コロナ後の世界:テーパリング

コロナ後の世界:テーパリング

いまだ新型コロナウイルスの世界的な感染は継続していますが反面、世界経済はワクチン普及と期待もあり、経済は急速な回復が進んでいます。カナダ銀行(中央銀行)は5月21日の金融政策決定会合で、どこの国よりも早く国債の購入を減額することを決めました。カナダ銀行総裁は「コロナ感染に対する経済の耐久性へ自信を深めている」と発言、カナダ経済は想定以上に回復が進んでおり、金融緩和の正常化に動きだしました。
世界中が動向を注視し、今後各国でのテーパリングの波が押し寄せようとしています。

Contents [show]

ところでテーパリングってなに?

英語表記で”tapering”のことであり、taperとは先細り、漸減を意味する英語。政策金利が実質ゼロ水準にあり、これ以上の引き下げ余地が無い状況下における金融緩和策として、量的緩和策(QE:Quantitative Easing)がある。量的緩和策は、国債や住宅ローン担保証券(MBS)などリスク性のある金融資産を中央銀行が直接買い入れることで、市中への資金供給を増やし景気を刺激することを狙う。
これに対しテーパリングとは、量的緩和策による金融資産の買い入れ額を順次減らしていくことを指す。出口戦略とも呼ばれ、雇用統計などの指標の改善に一定の成果が上がった時点で量的緩和策を縮小していくことを示す用語として使われています。

テーパリングとマーケットの反応

~普通の反応は?~
テーパリングを進めるということは、毎月の国債購入額を減らしながら、最後には国債権購入をゼロにして、その後は金利正常化の一環として利上げに動くか、もしくは膨れ上がったバランス・シートの縮小に動き始めます。
また毎月の国債権購入額を減らすということは、中銀が購入してくれる額が減るので、債券の需給関係が崩れ、債券価格の下落(利回り上昇)が起きやすい状況になります。さらに、中銀が供給してくれる流動額が減少するので、株価下落リスクも高まることも付け加えられます。
~では実際の過去の反応はどうでしょう?~
過去に起きたテーパリングを事例に取ってみましょう
2013年12月18日、当時のFRB議長バーナンキ氏は同議長にとって最後のFOMCとなったこの日、マーケット予想を完全に裏切る形でFOMCは「100億ドル規模の縮小」とテーパリング開始を宣言しました。
発表のタイミングも予想外なこともあり、マーケットの動きは想定外なものになりました。テーパリング発表後は、株価上昇、国債利回りも急騰はしなかったのです。
どうしてこの環境でも株価が上昇したのか?それは、FOMCから発表された声明文に秘密が隠されていました。
そこでは、テーパリング終了に訪れる利上げ決定時の失業率やインフレ率の目標数値を挙げており、「それぞれの数字が達成出来ない限り、政策金利は上げない」となったのです。「低金利である期間はマーケットが思っている以上に長期化」と緩和状態の継続を約束した上で、テーパリングを通じて引き締めを同時に続けていく決断だと思います。
このように緩和と引き締めとでそれぞれ相殺されるが、「長期化する低金利相場」という部分は全くの想定外。マーケットへのインパクトは、株価は上昇しドルは売られた結果だと思います。
もう1つは、テーパリングの終了時期が遅れたことも挙げられます。2014年夏にテーパリングは終了となっておりましたが、バーナンキ元議長は、「2014年末までに完全終了」と発言し、低金利の長期化がうたわれました。それが更に株価の押し上げ要因になったのではとも思われます。
そして、「テーパリングは金融引き締めではない」というメッセージを何度も繰り返していたのも印象的です。
今回、せっかく回復した米国株の急落は世界の金融安定を損なうことにもなりえるため、今後パウエル議長がテーパリング発表時は、緩和策の長期化を臭わせながら株価急落を支えることでしょう。

各国の反応

アメリカ経済に見るテーパリング~ジャクソンホールでテーパリング?

