三角関係に割って入る強力なライバル出現!──『幼なじみが絶対に負けないラブコメ』水瀬いのり×大西沙織対談
公開日:2021/5/12
いつの頃からだろう、「幼なじみ=負けヒロイン」の図式ができたのは……。子どもの頃から主人公の隣にいたのに、いつのまにか他のヒロインにかっさらわれる。ずっと彼を支えてきたのに、不遇な当て馬ポジションに追いやられる。そんな暗黒時代に終止符を打つべく、冷遇され続けた「幼なじみヒロイン」の復讐(リベンジ)が今、始まる! さあ、全国ウン千万の幼なじみラバーよ、立ち上がれ──!!
4月14日にスタートしたTVアニメ『幼なじみが絶対に負けないラブコメ』(通称『おさまけ』)は、タイトルどおりだと、幼なじみが“負けない”ことが約束されたラブコメディ。と言っても、そう簡単に事は運ばない。小悪魔系幼なじみ・志田黒羽、クールビューティーな女子高生作家・可知白草、若手人気女優の桃坂真理愛の3人が、主人公の末晴をめぐって大激突! さらに、ストーリーが進むと、衝撃的事実も……!?
この特集では、そんな『おさまけ』の魅力をキャストの対談で深掘りしていく。今回は、黒羽役の水瀬いのりさん、真理愛役の大西沙織さんが登場! いつも末晴に寄り添ってきた黒羽と、ちゃっかり漁夫の利を狙う真理愛、彼女たちのラブバトルに迫る!
「黒羽は、緻密に考えながらベストな道を選び取って歩く策士です」(水瀬)
──おふたりは、一緒に収録する機会は多かったですか?
水瀬:ほとんどないですね。収録ブースに入れるのが最大4人なので、黒羽、白草、主人公の末晴、その友人の哲彦という組み合わせが多くて。モモ(大西さん演じる桃坂真理愛)は、ひとりで収録することが多いのかな?
大西:個人行動が多いかもしれないです(笑)
──今回は、水瀬さんがお姉さん系幼なじみの黒羽役、大西さんが妹系ヒロインの真理愛役を演じています。ご自身の役について、どんな印象を持ちましたか?
水瀬:黒羽は末晴の幼なじみで、彼のお姉ちゃん的存在です。末晴に対するアプローチも、「お姉ちゃんに甘えてもいいんだよ」と甘い囁きをするような女の子で。他のキャラクターよりも、等身大で高校生してるなって感じます。ある意味、普通であることが魅力になっている子ですね。
大西:逆にモモは、「理想の妹」という国民的ドラマの主演を演じていたり、妹ポジションの女の子です。でも、妹と言ってもモモが勝手に末晴のことを「お兄ちゃんお兄ちゃん! 大好き!」と慕ってるのですが私にとっては、妹キャラってなかなかの挑戦だったので、まずそこにおののきました(笑)。人気女優でもあるので、ハードルがすごく高いキャラクターという印象もありました。どうやって演じていこうかという、ドキドキ感がありました。
──どのように役作りをしていったのでしょう。
大西:最初にモモを演じたのは、原作小説のPVを録った時でしたが、その時は「もうちょっとかわいらしい感じ」「ふんわりした感じ」というディレクションがあって結構時間がかかりました。その時に作った役の雰囲気を、アニメでも引き継ぎました。常にかわいさを忘れないっていうのは、モモを演じるうえで大切にしている部分です。
──どういうかわいさでしょう。
大西:モモは、表情や感情がコロコロ変わる子なので。「お兄ちゃんお兄ちゃん!」と妹っぽく振る舞っている時もあれば、黒羽や白草に対してちょっとカマをかけたり煽ったりすることもあって。そういう嫌味っぽいセリフも、毒づきすぎるとかわいくなくなるので、茶化すような雰囲気にしたり。さじ加減を見つつ、セーブしながら演じています。
──水瀬さん演じる黒羽も、等身大の女の子と言いますけど、ただ普通なだけでもありませんよね。
水瀬:そうですね。腹黒いところもあるし、哲彦からも「この人ヤバいな」と見られているところはあって。自分が決めたプラン通りに行かなかった時のはらわたの煮えくり返り方もすごいですし、本気で何かやりそうな目をするシーンもけっこうあります。白草や真理愛とやり合っている時はまだワーキャー言う余裕がありますが、本当に実行に移すとなるとしれっと黙って背後に近づいていくような隠密感がありますよね。
大西:こわっ!
