狂走馬と呼ばれまして   作:ピロシキィ

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き、期待が重いぜ。もっと気楽に読んで?

超ゴー金 様より頂きました。
カッコいい
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bluebell 様より頂きました。
桜花賞制覇記念
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ぴょー様からまたしても素敵なイラストを頂きました。
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今までは描いてくれたもののまとめ
https://www.pixiv.net/artworks/90240176


また、感想でJRAのCM風ポエムをやると運営さんからダメされるそうです。活動報告にそれ用のもの作っときますのでそちらをご利用下さいませ。


皐月賞

 

 世間では競馬ファンのみに留まらずディープインパクトか、カイザーフェルゼンかという話題で盛り上がる。中央馬会も盛り上げる。

 

 しかし、その二頭だけでは競馬は成り立たない。同年代のライバル馬達もここまで勝ち残った実力ある馬達なのだ。

 

 それでも、

 

 とある調教師は言った。

 

 『暗黒時代』だと。

 

 とある騎手は言った。

 

 『生まれた時代が悪すぎた』

 

 そして関係者は口を揃えてこう言うのだ。

 

 『もしもその二頭が出会わなければ……』

 

 

 

 

 

 

 滋賀県 栗東トレーニングセンター

 

「桜は素直に応援できちょっと、だどもてにゃわん馬ど、並の馬じゃ鈴つけらぁへしゃげてしもう」

 

 ディープインパクトを管理する調教師は録画した映像を眺めながらポツリと漏らす。普段は出さないお国言葉が出たのは思わず漏れた呟きゆえか。窓からは西日が差し厩舎では馬達が夕食の時間を迎えている。流れる映像は今年のスプリングステークス。桜花賞を素直に応援できたのは自厩舎の所属馬が出走していなかったという事と、調教師の兄がオグリキャップの担当厩務員であったからだ。

 

「スタート、コース取り、折り合い、最後の追いも真っ直ぐ走ってる。騎手も世間で言われるほど悪くない」

 

 メジロマックイーンやステイゴールド、そしてディープインパクトと名馬を管理してきた調教師の甥であり厩舎の調教助手がそれに答えるように騎手に対して評価を口にする。

 

 一昔前の競馬界では、馬の力7騎手の力3と言われていた事がある。しかし近年では外国人騎手、理由は様々だが地方のトップ騎手が中央へ移籍するなど騎手増加に伴い質が高まった。もともと競馬というのはタイム差なしの決着がつくことが多い世界。ハナ差、アタマ差、クビ差は、コンマ1秒以下のタイム差で勝負が決まる。

 

 そんな世界で騎手に求められる力とは何か?

 

 スタート、位置取り、折り合い、追いといった技術に馬との信頼。

 

「実際に近くで見てのところどうなんだい?」

 

「騎手も急成長しているのは認めますけど、馬自体が化け物です」

 

 調教助手の言葉に何度か直接レースを見ているディープインパクトの主戦騎手がそう答えた。

 

「だけど……勝つのはディープです」

 

 映像は自陣営の馬の追いきりの様子に切り替わる。

 

 馬の調子も調教も一抹も不安はない。

 

 騎手も自信を持てる手応えだと話す。

 

 最強はディープインパクト。

 

 

 

 

 

 茨城県 美浦トレーニングセンター

 

「ここから届くのか、なんて馬だ」

 

 カイザーフェルゼンを管理する調教師はある馬の新馬戦、若駒ステークス、弥生賞のレースが収められたビデオを何度も再生する。

 

「気質は先行、逃げタイプなんでしょうか?」

 

「そうだな道中上手く手綱を握って、力を溜めてのスパート」

 

 調教助手の言葉に画面をみたまま答えるのは調教師の藤堂。

 

「それもロングスパートと言っていい位置で動いてますよ」

 

 カイザーフェルゼンの主戦騎手が腕を組んで答える。

 

「セオリー通り、スローペースの前残りも期待出来そうにない。……そもそもカイザーはスローペースの展開なんて今までやってないな」

 

 逃げタイプは一般的にはレースの展開が遅いほど有利と言われ、ハイペースの場合はバテて差される。

 

「今さら差し、追い込み指示をしても上手くいくとは思えませんが、どうしますか?」

 