FRBのパウエル議長は4月14日に、利上げにコミットする前に量的緩和策の縮小に踏み出すとの見解を示し、さらに債券購入の段階的縮小が「利上げを検討する時期よりもかなり前になる可能性が高い」と発言しています。
FRBも景気改善に伴い6月にも資産購入を段階的に減らす計画を示唆し始める可能性があるとの指摘が出ている。6月のFOMCもしくはジャクソンホールでテーパリングを示唆する可能性は十分にあると言えます。
これはカナダ銀行に続き、FRBも正常化に向けて舵を切る可能性があると言えましょう。

日本経済に見るテーパリング~実質的なテーパリング

では日銀はどうでしょうか。2%の物価目標という看板を下ろさない限り、緩和に前向きな姿勢は崩さないかもしれませんが、政策目標を量から金利に移したことにより、実質的なテーパリングは行って模様です。国債の買い入れに加え、ETFでも実質的にテーパリングを行っていると見ざるを得ません。しかし、FRBと同様に利上げには慎重であり、つまりマイナス金利政策が維持されているということになります。
経済が正常化に向かうのであれば、非常時対応でもあるマイナス金利政策も止めるべきだとは思いますが、引き締めとみられることには躊躇があるようである。これはECBも同様かと言われています。

欧州に見るテーパリング~ECB、超緩和維持へ、テーパリング憶測は時期尚早

欧州中央銀行(ECB)は今週予定されている定例理事会で、大規模な金融緩和策を据え置くと見られ、回復の遅れに対処するために、ECBが超緩和策を維持することが正当化されるとみられます。
一部のアナリストは、夏に向けて、ワクチン接種が進み、新型コロナウイルス感染が沈静化することを見込み、ECBが景気の見通しを引き上げると見ている。もし、域内の大規模金融緩和継続への強い公約がなければ、6月にテーパータントラムが起こると、警戒されています。投資家はさらに、この会合で、中央銀行による長期金利の上昇を抑制する戦略の明確化を求めています。
ラガルド総裁は最近のインタビューで、欧州経済が第1四半期に縮小する可能性を警告した。成長軌道を脱したわけではないが、回復ペースが米国経済の回復に遅れることも認識。物価安定の目標には程遠いと、慎重な見解を示しており、4月理事会でも同様慎重な見通しを示す可能性が強く、緩和策縮小を織り込むには時期尚早と見られています。

FOMC議事要旨(5月19日発表)

5月19日に公開された4月27/28日 FOMC議事要旨で、テーパリングに関する言及がありました。
複数のFOMC理事達は、FEDの3ヶ月に1度のマクロ経済予想通りにアメリカ経済が力強く改善し続けるのであれば、今後の理事会のどこかのタイミングで資産購入額の調整(テーパリング)について協議を始める事は適切であると提言した。
はっきりと「テーパリングを開始します」とは書かれておりませんが、議事要旨に「テーパリングを示唆する文言が加わった」ことを受け、マーケットは大きく変動しました。
※議事要旨が発表される時間帯は、ロンドン市場、ヨーロッパ市場共に閉まっており、アメリカし市場か開いていなかったことからマーケットが薄く、値動きが荒っぽくなりました。

ではテーパリングの発表はいつ?

マーケットにははっきりとしたコンセンサスは上がっておりませんが、おそらく8月のジャクソンホール経済シンポジウムの頃ではないかと予想されます。
早ければ6月のFOMCという声も聞かれますが、今月発表された雇用統計結果が悪く、6月は時期尚早と言った感じです。
逆に年末に近い時期まで引っ張るのは避けたいはずです。これはQE策実施中は低金利のドルを市場にばらまき、企業や個人は多くの資金を手に入れることができました。しかしテーパリング発動はその逆の動きになります。市場にばらまかれるドル資金の量が毎月減っていき、そして減少と並行して、ドルの金利は上がっていく可能性があるのです。そうなると年末の年越え資金の手当てなど、支障をきたす危険性もありこの時期の発表は避けたいという話です。
よって最も有効なのは、8月辺りのワクチン接種完了、経済の正常化を踏まえ、ジャクソンホール時期か、マクロ経済予想が発表される9月FOMC辺りの可能性が高いとみられます。

欧州、アメリカそして日本、コロナ禍からの経済回復のちのテーパリング…まだまだ経済の混乱は続きそうです


口座開設お願いします! ※Akiもトレードアイランドに参加していたこともあります。
是非検討ください


最後まで読んでいただきありがとうございました。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です