を使用していないことが前提である。PLがそういった探索者を挙げていなければ伝えなくて良い。
 

背景

 今シナリオで起きる一連の異変の原因は、万華鏡『無彩』の中に閉じ込められた「宇宙からの色」の破片である。

 万華鏡を作成したのは、神話的事象に理解があり、かつ美を見出してしまった1800年代のマサチューセッツ州の芸術家。「宇宙からの色」の破片を目にした彼あるいは彼女は、それを最も美しく見せるものとして万華鏡を作り、その中に磁場を用意することで破片を縛り付けた。材質に鉛を使用したために色の持つ放射線すらも、万華鏡は封じ込めることが可能だった。

 そして時は流れ現代。
 芸術家の死後もその出来から人々の手を渡り歩いていた万華鏡が辿り着いたのがアノマリオール博物館である。長い時を経た万華鏡は少しずつその構造に支障を来たしており、探索者が手に取って動かしたその時に、宇宙からの色の破片は磁場から抜け出してしまった。
 そして、その時一番暗かった目の前の水場、つまり探索者の眼球の奥底に入り込むことになる。

 探索者が目から破片を取り出すためには、再度目を磁場である万華鏡に近づける、もしくは美術館から抜け出すことが必要である。
 勿論、欠片とはいえ、宇宙からの色を野放しにすれば相応の影響はいつか現れるのだろうが。

特殊ギミック

本作シナリオには、3つのギミックが存在する。
これらのギミックは「宇宙からの色」に入り込まれた時点からシナリオ終了まで続行する。3を除く2つは、シーン3の探索開始時にPLに伝えること。

☆特殊ギミック1: KPによるSAN値チェック
 あなたの目は異常な世界を映し、あなたの聴覚は正常に機能しなくなる。異様な世界を前にして、あなたは自分の正気を信じられるだろうか。
 この場に探索者の正気を保証してくれるものは何も無い。SANcのロールをKPが行う。

☆特殊ギミック2: 不透明な探索箇所
 「異常な存在」が在ることを少なくとも一度理解してしまったあなたは、怪しいものは見つけられても、全てが怪しく見えたらどうするだろう。誰も、代わりに疑い、代わりに考えてはくれないのだから。
 これ以降、探索箇所は「KPから提示するもの」「KPは提示せずにPLから指定するもの」に分かれる。
 KPから提示するものだけでもシナリオクリアは可能であり、PLが指定して情報を見つけられる箇所は必ず描写に記載されている。

☆特殊ギミック3: 自分自身との対抗
 目の前に有り得ないものが現れた時、人間の脳はそれを補完しようと無いものを作り出し、あるものをねじ曲げようとする。あなたの脳も。
 探索者の脳は「宇宙からの色」が影響を及ぼした視覚情報により多大な負荷がかかり、錯覚を起こし、あるはずの無いものを作り出している。錯覚を払うためには、探索者がそれを疑い、正しく認識しようとする必要がある。
 シナリオ内に出てくる「鏡」等の存在を疑う場合、1d100を振り、50以下の出目を出すことで一時的に錯覚を払うことが出来る。

※本シナリオにおける「宇宙からの色」のPOWは12として扱う。

エンド分岐
 本シナリオのエンド分岐は
「色を万華鏡に戻して美術館を出る」 A Achromatic(無彩)
「色が入り込んだまま美術館を出る」 B Barren(荒廃)
「人やものに危害を加える」 C Crime(罪)
「目を抉り出す」D Desperation(自暴自棄)
の4種である。
 AとBは明確な分岐ポイントがあるが、CとDはシナリオ中いつでもPCの行動次第でエンディングに移行することが出来る。Cについては、来館者や美術品への明確な害意が無い(見えない鏡を壊そうとするなど)場合は係員が注意しにくるという形での警告を行うなどすると良い。

シーン0:導入

「切符を拝見致しました」
「どうぞ、ご入場下さいませ」
 かちん。
 スタンプがチケットに捺される音に、あなたはふっと我に返る。笑顔を浮かべた受付嬢があちらですと指したその扉を、目を輝かせた人々が声をささめかせながら足を早めて通り過ぎていく。
 アノマリオール博物館。
 あなたは、そこで開催される展覧会へと訪れたところだ。

 こちらをどうぞ、とチケットと共にパンフレットが差し出される。今回の展覧会のテーマは「色彩」らしく、色とりどりの絵画や陶器といった芸術品があなたの目を惹くことだろう。
 また、館内マップがパンフレットに載っている。ある程度進路も決まっているようで、2つに区分けされたギャラリーをぐるりと見て回り、特別展示室のある廊下を通るとホールに戻ってくる形になる様だ。(そこより以前は入口以外は自由に行き来できるし、一周してもまたもう一度見にいくことが出来る)

 →マップ開示
▽①入口
▽②案内所
▽③カフェテリア
▽④資料室
▽⑤ギャラリーA
▽⑥ギャラリーB
▽⑦特別展示室
▽⑧出口
(今探索者がいるのは入口と案内所の間辺り)

 →<目星>
 パンフレットに載せられた数え切れないほどの品目の中に、ふと、あなたは妙に目を惹かれる美術品を見つける。
 今回の目玉なのだろう。特別展示室にあると記載されたそれは、細かな装飾の施されたアンティーク調の万華鏡だ。
 『無彩』
 あなたはそれを展覧会のテーマに似つかわしくないと感じるかもしれないし、それもまた色の一つなのだろう。と納得するかもしれない。

 また、チケットの裏面は各展示ブースでスタンプを押すことが出来るようになっていることに気がつく。
 いくつかのブースのスタンプ欄には『体験コーナー有り』『ペースメーカー等の機器を使用している方は鑑賞を御遠慮下さい』といった紹介や注意書きがされている。
 ……そう言えば、とあなたは思う。
 チケットを受付に見せた際に、医療機器を使用していないかと聞かれた記憶がある。

 以降、「無彩」を見に行くまでは自由にRP・探索を可能とする。
 →シーン0-2へ

シーン0-2:事前探索
 マップ1にある場所・及び博物館の外観が探索箇所であると伝えること(「無彩」を見に行くまで情報はほぼ無いので、「無彩」を見に行けばイベントが発生すると先に伝えても良い)。

