書き方がわからないので許してください。
あと全然自衛隊の仕事とかわからないのでイメージで書いてます。実際とは全く違うと思いますのでご了承を。
世界各国にアメリカ大統領の招集がかかった。というニュースが私の目に飛び込んだのは、まだ蒸し暑い9月中旬の昼頃だった。私が駐屯地の食堂でアジフライを尻尾ごと平らげ、野菜てんこ盛りの味噌汁に手をつけようとしたその時。
『番組の途中ですが、速報です、速報です。アメリカのダベル大統領が国連全加盟国の首脳に招集辞令が出されました』
食堂に備え付けてある液晶テレビが微かな声でそう言った。
聞き間違いかも知れなかった。何せこの食堂はお昼時はいつも混んでいて喧騒に溢れている。この場の誰かが発した音がダブって聞こえたのだ。
「おい、ちょっとテレビ(音量)大きくしてくれや」
後ろに座っていた中年の男性隊員が私に向かって言う。あまり面識はない。
リモコンらしきものが見つからなかったので、前のテレビに近づいて上部についてある音量ボタンを探す。誤って隣り合っている選局ボタンを押しては事だ。
「ちょっと待ってくださいね」
音量ボタンを見つけたので即座に押す。何度も押していくうちにようやくはっきりと聞こえてきた。‥‥‥その場の緊張感さえも。
『……今後の人類の運命に関わることのため、早急に首脳会議を開始したい。各国は迅速に対応願う』
焦燥感を極めた男の顔から緊迫した言葉が連続して出てきた。その男はその後も続けて何かを言ってるが、前の言葉にしがみつくことだけで精一杯だった。
食堂にいた一堂が口を開けてポカンとしたのを背中越しに感じた。理解が追いつかない。静止時間が数十秒続く。そしてざわめきが小さく起こり始めた頃、震えた私の手からガシャンと味噌汁の入った茶碗が床に落ちて、ようやくベテランの隊員が我を取り戻す。
「おいみんな仕事だ!飯なんか食ってる場合じゃねーぞ!」
その瞬間、氷が溶けきったように全員が一斉に動き出した。
「防衛省に情報確認しろ!」
「メディアへの対応はどうする?」
「確認中としか言いようがないだろ」
「午後の実射訓練はどうする? 連隊長が見に来られるんだけど」
「そんなの後回しだ!」
あっという間に先ほどの和やかな喧騒と打って変わり、食堂内は怒号の飛び交う地獄絵図へと変貌した。
「とほほ、こりゃ今夜も帰れそうにないなぁ」
同僚の霧島京香三尉が、盛大にこぼした野菜入り味噌汁の処理に追われている私に話しかけてきた。
「のんびりしてるねキョーカは、もっと驚かないの?」
私は雑巾をかけながら本人を見ないで言った。
「なんかみんな出かけちゃったねぇ、どうしてだろ?」首を傾げる。
「あんた、テレビ見てなかったの!? あんなにみんな黙りこくって釘付けだったのに」
「うん、わたしゃ餃子定食に釘付けだったのだ」
呆れながらもそのノーテンキさには見習うものがあるなと思った。
「ねぇねぇ、片付けなんてここの食堂の人に任せればいいんじゃないの?
早く戻らないと中隊長に怒られるよ」
図太な京香も中隊長の叱責は怖いらしく、眉をハの字に寄せる。
「いいよ、ここのおばさんに悪いし‥‥‥京香だけでも戻って」
「朱音っていつも他人に気を使ってるよね。そんな気を使ってると一生うだつが上がらないぞ!」
調子のいいことを言いながら京香も片付けに参戦してきた。いいよ、と私が言うと、イーカラ、イーカラと作業をやめない。君っていいやつだなぁ。じんわりと目に涙が滲む。
『……どういうことなんでしょうね、西田さん。何か不測の事態が起こったということでしょうか?」
再びテレビの声が耳に入ってきた。顔を上げて液晶を確認すると痩せ身な若手アナウンサーらしき人物が、今度は対照的に饅頭みたく太った人物に顔を向けている。
『いや〜、何とも言えないですね、情報が少なすぎるので。しかし、アメリカ大統領が国連全加盟国に対して招集願いを出すなんて前代未聞ですよ。よっぽど緊急なことなんでしょうね』
饅頭が頬杖をついて言う。
『ネットでは宇宙人と接触したか、などの憶測が飛び交っていますが?』
『いやぁ、だからなんとも言えないですよね。くれぐれもデマを発信しないでいただきたい。そもそも宇宙人なんてもんはこの世に——』
「凄いことになってるね」
京香が目を輝かせている。
「何でそんな嬉しそうなのよ」
「だって宇宙人でしょ!ロマンあるなー」
頭のてっぺんのアンテナをピコンと立てる。こうなった京香はどこか愛くるしい。
「それは憶測って話だったでしょ!」
私は思わず吹き出した。
「私夢なんだなぁ、宇宙人に会うことが」目の輝きはまだ衰えない。
「この前は生きてる恐竜に乗ることが夢、じゃなかった?いくつ夢があるのよ」
「えへ、ひゃっこ」
京香はいつもそうだ。マイペースな言動が私や周りの隊員たちを和ませ巻き込んでいく。
「会えるといーね、宇宙人や恐竜に!」
私はイーと口を横っ開いた。
——本当にそれが宇宙人や恐竜ならよかった。そう思うのはこの時ではなく、ほんの少し後のことだった。
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