中国シノファーム製ワクチンの有効性「78.1%」がハッタリだった可能性 中国が発表する「数字」は信用できない
シノファーム製ワクチンへの疑念
インド洋に浮かぶ島国のセーシェルでは、人口の7割以上がワクチン接種を終えているというのに、コロナの感染者数が大幅に増加している。セーシェル政府によると、5月第1週に感染が確認された人のうち1/3以上がワクチン接種を終えていたが、その大半が中国のシノファーム製のワクチンを打っていたという。
モルジブ、バーレン、チリ、ウルグアイなどのワクチン接種率も5割を超えているが、やはり同様の現象が起こっている。特にモルジブやバーレンでは、人口10万人あたりの死者数がインドを上回る状況となっている。そして、これらの国々でも、ワクチン接種を終えた人たちの中でシノファーム製のワクチンの利用率が高いことがわかっている。
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中国でも当然ながら、シノファーム製を中心としたワクチン接種が進んでいる。人口がおよそ1億人の広東省は、ワクチン接種が5000万回を超え、中国全土の中でもワクチン接種率はかなり高い方だ。だが皮肉にも、この広東省でも感染が拡大している。
深圳市では感染リスク低減のため、工場労働者に週末も工場内の宿泊施設にとどまるよう指示が出された。広州市の中心部では再びロックダウン措置が発動された。
ここで興味深いのは、広州市で、ロックダウンと同時に、なぜかワクチン接種が停止になったことだ。公式には、人々の間でワクチン接種人気が非常に高まっていることから過密になる事態を避ける必要があることと、医療資源をPCR検査に集中させるためだとしているが、これを頭から信じることはできない。
一方で、同じ中国企業のカンシノバイオ社製のアデノウイルスベクターワクチンが広州市に運び込まれたことが報じられた。上記の理由でワクチン接種の停止を決めたならば、新しいワクチンをわざわざ運び込むというのもおかしな話である。
この状況を整合性を考えて判断すると、シノファーム製のワクチンでは感染防止効果が期待できなくなり、こちらの利用を一旦停止させながら、今後は新たにカンシノバイオ製のものに置き換える方針なのではないだろうか。
世界は薄々気付き始めている
中国疾病対策予防センター(CCDC)の高福主任も「既存ワクチンの有効率が低いという問題の解決策を検討する」必要があると述べ、シノファーム製をはじめとする中国製ワクチンの有効性の低さを示唆した。
高主任はmRNAワクチンの存在を無視するべきでないと述べながら、問題の解決策の一つとして、異なる技術を用いたワクチンを交互に接種することを挙げた。
これはシノファーム製のワクチンの効力が低いことを、モデルナやファイザーなどの高い有効性を示すmRNAワクチンと「併用」することでごまかす必要があると考えているようにも見える。シノファーム製のワクチンの有効性を、中国政府の内部ですら否定する流れになっていることが窺える。
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シノファームは2種類の不活化ワクチンを製造しており、医学雑誌JAMAに先ごろ発表された結果によると、その有効率は72.8%と78.1%だとされている。ファイザー製などと比べると見劣りするとはいえ、かなり高い有効性を示していることになるが、果たしてこれは本当のデータなのだろうか。
セーシェルなどでその有効性からは信じられない事態が進行していること、広州市が接種の停止に踏み切ったことなどから見ても、とてもそのまま受け取ることはできない。
チリ大学が発表した研究結果によると、チリで使われたシノファーム製ワクチンは、1回目の接種を受けてから2回目を受けるまでの間の有効性はわずか3%だった。2回目の接種から2週間後の有効性は56.5%だとされているから、2回目の接種を終えればそれなりの有効性は発揮するとは言えそうだが、それでもやはりシノファームが公式に発表している数字とはかなり大きな開きがあることになる。
もしも人命に直結する医学データにおいて大規模な改ざんを実施して中国製ワクチンを世界中に広げているのだとしたら、とても許されるものではない。そしてその可能性に世界は薄々気付き始めているとも言える。
やはり武漢ウイルス研究所が起源なのか
そもそも、新型コロナウイルスの起源が武漢ウイルス研究所だったのではないかという話さえ、もはや根拠なき陰謀論ではなくなっている。
英ロンドン大学のアンガス・ダルグリッシュ教授とノルウェーのウイルス学者のビルガー・ソレンセン氏は、ワクチン開発のためにこのコロナウイルスのサンプルを分析した際、実験室の操作でしか得られない「ユニークな痕跡」を発見した。ウイルスのスパイクに正電荷のアミノ酸が4つ並ぶという自然界には存在しない構成が見つかったのである。
