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はじめに
世の中には様々な人間がいて、その人間の数だけ悩みがあります。
仕事がうまくできない、対人関係がうまくいかないなど悩みの種類も大きさも人それぞれ異なることでしょう。
傍から見れば小さな悩みだったとしても当人にとっては、とても大きな問題であることが数多くあります。
悩みは大小に関わらず人が生きていく上で、常にわたしたちの生活と密接なものであるといえます。
時として悩みは自分を成長させるための大きな要因になることがあります。
大きな悩みを解決することでそれまでの自分の殻を破り、新しい悩みとまた向き合う、これを繰り返すことによって人は成長します。
しかし、時にはその悩みが自分を苦しめるものとなることがあります。
周囲に相談することもできずため込み、自分を責めて追い込んでしまうことで不登校や引きこもり、家庭内暴力を引き起こすこともあるでしょう。
現代の社会では、こういった事柄をまるで悪であるかのように認識してしまうことがあります。
もちろん暴力や暴言そのものはいけません。
しかし、そこに至るまでの経緯や理由を軽視して、結果だけに目を向けてしまっているために、悪いという認識を持ってしまうことが起きています。
悩みによって不登校や引きこもり、家庭内暴力に発展しまう人は、抱えた悩みを誰よりも真摯に自分事として受け止めている人だと思います。
社会では公的機関による支援活動が行われていますが、細部まで行き届いていないのが現状です。
今回紹介する一般社団法人若者教育センターが運営するワンステップスクールでは、公的機関ではサポートしきれない部分をサポートすることによって苦しんでいる当人および周囲の方々を救っています。
ワンステップスクールの代表理事を務める広岡政幸氏にお話しを伺うことができました。
ワンステップスクール代表、広岡政幸氏に突撃インタビュー
ワンステップスクールではどのような活動をされているのでしょうか?
不登校や非行、引きこもりなどの問題を抱え、社会での居場所を失った人々の立ち直りを支援する活動をしています。
2007年ごろから活動を続けており、これまでに相談を受けた人数は3,000人以上になります。
活動と同時に自立と更生を目指す人々の施設を運営するほか、不登校の子どものためのフリースクールやサポート校、就労支援をする職業訓練校、介護施設も運営し、国際的なボランティア活動や留学支援を行っています。
活動の中でも中心となるのは、何かしらの事情で通学や就労ができなくなってしまった人々が、親元を離れて集団生活をしながら、勉強や職業訓練、資格取得、ボランティア活動などを行うことで自分の力で生きていけるようにするワンステップスクールという施設です。
ワンステップスクールという名前に込められた意味を教えてください
「千里の道も一歩から」の「一歩」の意味を込めています。
学校の目的は「自立」ですが、マイナスからスタートする人たちにとって、自立への道はまさに千里のように遠く、険しい道のりです。
最初の一歩を踏み出さなければ、永遠にたどり着けない場所です。
この学校で、勇気をもってその「一歩」を踏み出してほしい、とそんな願いを込めて名づけました。
組織を立ち上げたきかっけを教えてください
立ち上げは私ではなく、伊藤幸弘氏でした。
伊藤氏は青少年育成コーディネーターとして有名でご自身の経験をもとに、多くの若者を立ち直らせてきた実績のある人です。
私はその伊藤氏の後継者として若者教育支援センターの代表理事を務めています。
伊藤氏の志に感銘を受け、活動を支援していきたいと思ったことが、事業立ち上げのきっかけとなりました。
もともと、私の専門は青少年の健全教育で、引きこもりを支援することではありませんでした。
最初は18歳未満の子どもたちの非行防止や、非行に至る前の早期発見、早期解決を最大のミッションにしていました。
保護者の方々へのカウンセリングや子どもへの直接指導を行っており、学校や児童相談所、警察と連携しながら更生への道のりを歩ませる活動をしていました。
このような活動を1年続けたときに、登校拒否に悩まれている親御さんから相談を受ける機会が多くなり、非行だけでなく、学校に行けない子どもたちの支援も行うようになりました。
これが引きこもりの支援をするようになったきかっけと呼べるかもしれません。
印象に残るエピソードを教えてください
印象に残っていることといえば、私の原点の話です。
ワンステップスクールには、ニュージーランドへの留学プログラムがあります。
環境を変え、親から離れたところで自分を見つめ直すことで、より広い世界を見てもらう意図があるのですが、このニュージーランドでの出来事が私の印象に残るエピソードです。
ニュージーランドには16歳からの2年間、ホームステイをしており、その時のホストマザーがヘザー・ミルズさんでした。(以下ママと呼称します。)
私は幼少期に大病を患いそれが原因で素行が悪く、学校や家庭にいづらくなりました。
そんな時に親から留学の話があり、訪れたのがニュージーランドのママの家でした。
言葉も一切わからず、一人で部屋にこもっていて今思うと不信感、警戒心の塊でしたね。
それにもかかわらず、ママは太陽のように明るく、愛情たっぷりに、まるで赤ちゃんでも扱うかのように包み込んでくれました。
何かと理由をつけて10分おきに部屋に来ては、私を一人にしないよう話しかけてくれました。
海外に来て言葉も分からない、社会性もない、文字通りの赤ちゃんだった私はその降り注ぐ愛情がまぶしくもあり、満たされ心地良くもありました。
ホストファミリーには、ママの他お父さんと一つ年上のお兄ちゃんと一つ年下の妹がいましたが、少しずつコミュニケーションが取れるようになって、周りの方々にも心を開くようになりました。
次第に自分と向き合う時間が増え、考えを改めるようになりました。
この経験が私の印象に残っているエピソードで転機といえます。
活動されるうえで大事にしていることはなんですか?