探索:博物館の外観
 白を基調としたシンプルな外観だ。曇りひとつないガラスが、今日の空の色をつるりと反射している。
 .....よく見ると鏡になっている様だ。マジックミラーなのかもしれない。うっかりここで髪を整えたりすれば、反対側にいる誰かからはさぞ奇妙なものを見る目をされることだろう。

探索:受付
 係員たちが忙しそうに来館者の案内をしていることが分かる。今は、あまり彼らに話しかけるだけの余裕は無さそうだと感じるだろう。

 →<目星>
 来館者の一部が腕章の様なものを受け取っているのが目に入る。白地に赤いハート、ハートの中に白抜きで十字マークが描かれている。
 (ペースメーカーを始めとする医療機器を使用している来館者へ渡されるもの)


探索:案内所
 ベビーカーや車椅子の貸出、落し物の保管などが行われている。迷子センターも兼ねている様だ。
 (ここで美術品について詳しく聞こうとするのであれば、実物を見に行ったり資料室で展示物についての資料を閲覧することを勧められる。案内所の係員たちはそこまで展示物に詳しくないため。)

探索:資料室
 沢山の棚や本棚が並んでいる。この博物館の歴史や、展示物についての解説がなされている様だ。今は展覧会が開かれていることもあり、それについての資料が目立つ棚に置かれていたり、音声案内が行われている。
 (『無彩』について調べようとするなら、音声案内はあるが現在修理中の紙が貼られていると描写する。)

探索:カフェテリア
 広めに設けられた空間に、大きな窓から柔らかな光が差し込んでいる。来館者たちが思い思いにゆったりと過ごしているのも分かるだろう。
 あなたが飲み物を注文するのであれば、ひよこ型の砂糖、またはひよこのコースターが付いてくる。この博物館、どうやらひよこを推しているらしい。


プチイベント:女の子
 席について一息ついた所で、不意に、「ひよこ!」という可愛らしい声が耳に届く。そちらに顔を向けると、母親らしき女性と手を繋いだ幼い女の子があなたの手元の砂糖(コースター)を指さしている。母親の方が慌ててそれをたしなめながらあなたに謝ってくるが、女の子はやはり気になるのか、ちらちらとひよこに目を向けている。
 ひよこをあげると喜ぶし、あげないとしょんぼりする。
 また、ひよこをあげていた場合、特別展示室で少しだけ情報が得やすくなる。


探索:ギャラリーA
 ギャラリーへ足を踏み入れると、微かな画材の匂いが鼻先をくすぐる。この場所は主に絵画が置かれている様だ。
 色彩をテーマとしているだけあって、煌びやかなもの、鮮やかなもの、穏やかなもの、沢山の色があなたの視界で踊っている。好みの絵画が見つけられたかどうか、<目星>や<芸術:絵画>などで探してみても良いだろう。
 もしかしたらギャラリーAとBの間に、彫刻などの体験コーナーの様なものがあるかもしれない。

探索:ギャラリーB
 ギャラリーへ足を踏み入れると、まず最初に目に入るのはひよこ……の、像。滑らかに表面が磨きあげられたひよこはシルクハットを被って蝶ネクタイを首(と思わしき部分)に飾り、何処か凛々しい面立ちをしている。
 ……この場所は主に彫刻が置かれている様だ。
 彫刻と言えばまず頭に浮かぶのは真っ白な石膏像かもしれないが、この場所に鎮座するものたちはそのどれもが色を纏っている。彩色されたものもあれば、元々色を持った石を削り出しているものもあり、大きなものもあれば、小さなものもある。好みの彫刻が見つけられたかどうか、<目星>や<芸術:彫刻>などで探してみても良いだろう。


 そうしてあなたは伸び伸びと美術品を見て周り、あるいは一直線に、特別展示室へ向かう。
 →シーン1へ

シーン1:無彩の万華鏡


 博物館内は大半が一方通行であり、あなたは必然的にそこに行き着く。
 特別展示室の入口には何処かで見たようなハートマークに×が付けられた看板が立ててあり、傍のロッカーには「入室前に磁気カードや電子機器をこちらへお預け下さい」の張り紙がされている。
 (ハートマークは受付で一部の人に渡される腕章と同じもの。電子機器はここで置いていかないと壊れるかもしれない。無理に持っていく場合は<幸運>)

 踏み込んだそこは、今までとは異なって薄暗く、部屋のちょうど中心だけが照明によって照らされているのが分かる。
 明かりの照らす先には、台座がひとつ。
 台座の傍に、展示員が一人。
 『無彩』と題されたその万華鏡はどうやら手に取って実際に鑑賞できる様で、丁度小さな子供を伴った女性の手から、傍に控えている展示員へと戻されたところだった。

<聞き耳>
→親子の会話が聞こえる。
「やっぱり青だってー!」
「アンタさっき薔薇の絵ずーっと見てたからそう見えたんじゃないの?」
追加描写
 カフェテリアでのプチイベントを通っている探索者であれば、その子供に見覚えがある。あの女の子だ。女の子も探索者に気がついて、近寄ってくるなり「お兄ちゃん/お姉ちゃんも見て!」と主張してくる。
 話を細かく聞くのなら、「あのね、青いきらきらが見えたの。でもお母さんは色がないって!」「あるもん!見たもん!」と言ったように答える。(いくらか会話をした後、母親に連れられて展示室を退出していく)


展示員から話を聞く
 展示員の方へとあなたが近寄れば、「ようこそ、色彩の展覧会へ。お楽しみ頂けておりますでしょうか?」と笑顔を向けてくる。どうやらこの展示物を担当している様で、他の場所へ行く気配は無い。
 万華鏡について聞くのであれば、以下の様な返答を返す。

台詞例
「こちらは、1800年代に作られた『無彩』になります。制作者は不明で、収集家の方から博物館に寄贈して頂きました」
「寄贈された方のご意向で、こちらは手に取ってご覧頂けるように展示しております。鑑賞の際は手袋を着用して頂きます」
「この万華鏡、題の通り無彩色だけで構成されているものなのですが、時折「色が見える」と仰る方もいらっしゃいます。不思議でしょう? 私には白黒にしか見えませんでしたが、それでも非常に美しい作品です」
「こちらの展示室は、体内機器をご利用の方は立ち入らないようお願いしております。当作品は磁場を有しているので、誤作動を招く恐れがあるんです」


