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コロナに思う#40 大木隆生教授 東京慈恵会医科大学
2020.06.11 23:00
リレーメッセージ「コロナに思う」。今回は東京慈恵会医科大学で外科統括責任者を務める大木隆生教授です。 大木教授は、個人の見解としながらも、新型コロナ対策について発想の転換が必要だと提言しました。 ============================ 私は外科医で感染症の専門家ではありませんが、今回のパンデミックに関して多くの勉強をして、そこから見えてきたものがありますので、ご紹介させていただきたいと思います。 まず冒頭に申し上げたいのは、このパンデミックにおけるゴールはただ一つ。それは世界規模で集団免疫を獲得するというものであります。そこに至るルートはワクチンを待つか、あるいは自然感染で集団免疫を獲得するかということは念頭に置いて置いていただきたいと思います。 この3ヵ月間の経験からわかったことは、日本では一見感染爆発が起こったかのように見えますが、他国のグラフと一緒に並べてみますと、実は日本では感染爆発、オーバーシュートが起こっていないことは明らかであります。 もう一つわかったことは、日本におけるコロナ感染症の死亡率が極めて低いということであります。死亡率は5.3%と言われています。これは欧米の10~20%に比べて低い値ではありますが、それでも5.3%は怖い病気と感じてしまいます。しかし、最近行われた慶應大学病院における熱のない患者に対するPCR検査、あるいは巨人軍関係者に対する検査で、慶應大学病院では2.7%の陽性、巨人軍では坂本選手を含む1%にコロナ感染者がいることが判明しました。 これらをもとに日本における真の感染者数を逆算しますと130万人から390万人規模ですでに感染者がいるということになり、そうしますと死亡率は900人ですから5.3%ではなくて0.02~0.06%と季節性インフルエンザと同レベル。過度に恐れる病気ではないということが明らかになりました。これらのことを念頭に発想の転換をし、政策を変更してもよいのではないかと思うわけです。 今まで慈恵医大を含めてコロナ患者を引き受けた病院は軒並み赤字になっていますが、それではコロナ患者のたらい回しということになりかねませんので、政府は思い切って(コロナ患者を受け入れた)病院に財政支援し、医療体制を強化する。そうすればコロナによる医療崩壊が一層防げて、一層安心して経済を回すことができると思います。 このような前提で経済を今よりも自由に回し、人々の生活においては手指衛生やマスク着用など基本的な感染対策をするというサステナブルな政策を取って、しかもそれが取れるのは日本の特権ではないかと感じております。ただし、それを野放図にやりますと感染爆発、医療崩壊ということになりますから、このようなウォッチする必要があります。 重症患者数 / ICベッド数>50%など。 従来の感染者数に着目したものではなく、医療崩壊が起こるか起こらないか50%ラインにリミッターをかける。この分母のICUベッド数。これはぜひ国の支援を得て、分母を大きくする。感染者数が増えることに一喜一憂するのではなく、肝心なこういった指標をモニターしながら、皆さんにおいては従来のようなロックダウンとか非常事態宣言とか、そういうものではなくサステナブルな持続可能な政策。コロナとの戦いは長丁場であります。このような政策を取って、もし運悪く感染してしまったら、そのときは強化された医療が全力で国民の皆さんを守りたいと思います。
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