「どけ!」、という言葉は日常の会話で時折耳にする言葉ですが、その派生語である「どける」は、邪魔な物を動かすという意味で使われる、「退(の)ける」が転じて「どける」になったと言われています。しかしこれだけの説明では何故「のける」が「どける」に転じたかという説明に疑問が残ります。
ヘブライ語では「拒絶する」、または「退ける」ことを(dokheh、ドケ)と言います。この単語の発音は厳密には「どへっ」となりますが、khの発音は喉を詰まらせて息を吐き出しながら発声するため、英語の表記からもわかるとおり、実際には「ドケッ」と聞こえます。発音と言葉の意味が日本語の「どけ」とほぼ同じであるだけに、この語源はヘブライ語である可能性が高いと考えられます。この「ドケ」の語尾が変化した(dokhek、ドケ)の発音は「退ける」の「ドケ」とほとんど同じながらも、言葉の意味は「押す」となります。実はこのが「どっこいしょ」のルーツを解明する手がかりとなるのです。誰もが聴き慣れたどっこいしょという日本語は、力を入れたり、相手をさえぎって止める時に発する掛け声ですが、たとえ日本語の意味が不明であっても、ヘブライ語では理窟にかなった大切な意味が含まれていたのです。その言葉の意味と、ルーツを見出すだけで、古代史の見方が一変します。
ヘブライ語で(yeshuah)「イェシュア」は「神の救い」を意味します。この言葉から「救い」に関連した類義語が多数生まれ、世界各地で使われるようになりました。例えばイエス・キリストのことを、新約聖書の原語であるギリシャ語では「イエスー」、アジア各地においては「イサ」と称するようになったのも、「イェシュア」というヘブライ語にルーツがあります。また日本語の医者という言葉も「癒す人」の意で、「救い」を意味する「イェシュ」が「イシャ」に転化したものです。これら2つのヘブライ語の「ドケ」と、神の救いを意味する「イェシュ」を付け足すと「ドケイシュ」となり、「神の御助けにより押す」という意味になります。すなわち「どっこいしょ」とはヘブライ語の「ドケイシュ」が訛った言葉であり、力を込めて押し、相手を倒す時に、神の助けを求めて叫ぶ、祈りの言葉だったと考えられます。
「どっこいしょ」と同様に「よいしょ」という掛け声にも神の救いを叫び求める意図が隠されています。「や」は神様の呼び名であり、「イェシュ」、「イシュ」は前述の通り「救い」を意味するため、「ヤイシュ」とは「神の救い」の意味になります。それが何度となく叫ばれているうちに「よいしょ」に転化したと考えられます。すなわち「よいしょ」と掛け声をかけることも、神の救いを求める祈りの言葉だったのです。
このように私たちは知らないうちに、ヘブライ語を語源にもつ言葉を日本語として使っているのです。たとえその語源のもつ本来の意味が忘れ去られていようとも、いつの間にか神の救いを求める言葉を語っているように、長い年月を経て、ヘブライ語は日本語に溶け込み、そのルーツの一部として、今も脈々と息づいているのです。