Nintendo Switch の本体ソフトウェアに隠されていたファミコン版「GOLF」が、本体更新で削除されたことが分かりました。

スイッチの内蔵「ゴルフ」は今年9月、趣味でゲーム機を解析するハッカーたちが発見した隠しソフトウェア。内部ではGOLFを逆読みした「flog」という名称のモジュールとして、スイッチ発売当初のバージョン1.0から存在していました。ファミコンの「ゴルフ」といえば、ニンテンドースイッチの開発を指揮しながら、発売を目にすることなく2015年に亡くなった任天堂の前社長 岩田聡 氏が、HAL研究所在籍時代の1984年にプログラマーとして手がけた作品です。

そのゴルフが何故かこっそりと隠されていたこと、後に解析で見つかった起動方法が「岩田氏の命日である7月11日に、Joy-Conを両手に持って、岩田氏のトレードマークともいえる『直接!』の動きを再現する」であったことから、任天堂の誰がどのような経緯で埋め込んだのかはともかく、最後の仕事ととしてスイッチを手掛けた岩田氏に敬意を表して仕込まれたイースターエッグ的なものではないか、と推測されてきました。



ニンテンドースイッチ向け自作ソフト実行を目指す switchbrew.org や、実績あるコンソールハッカーの報告によると、この「flog」は最近アップデートされた本体ソフトウェア 4.0 では削除(無意味なコードで上書き)されており、ホームメニューから起動するためのコードも削除されたとのこと。

この隠し「ゴルフ」は有志の解析で起動方法が判明した(とされる)ものの、実際に起動させる条件は難しく、動画なども公開されてはいるものの誰もが試せる状態ではありませんでした。

(早い時期に出荷された本体ソフトウェア1.0.0のままのスイッチで、一度もネットにつながず設定から日付を変更する必要がある。一度でもネットにつなぐと時刻サーバに接続して記憶してしまうため。購入時に1.0.0よりも上だった場合、任天堂のサーバと時刻同期の必要がありごまかせない)。

2018年7月11日を待たずにこの flog が消えてしまったため、一般のユーザーが自分で『直接!』からファミコン版ゴルフ Switchバージョンを試す機会は、今のところなくなってしまいました。


ただ一方で、任天堂はニンテンドースイッチ向けのオンラインサービス Nintendo Switch Online の特典として、ファミコンの古典ゲームがネット対応になって遊べる『クラシックゲームセレクション(仮称)』の配信を予定しています。

『flog』はファミコンエミュレータとゴルフのROMがひとつのバイナリに収められた汎用性のない仕組みでしたが、今後正式にスイッチ向けのファミコンソフトが配信されるようになれば、イースターエッグ的な起動方法かどうかはともかく、古典ゲームで改めて岩田聡氏を偲ぶ機会は設けられるかもしれません。

(スイッチ本体そのものを含め、現在に至る任天堂やゲーム界の非常に多くの部分に岩田氏の遺産は生きているために、特にゴルフを遊ばなくても偲ぶ機会ばかりともいえます)


なお、任天堂はこの『flog』について正式にはなんのコメントもしていませんが、米国任天堂の社長レジーさんこと Reggie Fils-Aimé は最近のインタビューで改めて問われて、「それ(flog)は、(任天堂が認めていない)ファームウェアの解析をする人々が見つけたもの」「そうしたコンテンツについては、今後の計画も含めて何も公式に発表することはない」と、存在そのものについては否定せず「公式に発表することはない」との答えに終始しています。

「岩田氏に敬意を表するものは何であれわたしにとっても大切だが、実際のやり方や意図、計画については、何も発表することはない」