日本尊厳死協会は1976年の創立以来、四十余年にわたって終末期における医療の選択の権利が保障される社会の実現を目指し、活動してまいりました。人の最期はさまざまです。医療の限界を超えてもなお、治療の継続を希望する人もいますし、病気が治らないのであれば、徒に命を長引かせるだけの延命治療を断りたい人もいます。私たち日本尊厳死協会は、病気が治らないことが明らかな「不治」で、なおかつ最期が近付いている場合に、人工呼吸器や栄養を送るための胃ろうなど、延命治療を断りたいと願っている人たちのために「リビング・ウイル=終末期医療における事前指示書」を発行し、登録管理を行っています。現在の会員数は10万人を超えます。
日本の社会では長く、この延命治療を開始しなかったり、中止したりすることに抵抗がありました。人工呼吸器を着けなければ死が訪れることが明らかな場合、患者本人の希望がどうあれ人工呼吸器を装着してきました。それは、命を助けることが医師の使命でもあり、途中で止めることで医師が罪に問われる可能性があったからです。
しかし、時代は変わり、自分の終末期の医療を自分で決める権利が認められるようになってきました。助かる見込みがないのに何本ものチューブにつながれ、「生かされている」ことに耐え難い苦痛を訴える患者が、最期を安らかに過ごすためのQOL(生活の質)、あるいはQOD(安らかな最後)を選ぶ権利を尊重しようという流れが定着してきています。
尊厳死協会では電話医療相談や協会各支部主催の講演会・集談会などを通じて、尊厳死を望み、リビング・ウイルの作成に関心のある方々をサポートしています。人生の最期を迎えた時、「いい人生だった」と満足して逝くことのできるよう、今後とも活動を続けてまいります。