新型コロナ禍での実施を目指す今夏の東京五輪・パラリンピック大会で、滞在中の選手らに徹底した感染防止対策と、厳しい行動管理が課される東京・中央区晴海の「選手村」に、アルコール類の持ち込みが禁止されていないことが28日、判明した。酒類の提供、販売はないが、最低限の選手同士の交流を尊重するというのが理由だ。組織委担当者は「節度を持って行動してくれるはず」と選手らのマナーに期待しているが、感染防止の観点から不安視する声も出てきた。
感染防止に外部との接触が完全に遮断される選手村で、なぜか「お酒はOK」だということが判明した。組織委の選手村担当者は、酒類に関し「組織委自らがお酒を提供することもなければ、村内での販売もない。ただし持ち込みは可。祝勝会などの要望があればケータリングとして届けることもできる。理由としては、選手村はもともとが異なった国の選手同士の交流の場なので」と説明した。
テロ防止の観点などから酒類を禁止した2012年ロンドン大会などの例もあり、ルールは大会ごとに異なるが、今大会はコロナ禍という非常事態。外出禁止などの厳しい行動管理が敷かれ、違反者は資格剥奪(はくだつ)など厳罰が下される見込み。選手村への入村は出場する競技開始5日前からで、競技終了後2日後までに退去。入国から出国までバブル方式で選手を守る措置が講じられる。「村内で飲酒するには出発前に荷物に詰め、自国から持ち込む以外に方法はない」という。
一定の距離も守らなければならない中、物理的な距離がさらに縮まりかねない。コンドームも今大会は15万個が用意された。担当者は「HIV(ヒト免疫不全ウイルス)感染予防の啓発活動を目的に置くもので、村内で使うためのものではない。母国に持ち帰り啓発をしていただくためのもの」と強調した。
期間中は選手だけでも延べ1万5000人が滞在。日本代表のあるチーム関係者は「競技が終わって解放された後が心配」と不安視するが、選手らの安全・安心を約8000人のスタッフが24時間態勢で見守る。担当者は「監視員ではないので丁寧な対応をするだけ。若干の予想がつかないのは本音ではあるが、選手は自己管理にたけていると思うので、節度を持って行動してくれるはず」と“性善説”に期待していた。
◆選手村 1924年パリ大会で初登場。海外選手が移動や宿泊先探しに苦労しないように会場近くに建てられたのがはじまり。正式に「選手村」ができたのは、32年ロサンゼルス大会からで当時は男子のみ。48年ロンドン大会から男女共用に。各国・地域選手の異文化交流の場ともなり、多くのカップルも誕生。東西冷戦下の56年メルボルン大会男子ハンマー投げ金のコノリー(米国)と女子円盤投げ金のフィコトワ(チェコ)の結婚が世界的に有名。柔道女子・田村亮子と野球・谷佳知も96年アトランタ大会選手村での出会いをきっかけにゴールインした。