水瀬:気づいたら隣にいた、みたいな。いろんなことを頭の中で緻密に考えながら、ベストな道を選び取って歩く策士ですよね。ただの小悪魔ではなく、自分の中でしっかり道筋を見据えながら歩いている頭脳派というところに、かっこよさを感じます。
大西:一見すると、白草がそういう頭脳派ポジションに見えるじゃない? でも、そう思いきやポンコツでかわいいんだよね。
水瀬:クールなキャラが意外と抜けてて、黒羽みたいにキャピキャピしてそうな子のほうが肝がすわってる。ありそうでないバランスだと思います。
──みんなギャップがありますよね。
水瀬:そうですね。白草も幼少期に物語のキーがありますし、みんなそれぞれ過去から今まで築き上げてきた大事なものがあるので。深いと思います。
「誰かが末晴をゲットした瞬間『よし、攻略完了。じゃ!』って言いかねないのが、この3人の怖いところ」(大西)
──最初はクロ(黒羽)とシロ(白草)のふたりが末晴のことを取り合っていますが、途中からモモ(真理愛)が「お兄ちゃん!」と現れますよね。それによって、末晴を含む4人の関係も変わっていきます。おふたりは、モモの登場による人間関係の変化をどうとらえていますか?
水瀬:強力なライバルの出現、ですね。真理愛のポジションって、シロとクロには立てない位置。その分、クロとしては真理愛の行動から目が離せないと思います。シロはポンコツなところもあって、クロとしてもまだ余裕を持って見ていますが、真理愛に関しては「この子はもしかしたら抜け駆けに成功するかも」という危機感を抱いているところがあって。「一瞬でも隙を見せたらやられるな」と思いながら接しているのを、演じている私もヒシヒシと感じます(笑)。要注意人物です。
大西:真理愛って「かわいい妹でーす!」みたいな感じで、妹というアイコンを自分で振りかざしながらバーンと登場しますよね。ある意味、そうやってみんなを油断させているところがあって。「妹ポジションなんだね、うんうん」と思わせといて、実は末晴の芯の部分に一番働きかける女の子なのかなと思います。黒羽、白草とは、また違ったモーションのかけ方をしますし。そういう意味では異質というか、怖い部分があるかもしれないです。
水瀬:クロとシロが揉めてる間に、おいしいところを全部持っていきそう(笑)。ふたりが気づいた時には、もう末晴の隣にはモモがいる、みたいな。「それは妹の行動を超えてない?」というちゃっかり感があるなと思います。
大西:しかもそのちゃっかり感をきっちり計算していて、「やった! 隣が空いたからお兄ちゃんゲット!」じゃなくて、「こうやったらふたりがこうバトるから、その隙にいただくか」みたいな(笑)。ちゃんと考えているので、頭はいい子なんだろうと思います。
水瀬:さすが子役時代から芸能界を生き抜いてきただけのことはあるよね。酸いも甘いも知ってるから。
大西:年齢以上の精神力ですよ。
──おふたりの話を聞いていると、ラブコメの域を超えてる感じがしますね。まるで『三國志』のような(笑)。
水瀬:末晴への思いをバネに、戦がしたいだけのような気もします(笑)。「よっしゃ、揉めようぜ!」みたいな。
大西:確かに。もう何が目的なのかわからない。
水瀬:女子だけの時は、みんな生き生きしてるし。
大西:一番怖いのが、誰かが末晴をゲットした瞬間「よし、攻略完了。じゃ!」って言いかねないところ。「もう手中に収めたから大丈夫」って。これは私たちの勝手な想像ですけど、そんなことを言ってもおかしくないくらいの3人です。
水瀬:頂を目指しているだけなのかも(笑)。旗を立てたら終わり。本当に武将みたいですね(笑)。
──そうなると、共感するところもあまりないのでは……。
水瀬:ただただ恐ろしいです(笑)。共感はね……。
大西:私、黒羽が一番共感できない(笑)。
水瀬:難しいよね。
大西:いじらしいんだけど、素直になれない女の子ナンバーワンって感じで。ストレートに行けばいいのに、プライドが邪魔するのか「え、そこで脇道に行っちゃうんだ!」みたいなことが多い。難しい子だなぁと。
水瀬:確かに、アクションの取り方が特殊かも。「そこでそっちへ舵を切るんだ!」という選択をする子なので。ここで「Yes」と言えばハッピーエンドで丸く収まるかもというところで「Yes」と言わないので、「え!?」となります。
大西:「そこでYesって言ったら、すぐ終わるのに!」って。
水瀬:私自身も演じながら、黒羽に何度裏切られたことか(笑)。「え~、そっち行っちゃうの~? わかったわかった!」って(笑)。本当に自由だし、彼女にしかわからない彼女なりのやり方を貫いているんです。高校生らしからぬ物事の見方をするし、すごいなぁと思います。
「末晴の背中を押すモモと、背中から抱きしめるクロ。その対比が面白いですよね」(水瀬)
──クロ、シロ、モモの3人は、みんな末晴に恋愛感情を抱いていますよね。末晴のどんなところに惹かれたのだと思いますか?