その人になりきることです。
決して自分の都合で話をせず、当人の立ち場になって、その人が今何を考えているかを全力で考えています。
相手の話を一つも聞きこぼさないように集中します。たとえ言葉がなくても、目の動きや表情を捉えます。
こういうことを考えているのだろうなと想像することで、相手の気持ちを汲み取れるように心がけています。
引きこもりの人の中には、引きこもってはいるものの、全然辛くなくこのままで良いという人がいます。
でもそれは本心ではありません。他の誰よりも変わりたいと本心では思っています。
素直に伝えられず、怖くて一歩が踏み出せない気持ちを汲み取ったうえで、現実の話や将来の話をします。
話の内容は当たり前のことですが、どのようにして相手の心に届けるか、どう感じ取ってもらうかが大切です。
よく説得する時の私を見て、和やかに話してはいるものの、「目が笑っていない」と言われます。
絶対にこの人を救いたいという気持ちがにじみ出ている証拠だと思うので、そのように言われることは嬉しく感じています。
今後、どのようなことに取り組まれていきたいですか?
まずは私自身がこの事業を継続できるように日々充実した生活を送っていきたいです。
私たちの事業は官公庁の支援なく民間で運営しています。
そのため、利用者の方々から費用をいただくことで事業が成り立っています。
時には、困っている立場の方々からお金を巻き上げる貧困ビジネスと認識されることもあります。
一人でも多くの人々を救いたいという想いがある分、誹謗中傷を受けることは精神的に辛い部分もありますが、私が事業を辞めてしまうことで困る人や悲しむ人がいます。
また、私が伊藤氏の行動に感銘を受けてこの事業に携わったように、私の姿を見て少しでもこの事業に興味関心を抱いてくれる人々がいるのであれば、誹謗中傷に負けている時間はありません。
強い信念を持って、ぶれずに向き合っていく必要があります。
そのうえで、この事業をもっと多くの人に知ってもらい、支援することで一人でも多くの人を救えたらと思っています。
支援を必要とする人々がいなくなることは、事業の縮小を意味するので経営は立ち回らなくなってしまいますが、私の願いでもあります。
まとめ
今回は一般社団法人若者教育支援センター、ワンステップスクールの代表である広岡政幸氏にお話しを伺いました。
お話しを聞いていて何よりも感じたことは熱意とその真剣さです。
時に優しく救いの手を差し伸べ、時には厳しく道を示すことができるのは、広岡氏自身が過去に同じような経験をしているからだと感じました。
社会や国の公的支援機関も整い始めましたが、困っている全ての方々が利用できているわけではありません。
利用したとしてもどこか他人事で、不安を感じてしまうこともあるでしょう。
同じような経験や境遇にあるということは大事な一つの要素となることもあるかと思います。
また、同スクールのスタッフには、元生徒だった方々が大勢いらっしゃいます。
その方々を見てもわかるように、自立支援を行った結果、社会復帰に導ている実績も伺えます。
公的資金を利用していない分、事業と理念の共立が難点になるかと思いますが、理念実現のため奮闘する広岡氏をこれからも注目していきたいと思います。
ワンステップスクール 概要
法人名 | 一般社団法人若者教育センター |
スクール名 | ワンステップスクール |
所在地 | 〒108-0075 東京都港区港南二丁目16番1号 イーストワンタワー4階 |
代表 | 広岡政幸 |
設立 | 2008年 |
公式サイト | https://free-school.jp/ |
事業内容 | 自立支援 |