ベル・クラネルの兄が医療系ファミリアにいるのは(性格的に)間違っている! 作:超高校級の切望
気絶させる為に放った一撃は防がれ、キョトンとするクリティエと目が合う。彼女の意思で動かした訳ではない、のだろうか?
「な、なんですかいきなり……
話が、噛み合わない。そんな風に思った。
「つ、続きって………出来る訳ないじゃないですか!? ヒュアキントスさんを、他の人達を殺して!」
そう、殺した。間違いなく彼女は今、人を殺したのだ。発言からして、カサンドラとダフネ以外の【アポロン・ファミリア】を。
「? し、死んでませんよ………」
「っ………何を!」
「だ、だって……心臓も、う、動いて……恩恵もの、残って……」
そう、だから死んでない。そう言い切るクリティエ。言葉が通じるのに、話が通じない。だけど、ここで止めないと。
「い、いかせません」
「…………そう、ですか」
目を細めるクリティエ。邪魔なものを見る目だ。Lv.3。ベルとヒュアキントスと同じレベル。しかし、先の発言を信じるならヒュアキントスよりも、最低でも魔力の値が強いはず。
「ふ、ふひ……えへへ………いき、いきますよ………」
その言葉と共に、向日葵の死体が襲いかかってくる。
「これは、一体何が!?」
「嗚呼………嗚呼、そんな、そんな…………咲いてしまった、咲いちゃった! クリティエちゃんが、全部陵辱するまで、止まらない!」
倒れていた団員達の顔が突如膨れ上がったと思ったら、爆ぜて向日葵の花が一面に咲いた。リューが訳のわからぬ現象に叫ぶ中、ヴァハはヘラヘラと綺麗な花畑だなぁ、と鼻歌を歌いながら切り刻んでいく。
「んっん〜………人間だからモンスターと違って魔石を砕けばはい終わり、みたにゃいかねぇよなあ。まあ狙いはあの二人みたいだし、俺等はこのまま休んでても良くねぇ?」
モンスターならば灰に還せば残るのは向日葵と根だけだが、人の体は灰にならない。切り刻んでもぶち抜いても根が補修する不死身の軍団。殺しきれなくはないがこの数だ、面倒くさい。カサンドラとダフネしか狙ってないし別に良くね? と瓦礫に腰掛けるヴァハ。
「私は、力なきものを見捨てる気などない」
「正義を振りかざすのも結構だが、人間は不変の神じゃねえ。腐りやすくて救い難い生き物だぜぇ? 今日救った命が明日誰かを不幸にするとか考えねぇの? ま、そいつ等は既に何人も自分とおんなじ不幸を味わわせてるみてぇだがなぁ!」
ゲラゲラと笑うヴァハの言葉に、リューは覆面の下で唇を噛みしめる。
笑っているが、嘲笑われていない。リューの正義を馬鹿にしているわけでなく、ただの事実を言って、揺らぐ揺らがないどうでもよく、ヘラヘラと小馬鹿にした
「だと、しても…………私が救った誰かが、別の誰かを救うかもしれない。正義を繋ぐかもしれない………なら、私は」
「へえ、じゃあその正義って…………」
「【フツノミタマ】!!」
と、向日葵の死体達が押し潰される。立ち上がろうと藻掻くが、それは叶わない。
「お二人とも、ご無事ですか!?」
「お、らぁ!」
やってきたのは命とヴェルフだ。ヴェルフは『クロッゾの魔剣』で向日葵の死体を焼いていく。
「ん〜………あっちの方が面白そうだなぁ」
というかこっちがつまらなくなった。そう判断したヴァハは状況説明を求めるヴェルフ達を無視して崩れた城に向かう。
「くっ!!」
ベルはヒュアキントスに押されていた。死ぬ前より、強い。いや、強さ自体は変わらないのだろう。だが、痛みを完全に気にしない戦い方に失血や関節を打たれたことによる身体能力の低下が起こらないというのを付け足される。
これみよがしな花を切り裂いてみても、再生した。一時的に動きは止まるようだがそれだけだ。
(いや、だけど一瞬もあれば………)
自分の敏捷なら、クリティエに迫れる。
なら、もう一度ヒュアキントスを一時的に無力化するまで!