 ご覧になりますか?と上品な白手袋に包まれた手が、それよりやや簡素な手袋と万華鏡を差し出す。

 万華鏡を覗く
 →シーン2へ
 

KP向け:
 色が見える人は神話的事象に縁がある、または感受性の高い人です。探索者は前者、女の子は後者です。
 今までは探索者ほどにハッキリ見えてしまった、色に入り込まれた人がいないため、曰く付きとして扱われたことも無ければ怖い話もありませんでした。

シーン2:深淵の色

 あなたは展示員から万華鏡を受け取る。ずしりとした重みと、手袋越しに伝わる冷たさは、それが金属で出来ているだろうことを予想させる。
「鑑賞の際は、顔を押し当ててしまわない様にご注意下さいね」
 そんな展示員の言葉を耳にしながら、あなたはそれを覗き込むことだろう。(どちらの目で覗くか聞いておくとこの後の描写がしやすい。)

 ぱ、っと、視界に無彩色で構成された幾何学模様が映る。くるりと一度回せば、それはキリキリと姿を変え、くるくるとあなたの視界を模様が転がる。
 白と黒と、灰。無彩が踊るその様は、あなたがこれまでに見てきたどの万華鏡よりも繊細で美しく見えるかもしれない。

KPの<1d100>
(ブラフダイス)

 けれど、あなたは気がつく。
 くるりとひらめき、ぱたりと畳まれて消えていくその模様に起きている変化。それは、中心から湧き出る様に始まった。
 万華鏡に、色がつき始めたのだ。
 それは柔らかで、そして見る間に鮮烈なものへと変わっていく。
 その色は、
 白よりもなお無垢で、赤よりもなお生々しく、橙よりなお燦々と暖かに輝き、黄色よりもなお弾ける様に煌めいて、緑よりもなお包み込む様に穏やかで、青よりもなお深く冷たく、紫よりもなお艶めかしく、黒よりもなお拒絶的で、
 その色は、何よりもおぞましく、狂気的で、冒涜的で、あなたのよく知る未知の色だ。

 あなたは咄嗟に、その混沌とした色の氾濫から逃れようと万華鏡を遠ざける。
 その刹那、あなたの視界が違和感を伴って滲んだ。目薬を落とした時の様なそれは[覗き込んだ方の目]から始まり、すぐに両目に及ぶ。反射的に擦る。擦った手に、目を落とす。

 その手は、今さっきまで目にしていた万華鏡の向こう側と同じ色をしていた。
<SANc 0/1d2>

 口の中に鉄じみた味が広がる。目眩と頭痛、耳鳴りに襲われながらあなたは顔を上げる。顔を上げた先にいたのは、困った様にあなたを見る展示員、の、首が曲がる。曲がって、曲がって曲がって逆さまになって近くなった視線があなたのことを覗き込んでぽかりと空いた口から

「だdddddァ いzyyヲ おをっヲ#/@&&?/*∵」

 あなたの中のナニカが、此処から、目の前のものから逃げなくてはならないと叫ぶ。
<SANc 1/1d3>
 咄嗟に、あなたは、その場から駆け出した。

(ここでタイトルコールを行っても良い)
→シーン3へ

 

KP向け:
「宇宙からの色」の欠片がもたらした色覚情報によって探索者の脳は著しく混乱し、その他の感覚(聴覚や味覚等)もそれに引きずられて異常を来たしています。今後色が抜け出すまで、探索者は幻覚や耳鳴りに正気のまま苛まれます。
展示員さんは「大丈夫ですかお客様?」と聞いています。すごい勢いで万華鏡から顔を離したので。この時に彼が慌てて探索者から万華鏡を受け取っています。
また、「ナニカ」は探索者の内部に入り込んだ「宇宙からの色」の欠片を指します。万華鏡に戻されたら嫌なので早くお外に出たい。

シーン3:鏡の廊下

 走って、走って、走って、あなたはようやくその脚を止める。気づけば周囲には、沢山のあなたがいる。否、沢山のあなたなどいるはずが無い。
 歪んだ虹色の光沢を放つ鏡の向こうで、あなたが冷たくあなたを見つめ返す。
 奇妙に傾いたミラーハウスの様なそこは、それでも辛うじて建物の体裁を保っている。よたよたと廊下を歩くあなたを、鏡の向こうのあなたたちがただ目で追っている。

☆開示:特殊ギミック1.2

探索可能箇所(提示するものは▽、提示しないものは▼):
▽あなた
▽廊下
▽鏡の向こうのあなたたち(沢山のあなた)
▼鏡


▽あなた
 あなたの体は、時折輪郭をぐにゃぐにゃと歪ませ、色を変え、それでも何とか人間の形を保っている。
 万華鏡はあなたの手元に無い。あの逆さまになった展示員のところか、あるいは逃げている途中で落としてしまったのかもしれない。

<アイデア>
 ふと、パンフレットを貰っていたことを思い出す。確認しようと取り出せば、溶けたあなたの体が滴って紙を少し汚してしまった。
→マップ2開示



▽廊下
<目星><アイデア>
 ふと天井を見上げれば、べったりと色を貼り付けたあなたの顔と鏡越しに目が合う。このあなたはあなたの真似をしているのか、動く気配は無い。
 また、天井の形状が、博物館のホールから入ってすぐの廊下と良く似ていることに気がつく。このミラーハウスは、博物館と非常によく似た構造をしている様だ。ただ、ここの廊下は人が二人以上並んで歩くのに難儀しそうな程度には狭い。
→現在位置開示(入口-案内所の間)

 


▽鏡の向こうのあなたたち
 じっとあなたを目で追う者もいれば、何処かへと歩き去っていくあなたもいる。たくさんのあなたは、けれどあなたに話しかける様子は無い。
 当然だ。
KPの<s1d100>

(「宇宙からの色」の欠片からPCへのpow対抗。以下色の失敗描写)
 なのに、あなたの胸の内に僅かに染み入るのは孤独感だ。
 何故、どのあなたもこんなに様子がおかしいあなたに気を遣って話しかけてくれないのだろう?

(描写ここまで)

<心理学(PLから提案があった時のみ)>
→成功:
 鏡の向こうのあなたたちは、冷たい目で、或いは怪訝そうにあなたを見つめている。まるで、居てはならないものを見ているかの様に。
→失敗:
 鏡の向こうのあなたたちは、あなたをじっと見つめている。まるであなたが隙を見せるのを待っている様に。

 


▼鏡
 鏡だ。たくさんのあなたたちがいる向こう側が透けて見える。どうして気になったのですか?
<1d100>

(自分とのpow対抗。以下成功描写)
 鏡に触れたあなたの手が、何の抵抗も無く鏡をすり抜ける。咄嗟に手を引いて、もう一度触れようとすれば、コツン、と硬い感触が帰ってくる。
 当たり前だ。鏡なのだから。
 本当に?

