スポーツニッポン新聞社は10日、緊急事態宣言下において大関・朝乃山関と深夜に会食していた件で東京本社編集局元記者 (44)=同日付で東京本社付=を諭旨解雇処分としました 。元記者は日本相撲協会から外出を規制されていた期間中にもかかわらず、大関・朝乃山関に同行し、同協会の新型コロナウイルス感染症対応ガイドラインに違反して飲酒、接待を伴う飲食店に行くなどしたうえ、週刊誌報道を受けた社内調査に虚偽の申立てをしました。さらに、元記者は事実を隠蔽しようとして朝乃山関に対し、口裏合わせを提案し、朝乃山関は日本相撲協会による事情聴取に対し、一時、虚偽の内容を述べることになりました。
併せて、 元記者の監督責任を問い、直接の上司である元記者の所属部長を減給の処分としました。さらに監督責任を負う、河野俊史代表取締役社長と石井真人常務取締役編集担当が役員報酬20%(1カ月)、上司である田村智雄執行役員東京本社編集局長が同30%(同)それぞれ返上することとしました。
スポーツニッポン新聞社は元記者の一連の行動が著しく記者倫理に反するだけでなく新型コロナウイルス感染防止の観点からも不適切な行動だったと判断しました。元記者は朝乃山関よりも年長者であり、規則遵守を助言する立場にありながら正反対の行動を取った事実も重くみました。
スポーツニッポン新聞社として記者教育が十分ではなく、コンプライアンス意識が全社に浸透していなかったと言わざるを得ません。その結果、読者の皆さまの信頼を失ったばかりか、日本相撲協会並びに大相撲ファンに多大なご迷惑をお掛けしたことを心より謝罪いたします。
今後は2度とこのような不祥事を起こさないよう、取材コンプライアンスや、新型コロナウイルス感染予防策の徹底を行います。再発防止策については別掲の通りです。
■「再発防止策」
①全社に新型コロナウイルス感染予防対策をあらためて周知します。
②全社でコンプライアンス研修を行います。
③従業員の不祥事の防止に向けた行動規範を策定します。
④雇用開始時並びに各種契約締結時のコンプライアンス・感染予防対策確認を強化します。
■「弊社による調査報告」
スポーツニッポン新聞社では元記者(以下A)の取った一連の行動について、外部の弁護士の協力を得て社内調査を行いました。調査結果の概要は以下の通りです。
◆A元記者と朝乃山関の関係 2019年8月の北海道巡業の頃に親しくなり、その後はLINEで日常的に連絡を取り合うようになった。会食の費用は基本的に朝乃山関が負担したが、比較的廉価な飲食店の飲食代やタクシー代金はAが支払うことがあった。Aにとってコロナ禍で力士らへの直接取材ができない間においても、会って話ができる貴重な関係だった。
両者は東京・神楽坂のキャバクラBを行きつけとしていた。Aは朝乃山関と同行した日を記録していなかったため、会食した日時は明確ではない。Aの記憶によれば2020年3月から21年3月までの間、Bに15回程度行ったが、多くは本場所後であり、少なくとも本場所中には行っていない。
◆21年4月のAと朝乃山関の会食 この期間、Aと朝乃山関は28、30両日を含め、約5回、Bに行った(回数についてAの記憶は明確でなく、供述以外の資料はない)。
28、30両日の会食については以下の通り。ともに、Bには朝乃山関がタクシーでAの自宅前まで来た後、Aが同乗してBに向かった。入店したのは午後9時以降で、滞在したのは2時間から3時間。入店時の検温はなく、個室に入った。テーブルには消毒液があり、女性従業員はフェースシールドを着用しており、客1人につき、1人が接客した。支払いについてAに明確な記憶はないが朝乃山関が支払ったと考えられる。
