歌って踊れる7人グループ。AAA。
youtubeでライブ映像を見ると分かりますが、ダンスも歌もハイクオリティです。ライブはそれはもー盛り上がるでしょう。
そんなAAAの新曲「777」。8月1週のオリコンチャート、4位の曲です。
最近は僕の近所のコンビニでも流れてます。
夏っぽい元気な曲で、サウンドのクオリティはものすごい高いです。
めまぐるしい転調による展開、エロいベースのフレーズ、などなど聞きどころ満載です
楽器構成、メロディ、コード進行の3つの視点から細かく分析していきます。
------①楽器構成------
バスドラム
60Hz付近が強調されたかんじの太い音色。
4kHzあたりのアタック感もほどよく気持ちいいです。
イントロ、Bメロ、サビはシンプルでノリやすい4つ打ち。
Aメロでは裏16分を使ったスピード感あるフレーズを叩いています。
スネアドラム
2~4kHzのヘッドにスティックが当たるアタックが強調されている印象。
Aメロで聞くと分かりやすいですが、意外とリバーブもかかっています。
2,4拍目を基本叩いてます。
フィルは少ない手数でシンコペーションを強調する、渋かっこいいものが多い。
クラップ
サビでメロディの合いの手として「ぱんぱんっ」とやってます。
こういう分かりやすい合いの手はいいですよね。ライブでも盛り上がりそうな感じです。
ハイハット
右側の前の方にいます。
タイトでボリューム控えめ。地味に裏を叩き続け、地味に聞き手を気持ち良くさせている仕事人。
この手のジャンルだと裏はオープンハイハットにすることが多いと思うのですが、この曲はクローズ。
おそらく2kHz以上の高音域を、後述するシンセべル、ブラスのために空けておいたためだと思われます。
あんまり同じ音域の楽器を増やすとごちゃごちゃして、それぞれの良さを消しあっちゃいますから。
Aメロでよく聞くと、16ビートで演奏してるのが分かりますね。
裏8分以外はほぼ聞き取れないほどの小さい音で演奏されていますが。
クラッシュシンバル
これもボリュームは控えめ。ピッチは高めでリリースは長め。
8kHzあたりのきらびやかさがある印象。
しゅいーっていう風っぽい音
リバースシンバル的に使われています。
フレーズの切れ目を聞き手に予感させるというリバースシンバルの仕事を担いつつ、夏っぽさの演出もしています。
編曲者の手腕が伝わってきますな。
宇宙っぽいキラキラしながら下降する音
イントロで流れています。たのしげな雰囲気が演出されてます。
これも編曲者のナイスなセンスによってつけくわえられたものでしょう。
エレキベース
指弾きのうねうねした、ファンキーなベース。
100Hz付近が充実してる印象。
ドラムパターンがシンプルな分、このベースが動きまくって気持ちいいグルーヴを作っています。
イントロはオクターブのディスコパターン。分かりやすく盛り上がれます。
Aメロの動きはシンコペーションを強調したもので、かなり面白いです。聞きどころ!
エレキピアノ
Aメロで登場。目立たないですが、左側にいます。
カッティングギターのようなフレーズで16分をリズミカルに刻みながら、コードを弾いてます。
右側にいるハイハットに対応する立ち位置。
ピアノ
ちょい右側にいます。
Aメロのリズム、コードの中核を担ってます。
ダンスミュージックっぽい、低域はカットした音色。
ブラスセクション
この曲の楽しげな雰囲気を倍増させる仕事をしてます。やや右のほう。
イントロではメロディの合いの手役。
Bメロでは低い音域でコードをバッキング。
サビではメロの邪魔をしない程度に動きつつ、コードを支えています。
シンセべル
Bメロ後半、サビで登場。
頭拍で高い音を鳴らして、曲全体をきらびやかにしてます。
ストリングス
イントロ後半ではスタッカートでトップノートを。
Bメロ前半ではロングトーンでメロディにユニゾンする動き。
サビではシンセべルにユニゾンして高音を伸ばしてます。
曲の音域のレンジを広げたいときに出てくる、J-popストリングス定番の仕事をしてます。
この曲で注目したいのは、バスドラムの音色、ベースのフレーズ、ブラスのフレーズ、でしょうか。
特にブラスはメロディに対してのオブリに使うだけでなく、コードを支える仕事も積極的にしています。
ブラスがたくさんパッパラ~と吹きまくってるので、曲全体も楽しい雰囲気になってますね。
------②メロディ------
気になるところだけちょっと見ていきます。
intro
Shll we sing a song?