(描写ここまで。探索者が再度鏡に触れても鏡は硬い感触を返してくるだけだが、目を閉じて触れる宣言した場合はすり抜ける。適宜描写変更。)


<探索し終わった or この場所にはもう何も無い、と判断した>
 何も分からないままに、せめて転ばないようにと注意を払いながらあなたは歩き出す。突き刺さるたくさんのあなたの視線から逃げるためにも。

→シーン4へ
 

KP向け:
 普通のお客さんたちが自分に見えています。が、それは確実に異常なことであるため、どうにか補完を試みた探索者の脳はお客さんと自分との間に「存在しない鏡」を作り出しました。
 存在しない鏡は、基本的には油膜の様な虹色を浮かべた銀色の鏡ですが、探索者が向こう側の景色を見ようとするとガラスの様に透けて見えます。この鏡、存在しないので。
 心理学成功で「居てはならないもの」と出るのは、他のお客さんから見ればダッシュで逆走してきたと思ったら突然キョロキョロし始めた変な人にしか見えないためです。何あの人……

──────────────────────

このページは「入口」「案内所」について記載。

シーン4-a:入口
 入口の方へと足を向けると、コカカカカカ、と奇妙な音があなたの鼓膜を揺らす。そちらへ顔を向けると、立っているのはあなたとは違う顔。恐らく。のっぺりとした顔にはラピスラズリから生まれた青い薔薇が咲き誇り、その薔薇の合間にぱかりと緑の口が葉の代わりに開き、コカカ、と音を立てる。
 その奇妙さに心臓が跳ね、あなたの中で再びナニカが警鐘を鳴らす。
KPによる<SANc 0/1d2>

<逃げる>
 じりじりと数歩後ずさって、あなたは逃げ出す。青い薔薇の何者かは、コカカカカカ、と音を立てるのみであなたを追いかける様子は無い。
 問題無くその場から離れることが出来る。

 


<この場に残って何かをしたい>

→<1d100>
(「色」に対するpow対抗)
→成功:
 特に制限なく動ける。
→失敗:
 この場を離れるべきだ、とあなたの中の理性ではない部分があなたの冷静な思考を押しのける。
 今あなたの視界に入るのは、ミラーハウスの外に繋がっているかもしれない道、それと今さっき歩いてきた道だけだ。

(<無理やり外に出る><元来た道を戻って別の場所に行く>以外の行動が出来なくなる)


<会話を試みる>
 コカカカカカ。コカカカカカカカカカカカカカカコ。コカカカカカカカカカコカカカカコカカカカカカカカカカココカコ。

……何を言っても、彼女との会話は難しそうだ。

→<目星&アイデア>
 嫌悪感を堪えて、あなたはじっと奇妙な音を発する彼女の口元に目を凝らす。その口は、ごく当たり前の動き方をしていて、とてもその様な音を発している様に見えない。
 あなたがそれを理解した瞬間、係員の服に身を包んだ彼女の音がまた変わる。
「カカカココケカキコキケキククケクカコキカカケクキケカカキカケクコ」


<読唇術等を行おうとする>
→<目星&母国語もしくはアイデア>(会話を試みた際の判定に失敗している場合は値の半分)
 『あなたここてなにをしているんてすかこちらわてくちてわありませんよ』
 『あなたここで何をしているんですか こちらは出口ではありませんよ』
 女性はそれだけ言うと黙り込む。
 周囲のあなたたちはあなたを見つめ、あるいは足を止めることなく通り過ぎていく。

<心理学(PLから提案があった時のみ)>
→成功:
 あなたの振る舞いに困惑している様だ。
→失敗:
 怒りを露わにあなたを咎めている様に見える。そのせいか、青薔薇もくすんで見える。


 以降、「青薔薇の係員」と会話が出来るが、彼女の言葉には都度<目星&母国語>を振る必要があり、体調不良の探索者が言葉を正確に伝えるには<母国語-20> を振る必要がある。何度も失敗する(もしくは技能値が低い)なら、繰り返していくことで技能にプラス補正を入れても良い。
 また、「青薔薇の係員」は台詞全てがカ行である(正しくは探索者の耳にはそう聞こえているだけで普通に喋っている)ため、台詞を口頭で伝える場合もその様に描写すること。下は会話例(コピペなどに使用して下さい)。

会話例
・ここは何処?
「コキカカカコカキココクカクククカクケク」
『こちらはあのまりおーるはくふつかんてす(此方はアノマリオール美術館です)』

・あなたは誰?
「カカキカカカキキクケク」
『わたしはかかりいんです(私は係員です)』

・その薔薇何?
「カクコココケクカ」
『なんのことてすか(何の事ですか?)』

・具合悪いんだけど……
「コクカキカカククカカケカキカカ」
『おくあいがわるくなられましたか(お具合が悪くなられましたか?)』
「カクカキケコカクキキカカケクコケキカカ カケケキカカケコカクカキキカク」
『かんないておやすみになられるのてしたら、かへてりあまでこあんないします(館内でお休みになるのでしたら、カフェテリアまでご案内します)』
「コカケキキカカケクコケキカカケクキカケコカクカキキカク」
『おかえりになられるのてしたらてくちまてこあんないします(お帰りになられるのでしたら出口までご案内します)』
→カフェテリアへ行けるようになる(係員の案内が無ければなかなか入れない)


 ある程度話せば彼女も探索者の異常に気がつくため、休憩をするならカフェテリアへ案内することを申し出ても良い。
 出口へ向かう場合はエンドBへ。

 


<案内を頼む>
 色彩で痺れて今にも崩れ出しそうな舌をもつれさせながら案内を頼んだ、あるいは言葉を発するのを諦めて彼女の申し出に頷いたあなたを見て、彼女はひとつ頷いて花弁を散らすと緑色の手を伸ばしてあなたの手を取る。
 そうして、何処か慎重な仕草で色を滴らせるあなたの手を自身の肩に乗せてから、彼女はゆっくりと歩き出した。
シーン4-c:カフェテリア

 