水瀬:3人は、それぞれ違う角度から末晴の姿を見ているんです。俳優としての彼だったり、子ども時代に勇気をくれた人だったり、いつもそばにいる弟みたいな存在だったり。黒羽の場合は、末晴のダメな部分こそ愛おしく感じているんじゃないかと思います。完璧じゃないからこそ好きになっちゃうところもあるのかなって。ちょっと母性を感じているのかもしれませんね。壁にぶつかればぶつかるほど愛おしく思えて、壁を乗り越えてしまうと「ひとりでも平気なんだ……」って寂しくなっちゃう。ほっとけなくて、「私がいなきゃ!」と思わせてくれるところが魅力なのかな。
大西:今、語ってるいのりが黒羽に見えた……(笑)。
水瀬:「末晴くんをどう思いますか?」ってインタビューを受けてる黒羽みたいな?
大西:そう! 「すごーい」って思っちゃった(笑)。
水瀬:真理愛は?
大西:(真理愛の声を作って)えっと、真理愛は~。
水瀬:いや、真理愛になりきらなくていいから(笑)。
大西:真理愛は、黒羽とは真逆じゃないかな。最初に出会ったのが、役者としての末晴じゃないですか。同じ道を歩む先輩としてあこがれを感じたし、末晴の背中を見て変われた部分も大きかったので。そういう意味では、恋愛というよりもあこがれと恋愛が半々ぐらいの感じなのかなと思います。
水瀬:尊敬の気持ちも多そう。
大西:そうだね。役者としても末晴をすごく尊敬しているし、誰よりも見てきたので、逆に素の末晴をもっと知りたいという思いが強そうだなと思います。
──モモは妹ポジション、クロは姉ポジションなので、そういう意味でも末晴に対して抱く思いが違いそうですね。
水瀬:モモは末晴に対して「子役だった頃のようなかっこいい姿をまた見せてください!」というエールのような気持ちがあるけど、クロはそうじゃないんですよね。「普通の男の子でいいんだよ。無理しないで」みたいに、こちら側に引き留めるようなポジション。背中を押すモモと、背中から抱きしめるクロという対比が面白いなと思います。
大西:真理愛は妹キャラから脱却したいと思っていて、末晴に対して若干お姉さんぶる時があるんですよ。少し黒羽にジェラシーを感じているというか、「私もそのポジションできるし!」って張り合う気持ちがあるのかも。
水瀬:妹だけじゃなくて姉にもなれたら、最強ですよね。
大西:しかも、同業者としても「気持ちわかるよ」って。
水瀬:あ、最強のヒロインが生まれようとしている……。
大西:怪物が爆誕しようとしてます(笑)!
「1話での真理愛の初登場シーンが面白いんです」(大西)
──おふたりは、姉タイプ、妹タイプどちらでしょう。
水瀬:誰といるかで、ポジションも変わるよね。
──このふたりでいる時はどうですか?