Show me! Clap your hands!
NaNaNaNaNa
→A,B,D,E,F#
4拍子の曲に対して3拍のフレーズを繰り返す、ポリリズムを使ったメロディ。
2度、3度だけで上がり続けるシンプルで盛り上がるメロ。
最後に到達するF#は最初のコード、Emにおいて9thの音で少しお洒落なかんじ。
女声のメロディ→男声のラップ
の応答を繰り返す展開。
後半は3度上のハモリも増える。
Aメロ
やらなきゃいけない事なら→B,D,B,D,E,F#,F#,E,C#,B,A
無理してもこなすくせに →A,C#,A,C#,D,E,E,D,C#,E,D
本当にしたい事はいつも →B,D,B,D,E,F#,F#,E,D,C#,D,E,F#
後回しのBoy-friend →A,D,E,F#,G,F#,E,D
8分裏からためて入り、後半ではシンコペーションをしている。
音の高さはうねうねしながら上がり、また下がる山の形。
1回目で提示、2回目は2度下で同じことを繰り返し、3回目で1回目と同じことをし、4回目でオチをつける、聞きやすい定番の形。
前半は男声のソロ、後半は女声による上3度のハモリも加わる。
Bメロ前半
風が吹き抜けてく 少しの距離さえ→F#,D,A,Bb,Bb,D,A,G,F# F#,G,F#,E,F#,E,D,D
(close to your heart) →A,G,A,F#
もどかしく感じる程 溢れる想い →F#,D,A,Bb,Bb,D,A,G,F# F#,G,A,D,E,F#,D
(stay with me) →F#,G,A
1拍休んで拍頭のフレーズが続き、途中からシンコペーションを使っている。
下へ4度、上へ5度と跳躍が激しいフレーズ。印象深い。
合いの手の英語のフレーズは拍頭で伸ばすシンプルなフレーズ。メロディで伸ばしている音に対してハモる音をつかっている。
後半を少し変えた同じようなメロディをもう一回繰り返す。
女声によるハモリは全て下3度。
Bメロ後半
モノクロのまま見過ごした景色→B,B,C#,D,E,F#,A,A A,G,F#,G,F#,D,D
すべてがここから輝きだすよ →B,B,C#,D,D,F#,G,A A,G,F,G,G,A,F#
(Light up your day!) →E,D#,E,F#
16分の細かいリズムを使ったスピード感のあるメロディ。
下6度、オクターブの動きは歌うのになかなか難しい。
音域はどんどん上がっていって、サビを予感させている。
男声によるハモリは下5度で最後だけ下6度。
5度のハモリを連続させることはクラシックの世界では禁則とされていますが、最近のポップスでは使うようになってきたみたいです。
サビ前ということで、今までと少し違った響きが欲しかったのでしょう。
連続5度は、使うにしても効果的に使うことが求められそうです。
サビ前半
We can sing a song! 太陽浴びて →B,E,F#,G#,B,B,E,F#,G#,C#,B
一つになろう あの空にClap your hands!→B,E,F#,G#,B,B,E,F#,G#,C#,B,A,G#
イントロのフレーズを思い出させるようなポリリズムのフレーズ。
5度、4度の跳躍も出てきて、サビっぽい盛り上がりがあります。
同じフレーズを2回繰り返しとります。
サビ後半
どんな未来だって どんな希望だって→B,B,B,E,F#,G#, B,B,B,E,F#,G