<元来た道を戻る>
 女性はぼとぼとと青い絵の具を床に落としながら頭を下げてあなたを見送り、足を止めていた鏡の向こうの何人かのあなたたちはあなたと同様に歩き出す。今この時だけは、鏡の向こうの景色もほんの少し正常に見えるだろう。
 

KP向け:
 最初に受付をしてくれた人が慌てて止めに来ました。探索者が彼女を押しのけてでも外へ出る場合、宇宙からの色に取りつかれている探索者の異様な様子に圧されて彼女は見送ってしまいます。
 青薔薇の異形頭は単なる作者の趣味なので、あからさまに奇妙であればKPの趣味で係員の容姿は自由に変更しても構いません。

 


シーン4-b:案内所
 星や月、花、果ては魚じみた頭のものたちが、案内所のカウンターで何人かのあなたに応対しているのが鏡の向こうに見える。
<1d100>

(自分とのPow対抗。成功時以下描写)
 よくよく目を凝らして見れば、カウンターの奥にいるものたちは一様に同じ制服を着ている。あれは、博物館の係員のものではなかっただろうか?


 通れる道は無いかと周囲を見渡していれば、ギィィ、とガラスを引っ掻く様な音が突き刺さった。続けて、鼓膜をやすりで引っ掻く様な酷いノイズと共に音声が流れ始める。
『本■■ご来場いただ■まして、誠に■り■■■ございます。お■■■様に、迷■■お知ら■■■■ます。■■■パ■■■と■色■■の■をお召し■な■■■■■■くら■の■■■■子が、──』
本日もご来場いただきまして、誠にありがとうございます。お客様に、迷子のお知らせを致します。青いパーカーと水色と白の靴をお召しになった4才ぐらいの男の子が、──

KPによる<SANc 0/1d2>

 極彩色の視界に、赤がちらちらと映る。この場所にこのまま居たらどうにかなってしまいそうだ。ここでの探索は難しいだろう。

 

KP向け:
 ただただSANcポイント。もしPLが再度此処で探索を行おうとするなら、もう情報が無いと伝えて良い。探索者が入口に向かっていない場合、青薔薇の係員をこちらで出しても構いません。

──────────────────────

このページは「カフェテリア」について記載。

シーン4-c:カフェテリア

パターン1:一人で向かう
 広めに設けられた空間は色という色で埋めつくされて、大きな窓から差し込んでいる原色の光がそれを上から更に塗りつぶしている。その中で、沢山のあなたたちが思い思いにゆったりと過ごしている。
 しかし、カフェテリアへ向かうための通路も鏡になっているようで、鏡に写っているカフェテリアは残念ながらこちら側には無いようだ。
→<目を閉じて入る>
(※前もって何処かで目を閉じれば鏡を通り抜けられると知っている場合のみ)
 一呼吸置いてから、あなたは目を閉じて鏡のある場所へ足を踏み込む。何の抵抗も無く床が足へ着き、目を開ければ、あちこちに鏡が張り巡らされたカフェテリアの中へと入ることが出来た。
 さて、何をしようか。

パターン2:係員に案内されて向かう
 広めに設けられた空間は色という色で埋めつくされて、大きな窓から差し込んでいる原色の光がそれを上から更に塗りつぶしている。その中で、沢山のあなたたちが思い思いにゆったりと過ごしている。
 カフェテリアへ向かうための通路も鏡になっているのだが、青薔薇の女性は何も気にしていないかの様にそのまま鏡を通り抜けようとする。 (立ち止まるのであれば、彼女は少し首を傾げてから再度探索者の手を自分の肩に乗せてまた進もうとする。もし鏡があると伝えても、そんなものは無いと答える)
 鏡にぶつかりかけたあなたが咄嗟に目を閉じるも、想像していた衝撃はやって来ない。靴裏に当たる床の感触に目を開けると、あなたはいつの間にか鏡の張り巡らされたカフェテリアの中へと入り込んでいた。
 呆然としていれば、女性はあなたを鮮やかな青い椅子に座らせて何処かへ行ってしまった。
 ……さて、どうしようか。


ここからの探索はほぼ同じ描写。

探索可能箇所(提示するものは▽、提示しないものは▼):
▽カフェテリア全体
▽注文カウンター
▼沢山のあなたたち


▽カフェテリア全体
 あちこちに鏡が張り巡らされているが、あなた以外のあなたたちは誰もそれを気にした様子が無い。それどころか、するりと鏡から鏡を抜けて歩き回っている様だ。

→<目星>
 あなたたちの中には、同じテーブルに座って談笑しているものすらいる。


▽注文カウンター :パターン1
 飲み物や食べ物を注文することが出来る。何か頼むのであれば、顔に穴の空いた店員が奇妙な鳴き声と共にそれと思わしき物体をプレートに乗せて手渡してくれる。
 ……べったりと色の滲むそれは、控えめに言っても美味しそうには見えない。もし口に運ぶのなら、それは何の匂いも味もしない。

▽注文カウンター :パターン2
 あなたが鏡の合間を抜けてカウンターへ迎えないかと算段していると、コトリ、と目の前に何かが置かれる。顔を上げれば、いつの間にか戻ってきていた青薔薇を咲かせた女性がコップを目の前の真緑のテーブルへ置いたところだった。
 コップの中を見れば、今にも泡立ちそうな黄色と紫の入り交じった液体が入っている。もし口に運ぶのなら、それは何の匂いも味もしない。が、飲み込むと少しは気分もマシになった気がするだろう。(女性にこれは何かと聞けば水だと返される)
 女性はあなたに対して幾らか体調の確認をした後、また何かあれば係員に言うようにとちぐはぐな音でもって伝えてからその場を離れる。持ち場に戻るようだ。
 この後改めてカウンターに行くのであればパターン1と同じ描写を行う。

▼沢山のあなたたち
 談笑しているものもいれば、何かを読んでいるあなたもいる。たくさんのあなたは、けれどあなたに話しかける様子は無い。
 当然だ。
KPの<s1d100>
(「宇宙からの色」の欠片からのpow対抗。以下失敗描写)
 なのに、あなたの胸の内に僅かに染み入るのは孤独感だ。
 何故、どのあなたもこんなに様子がおかしいあなたに気を遣って話しかけてくれないのだろう?

