稲沢のむかしばなし たん地蔵(稲沢市中野町)
この話に出でくる中野町は、いま「明治市民センター」・「稲沢医師会館」という、しせつがあります。稲沢医師会館には休日診療所があります。日曜日などにびょうきやケガをしたとき、みていただくところです。
これは、定吉さんが、お金もうけをしようとして、お地蔵さまに、いましめられたお話です。
むかし、おサムライさんが、いばっていたころのお話です。
中野村に、定吉というおひゃくしょうさんがすんでいました。定吉さんは、子どものころから体が弱く、せきがでて、たんもよくつまったそうです。
医者にみてもらい、仏様におねがいするなど、いろいろと手をつくしたが、なおらなかった。せきが出はじめると、三日も四日もつづき、定吉さんはくるしんだ。
せきがでない、ある晴れた日のこと。定吉さんは、近くの山に出かけた。日なたぼっこをして、体をノビノビとさせていた。
定吉さんは帰り道で、人の形をした、大きな石を、みつけた。
「この石は、お地蔵さまにそっくりじゃ。家にもって帰り、おいのりしてみよう」
定吉は、この石をかついで家に帰った。
それからというもの、定吉は、毎日お地蔵さまに、おいのりをした。
「どうぞ、たんをなおしてくだせえ」
定吉が、お地蔵さまを家にはこんで、ちょうど百日目の、ばんのことです。いつものように、お地蔵さまにおいのりしていると、
「定吉、いつもありがとう。お礼に、たんをなおしてあげよう。わたしの首に『よどかけ』をかけなさい。そして、せきやたんのひどい人が、たずねてみえたら、その『よどかけ』をかけてあげなさい」
さっそく定吉は、よどかけをかけておがむと、せきもたんもすっかりなおった。
この話は、村から村へとつたわり、毎日おおぜいの人が、定吉の家をたずねた。そして、たんやせきにきくお地蔵さまだ、ということで、だれもが『たん地蔵』とよぶようになった。
数年がすぎ、定吉さんは、こんなことを考えました。
「こんなに、たくさんの人が、こまっているなら、お金がもうかるゾ・・・・・」
というわけで、さっそく定吉さんは、家をたてなおした。さいしょのころは、定吉も元気にしょうばいをしていた。数か月がすぎ、定吉さんは、また、たんがつまるようになった。せきも長い間つづき、ひどく苦しんだ。
それからは定吉も心をいれかえ、毎日いっしょうけんめい、いのったそうです。
「なむあみだぶつ、なむあみだぶつ」と。
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