■ナダルも「ふざけた」質問に怒り

 グランドスラム20勝を挙げているナダルも、記者に苦言を呈したことがある。2019年、結婚がプレーに影響しているかと問われたナダルは「本気で聞いているのか? 真面目な質問なのか、それともジョークか」と言い返し、「ふざけた」質問だと怒った。

 不適切な質問をされる選手も当然いて、シモナ・ハレプ(Simona Halep、ルーマニア)は胸の大きさを小さくする手術を受けたのが「役立ったのはコートの中か、それとも外か」と聞かれたことがある。意味不明な質問もあり、スタン・ワウリンカ(Stan Wawrinka、スイス)は以前、「ツイッター(Twitter)がある時代なら、マーティン・ルーサー・キング(Martin Luther King)はどんな感じだっただろうか」と聞かれた。

 大坂が言ったように、つらい敗戦の後の受け答えに苦しむ選手もいる。ガエル・モンフィス(Gael Monfils、フランス)は2月の全豪オープン(Australian Open Tennis Tournament 2021)で失意の1回戦敗退に終わった後、会見で涙を見せながら「ここへ来るたび、断罪されているように感じる。記者は『君はまた負けた。なぜか』と聞いてくる。すでに倒れている僕を、君らは銃で撃つんだ」と訴えた。

 オーストラリア・南クイーンズランド大学(University of Southern Queensland)のピーター・テリー(Peter Terry)教授(心理学)は、豪サイト「theconversation.com」への寄稿で、試合後に行われている記者会見には「のぞき見趣味の感覚」があると指摘。「一部の人はおそらく、自分が崇拝していたアスリートが泣き崩れるのを見たいのだろう」とした。

 一方、セレーナ・ウィリアムス(Serena Williams、米国)は「私も(記者会見に)向かうのがとてもつらい時があった」と認めた上で、「だけど、それが自分をもっと強くした」とも話している。

 コートでは気分屋で知られるダニール・メドベージェフ(Daniil Medvedev、ロシア)も、試合後の会見が助けになる場合があると考えており、「機嫌が悪い時でも、君らと話した後には気分が良くなっていることがある」と語っている。

 とはいえ、女子の世界1位アシュリー・バーティ(Ashleigh Barty、オーストラリア)らほとんどの選手は、取材を単なる「仕事の一部」と考えている。それでも大坂の今回の告白をきっかけに、この慣習は今後も仕事の一部であるべきなのかという疑問が生まれている。(c)AFP/Delphine PAYSANT