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ホークラックスを守る薬

2007年06月03日21:35  6巻

海の洞窟の中で、水盆の中の薬を飲みながら拒絶し続けるダンブルドアの言葉は、水盆の薬を飲み干すことを拒否するというより、別なことを言っているようにも受け取れます。

最初、この部分を読んだ時、抑制がとれた状態のようだと思いました。普段理性で押さえつけられた本音の部分が薬の作用で出てきたのだと思いました。真実薬に近い働きをするものなのでしょうか。真実薬なら、無色透明ですが、この薬は緑色の光を放っています。また、真実薬なら、質問に対して真実を答える作用があるようですが、この時のダンブルドアは、ハリーの質問に答えているわけではありませんでした。勝手に、心の内を叫んでいるように見えます。
また、この時のダンブルドアは誰かに対して懇願しているようにも見えます。これがまた、ハリーに対して言っているわけではないように私には思えました。自分自身か、別の誰かに。

「だめじゃ、だめ、だめ…だめじゃ…わしにはできん…できん。させないでくれ。やりたくない・・・」
「わしのせいじゃ。わしのせいじゃ」「やめさせてくれ。わしが悪かったのじゃ。ああどうかやめさせてくれ。わしはもう二度と決して・・・」(6巻26章p.387)
「わしにはできん」「やめさせてくれ」という対象は、5巻で語ったダンブルドアの計画のことではないかと思いました。ハリーを愛おしく思ったことが欠陥、という計画は、非情なものであったことが窺われます。それをやりたくない、遂行しようとする自分を止めたい気持ちが常にあったのではないかと思います。

「あの者たちを傷つけないでくれ、頼む。お願いだ。わしが悪かった。代わりにわしを傷つけてくれ・・・」「頼むお願いだ。お願いだ。だめだ…それはだめだ。わしが何でもするから・・・」(6巻26章p.388)
「わしは死にたい!やめさせてくれ!やめさせてくれ!死にたい!」「殺してくれ!」(6巻26章p.389)
「あの者たち」という複数形も気になります。ここは、ドラコとスネイプ先生のことではないかと思いました。ドラコの任務はわかっていたようだし、スネイプ先生が破れぬ誓いを立てたことも知っていたでしょう。あの者たちの代わりに自分を傷つける、というのは、まさにこの後起こることのように思えます。ドラコが任務を遂行できなければドラコはヴォルデモートに、スネイプ先生は誓いの効力で死んでしまうでしょうから、それを避けたいという気持ちでこの言葉が出たのではないかと思います。自分が死ぬしかないと。

こうして見ると、この薬、飲んだ人の弱い部分が出てくる作用があるのではないかと思いました。
だいたい、ヴォルデモートは何か意図があって、この薬を用意したはずでしょうし、その意図は、「すぐさま殺さない」だけでなく、「ホークラックスを手に入れさせない」というものも含まれていたに違いないと思うのです。ただ怖気付かせるだけで十分かもしれませんが、ここまで来られた者は、ちょっとやそっとの脅しには屈しないでしょう。そこで、心の中の弱い部分が露呈するような薬を用意したのではないかと思いました。
もしそうだとすると、そして引用の後半部分の「あの者たち」がスネイプ先生とドラコのことだとすると、結果的にダンブルドアの弱い部分が採用されてしまったことになります。でも、強気のダンブルドアは、ドラコもスネイプ先生も切り捨てるくらいの心構えがあったとは、考えにくいような気がします。うーん、やっぱりこう考えるのは無理があるでしょうか。

では、一番心配なことが出てくる作用でしょうか。
ハリーを心配し、ドラコもスネイプ先生も心配でたまらないダンブルドア校長。これなら、受け入れ易いです。ヴォルデモートのホークラックスを狙ってここまでやってくるような者にとっての心配事は、やはりヴォルデモートに命を狙われることだと思います。そんな心配が出てきて怖気付く、という薬かもしれません。これなら、謎の人物R・A・Bが、ホークラックスを手に入れることができたのも頷けます。初めから死ぬ覚悟ができていた様子なので、この薬が妨げになることはなかったのではないかと思います。

そこにはいない誰かに懇願しているように見えるのは、ヴォルデモートの幻でも見えるのでしょうか。誰に対して話しているのかも気になるところです。

ところでこの部分、翻訳が気になります。
「わし」「嫌じゃ」などとダンブルドアの口調として訳されていますが、これは英語圏の人が読んだ時どう解釈したのだろうと思いました。つまり‘No’とか‘I can't’とか‘I don't want to…’などの、とても短い文章の中に、ダンブルドアらしさはでていたのだろうか、誰か別な人のセリフには見えなかったのだろうか、という疑問です。「ダンブルドアの声とは思えない声を発した」(6巻26章p.385)というのも気になります。
この辺がよくわかりません。
これがもし、ダンブルドアの本心などではなく、別の誰かの言葉だとしたら。
スネイプ先生の言葉かもしれないと思って見てみると、そんな風に見えなくもありません。スネイプ先生の心の叫びかもしれないと思って読むと、とても悲しくなってしまいました。

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