「皐月……いやダービーまではこれまで通りだ。卓人、頼んだぞ」

 

「俺の相棒は最強ですよ。誰にも負けたりなんかしない」

 

 それは厩舎にいる関係者すべての総意である。たとえ、普段の様子がアレだったとしても。

 

「破滅逃げして故障するなんて事がないように。異常を感じたら直ぐに止めろ」

 

 調教師は最後に懸念を伝えて締めくくった。

 

 そこにコンコンとドアを叩く音がして入室の許可を出せば、

 

「テキ、アゼリア宛にまたブレードが贈られて来たんですが、どうしますか?」

 

 戸中井が困った顔でダイエットグッズを抱えて入ってくる。

 

「……またか」

 

 ファンレターと共に贈られてくる物の扱いに頭を悩ませる厩舎の関係者一同。

 

「テキーっ!  リアちゃんがカイザー君の馬房から出てくれません!」

 

 今度はなんだ?と部屋にいた全員が見やれば高砂が憤るいつもの光景。緊張感がないGⅠホースの担当厩務員に一同はため息をついた。

 

 

 

─────────────

 

2005年3歳クラシックシーズンが幕開け。

 

先週の桜花賞では劇的な勝利を収めて観衆を大いに沸かせたヒメカミアゼリア。その影響も受けてか、今週の皐月賞は大いに活気づいている。

 

皐月賞。

 

クラシック3冠の幕開けを飾る一戦。「最も速い馬が勝つレース」と言われ、スピードとスタミナを兼備した3歳のトップホースたちが中山芝2000mを舞台に覇を競う。グレード制導入以前は、第33回(1973年)のハイセイコー、第35回(1975年)のカブラヤオー、第36回(1976年)のトウショウボーイなど、ファンの多い個性派たちが栄冠を獲得するケースが多く見られた。グレード制導入後は、競走体系の整備が進んでよりスピード色の強いレースとなり、第55回(1995年)のジェニュイン、古馬になってマイルG1を制している。また、セントライト、シンザン、ミスターシービー、シンボリルドルフ、ナリタブライアン、の5頭が、皐月賞制覇のあと2冠目の日本ダービー、3冠目の菊花賞とタイトル獲得を重ねて三冠馬となった。

 

今年もまた三冠馬の誕生が期待されている。

出走は以下の通り18頭。

 

1 アドマイヤフジ

2 トップガンジョー

3 マイネルレコルト

4 コンゴウリキシオー

5 ヴァーミリアン

6 ビッグプラネット

7 ペールギュント

8 カイザーフェルゼン

9 ダイワキングコン

10 パリブレスト

11 タガノデンジャラス

12 ローゼンクロイツ

13 ディープインパクト

14 アドマイヤジャパン

15 エイシンヴァイデン

16 スキップジャック

17 シックスセンス

18 ダンスインザモア

 

本紙、注目馬を紹介していく。

 

◎ディープインパクト、○カイザーフェルゼン、▲アドマイヤジャパン、△マイネルレコルト、×ヴァーミリアン

 

 ◎ディープインパクト

本紙本命はこの馬。デビュー戦から3連勝で皐月賞に望む。特に2戦目の若駒ステークスで魅せた走りには度肝を抜かれた思いである。前回の弥生賞で中山コースでの懸念も払拭されており、追いきり、調教師コメントも自信が溢れていた。

 

 ○カイザーフェルゼン

迷いに迷った結果の○。ここまで6戦6勝、レースレコードを含めて5つのレコードを更新した怪物。パドック、返し等でマイナス評価を受けているが、ゲート前ではピタリと収まっている。2000という距離その一点が不安材料となった為○。

 

 ▲アドマイヤジャパン

現在まで4戦して2勝。勝利を逃した2戦も好位入着を果たしている。前走、弥生賞ではクビ差でディープインパクトに差しきられたものの券絡みは固そうである。追いきりでも調子の良さをアピールし存在感を出していた。

 

△マイネルレコルト

ここまで6戦し、大きく崩れたレースはない。前走の弥生賞も3着という結果を示している。当見立てではマイラーのように見えるが、中山であれば道中好位に着ければ勝負になると思われる。

