退職で食費切りつめたら「ママ食べないなら僕も」…ひとり親、悲痛な声
読売新聞 / 2021年6月4日 7時3分
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、シングルマザーなどのひとり親世帯が生活苦を強いられている。食料品などを届けているNPO法人「しんぐるまざあず・ふぉーらむ・福島」(郡山市)に寄せられた悲痛な声は、この1年間で前年の5倍となった。非正規雇用の親も多く、同法人は切れ目ない支援の必要性を訴える。(佐野泰彦)
「掛け持ちしていた飲食店、ホテルの仕事がなくなりアルバイト勤務となったが、こちらもシフトが削られた。月の収入は10万円ほどで食べ盛りの子どもに十分な食事が与えられない」
「雇い止めに遭い生活は苦しくなるばかり。電気、ガス、水道全て止められて風呂にも入れない」
同法人には、深刻な相談が次々と寄せられている。支援物資の申込件数も2019年度は約200件だったが、20年度は約1000件と5倍に跳ね上がった。今年4月は約60件、5月も約100件とハイペースが続く。
同法人理事長の遠野馨さん(51)によると、ひとり親の女性は、多くが子育てと仕事を1人で背負っており、時間に拘束されにくい非正規雇用を選ぶ傾向にあるという。このため、雇い先が業績不振に陥れば「調整弁」として職を失いやすいと指摘する。同法人では、できる限りの支援をしているが、活動資金となる企業や個人からの寄付は減少。遠野さんは「寄付は先細りとなっていて、いつまで支援を続けられるかが心配」と不安を口にする。
県によると、県内のひとり親世帯は2万941世帯(昨年6月時点)で、うち7割の約1万5000世帯が児童扶養手当を受給する。コロナ禍に入り、低所得の子育て世帯に向けて、子ども1人あたり5万円の特別給付金が支給されるなどしている。ただ、遠野さんは「年金暮らしの親と同居していると合算の収入により支給されないなど、幅広く救済できる仕組みにはなっていない。地域の実情に応じて誰も取りこぼさない支援制度を設計してほしい」としている。
中通り地方の町で小学校低学年の息子と2人で暮らす40歳代の女性は、昨夏まで保険会社の営業として働いていた。だが、コロナ禍で訪問先から「もう来ないでくれ」と断られるなど仕事がうまくいかなくなり、退職に追い込まれた。今も無職のままだ。
元夫から養育費などの支援はなく、今年3月で雇用保険の受給期間は切れた。児童扶養手当などで生活しており、「しんぐるまざあず・ふぉーらむ・福島」から月1回届く米やレトルト食品、お菓子などの支援物資は助かっている。
以前は息子だけにおかずを用意し、自分はご飯だけという食事もあったが「ママが食べないなら僕も食べない」と言い出したため、一緒におかずもとるようにしている。買い物を減らして光熱費も節約し、何とか家賃を滞納せずにいるが、これからも払い続けていけるか不安を感じている。
県社会福祉協議会の離職者向け生活資金貸し付け制度を希望するが「手続きを地元社協で行わなければならず困っている。狭い町で職員に知り合いもいて、申請が知られてしまうのが怖い。県で直接申し込めればいいのだが……」と話す。
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