(別の場所で既にこの描写を行っていた場合省いて良い)

 


<カフェテリアを出る>
 色に半ば溺れる様な足取りで、あなたはまた歩き出す。外へ出るために。この異様な状況から、一刻も早く抜け出すために。
(パターン2で鏡の抜け方に思い至っていない場合以下描写)
 そんな急く気持ちを阻む様に、出入口に佇んでいるのは鈍く虹色に歪んだ鏡。鏡の向こう側は廊下で、廊下には他のあなたが歩いている。……結局、自分はどうやってここに入ったのだろう。

<アイデア>
→ここに来る時は青薔薇の女性の方に掴まっていたから通れたのだろうか? いや、他のあなたが通り抜けているのだから通れるはずだ。
 そう言えば、とあなたは思う。
 この鏡を通ろうとした時、あなたは咄嗟に目を閉じたのだ。
 上の判定に失敗した場合は<1d100>(自分とのPOW対抗)
 成功すると、瞬きをしている間に鏡が消えている。周囲を注意深く見ても、目の前にあった1枚の鏡だけが綺麗さっぱり跡形も無い。

 

KP向け:
 ごくごく普通のカフェテリアで、ごくごく普通の飲食物が提供されています。匂いや味が分からないのは視覚情報に脳が惑わされている+視覚に叩き込まれている情報量が膨大すぎるので五感が狂ったり鈍っていることが理由です。

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このページは「資料室」について記載。

シーン4-d:資料室

 博物館であれば資料室があるべき場所へ辿り着くと、そこにはひしゃげた扉が鎮座している。ガラス張りだったはずのそれはべったりと黒く塗りつぶされ、とても開けられそうには見えない。
<聞き耳>
 しかし、扉の向こうからは何かの音声が流れているのが聞こえる。

<開けようと試みる>

<1d100 (「宇宙からの色」の欠片に対するPow対抗)>
→成功
 あなたはどうにかひしゃげた扉を開けようと手を伸ばす。しかし、歪んでいるはずのドアはごく簡単に開いた。あっけに取られて扉を見れば、それは、博物館で見た普通のガラス張りの扉だった。
→失敗
 1歩踏み出した瞬間、黒く塗りつぶされた扉が虹色にその彩度を歪ませ、扉を開けるための取っ手がどろりと混濁した7色に溶け出す。反射的に手を引っ込めても、機嫌を損ねた扉はあなたのために開く様子は無い様だ。
(別の場所を調べてからなら再挑戦可能)

 

 扉を開けて中へ踏み込むと、この場所には鏡が貼られていないのか、代わりにバケツをひっくり返した様な色の洪水があなたの網膜を突き刺す。

<目星><アイデア>
→成功
 そんな中でも、あなたは目や記憶を頼りにどうにか奇妙な色彩に彩られた掲示物やパンフレットの置かれた棚の輪郭を捉える。手探りながらも辿っていけば、あの『無彩』についてがあったはずの辺りに辿り着けるだろう。しかし、掲示物やパンフレットのどれもこれもが色に汚されていて、とても読めたものでは無い。
→失敗
 闇雲に踏み出した足が何かにぶつかり、くぐもった音を伴ってぶつけた箇所に僅かに痛みが走る。
<HP-1>
(成功するまで行える)

 『無彩』について解説が為されている場所へ辿り着き、どうにか確認出来るものをと意識を指先へ巡らせていると、四角いボタンの様なものに指が触れた。
  あの美術館では音声解説も行われていることを、あなたはすぐに思い出せるだろう。ボタンを押せば、故障しているのか、酷いノイズ混じりの音声が流れ始める。それでも何度か再生を繰り返せば、どうにか一部分を聞き取ることができた。

 

『『無■』は■■年代に作ら■た■■■です。その■■の■■白と黒の■で構成され■■■■の作品は非常に作■■複雑であり、■■構造を理解■■い■のは製作■■■と言われ■■■■。現在分■■て■■素材は、鉄と鉛、ガ■■の他、内■■磁石の■■■場を発■■■■素材も使われ■い■■■が■■■ています。ペースメ■■ー等をお使いの■は■■■■■■。
貴重か■■■■取■■■が求■られる作品で■■──』

 

更に細かく聞き取ろうとする場合は<アイデア><聞き耳>もしくは<目を閉じて耳を澄ませる(PL宣言時のみ)>

→『『無彩』は1■00年代に作られた■■■です。その■■の通り白と黒の■で構成され■■この作品は非常に作り■複雑であり、■■構造を理解■■いるのは製作者■■と言われ■■■■。現在分かって■■素材は、鉄と鉛、ガラスの他、内■に磁石の■な磁場を発■■せ■素材も使われ■い■■■が■■■ています。ペースメーカー等をお使いの■は■■■下さい。
貴重か■■■■取り扱いが求■られる作品で■■──』

 

(本来の音声:
『無彩』は1800年代に作られた万華鏡です。その題の通り白と黒のみで構成されているこの作品は非常に作りが複雑であり、内部構造を理解しているのは製作者のみと言われています。現在分かっている素材は、鉄と鉛、ガラスの他、内部に磁石の様な磁場を発生させる素材も使われていることが分かっています。ペースメーカー等をお使いの方はご注意下さい。
貴重かつ慎重な取り扱いが求められる作品ですが、本美術館では寄贈者の意向を尊重し、来館者の皆様も実際にお手に取っての鑑賞が可能となっています。)


 音声を聴き終えたあなたは、ふと顔を上げる。
 鏡に映るあなたと目が合った。

 周囲を見渡せば、別のあなたがいつの間にか資料室で何かを読んでいる。壁だったはずの目の前に映るあなたとは違う、もう1人のあなたが。
 あなたが声をかける前に、部屋の真ん中にある鏡を隔てた向こうで、もう1人のあなたは本を閉じると部屋を出ていく。
 ……鏡には通れるくらいの隙間がある様だ。

<もう1人のあなたが置いていった本を読む>
 さっきまでは無かったはずの鏡の隙間を縫うようにして、あなたはもう1人のあなたが読んでいた本へと近づく。今さっきまで読まれていたそれは、色の侵蝕をまだ内部まで受け切ることなく残っていた様だ。
 題名は読めないがどうやら人の感覚についてが書かれているらしいその本の中で、あなたはひとつ、気になる文章を見つける。

 

