バッハ会長を「はらぺこあおむし」に… 毎日新聞の風刺画を出版社が批判「センスのなさを露呈」
問題になっているのは、6月5日付毎日新聞朝刊の「経世済民術」というコーナーに掲載された「はらぺこIOC」という風刺画。IOCのバッハ会長ら3人のメンバーが「あおむし」となって「放映権」と書かれた「ゴリンの実」を食べている様子を描いている。
人気絵本「はらぺこあおむし」をモチーフにした毎日新聞の風刺画に対し、出版元である偕成社が「猛省を求めたい」とする社長名義の文書をサイト上に掲載した。
IOCのバッハ会長らを「あおむし」に模した風刺画で、東京五輪の開催をめぐる問題を皮肉ったものだが、同社は「金銭的な利権への欲望を風刺するにはまったく不適当」などと批判した。
同社の社長はBuzzFeed Newsの取材に対し、「表現の自由や風刺の重要性は理解しているが、納得いかなかった。絵本の内容を深く考え、うまく表現してもらえればよかった」などと話している。
問題になっているのは、6月5日付毎日新聞朝刊の「経世済民術」というコーナーに掲載された「はらぺこIOC」という風刺画。
IOCのバッハ会長ら3人のメンバーが「あおむし」となって「放映権」と書かれた「ゴリンの実」を食べている様子を描いた。菅義偉首相らしき人物の横には「犠牲が必要?」というセリフもある。
また、先月亡くなった作者の「エリック・カールさんを偲んで」とも記されている。
これに対し、偕成社の今村正樹社長は、ホームページ上に「風刺漫画のあり方について」という文書をアップした。
風刺の内容そのものには「表現の自由」の観点から異議は申し立てないとしながら、「強い違和感」を表明した。
風刺の意図は明らかで、その意見については表現の自由の点から異議を申し立てる筋合いではありませんが、多くの子どもたちに愛されている絵本『はらぺこあおむし』の出版元として強い違和感を感じざるを得ませんでした。
『はらぺこあおむし』の楽しさは、あおむしのどこまでも健康的な食欲と、それに共感する子どもたち自身の「食べたい、成長したい」という欲求にあると思っています。金銭的な利権への欲望を風刺するにはまったく不適当と言わざるを得ません。
社長の見解は?
そのうえで、「風刺は引用する作品全体の意味を理解したうえでこそ力をもつ」「不勉強、センスの無さを露呈した」などとして、作者と編集者を批判。毎日新聞社に「猛省」を求めた。
繰り返しますが、出版に携わるものとして、表現の自由、風刺画の重要さを信じるがゆえにこうしたお粗末さを本当に残念に思います。日本を代表する新聞の一つとしての猛省を求めたいと思います。
「はらぺこあおむし」はアメリカで1969年に初版が発行されたが、最初の絵本は日本でつくられている。穴あきなどの仕掛けが難しかったためで、その立役者となったのが、偕成社の当時の社長だった。
日本語版は同社から76年に発行され、発行部数は430万部を超えている。エリック・カールさんとは家族ぐるみの付き合いがあったという。
同社の今村正樹社長はBuzzFeed Newsの取材に対し、同様の文書をサイトを通じて送ったところ、同社側から訪問するとの連絡があったと明らかにし、こう語った。
「私自身、表現の自由や風刺の重要性を認識していますが、大切にしている出版物なので、納得がいかなかった。一言いっておかないといけないと、文書を出しました。ことを荒立てたいわけではありません」
「絵本の内容を深く考え、注意を払ってうまく表現してくださったら良かった。そもそも表面的な風刺では批評力を軽んじられてしまいますし、それではまずいのではないかとも感じています」
BuzzFeed Newsは毎日新聞社に対しても取材を申し込んでいます。回答があり次第、追記します。