日本人なら一度は聞いたことがある「三種の神器」という言葉ですが、不思議なことに、イスラエルにも「三種の神器」が存在します。1981年、『レイダース失われた《聖櫃》(アーク)』という映画が世界的に大ヒットしました。この映画は、シナイ山頂で神がモーセに語った十戒を書き記した石の板と「契約の箱」の行方を探し求めるアドベンチャーの物語です。この聖櫃とも呼ばれる「契約の箱」は、紀元前7世紀頃、イスラエル王国の崩壊と共に姿を消したと言われており、いまだに発見されておりません。契約の箱の中にはモーセに与えられた十戒が刻まれた石碑の他に、エジプト王の前で奇跡を起すために使われた「アロンの杖」と呼ばれる短い鉄の棒と、イスラエルの民が荒野で旅をしていた時に神が天から与えたマンナというパンのような食べ物を入れる「黄金の壷」の3点が納められていました。これら三種の神器を納めた聖櫃を、幕屋、そして後のエルサレム神殿に設けられた「至聖所」と呼ばれる大祭司しか入ることの許されない最も神聖な場所に奉安し、イスラエルの民は神を拝し祀っていたのです。また聖櫃の側面には金属のリングが設けられており、移動する際にはこのリングに2本の長い木の棒を通すことから、その外観は日本の御神輿に大変よく似ています。そして日本の御神輿を担ぐのと同様に、複数の人々が棒を肩にかけて担いで移動する訳ですから、そのルーツが同一である可能性があります。
日本では三種の神器は皇位継承のシンボルとして位置付けられています。伊勢神宮においては御神体と呼ばれる八咫鏡が古くから存在し、20年に一度行われる遷宮の時には白い布で覆い、夜間に限り移動できることになっています。また、草薙の剣は熱田神宮に、そして勾玉(まがたま)は宮中三殿の賢所に安置されていると言われていますが、これら三種の神器を一般人は誰も見ることが許されないため、神器の詳細や製作の趣旨等を十分に検証することができないまま今日に至っています。日本とイスラエルの三種の神器を比較すると、その形状から察して八咫鏡は十戒の石碑、草薙の剣はアロンの杖、そして勾玉はマナの壷に類似していると考えられます。そして1954年、三笠宮殿下が八咫鏡の裏にヘブライ語の文字が書かれていることを新聞に投稿したとこともあり、八咫鏡を含む三種の神器とイスラエルの関連性の指摘は絶えなくなりました。 失われた「契約の箱」は2600年以上、行方がわからないままになっています。イスラエルの10部族からなる北の王国が紀元前722年に、そして2部族からなる南朝のユダ王国が紀元前587年に滅亡するまでの間、国家が崩壊していくプロセスの中で聖櫃がいつの間にか姿を消してしまったのです。ちょうど時期を同じくして紀元前7世紀頃、日本列島においては神武天皇を初代天皇とする皇族による治世の時代が始まりました。そして史書によれば、天孫降臨と共にもたらされた神器をもって、皇位を保証する御神体としたのです。また「契約の箱」は、ヘブライ語の原語において「船」という意味を持っていますが、日本でも神器を収める御器を「御船代」と呼びます。そしていつしか日本の島々では神を祀る際に神輿が担がれるようになり、群集が大声で「ヨイショ」と掛け声をかけながら、力の限り大地を巡り回ったのです。
イスラエルが崩壊した直後、突如として神宝を携え、神を祀ることを常とする人々による新しい国の歴史が、アジア大陸の東のはずれに浮かぶ島々で始まりました。この見事なリズムの背景には「日本とユダヤのハーモニー」のメロディーが込められているように思えてなりません。