笑顔で必ず 色付くものさ →A,G#,E,C#,B,C#,E,G#,A,G#,E,C#,G#,F#
さらにフレーズを細かく、1小節のフレーズを2回繰り返してます。
最後のフレーズはシンコペーション無しの8分で刻むフレーズ。
今までがシンコペーション多めだったために、対比されてより目立つようになってます。良いキメですな。
音はメジャー・ペンタトニック・スケールを単純にたどったものになってます。
こうやって見ていくと、フレーズを意識して作られていることがよく分かります。
作ったフレーズを繰り返したり、2度ずらして繰り返したり、少しだけ変えてみたり。
そういう工夫がポップな音楽を作るポイントみたいですね。
------③コード進行------
key: E-minor(intro,Aメロ)⇒D-major(Bメロ)⇒E-major(サビ)
上段はコードネーム、下段はおおまかなディグリーネーム。
セカンダリードミナントは、Ⅴ→○で表記。
展開系は、1転→^1 2転→^2で表記。
intro (E-minor)
Em7(9) GonA D Bm Fm
Ⅰm Ⅴ→bⅦ bⅦ Ⅴm bⅡ
Em7(9) GonA D Bsus4 B Fm :|
Ⅰm Ⅴ→bⅦ bⅦ Ⅴ ⅤbⅡ :|
2つ目のコード、GonAはsus4系分数コード。
導音を省いたドミナントで、おしゃれ~にbⅦへと導くコードです。
ポップスの世界で売れる曲を作るには、曲が始まって2つ目のコードが重要らしく
ここで「おおっ、なんか面白いね」と思わせたら勝ちだそうです。どっかの本で読みました~。
もちろんダイアトニックを中心としたシンプルな進行だけで展開した方が気持ちいい曲、ジャンルはたくさんありますから
一概には「2つ目にお洒落和音を置くべき」とは言えません。
ただ、曲を作る際に1つの重要なポイントになりそうです。
4つ目のコード、Bmは自然短音階上にあらわれるⅤのコード。
おそらくメロディ(ラップ)をDの音で持続させたいがために、このコードを使ってるんだと思います。(コードBを使うとDとD#がぶつかる)
5つ目のコード、Fmは裏コードが変形したもの。
裏コードは「行きたい和音の半音上をルートとするセブンス系のコードのこと」ですが、ここではマイナー化してます。
行き先もマイナーコードなので、平行に和音が動くダンスミュージック的な気持ちよさがあります。
Aメロ前半
Em7(9) GonA F#m7 Bsus4 Bm Fm
Ⅰm Ⅴ→bⅦ Ⅱ Ⅴ Ⅴm bⅡ
Em7(9) GonA DM7 Bsus4 B7(b9) B7
Ⅰm Ⅴ→bⅦ bⅦ Ⅴ Ⅴ Ⅴ
イントロにも出てきたようにGonAはDに向かうためのコードですが、1回目では聞き手の期待を裏切るように偽終止しています。(Ⅴ→Ⅲのニュアンス)
2回目は順当に接続。1回目で影を作ることで気持ちのいい対比が出来ています。
Aメロ後半
Em7(9) GonA F#m7 Bsus4 Bm
Ⅰm Ⅴ→bⅦ Ⅱ Ⅴ Ⅴm
Em7(9) GonA
Ⅰm Ⅴ→bⅦ
1回目は8小節あったのに対し、2回目は6小節になってます。
少し前のめりにBメロへ入る展開。
最後のコードGonAはDへ向かうドミナント。その機能を使ってそのままBメロではD-majorに転調します。
E-minorとD-majorは「属調の平行調」の関係。
調号は#が1つ増えるだけで、楽譜上はたいした転調ではないようにも見えますが、主音が長2度動く転調はなかなか聞きなじみが無く、テクい転調です。