磁石が鉄を引きつけるように、この構成は人体組織にくっつきやすい構造になっていて、ウイルスに人為的に手を加えて感染力を高める「機能獲得研究」によって作り上げられたものではないかと推察されている。さらにこのウイルスには信頼できる「自然的な先祖」がいないことからしても、武漢ウイルス研究所で作られたものである可能性が高いとの結論を導いている。
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ウォール・ストリート・ジャーナルは、2019年11月に武漢ウイルス研究所の研究者3人が病院で治療が必要なほどの体調不良に陥っていたことが米情報機関の報告書で明らかになった、と報じた。
アメリカ疾病予防管理センター(CDC)のロシェル・ワレンスキー所長も、新型コロナウイルスの発生源が武漢ウイルス研究所だった可能性があると、上院の公聴会で発言した。
また、米下院情報特別委員会も「新型コロナウイルスと武漢ウイルス研究所」と題した詳細なレポートを発表し、この中で武漢ウイルス研究所から漏出しコロナウイルスの感染拡大が始まったことを示す重大な状況証拠が存在することを示した。
状況証拠とは、主に以下のような内容である。
1)中国では研究所からウイルスが漏洩して人に感染する事態がこれまでも何度もあること
2)早くも2017年には武漢ウイルス研究所が必要な安全性確保のプロトコルを守らずに危険なコロナウイルスの研究を行っていると、中国駐在のアメリカの外交官たちが何度も警告をしていること
3)人間に感染しやすくするようにウイルスに変異を起こさせる機能獲得型研究が武漢ウイルス研究所で行われていたこと
4)武漢ウイルス研究所には中国人民解放軍が関与しており、生物兵器計画があったことは文書に残っていること
5)新型コロナウイルスが広がった実際の状況を隠そうと中国政府が何度も動いていること
そのうえで、中国政府が完全に信頼できる調査を邪魔していること自体が研究所からの漏出説を裏づける圧倒的な状況証拠だという、中国政府に対する痛烈な皮肉まで付け加えた。
今回のウイルスが他の生物を介して人間に自然と感染するようになったとする中国政府の見解を支持できる状況証拠はないに等しく、そもそも人間に伝染させた動物の特定さえできていないことも、この報告書は指摘している。
中国発の情報は信じられない
アメリカの公衆衛生政策に絶大な影響力を発揮してきた国立アレルギー感染症研究所(NIAID)のアンソニー・ファウチ所長も、新型コロナウイルスが自然に進化してできたものだということに対して「確信が持てない」とし、「我々は力の限り何が起こったのかを探求し続け、中国で起こったことの調査を続けるべき」であると述べた。
アメリカのみならずイギリスの情報機関も武漢ウイルス研究所からの漏洩説に傾いていることが報じられた。
中国が人為的に人間にかかりやすくする研究を行いながら「人から人への感染は限定的」だと説明して世界にこのウイルスを広げたということが事実だとすれば、世界の中国に対する見方は大きく変わる。中国がもたらす情報についての信憑性が地に落ちることになるのは確実だろう。
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「中国政府が「インチキ人口統計」の公表を1ヵ月も先延ばしにした事情」(https://gendai.ismedia.jp/articles/-/83254)で詳述したが、中国の国勢調査の人口統計も矛盾だらけであった。矛盾の一部は珍しく主流派メディアにおいても報道されたが、まだまだその追及は甘いものであった。この人口統計にさらに厳しい目が向かい、私が明らかにした矛盾が、さらに暴かれることになるかもしれない。
そして今後は、中国が公表するあらゆる経済統計に対しても厳しい疑惑の目が向かうようになり、中国経済の実情が公式発表とは全く違ったものであることが明らかになっていく可能性も高まった。こうなれば中国投資を進めようという企業は激減することになるだろう。
そもそも新型コロナウイルスが人為的なもので、しかも感染初期に封じ込めを行わずに「人から人への感染は限定的」だという虚偽の情報を流してパンデミックを引き起こさせたのだということになれば、なおさらだ。
習近平政権が推し進める戦狼外交への感情的な反発も相まって、この先、中国の孤立化がより一層進んでいくのではないか。拙著『それでも習近平が中国経済を崩壊させる』で述べたように、中国に対する幻想が崩れていく流れが、はっきりと見えるようになってきた。