(写真左から)
- 吉成潤一 徳島県商工労働観光部 企業支援課 商業・サービス業担当
- 兒島雄志 徳島大学 大学院医歯薬学研究部 医用画像機器工学分野
- 尾崎竜樹・岡田涼希 阿南高等専門学校 高専5年
- 矢野翔太 とくしま産業振興機構 総合支援部 経営・資金・情報支援担当
Unityインターハイ2015では全国から50以上の作品が提出されましたが、うち6作品が徳島県の阿南工業高等専門学校と徳島科学技術高等学校からのものでした。両校は県の協力のもと、Unity勉強会開催やUnityインターハイに向けた合宿を実施し、Unity歴3ヶ月未満の高校生を切磋琢磨させ、見事1作品がプレゼン発表会出場を果たしました。ここでは全国的にもめずらしい学官共同の人材育成プロジェクトに関するインタビューを掲載しております。
本インタビューはUnityインターハイ2015プレゼン発表会開催の2ヶ月前に行われたものです。
まずは面白いものづくりを経験することからじゃないかと。
ーーまずは徳島県で進められている学官共同の人材育成プロジェクトの成り立ちについて伺えますでしょうか。
兒島もともとは2年前に中学生・高校生向けに、Rubyでゲームを作ろうという勉強会を行ったのが始まりでした。当初は(社会に出てからの)即戦力となることを想定した教育を行う……というもので私が率先して関わっていたのですが、これがなかなか難しく、プログラミング入門者にはハードルが高かったのです。
2年目は「ゲーム」ではなく、より社会人向けの「オープンデータ」を作ることを目標に進めました。それはそれでいい結果を残せたのですが、やはりハードルが高かったのと、参加者があまり楽しめていなかったことが気になりました。そこで3年目となる2015年では、まずはもっと楽しんで参加できるような、ITやプログラミングに興味を持ってもらえる部分が重要ではないか……ということで、Unityを使ったゲーム開発を教えることとしました。
ーーゲーム作りを楽しんでもらいながらプログラミングを覚えてもらい、将来の人材育成につなげるということでしょうか。
兒島そうですね。最近は世界的にも若いうちからIT教育を進め、エンジニアを育てようという流れがありますが、中高生が初めてプログラミングを学ぶとしてどうしたら前向きに取り組んでもらえるか?と考えたときに、まずは面白いものづくりを経験することからじゃないかと。そのままゲームやアプリケーション開発の道に進んでもらってもよいし、プログラミングの理論的な面白さに興味を持ってもらったら、それを大学で研究する道に進むこともできるわけです。
左:兒島雄志さん 右:矢野翔太さん
ゆくゆくは徳島に戻ってきて活躍してほしいという思いがあります。
ーーそれで徳島県が率先して人材教育を進めているというわけですね。県(とくしま産業振興機構)から学校にアプローチをかけていった、ということでしょうか。
吉成うちは企業支援課ということで、本来は徳島県での企業を支援するところなのですが、将来的にひとりでも徳島県で仕事をしていただけるエンジニアを育てようという観点から中高生の人材育成を行っています。
兒島すぐに即戦力で役立つ人材が欲しいわけではなく、ここで高い意識を持った学生が生まれて県外に巣立っていき、ゆくゆくは徳島に戻ってきて活躍してほしいという思いがあります。また、この勉強会の一期生が進学先でプログラミングのサークルを立ち上げたり、今回の勉強会でTA(ティーチング・アシスタント)を務めてくれたりなど、地域の高校生、高専生にプログラミングを教えられるようなキーマンとなる人が育ってきています。徳島県ではコードを書けるような(技術を教えることができる)エンジニアがまだまだ少ないので。
ーーなるほど、Unityを教えられる人材が少ないという話は僕もよく聞きます。
矢野地方ではクリエイティブ企業がまだまだ少ないので、2010年から県では積極的にデジタルコンテンツビジネスに対する支援を行っており、県内の大学や高専、工業高校などが協力してくれています。
イベントやコンテストに出すことを目標に、いろいろ対策を練って進めています。
ーー兒島先生は徳島大学で医療分野の教職に就いてらっしゃいますが、どういった流れでそうした勉強会を開くに至ったのでしょうか。
兒島実は先日まで阿南高専の研究室で教職に就いておりまして、さらにその前は民間で働いておりました(笑)。この3年間で2回立場が変わっているんですね。
ーーそうなんですか!
兒島それぞれの立場を経験した上で、中高生に対してはやはり(プログラミングの難しさの)ハードルを超えさせるのが大事だと思い、この勉強会を開催しています。また、プログラミング教育の先にはIT系企業への就職があるわけですが、そこではUnityのようなツールを使って何かものづくりをするセンスの方も大事になってくるのではないかと。
将来は徳島県のUnity好きの人が集まってひとつのゲームを作ったり、ものづくりができたら面白いんじゃないかなと思います。
ーーUnityでゲームづくりをしていてどうでしょうか。
尾崎僕が最初にUnityを触ったときは感動しました(笑)。Hello Worldといった文字を画面に出してもあまりプログラミングをやったという実感がなく、3Dのもの(CG)をどうやって画面に出せばいいのか想像がつかなかったのですが、Unityで3Dのものを画面に出して動かせたときは感動があり、(勉強の)モチベーションにつながりました!
兒島実際に彼(岡田さん)がUnityにはまって、夏休み中に研究テーマとは関係ない「こういう演算をしたいんだけどどうやってやればいいか」という質問をしてきたこともありました。そうした質問に答えるうちに本来教えたかった数学やアルゴリズムの話に持っていくことができて、教える側としては「これはシメたものだぞ」と思いましたね(笑)。
ーーUnityインターハイ以外で今後の目標はありますか?
兒島他にも高専プロコン(※全国高等専門学校プログラミングコンテスト)というのがあり、そこではまだUnityを使っている学校はあまり見かけないんですけどそこでもUnityを使って何か発表したいなと思っている学生はいるようです。
尾崎高専では授業でもプログラミングも教わっているので、将来は徳島県のUnity好きの人が集まってひとつのゲームを作ったり、ものづくりができたら面白いんじゃないかなと思います。
兒島あとは昨年、Yahoo Japanさんが「Hack U KOSEN」という高専生を対象としたコンテストを開催してくださったのですが、彼らはそこにも参加しました。残念ながら賞は取れなかったんですが、惜しいところまではいけました。数年前までは高専プロコンくらいしかなかったんですけど、去年、一昨年と勉強会で力をつけて、そうしたイベントやコンテストに出すことを目標に、いろいろ対策を練って進めています。そろそろそういうイベントで賞を取ってほしいな……と。
一同(笑)
ーーありがとうございました。