効果的な転調ですがなかなか自分で作ると難しい進行なので、作り手さんにとって良い参考になると思います。
Bメロ前半 (D-major)
D Gm D Gm
Ⅰ Ⅳm Ⅰ Ⅳm
D Gm Bm A G Gm
Ⅰ Ⅳm Ⅵ Ⅴ Ⅳ Ⅳm
D-majorに転調したようですが、D-minorからの借用和音Ⅳmをつかっているため、あまり明るい印象では無いですね。
この若干薄暗い雰囲気は、サビをより華やかに聞かせるための布石にもなっています。
Ⅳm以外はダイアトニックコードを使った順当な接続。
Bメロ後半
Em7 F#m7 GM7 F#m7
Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅲ
Em7 F#m7 Gm7 BbonC Dsus4 D
Ⅱ Ⅲ Ⅱ→Ⅲ Ⅴ→Ⅲ Ⅰ Ⅰ
Bsus4 B
Ⅴ→Ⅱ Ⅴ→Ⅱ
コードが1つずつずれていく展開。じりじりと盛り上がっていく予感がします。
Gm7→BbonC→Dは、F-majorのⅡ→Ⅴ→Ⅵ。
起点が今まで使ってきたGm、着地点がD-majorのⅠなのでスムーズにつながってます。
不思議な印象のあるツー・ファイブですが、強引な感じはしません。芸術的。
Ⅰに落ち着いた後は、普通にE-majorのⅤ、Bを置いて転調。
サビ前半 (E-major)
E D#m7-5 B Cdim
Ⅰ Ⅱ→Ⅵ Ⅴ pass
C#m Bm7 E
Ⅵ Ⅴm Ⅰ
AM7 G#m7 C#m7
Ⅳ Ⅲ Ⅵ
F#m7 EonG# A Bsus4 B
Ⅱ Ⅰ^1 ⅣⅤ Ⅴ
2つ目のコードD#m7-5はC#m(Ⅵ)へ向かうためのⅡ。
本来次のコードはG#7ですが、ここでは普通のⅤ、Bを使ってます。
BはC#mの長2度下のコードなので、偽終止的にC#mへ解決することが出来ます。(Ⅴ→Ⅵのニュアンス)
間に挟んであるCdimはパッシング・ディミニッシュ。長2度動くコード進行をなめらか~にしてくれてます。
2段目も同じメロディを歌っていますが、コードはC#mと違ったものを使っています。
このメロディの違った一面が見れる。そういったおいしさがあります。
3段目は順当な接続。
4段目はルートが1音ずつ上がっていっています。
音は本来下へ下がりたい性格を持っているので、それに逆行する動きは意志を感じたり、エネルギッシュなものを感じたりします。
もう一回繰り返すサビに向けてエネルギーを蓄えている感じがあります。
サビ後半
E D#m7-5 B Cdim
Ⅰ Ⅱ→Ⅵ Ⅴ pass
C#m Bm7 E
Ⅵ Ⅴm Ⅰ
AM7 G#m7 C#m7
Ⅳ Ⅲ Ⅵ
F#m7 EonG# A Bsus4 E
Ⅱ Ⅰ^1 ⅣⅤ Ⅰ
1,2,3段目は1回目と同じ。
最後が1回目はⅤで終わる半終止だったのに対し、2回目は全終止。
こういったところから、作曲の基本みたいなものもみられます。
全終止して一旦落ち着くことで、同主調のE-minorに転調しやすいようにしているとも考えられます。
ゴリ押しのプロモーションなどで叩かれることの多いエイベックスですが、やはり内容の濃い音楽をやってるグループがたくさんあります。
ジャニーズだからとか、エイベックスだからとかじゃなくて、やっぱり音で評価しようぜ!ってことですな。
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