☆マガーク効果
 マガーク効果(マガークこうか、McGurk effect)は、言語音声の音韻知覚において聴覚情報と視覚情報の相互作用を示す現象を指す。

 ある音韻の発話の映像と別の音韻の音声を組み合わせて視聴すると、第三の音韻(たとえば、「ガ(ga)」と言っている映像に、「バ(ba)」と言っている音声を組み合わせて視聴すると、「ガ」でも「バ」でもなく、「ダ(da)」と聞こえる。)が知覚される。
 この現象は矛盾した情報を脳が言語処理を行う以前の段階で自動的に統合することによって発生するものであり、マガークとマクドナルドによって発見された。
 この効果は視覚情報と聴覚情報を矛盾させた人工的な環境によって体験できる現象であり、日常的に発生することはない。また、これは脳の錯覚によって起きるものであるため、体験者は矛盾が生じている事を意識できない。
(参考:Wikipedia)


 ぱたり、とあなたは本を閉じる。閉じた拍子に、その表紙から跳ねた色が、音も無く飛び散って壁に色を増やす。
 顔を上げて見れば、さっきまであったはずの鏡は跡形も無く。部屋に入った時に広がっていた視神経を削り取る様な鋭い色がただ目に刺さるばかりだった。

 

KP向け:
 誰もいない時には鏡がある必要性が無いため、無人の状態の資料室では探索者の脳はあるはずの無い鏡を作り出しません。他に「自分」がいる時にだけ、鏡があります。
 マガーク効果を参考にしていますが、宇宙からの色の欠片による影響との合わせ技なので本来のそれとは様相が異なります。

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このページは「ギャラリーA」「ギャラリーB」について記載。

シーン4-e:ギャラリーA

 ギャラリーへ足を踏み入れると、あちこちに展示されている絵画からどろりどろりと色が零れ出しているのが分かる。沢山のあなたたちは、それを気にした様子も無くそれらを鑑賞している様だ。

探索可能箇所(提示するものは▽、提示しないものは▼):
▽絵画
▼沢山のあなたたち


▽絵画
 ごぽ。と、音を立てて色が溢れ出していると錯覚するようなありさまだ。実際にはそんな音はしていないかもしれないし、しているかもしれない。何故って、あなたの耳はその色でもって鼓膜をつんざかれているからだ。

 (ギャラリーAに来ていた場合以下描写)ここへ来たことがあるあなたには、一度見たはずの絵画が無惨にも色によって塗りつぶされていることがよく分かる。そう。ここはあなたの見たことがある場所だ。


▼沢山のあなたたち
 沢山のあなたたちは、視神経をすり潰されるような色の暴力を気にもとめず、ただ熱心にその絵画たちを見ている。
 当然だ。
KPの<s1d100>
(「宇宙からの色」の欠片からのpow対抗。以下失敗描写)
 なのに、あなたの胸の内に僅かに染み入るのは孤独感だ。
 何故、どのあなたもこんなに様子がおかしいあなたに気を遣って話しかけてくれないのだろう?

(別の場所で既にこの描写を行っていた場合省いて良い)



シーン4-f:ギャラリーB

 ギャラリーへ足を踏み入れると、あちこちに展示されている彫刻はべったりと色で汚されていることが分かる。来客を最初に出迎えるはずの像も、一体元が何であったのか分からなくなってしまっている。沢山のあなたたちは、それを気にした様子も無くそれらを鑑賞している様だ。

探索可能箇所(提示するものは▽、提示しないものは▼):
▽彫刻
▼沢山のあなたたち


▽彫刻
 元の色を喪った彫刻たちは、辛うじてそのシルエットだけを保ってそこに鎮座している。あなたはその輪郭を見出すだけでも苦難すると言うのに、他のあなたたちは何も気にすることなくそれらを鑑賞している。

▼沢山のあなたたち
 沢山のあなたたちは、視神経をすり潰されるような色の暴力を気にもとめず、ただ熱心にその彫刻たちを見ている。
 当然だ。(以下ギャラリーAと同じ)
 

KP向け:
 ぶっちゃけこの辺りには情報がほとんどありません。が、周囲のあなたたち(正しくは来館者の人々)に対しての発言があった場合、1d100を振ってもらうチャンスになります。ここまで情報を全部抜いている様なら、特に情報が無いことを伝えるのも可。

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シーン5:深淵の万華鏡

 ミラーハウス内は大半が一方通行であり、あなたは必然的にそこに行き着いてしまう。
 特別展示室の入口には色で塗りつぶされた上から大きく×印の付けられた看板が立ててあり、傍にあるはずのロッカーは極彩色の大きな箱と化してその輪郭を目で辿ることすら難しい。

 近づいてはならない。
 あなたの中にあるモノがそう訴える。
 この部屋を通り抜けなくとも、あなたは外へ出ることが出来る。この場所に入る必要は無い。あの場所に行く必要は無い。

 出口に向かいますよね?

<出口に向かう>
エンドB

<特別展示室に入る>
→<1d100>
(「色」に対するpow対抗)
→成功:
 特に制限無し。
→失敗:
 視界が、たわんで、歪む。今まさに向かおうとしたその先に、奇妙な色が蠢いているのをあなたは見る。視神経が限界を訴える。
 足が、竦む。

KPによる<SANc 1/1d3>

 それでもまだ進みたいですか?

(進む場合は再度1d100. 成功するまで続けられる。失敗するごとに探索者の中のナニカが口調を強めるなどしても良い)
失敗描写ここまで。

 


 一歩、また一歩。あなたは足を踏み入れる。色で塗りつぶされたその中に、首を長く、長く伸ばして、あの展示員が立っていた。

「ァあ ヲkさmmm A たィrあッs#:^∵******」

 ぐるうり、と、顔にある両眼があなたを逆さまに覗き込む。伸ばした首はぎちぎちと捻れて、今にもちぎれてしまいそうだ。その手には、あの万華鏡がある。

<聞き耳>
 首と同じように引き伸ばされ、奇妙に歪んだ声。それが目の前にある顔ではなく、根元の、体の方から聞こえてくることに気がつく。
 まるで、そちらに本来の首があるかの様に。


 まだ帰らないんですか?



