都立高校の男女定員における合格最低点の格差が話題になっていますね。
私は(どちらかと言えば生徒が荒れていたような)市立中学校の出身で、高校は多摩地区の上位ランクの高校へ進学いたしました。
現在は大学生ですので(多摩地区の上位校と明言すると高校も絞られてしまうので学年は隠しますが)受験をしたのは3~7年前ということになります。
性別は女性と言いたいところですが、MtFトランスジェンダーで、当時は当然オペもホルモン治療もしていませんでしたので男の子として受験をしたことを明らかにしておきます。
問題となっているのは、都立高校の多くで女子の合格最低点が男子より高く、同じ得点を取っているのに落ちる女子生徒がいるという点です。
この問題について賛否両論あると思いますが、私はこの問題は一刻も早く是正されるべきだと考えます。
女の子はもちろんですが、男の子らにとっても、望んでもいないのに女子の最低点数より低くても合格できるというのは好ましくないことです。
真面目な子であればあるほど、めいっぱい頑張ってきた受験の結果がそんな忖度だったと知ればその後の学校生活、はたまた人生で罪悪感や不安にかられ続けることになるでしょう。
事実、私も当時受験を頑張った身ですので、この問題を最初に知ったときは膝から崩れ落ちるようなひどい虚無感を感じました。(結果としては私の高校は男子生徒のほうが割を食っていた高校である可能性が高かったですが)
この問題を語る上で、都内では女子高が男子高に比べ多い点、内申点における男の子への差別は外せません。
女子高の問題については、女子高ばかりで男の子の選択の幅が狭いのは間違いなく男性差別です。
それが入試問題を温存する理由になってはいけませんが、入試問題の解決と同時にこちらの解決を行うのは必須だと考えます。
また学費の問題や、全体数の割に偏差値が偏っていることなど、それが男性差別であることとは別に女子高の問題がたくさんあることは留めておくべきでしょう。
一方「女子高はかつて男子教育が主流だった時代の男女差別撤廃の象徴だから、男性差別ではなくむしろ性差別解消の象徴だ」などという主張は、過去がどうあれ男性差別につながっている現代で主張するのはお門違い甚だしいです。
女の子でも同じことを感じた子もいれば、そんな事に気づきもしなかった子もいたかと思います。
私は高校受験の時の内申点は42点。運動能力が低かった体育はともかく、音楽は少し苦い思い出です。
ペーパーテストですべて95点以上を出し「口を開き声を出し一生懸命歌えば実技テストはA評価を与えます」と伝えられた音楽の授業で、出したくもない男声で皆の前で笑われながらも大真面目に歌い切ったのに、結果として4をつけられたのは納得がいきませんでした。
もちろん私が壊滅的な音痴だった可能性はありますが、口がまるで開いていない、ペーパーテストの点数も70~80点の女子生徒らが何人も何人も4、5をもらっているのを見て、その先生に不信感を抱くのは当然でしょう。
その先生は男子生徒に対して異常に当たりの強い女性教師でした。
理科の男性の先生は逆に女子生徒に対して異様に甘い先生で、テストでアベレージ95点を超えてノートの提出など完璧にこなした上で4の評価しかつけてもらえなかったのに、私より点数の低い女子生徒が5をもらっているのは見るに堪えませんでした。
こちらはあまりに露骨だったので皆薄々気づいていて、(こちらの先生については女子生徒からも不評でしたが)男子生徒は特に不信感を募らしていたと思います。
他の科目においても、「男子を毛嫌いするタイプの女性教師」と「女子に甘いタイプの男性教師」のせいで男子の内申が下がることは多々ありました。
そうでないタイプの先生でもやはり男子に対する成績は厳しくつけている印象が強かったです。
私は色々な先生に媚を売って仲良くなってなんとかほとんどの教科でいい成績をもらえましたが、私よりペーパーテストも実技テストも取り組んでいないのに同じ内申点の女子生徒がたくさんいました。
その一方で、不良グループ・不真面目な集団に男子が多いのも事実で、内申点のために精一杯頑張っていた女子がいたことも当然知っています。
内申点平均が男子のほうが低いのが全てが全て不当な性差別だとは思いませんが、頑張って真面目にしていた男の子が報われないのはあまりにもかわいそうです。
私の時代は実技科目の内申点は1.3倍でしたが、現代は実技科目は2倍です。ペーパーテストの純粋な実力勝負が減り教師の主観的な判断が生まれる分男子生徒にとっては不利になったと考えられるでしょう。