大西:ふたりとも小学生男子ですね(笑)。
水瀬:双子の小学生男子(笑)。笑いのツボが一緒なんだよね。もしくはソウルメイトかな。デビューしてから出会ったのに、昔から近所で一緒に遊んでた気がする。ふと学生時代の写真を見たら、いるんじゃないかなって(笑)。
大西:本当にそう。他の人とかかわる時も、お姉ちゃんとか妹ポジションってあんまりないかな。みんな並列。
水瀬:私もそうかも。仲間とか同志みたいな感じです。でもデビューした時よりも年齢を重ねた分、だんだんお姉ちゃんポジションへ向かっていってるのかな。
大西:後輩もできてくるしね。
水瀬:「私がここで敬語をやめて話したら、もっとみんなが打ち解けるかも」って考えたり、現場で「みんな緊張してそうだな」と思ったら率先して話しかけたり。
大西:(パチパチ拍手しながら)はぁーーーーー! あの水瀬いのりが!
水瀬:そういう意識はするようになりました。
水瀬:コミュ力はないんだけど、昔よりは勇気を持てるようになったかな。昔は踏み出すことが怖かったから。今も「アゲてこう!」とかは言えないですけど(笑)。でも、みんなでいいもの作りたいなって思うし、せっかく一緒の作品を作るならみんな仲がいいほうがいいなっていう気持ちが強くなりました。プラス思考にはなったかな。
──そういう変化は、演技にも表れたりするのでしょうか。
水瀬:どうなんでしょう。演技に表れるかどうかはわかりませんけど、作品を作るうえで友達の存在はやっぱり大きいですね。「この人たちに会えるから、スタジオに行くのが楽しみ」とか。「みんなで一緒に作る」という意識を持つようになったのは、ここ数年の大きな変化です。
大西:すごくいいこと! 私が『おさまけ』の現場で感じたのは、松岡(禎丞)さんと信長(島﨑信長)さんのリラックスした雰囲気。ふたりの掛け合いが、どの現場よりもリラックスしているんですよ。
水瀬:すごいよね。
大西:魂がひとつになってる、みたいな。
水瀬:マイクに向かってしゃべっているのに、お互い目を見ながらしゃべっているんじゃないかと思うくらい。
大西:役者として、お互いに信頼しきっている感じがすごいよね。
水瀬:その信頼感が、阿吽の呼吸を生むんだろうね。私も同じことを感じました。おふたりが仲いいのは知っていたけど、あの息の合い方やテンポ感を目の当たりにして「すごい……!」って。
大西:日常系の作品だから、より強くそう感じたのかもしれないね。
──おふたりは一緒に収録する機会は少なかったそうですが、お互いの演技で影響を与え合うことはありましたか?
水瀬:原作小説の特典ドラマCDの収録では、一緒になりました。今までにない空気感での収録でした。真理愛のトーンが、すごい高いところから来たから(笑)。
大西:(笑)。
水瀬:一瞬「え、大丈夫?」ってなったくらい(笑)。でも、しっかり真理愛というキャラになっていて、すごいなと思いました。
大西:最初いろんな人に“真理愛確認”をしました。「私、真理愛になれてる?」って。みんなが「大丈夫だよ」って言ってくれたので、安心して演じました(笑)。
水瀬:そのドラマCDでは、真理愛がギャグポジションだったんだよね。女優だから変幻自在にいろんなものになりきって、時にはゲスい声も出したりして。「ただかわいいだけじゃなくて、聴いてて楽しいキャラなんだ。こんなに声の幅があっていろいろ楽しめるキャラなんだ」という発見がありました。
──では、最後に放送を楽しみにしているファンに向けてメッセージをお願いします。
水瀬:どのキャラクターも、みんな一筋縄ではいかない変わり者です(笑)。だからこそ、いわゆる王道のラブコメとは違った展開を楽しんでいただけると思います。自分のポジションを確立しようと躍起になったり、誰かと全力で競い合ったりする姿は泥臭くもありますが、ある意味かっこいいんですよね。ぜひ、みなさんもこの作品で青春を疑似体験してください。
大西:原作小説を読んだ時に、「文章だけでこんなに迫力が出せるんだ!」と驚きました。そこに絵や声がつくと、さらにものすごいバトルが繰り広げられるのではないかと期待しています。会話のスピード感、末晴をめぐる私たちの頑張りを、ぜひ楽しみにしていただければなと思います。あと、1話での真理愛の初登場のCMシーンがすごく面白いので、ぜひもう一度注目してみてください。色んなバージョンを収録したので、どれが採用されるのか私も楽しみにしています(笑)
取材・文=野本由起 撮影=北島明(SPUTNIK)