アビリティで最も優れた敏捷による駆け抜けるベル。大振りな攻撃を放つヒュアキントスの攻撃を避け、死角たる背後に回る。実際には目がないので死角かは不明だが振り抜いた体勢ではすぐに振り返れぬ筈。向日葵を切り落とし、その背を蹴りクリティエに迫る!
そう実行しようとしたベル。しかし
「…………え」
ズン、と腹に衝撃が走る。見れば、剣が生えていた。いや、刺さっていた。だが、ここはヒュアキントスの死角。ならば、どうやって?
「………じ、自分ごと?」
ヒュアキントスは己の腹を貫きベルを刺したのだ。それ故に浅く済んだが、内臓には達した。腹を押さえ倒れるベル。
「こ、これで……お、終わりですね………」
そう言って、歩き出すクリティエ。死体達も彼女に付き従う。
「ま…………」
『クリティエ! いい加減にしろ!』
と、その時声が響く。アポロンの声だ。
上空を見れば、鏡。それを利用して声を飛ばしたのだろう。だが
「なんだぁ、ベル………こっちもこっちで面白い事になってるなぁ」
「………あ」
「っ………兄さん」
ケラケラ笑いながらヴァハが現れ、クリティエが嬉しそうな声を漏らす。
『聞いているのか! おい! ゲームは終わりだ! この後の処分を、今なら──』
「え、えへへ……き、来たんですね。わた、私……貴方に、お礼したくて。その、ど、どんな事をしたらよ、喜んでくれますか?」
「んん〜? 俺が好きなことかぁ。そりゃまあ、殺し合いだなぁ」
『お前たち! 話を、私の話を聞け!』
殺し合いと聞いて、クリティエは目を泳がせる。
「こ、殺し、合い………そ、そんなの駄目ですよ。い、命は大事に……でで、で、でも………それで、貴方が喜んでくれる、なら………」
ニヘラ、と卑屈に笑い、同時に死体が飛び出してくる。死体に雷を浴びせ動きを止め、切り刻むヴァハ。
「う、うう………う、ふふ…………なら、これ、ならぁ!?」
《【突き進む風】──》
ピッと向日葵の一体の筒状花が横に避ける。ゆっくりと開き、覗くのは真っ白な歯と赤い舌。
《【吹き抜ける風。日の温もりを運び、冷たき影を払え】》
《【ライト・ウィンド】!!》
緑に光る風がヴァハに襲いかかる。雷霆の剣で切り捨てれば左右に分かれた風は瓦礫を燃やす。
《キシ》《アハハ》《アポロン様に勝利を》《殺し合いを》《あの人の願い》《叶える》《ふふ、あはは》
何時の間にかゾロゾロと集まる向日葵。その筒状花全てに口が生まれ、キィキィと虫の鳴き声のような、あるいは金属を軋ませるかの様な不快な声が発せられる。
「う、ぐぅ………」
吐き気がこみ上げる。この不気味な光景から目をそらす為に、目を刳りたくなる。この声を聞かない為に、耳の奥に棒を突っ込みたくなってくる。
「落ち着け、ベル」
「…………兄さん」
肩に手を当てられ、なんとか正気に戻るベル。兄は、楽しそうに笑っていた。
「お前にゃこの光景はきついだろ、下がってろ」
「……………うん」
言外に、役に立てないと言われた。兄にそんなつもりはないのかもしれないが、ベルはそう捉えた。
『────!!』
アポロンが、まだ何かを叫んでいる。
──ヘリオトロープって、向日葵だっけ?
──ああ? そりゃ勘違いだ
ふと、兄との会話を思い出す。
──向日葵は蕾の間しか太陽を追わねえよ
向日葵は、太陽に当たらぬ方の茎を早く成長させる。その結果、傾きが生まれまるで太陽を追っているように見えるのだ。だが、成長しきった茎はもう伸びない、咲いた頃など、動きもしないのだと博識な兄は教えてくれた。
開花した向日葵は太陽など追わない、ただただ一点を、一途に見つめる。
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ヴァハ君のヒロイン
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