 

×ヴァーミリアン

前走スプリングステークスでは惨敗したもののそれまでの実績を考慮。ラジオたんぱ杯2歳Sで魅せた末脚が決まれば上位に食い込む力は十分に持つ。しかしこの馬は半兄サカラートのように本質はダートなのかもしれない。

 

 

 

─────────────

 

 2005年 4月17日

 

 遂にこの日を迎えた。3歳クラシック1冠目、皐月賞の日である。先週の義妹と同じように厩舎総出で見送られ中山の地に降り立った。いつもよりピリッとしているような気がする関係者達の空気感と観客のお祭り騒ぎな空気感が混ざりあってるような得も言えぬ感覚だ。そして自分も緊張感に包まれるギリギリの勝負をパドックで行ってる最中である。

 

「……」

 

 こちらをちらりと見るアカハナ。対して自分はキリッとした顔で首を上げ堂々と歩く。

 

「……」

 

 アカハナの視線が外れた。自分は観客達にイケメンホーススマイルを向ける。やぁやぁ皆の衆っ! ご機嫌よう! 愛され皇帝のカイザーフェルゼンやで! お、自分の横断幕やないか、なになに【笑劇で打ち破れ! カイザーフェルゼン】……なんだこの微妙な文言は?

 

「……(チラッ」

 

 キリッ! なんだアカハナ?  こっち見んなし。

 

「……気のせいなのか」

 

 視線が外れた。カイザースマイル!

 全く油断も隙もあったもんじゃない。オマエは前だけ見て自分を誘導していれば良いものを。

 

『中山11レース第65回皐月賞のパドックです。解説はケースポの羽生さんです。それでは見ていただきましょう。……一番アドマイヤフジ、520kg増減はプラス2』

 

『はい、非常に落ち着いていますね。体もがっしりして──』

 

 お、桜の会のオッチャンじゃん。いや、オッチャン達じゃん。ちょっと止まってポーズ決めたいところだが、主催が睨むからこれで許してクレメンス。

 

 カイザーフェルゼーンッウインクッ! パチッ!

 

こちらの意図が通じたようでサムズアップで応えた自分のファン一号であろうオッチャン。

 

「……さっきから忍び笑いが聞こえるんだよなぁ」

 

 キリッ! アカハナよ、気のせいであろう。あと、こっち見んなし。前見て歩け。

 

 よし、ニチャア。

 

『8番カイザーフェルゼン458kg増減はありません…プフッ』

 

「……(チラッ」

 

 キリッ! アカハナェ! しつこいぞ!

 

『えー、馬体の張り、毛づやの良さ仕上がっている気はします。いろんな意味で目立つ一頭ですね』

 

『失礼しました。続いて9番ダイワキングコン──』

 

 仕方ない。今のうちに自分の人気でも見とくか。

 ふむ、未来の種付け王が1番人気。で、自分が2番人気か。競馬ファンの自分としてはディープの三冠達成は見たいけど、馬としては悪いけど簡単には三冠獲らせてやらないぜ。自分もぬいぐるみ販売がかかってるし、義妹にも負けられないからな。

 

『13番ディープインパクト444kg。マイナス2』

 

『そうですね体は440kg台と小柄な馬なんですが、それにしては体を大きく見せます。見栄えのする非常に良い馬ですね』

 

 そして今回はその三冠阻止の一番有利なレースだ。スタート直後に躓く事を自分は知っている。

 

 勝ったな! ちょっと笑ってくる。

 

 ニチャア!

 

「おいっ」

 

 あっ。

 

 笑顔の自分、半目のアカハナと見つめ合う。

 

「ブルルルッ」

 

 とりあえず唾飛ばしといた。

 

「汚な!?」

 

「どうしたんすかトナカイさん」

 

 さ、本馬場入場の時間よー。行くぞジョッキー君!