◆5月7日の状況 Aは神楽坂で知人と会食していた際、朝乃山関とLINEでやり取りをする中で、どちらが誘ったか記憶は明確ではないがBに行くことになった。Bの前で合流する予定としており、午後10時30分頃、同店の前付近でAが朝乃山関を待っているとミニバンが停車していた。Aは朝乃山関がタクシーで到着した後、同ミニバンから光が見えたことから週刊誌記者に写真を撮られたと感じた。Aは車内の人物に抗議をした後、タクシーに同乗し、西麻布に向かった。
西麻布にはAが知っているダイニングバーCがあり、Aは知人女性を呼んでCで合流した。Aの記憶によればCには午後11時頃から2、3時間ほど滞在し、A、朝乃山関、知人女性、後に呼んだ別の知人女性4人が同席した。朝乃山関は先にタクシーで帰宅したが、A自身は何時に退店したかの記憶はない。
◆5月8日から同17日までの状況 Aは8日中に朝乃山関とのLINEのトーク履歴を削除した。その後は朝乃山関と会食する機会はなく、LINEのやり取りだけだったが、その都度LINEなどの履歴を削除した。
◆5月18日の状況 Aが午後零時30分頃、自宅から最寄り駅に向かう際、知らない男性から緊急事態宣言中に朝乃山関と神楽坂に行っていたかを問われたが、否定した。一方、Aは上司であるスポーツ担当部長から、スポーツニッポン新聞社に週刊文春から質問状が届いたことを聞き、午後1時45分にその内容を知った。質問状の内容は7日に朝乃山関と神楽坂で待ち合わせ、その後、西麻布で午前3時頃まで女性を伴って朝乃山関と一緒にいたところを目撃した件について、当初Bに行く予定だったのか、西麻布で何をしていたのか、同日以前にも朝乃山とキャバクラに行っていたことが事実であるか、などだった。
Aは朝乃山関を守りたいとの思いから口裏を合わせて切り抜けることを考えた。口裏合わせの内容はAが行きつけの西麻布のバーのマスターが知り合いのトレーナーを紹介することになった、神楽坂で待ち合わせし、西麻布のバーに行き、朝乃山関はトレーナーの施術を受けた、というものだった。Aは治療を受けたことにすれば許される可能性があると考え、午後2時30分頃までに口裏合わせの内容を朝乃山関に伝えた。
Aは午後2時45分、スポーツ担当部長にこうした内容を電子メールし、電話でもより詳しく説明した。これを受け、スポーツニッポン新聞社は午後6時前、Aの説明に基づく内容を週刊文春に回答した。また午後7時から編集局長、スポーツ担当部長がAから事情聴取したが、Aは同様の説明をした。
◆5月19日の状況 週刊文春(21年5月27日号)に、Aが7日午後10時24分に朝乃山関がタクシーで神楽坂に到着した際、同誌取材班の車まで来て恫喝(どうかつ)、その後タクシーに同乗して西麻布に行き、会員制のラウンジのあるビルに入った後、午前3時頃、ともにビルから出てきて朝乃山関を見送ったとの記事が掲載されることが判明した。Aは同記事の内容が判明した後、午後3時15分から編集局長及びスポーツ担当部長らから事情聴取を受けたが、従来通り、口裏合わせした内容通りの説明をした。
同日夜、Aは朝乃山関からLINEでごめんなさいとの連絡を受け、何がですかと連絡したところ、全部ばれてますとの連絡を受けた(Aのトーク履歴は削除されており、具体的内容は確認できていない)。Aは午後9時前頃、スポーツ担当部長に電話して、あれは書いてある通りです、と述べて謝罪した。その後、編集局長にも同様に電話をした。
◆5月20日の状況 Aは午前9時30分から編集局長及びスポーツ担当部長らから事情聴取を受け、4月26日から29日の間の1日及び30日に朝乃山関とBに行ったこと、5月7日に朝乃山関とCに行ったことを認めた。同日、Aは、翌21日からの就業差し止めを通告された。
スポーツニッポン新聞社