内申点が9科目1ずつ落とされた場合、学力テスト:内申点=7:3の学校では55点失います。6:4の場合73点、5:5の場合92点も違うのです。
男子生徒の内申点の差別は、間違いなく高校受験に影響しているでしょう。
他に、入試問題を考えるにあたって無視してはいけないことは、男子生徒のほうが割を食っている学校が一定数存在していることです。
これは偏差値の問題や傍にある私立高校との兼ね合い、地域性などで大きく異なるとは思いますが、見落としてはいけない点でしょう。
女性差別について話しているときに「俺は差別なんかしていない・利益を得ていない」と話す男性の事を「ノットオールメン論法」などと非難することがありますが、この問題については、学校によっては女子生徒と同じ差別を受けている男子生徒もいて、また男子生徒と同じ利益を得ている女子生徒がいることを明確にしておかなければいけないでしょう。
…最も個人的には、「不当に点数を上げられている側」よりも「不当に点数を下げられている側」のほうが気が楽で、逆境のほうが「やってやる」という感じで燃えるタイプのですので、必ずしも制度上有利のほうがその子が幸せだとは断言できませんが。
私は制度上有利になった子の心情もきちんと汲みたいです。
また一般入試の話ばかりで推薦入試の話が置き去りになっていますが、推薦入試に関しては一般的に女子の倍率のほうが高いことが多いです。
単純に学力試験を好み推薦を受けない男の子が多い点や、先述した内申点の差別も影響していると思いますが、それらの是正と共に推薦の男女枠の廃止も行っていくべきだと私は考えます。
結局入試問題を解決するには女子高男子高の数の均一化(ただし、各校の偏差値のバランスも考慮すること)、男子生徒の内申点の不利の是正(もしくは一般入試における内申点制度そのものの廃止)と男女別定員の緩和を同時に行っていくしかないのではないでしょうか。
そこまでした上で女子生徒・男子生徒の偏りが起こる事は想像がつきますし、トイレや更衣室では人数の多いほうが割を食うのは致し方ないことですが、それはそれで別の問題として解決していけばいいのだと考えます。
少々楽観的でしょうか。
また、「男女の能力は体力・妊娠機能を除けばすべて一緒」というのはフェミニズムの考えに則った思想ですが、いざ女子の成績が上がってきたら「女子のほうが優秀だ」は理屈として通りません。
「男子生徒の学力不足は教育の段階で男子生徒が不利益や差別を受けているから」と考えるのが元来のフェミニズムのはずです。
実際、席で勉強してただけなのに巻き込まれたくもない争いに巻き込まれたり、先生にやたら厳しい目で見られたり、そういう不利益を被るのは男子生徒のほうが多いでしょう。暴力沙汰に巻き込まれるのも圧倒的に男子生徒のほうが多いです。
それを引き起こしているのも女子生徒ではなく大人や別の男子生徒であることが殆どなのは事実ですが、争いに巻き込まれずに済むポジションにいた人間がそれを遠巻きに冷笑したり「情けない」と暴力に巻き込まれた男の子をバカにするのは、性差別撤廃を掲げる活動家の行うことではないのは明白です。
もちろん、女子生徒が多く被る性被害などについてもきっちり考えていかなければなりませんし、今言ったこれらが都立入試の現状を放置していい理由にもなりませんが、そういった学力差の是正もひっくるめてあらゆる格差を減らしていかないと、いつまでも性差による問題は起こり続けると思います。
そういった男女間の問題が是正されないと男女別定員の別の問題——例えばXジェンダーの生徒やトランスジェンダーの生徒の疎外感や違和感の問題――に言及しようとも別の大きな声でかき消されてしまうので、一日も早くこうした問題が解決される日を望みます。
最後に、受験の当事者の中学生がこの文章を読んでいた場合、「あいつは男だから」「あいつは女だから」と争うような真似は決してしないでいただきたいです。
悪いのはすべて私たちと、私たちより上の世代の大人です。性別問わず受験生の皆さんは歪んだ制度に巻き込まれた被害者なのです。
それでもどうしても納得がいかない場合は、結局有無を言わさず合格できるほどの得点力を身に着けて前へ進むしかありません。
そうすれば「お前は下駄を履かされて受かった」と嫌味を言われても堂々と言い返せるし、同じ点数なのに落とされることも起こりません。
どうか手を取り合って、このおかしな世界を是正するべく動くような、そんな大人に成長していただきたいです。
p.s.パソコンの問題か改行ができず読みにくくなってしまいました。すいません。
俺は男女別枠定員のままでいいよ派だけど 読みやすくて全部読んでしまった。 おつかれさまでした。