 

 

 

『中山競馬場は皐月晴れ、一際大きな歓声に迎えられまして第65回皐月賞GⅠ、出走各馬の入場です。芝の2000m戦、今年のメンバー18頭ご紹介しましょう』

 

『皐月の舞台に駒を進めた若葉ステークスのウィナー、アドマイヤフジ。鞍上は福留祐三57kg』

 

『未知なる2000で父にも負けない息も吐かせぬ直線一気トップガンジョー、大牧大』

 

 

 

 

『スタンド前の大歓声。笑顔で応える無敗の王者。偉大な父の軌跡を辿れるかカイザーフェルゼン。鞍上は藤堂卓人』

 

 

 

 

『一番人気の期待を受けた無敗の巨大彗星。クラシック大気圏に突入の時は迫る。ディープインパクトと滝寛』

 

 

 

 

「何時まで動かないつもりだよ」

 

お、全頭が待機所に向かったか。ほいじゃ、我々も行きましょうね。

 

「あだっ」

 

 観衆よ!我がスキップに酔いしれよ!

 

 

 

 

『桜過ぎて緑鮮やかな季節に誘ってくれます中山競馬場の皐月ロード。11万人のお客さんが詰めかけました。8番カイザーフェルゼンと13番ディープインパクトが今年の中心となった第65回皐月賞。生涯一度の舞台に進んだ18頭。そのスタート地点です』

 

 ゲート前ってみんなソワソワするからちょっと離れた位置からいつも静観しているのだが、なんか天才と英雄コンビにチラ見されてる気がする。

 

『さて、実況席の解説は競馬評論家の古河さんと、昭和62年サクラスターオー皐月賞ジョッキーの西信一さんです。西さん、いよいよ2005年の第一関門を迎えましたがどうでしょう?』

 

『そうですね。今年はカイザーフェルゼン、ディープインパクト二頭に注目が集まって、いよいよ直接対決という事もあってしばらくなかったような盛り上がりかたを見せていますよね』

 

『発表では11万3014人との事ですから98年のセイウンスカイ以来の11万人以上の客入り記録となりました。世間でも注目が集まるこの一戦ですが、古河さんは本命にディープインパクトを推しましたが、どんなレースを期待されますか?』

 

『僕はこの馬の性能が一つ他より抜けてると思ってますので、まぁ、この枠でも外を回って差せるんじゃないかなっていう見方ですね。今日の馬場状態は上がりが34秒台が続出しているような状態ですからね。ひょっとすると皐月賞レコードも出るかも知れませんね』

 

 これはディープコンビだけではなく他陣営からの視線もチラチラ感じてますわ。

 

「スー、ハーッ」

 

 で、鞍上は周りを見る余裕をもないのか。深呼吸を繰り返すジョッキー君。GⅠジョッキーやろ、シャキッとしてなさいよ。

 

『レコードと言えば逃げたレースは全てレコードで勝っているカイザーフェルゼンですが、西さんは本命にこの馬を推してらっしゃいますがいかがでしょうか?』

 

『パドックや返しもいつも通りでしたが、ゲート前ではやはりしっかり落ち着いてますね。ジョッキーの夢である舞台ですから仕方ない部分もありますけど鞍上の藤堂君がむしろ心配です』

 

 仕方ねぇーなぁ。後ろに誰もいない事を確認して虚空に蹴りを放つ。

 

「おわっ」

 

 堂々とせい藤堂と!

 

「ブルルルッ(イッツアカイザージョーク)」

 

「悪かった、ありがとよ……って何でまた、歯を剥き出しにしてんだ?」

 

 自分で言って自分でウケたんだ。気にするな。

 

『さぁ、中山競馬場直線の入り口、そこがスタート地点、今、スターターがスタート台につきました』

 

 ファンファーレが鳴り響き、大観衆が手拍子を打つ、歓声が響けばゲート入り。

 

『11万人がその目で見ようと集まった日本競馬の歴史の希望か、近代競馬の集大成か、二頭の対決の舞台にようこそ。平成17年牡馬クラシックはここから始まります』

 

 さてと、牧場主の晩酌代を稼ぎに行こうか。

 

『──アドマイヤジャパンがゲート入りを嫌がっていましたがようやく収まって、最後にダンスインザモアが落ち着いて収まりました』

 

 行くぞジョッキー君。

 

『ゲートが開いて第65回皐月賞スタートしました! カイザーフェルゼンは絶好のスタートで他はまずは揃ったスタートとなりました』

 

 打ち切りロケットスタートッ!

