怪我をした後の対処という意味で考えると、実に考えさせられる事件が発生している。境川部屋の力士である響龍(ひびきりゅう)が取組中の事故が一因となり、他界したのである。
2021年3月場所13日目の3月26日、対戦相手のすくい投げを食った際に頭から土俵に落ち、そのまま動けなくなり、病院に搬送されたものの、約1か月後にこの世を去った。
このような悲劇から力士たちを守るために、果たして大相撲にはどのような改革が必要なのだろうかーー。
元横綱・大関を始めとする力士たちの治療に携わりながら全国柔整師協会関東甲信越地区支部長を務める乾智幸氏は、角界の非常事態を受け、「大相撲メディカルシステム構築・導入」を提言している。なお、乾氏は鍼灸師としてのキャリアを相撲部屋の住み込みとして働くことによってスタートしており、角界の事情にも精通している。その視点から実現可能な範囲で提案しているものである。
また、この提案はスポーツ界で重要視されている、スポーツによる脳震盪評価ツール「SCAT:スキャット1(Sports Concussion Assessment Tool)」の大相撲版の作成を念頭に置かれているが、脳震盪に限らず、怪我の予防と発生時のケアを考慮されているものである。
その内容は概ね以下の通りだ。
乾氏が考える現状の問題点は、怪我が土俵上で発生した時の対応が不十分であるということ、力士の健康状態を各部屋で管理するのは限界があること、力士から健康状態についてエスカレーションを上げるための仕組みが整備されていない、ということだ。
例えばボクシングの試合ではリング下にドクターが常駐しており、バッティングなどによる出血時には試合を一旦止めて傷の状態の確認をしている。だが大相撲には現状、このような対応が可能な人員は配備されていないのである。
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