※最終エンド分岐ポイント。

<万華鏡を覗き込む>
エンドA

<出口に向かう>
エンドB

<万華鏡を壊す>
エンドC

シーン6-a:エンドA Achromatic

 べったりと赤黒く汚れた展示員の手が、うやうやしい手つきでそれを差し出す。視神経の奥底からごぽごぽと湧き出す嫌悪感を押し殺して、あなたはそれを受け取る。

『無彩』

 この万華鏡だけは、相変わらず元の色であったことに、あなたは今更気がつくだろう。
 あなたはそれを覗き込む。
 あなたの中のナニカが暴れ回る。一段と強くなった耳鳴りの中で、あなたは目をレンズに近づける。

 ずるり、と何かが、あなたの目からレンズの向こうへと流れ出す。
 それは、
 白よりもなお無垢で、赤よりもなお生々しく、橙よりなお燦々と暖かに輝き、黄色よりもなお弾ける様に煌めいて、緑よりもなお包み込む様に穏やかで、青よりもなお深く冷たく、紫よりもなお艶めかしく、黒よりもなお拒絶的な、
 まるで不快な水蒸気の様な、未知の色の、帯だった。

 奇妙な色は、万華鏡の奥へ引きずり込まれていく。
 あまりにも鮮やかな色は、次第に落ち着いて、ゆっくりと白黒へ変わっていく。

「それにしても、随分気に入られたんですね」

 そんな声があなたの耳に届く頃には、あなたの視界には白と黒だけしか映らなくなっていた。
 万華鏡から顔を上げれば、そこにはごく普通の、最初に見たのと同じ姿の展示員が立っている。部屋の中は少し薄暗く、展示台の周囲だけが照明によって照らされている。

 戻ってきたのだ。そう、感じるだろう。

(最後にRPがあればここでしてもらう。探索者が不調を訴えた場合、神話的な事象は信じてもらえないだろうが、ここで一時的に『無彩』の展示は中止されることだろう。)

 後日。
 前日までは無かったはずの放射線が突然観測されたことにより、『無彩』は唐突にその展示を中止することになる。
 幸い短時間の曝露では問題の無い線量であったものの、博物館側は謝罪と共に、展覧会を鑑賞後に体調が悪くなった来館者のためのコールセンターの設置などを行っている様だ。

 あなたが目にした、目に入れてしまった何かが何であったのか。それは知る由もない。説明したところで信じてくれる者もいない。いるとすればそれはあなたと同じ、奇妙なものを目にしたことがある者達だけだろう。
 あの万華鏡は、もう世に出ることも無く、博物館の何処かで厳重に保管されることになる。


 世界は、今日もありふれた色で満ちている。


──────────
生還報酬: SAN値回復1d6

シーン6-b:エンドB Barren

 ふらつきながら外へと出る。
 汚れた油の膜にも似た鈍い虹色のコンクリートを、黄色く染まったあなたの足が踏みしめる。色で汚れた外界にそれでも心は弾む。

 "ああ、やっと出られた!"

 ずる、り。
 あなたのその眼球から、何かが抜け出る。
 それは、
 白よりもなお無垢で、赤よりもなお生々しく、橙よりなお燦々と暖かに輝き、黄色よりもなお弾ける様に煌めいて、緑よりもなお包み込む様にに穏やかで、青よりもなお深く冷たく、紫よりもなお艶めかしく、黒よりもなお拒絶的な、
 まるで不快な水蒸気の様な、未知の色の、帯。
 一瞬空を、たゆたって、それはゆらりと滑るように消えていく。

 ふと、前に目線を戻す。
 広がるのは、夕焼けに薄暗く染められた建物。緑の葉を揺らす街路樹。それに、ごく普通の姿で談笑する人々。
 なのに、何故だろうか。
 あなたの中でようやく息を吹き返した本能が、警鐘を鳴らしている気がするのだ。


 世界は、今日もありふれた色で満ちている。
 ……今のところは。

──────────
生還報酬: SAN値回復1d6

シーン6-c:エンドC Crime

 何かが悲鳴の様な音を立てた。
 何かがあなたの腕を掴んだ。
 咄嗟に抵抗するあなたを床に、あるいは壁に押さえつける手は、ひとつ、またひとつと増えていく。赤、青、緑、黄、紫。色があなたにのしかかって、息が、意識が。

 途絶える。



 後日。
 一人の来館者が博物館の中で突然暴れ出し器物を破損したというニュースが、新聞の隅に載せられる事となる。
 彼(彼女)は展覧会に展示されていた『無彩』を見た後に様子がおかしくなったとの証言があり、警察は錯乱が落ち着いた後に事の経緯を調査することになるという。


 世界は、今日もありふれた色で満ちている。
 しかし、もうじき正しい視界を取り戻すあなたの視界に映るのは、まず精神病棟の白いカーテンになることだろう。

──────────
生還報酬: SAN値回復1d3
後遺症: 失墜
 あなたは警察沙汰を起こし、起訴まではされずとも小さなニュースになった。信用-10%

シーン6-d:エンドD Desperation

 あなたは、自分の眼球へと手を伸ばす。
 狂った世界から抜け出すために。狂った色から目を逸らすために。
 あなたは、狂気の沙汰に逃避する。
 指がゆっくりと差し込まれる。

 ぷちゅり。

 誰かの悲鳴を耳にしながら、激痛にあなたの意識は真っ黒く眩んでいく。やがて意識を取り戻して目を開けるあなたは、広がる視界に絶望するのだろう。


 見えなくなったはずの視界の奥、視神経の奥底で。
 壊れた色が蠢いた。

──────────
生還報酬: SAN値回復1d3
後遺症: 盲目
 あなたは眼球を失った。
 それでも尚、あの色はまだ、幻覚の様にあなたの中にこびり付いている。
 目を使う技能全てを0%に変更・初期値を除いた目星の値を聞き耳へ追加する(最大99)

後書き

シナリオ名 侵色
作者 エバ(@Evi_TRPG)

 本シナリオ内の事象は全てフィクションであり、実在の人物や団体等との関係は一切ありません。
 本シナリオは改変して遊ぶことができますが、原型を留めない様な極端な改変・博物館の名前の変更はお止め下さい。また、トラブルを防ぐため、改変を行う旨を必ずプレイヤーへお伝え下さい。

 大体誰でも行けるさっくり不気味なシナリオが欲しいな〜という動機で作りました。ゆるふわ背景に始まり至らない部分は多々あるかと思いますが、ほどほどに混乱しつつお楽しみ頂けたら幸いです。
 余談ですが、ベンハムの独楽というものがあります。光受容体の個人差によって、白黒の独楽の一部が薄く色を変えるのだそうです。
 世界って、本当は何色なんでしょうね。

 

以下の画像は企画「ムーサ異装展覧界」開催期間内において、セッション目的でのみ利用可能。

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ムーサ異装展覧界