ベル・クラネルの兄が医療系ファミリアにいるのは(性格的に)間違っている! 作:超高校級の切望
英雄の作り方。
まずはとある道化にして英雄を自慢する神を用意します。次に、その英雄を俺も一目見たいと叫ぶ神を用意します。
その神が、今の時代に心意気だけでは英雄には成れないと思ったら準備完了です。
その神は強い器を作る為に、強い眷属達の恋を応援するふりをして、誘導し、交配させ、品種改良を始めます。あくまで誘導、結婚まで行くのは本人の意思なので神々は文句を言えません。恋の相談を邪魔したくないと思う程度には、彼等も子供達が好きだからです。
もうそろそろかの道化が死に千年。その魂は、再び地上に住まう人類に巡る頃合い。神は最高傑作と、天然物の天才を結ばせようとしましたが、神の最高傑作は天然の天才のお眼鏡にかないませんでした。なまじ強く、他者を見下し嘲笑う彼を好きになる女など居ませんから。
腹が立った最高傑作はあろう事か天然の天才の妹に手を出しました。病弱で、神はその心根ぐらいにしか見所がないと思っていた女です。怒った天然の天才は最高傑作を殺してしまいました。彼等の神々にもこっぴどく叱られ、二度とこんな事をしないよう約束を取り付けられました。
だけど! なんと最高傑作の子種は少女を妊娠させていました。チャンスは今しかありません。神は、とある老いた魔術師に頼みました。老い先短いその命、時代の英雄を生む礎にしないか? そう尋ねられ、乗ってしまった魔術師は『英雄日誌』という題名の本に宿った思念を腹の中の赤子に上書きします。 魂は思いに引かれるでしょうか? 魂は来なくとも、かの英雄と同じ思想の英雄が産まれるはずです。神はワクワクが止まりません。ですが
「人の頭ん中絵の具でグチャグチャにしやがって………これじゃあどれが俺の
まだ首も据わっていないのに流暢に言葉を喋った我が子を天才だわ! と高い高いする母は姉に叱られ、そんな様子を興味なさそうに欠伸をする赤子に神は固まってしまいました。
人にまるで興味を持ってません。人を救おうとする気概も、英雄を目指す願望も何もありません。
『英雄日誌』に残された思念は何もかの英雄だけではありません。彼を愛していた姫や占い師、尊敬していた妹や詩人。その在り方に憧れた獣人やドワーフ、英雄の親友だった鍛冶師など、かの英雄に強い思い入れがあった彼の隣人に加え、その英雄日誌を手にし心動かされた者達………老いた身を奮い立たせたパルゥム、ヒューマンに負けてられぬと森を出たエルフ、俺もこんなふうにと戦いに身を投じた年若い獣人。その英雄に憧れ、幼馴染とついでに聖霊の住まう森を救った者まで居ます。
そんな数多の思念を生まれる前から植え付けられた赤子は常に考えます。自分とは果たして誰なのか。
「どれが
もし何か楽しい事があってもそれが自分のものなのか、自分の中の誰かのものなのか赤子には皆目見当も付きません。だって産まれてきた時から自分を構成する記憶は自分だけではないのです。自身の年齢すら理解出来ず、最早この世に居ない者達の記憶を持つ自分は、果たして生者と言えるのか………赤子から幼児になった彼はそんな事を考えていました。
「不愉快だ。お前のような者が、あの子の腹から生まれたなどと。与えられた優しさを知りながら理解できず、返す事もできぬ欠落品め。貴様の息遣い、鼓動、足音、その全ての雑音が癪に障る」
だから、驚いた。誰もが憐れむ
だから命をぞんざいに扱った。死に近いと生を感じ取れるし、彼女の目から憐れみが消えるからだ。
それに、繰り返している内に殺し合い以外にも楽しい事が増えた。弱い奴にあたってしまい残念がった時だ。恐怖に震える顔が面白かった。子供だと舐めてかかり、涙と血で汚れた顔で謝る落差が好きだった。
だって、自分の中の誰もこんな気持ちになった事はない。これは、そう………
「これは
彼女のおかげで色付いた世界が、煌めいて見える。生まれてよかった、生きてて良かった。この世界は隅から隅まで、自分を楽しませる為に出来ている。
失敗だ、そう嘆息した神は幼児を影の英雄と名付けました。心根は失敗作でもとても強く、人を引き付ける才があるからです。『英雄日誌』の著者、彼に関わり感化された者、本だけで彼を知り彼に倣い己の道を歩みだした者達………そんな眩い光が産んだ影から這い出た闇よりもなお黒い最初から
幼児は少年となり、嘗て己が生まれた地に戻ってきました。自分だけの楽しみを求めて。
「………………」
ヴァハはジッと犬を見つめていた。ワンワン喧しく吠えていたかと思えば、ヴァハが怯まないのを見て尻尾を垂れ下げ、キュウン……と声を漏らし逃げ出した。
「んで………お嬢ちゃんは彼奴等が探してた奴でいいのか?」
血に染まった雷霆の剣をしまいながら、ヴァハは犬に吠えられていた少女に話しかける。
「あ、う………うぅ………」
何やら怖がっている少女に、そういや特徴がなさすぎるのが特徴的な首を持ってきたままなのを思い出し雷で焼き尽くす。
「ほら消えたぁ。もう怖くねえだろお?」
何時ものように軽薄に笑うヴァハだが少女から怯えが消えない。一度その場から離れ、じゃが丸君を持って戻ってきた。ホカホカのじゃが丸くんを見て、キュゥ〜とお腹を鳴らす少女。
ヴァハが一口喰い、湯気の昇る断面を見せつけると少女は少しずつ、少しずつ近付いてくる。パッとじゃが丸くんを奪うと距離を取り勢い良く食べ始めた。
「んじゃあなぁ………人通りの多いとこ向かえよ」
ヴァハはそう言ってその場から立ち去る。
「…………………」
とてとてとて。
「……………」
とてとて……ピタ。サッ!
「………………………」
ヴァハはさっきからつけてくる少女に気付いていたが無視した。段々楽しくなってきたので曲がり角を曲がり建物の上まで跳ぶ。
タッタッタッ、と小さな足音が聞こえる。
「あ、あれ………あれ? お、お兄ちゃん………?」
もうしばらくこの鬼ごっこを続けても良いが、この後ベルの所の入団希望者を一緒に見てくれと言われているのでそろそろ向かいたい。
「子供には優しくしなきゃなぁ」
そう言うとヴァハは屋根から飛び降りる。
「あ……」
「んじゃ行くぞお」
「へ?」
ヒョイと少女を米俵のように担ぐヴァハ。そのまま血の鎖を使い何処かの世界の赤いタイツのような動きで【ヘスティア・ファミリア】の新拠点に向かうのだった。
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ヴァハ君のヒロイン
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フィルヴィス・シャリア
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アスフィ・アル・アンドロメダ
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アミッド・テアサナーレ
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エルフィ・コレット
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メイナちゃんやティオナを混ぜて全員