 

『いつも通りにカイザーフェルゼン逃げていく。追って行くのはビッグプラネット。その後ろパリブレスト、エイシンヴァイデン、ダイワキングコンそしてコンゴウリキシオー、外からはダンスインザモアスーっと上がって行きました。内からはヴァーミリアンさらに内から2番のトップガンジョーも上がって行って先団を窺いますさらにはアドマイヤジャパン。ディープインパクトは後方から4番手から5番手で1コーナー回って行きました』

 

 皐月賞は最も速い馬が勝つといわれるが、本当にそうだろうか? 

 

『先頭から振り返ってカイザーフェルゼン先頭で6馬身開いてビッグプラネット、さらに2馬身開いてコンゴウリキシオーが3番手に上がってきました。エイシンヴァイデン4番手、第2コーナーカーブ。外に出したダイワキングコン、内からアドマイヤジャパンが上がって行きます。2馬身開いてマイネルレコルトが追う形で向こう正面中間に入ります。1000m通過は58秒ちょうど。ハイペースの展開は後方有利に働くか』

 

 もちろんスピードは必要だ。おおよそが前半400mを速い流れになり、道中落ち着くが高い水準のまま推移する。ラストの直線が短い為、4角回ったらほぼ全ての馬がスパートに入る。

 

『ダンスインザモア中団グループ、外からシックスセンスさらに外からディープインパクトが上がって行こうかというところか3コーナーに入って行きます』

 

 高い持久力と末脚の持続力があることも求められる。

 

『先頭はカイザーフェルゼンが逃げている。その差が7~8馬身に広がって2番手ビッグプラネット直ぐ後ろにコンゴウリキシオー、外からエイシンヴァイデンが続いています。そしてマイネルレコルトが動いて行った。単独二番手に立とうかという勢いで3コーナーから4コーナーに入って行きます』

 

 ヨーイどん!のトップスピード比べなら自分は厳しいかも知れない。だが、スタミナと脚の持続力なら負けてない筈だ!

 

「来た」

 

 は、え?

 

『さぁ、4コーナー回って直線に向いた。先頭はカイザーフェルゼン! その差は5馬身、外からディープインパクトが上がって2番手にいる! 内ビッグプラネット、コンゴウリキシオーを躱して、先頭カイザーフェルゼンに迫る!』

 

 ちょっとおおおお!? ディープナンデ!?

 今、負けてない筈だ(キリッ! って勝ちフラグ立てたでしょーがぁ!

 

『最後はやはりこの二頭! このまま逃げきるかカイザーフェルゼン、一気にディープインパクトっ! ディープインパクトが突っ込んでくる!』

 

 オラ、ジョッキー君! 手綱を扱けぇ! 逃げきるぞゴラァ!

 

『残り100m! カイザーフェルゼンまだ粘るっ! ディープインパクト迫る残り二馬身! 一馬身! 躱すか……』

 

 コナクソォォ!

 

 ディープインパクトがナンボのもんじゃー!

 

 

『躱せない!? カイザーフェルゼン先頭ゴールイン!』

 

 ゼェ……ゼェ……。

 

『カイザーフェルゼン! 無敗で皐月の一冠目ェ! 勝ち時計はなんと1:58.0! なんという馬なんだっ! 2歳王者が岩の如く他馬の前に立ち塞がり、そして押し潰しました』

 

 ディープインパクトヤッベェわ、てか、スタートもしや躓いてないのでは? 躓いてアレならもう勝ち目ねぇだろコレ。

 

『掲示板にレコード表示が点ります。ディープインパクト半馬身まで迫りましたが2着、3着はシックスセンスが入着、4着アドマイヤジャパン、5着にマイネルレコルトで確定しました』

 

 まぁ、何はともあれ自分が皐月賞馬である。

 

 我が民達よ、ぬいぐるみを買って我を奉るが良い。




カイザーフェルゼン 牡3 458kg(±0)

 競走成績
 7戦7勝

 主な勝ち鞍
 ・皐月賞(GⅠ)
 ・朝日杯FS(GⅠ)
 ・京王杯2歳S(GⅡ)
 ・スプリングS (GⅡ)
 ・共同通信杯(GIII)

 獲得賞金
 3億1400万円(本賞金のみ)

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