統一教会(家庭連合/現名称・天の父母様聖会 世界平和統一家庭連合)主催の各地イベントに自民党議員が参加しているという記事をよく見かけます。日本会議や神道政治連盟もしかり、保守系シンクタンクといえばそうなのでしょうが、政教分離が憲法にある状況で、政党と宗教との関係をどう説明するのでしょうか。(『らぽーる・マガジン』原彰宏)
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あの統一教会が組織再編で名称変更「天の父母様聖会」へ
世界基督教統一神霊協会(統一協会)……文鮮明氏により韓国で生まれた宗教団体が日本で注目を浴びたのは、「霊感商法」が社会問題になったことと、あの大規模な合同結婚式の様子がテレビに映し出されたことでしょう。
当時、日本の有名芸能人も参加した合同結婚式のインパクトは、とても大きかったですね。
統一協会は1954年、韓国ソウルで創設。活動国は現在194カ国に上り、日本では1959年から活動を始め、1964年に東京都知事の認証で宗教法人となりました。
1964の日本で宗教法人の認可を受けたときの初代会長は、元立正佼成会信者の久保修己氏で、「原理研究会」という、文鮮明が提唱する“統一原理”を研究する非営利団体が、全国大学で学生伝道をはじめました。
2015年に、文鮮明の妻である韓鶴子氏が総裁となって、名前も「世界平和統一家族連合(略称:家庭連合)」に変わっています。
この名称変更時には、献金や勧誘活動について使用者責任を問う司法判断があったことを受け、「今後このような問題を問われることのないよう、日本社会と国家からより信頼を受けることができるように、宗教法人として適正な管理運営に努めてまいります」とコメントをしています。
そしてさらに、「天の父母様聖会」に名称変更することになっています。
キリスト教系の新興宗教団体に分類されることもあるようですが、日本のキリスト教会では、カトリックもプロテスタントもキリスト教の一教派とは認めてはいません。
自民党と関係が深い? 巨大な資金力で韓国では財閥に
何と言っても「資金力」は大事です。
世界基督教統一神霊協会の財産を管理するため1963年に世界基督教統一神霊協会維持財団が設立され、そのもとに多くの企業を擁しています。
韓国では財閥の1つとみなされ、系列企業は「統一教グループ」と呼ばれ、宗教としてより統一系企業の方が有名で、文鮮明氏は事業家としてのイメージが強いようです。
文鮮明氏の親族がそれらの企業の幹部になっていることもある。
この統一協会が政治と関わるものとして、1968年に、文鮮明氏が岸信介氏の協力を得て反共産主義政治団体「国際勝共連合」を日本に設立させました。
この「国際勝共連合」の名誉会長が笹川良一氏であるところに、右翼色が強く感じられますね。
自民党と統一教会の関係を強く匂わせるのは、やはり岸信介氏を通した関係があるからではないでしょうか。
特に岸信介氏の流れを汲む「清和会(現細田派)」グループの議員が、統一教会(家庭連合/天の父母様聖会 世界平和統一家庭連合)主催の集会などに姿を表すのも、両者の深い関係を表しているように思えます。
特に、歴代の清和会会長と統一教会の蜜月は、噂の種は絶えません。
Next: 安倍前総理を輩出した「清和会」に近い思想を持っている
「反共産主義」で日本の政治に関与
「勝共連合」は、機関紙として『国際勝共新聞』・『思想新聞』、月刊誌『世界思想』を発行、関連会社の「世界日報社」が日刊新聞、『世界日報』を発行しています。
統一教会(家庭連合/天の父母様聖会 世界平和統一家庭連合)と政治を語る上で、文鮮明-岸信介の「国際勝共連合」の思想を見る必要があるようです。
国際勝共連合ホームページには「さよなら、日本共産党」と題した特集をトップページに載せています。
共産党と共産主義の欺瞞と間違いを明らかにする……。創設直後から、大学、労働組合、一般人を対象とした反共講演会を開催してきました。学生を中心とした遊説隊による街宣活動、台湾・フィリピン・韓国などと交流して、PL教団青年部など宗教団体に働きかけも行ってきました。
「反共産主義」というところで見れば、保守政党との親和性が高いことが伺えます。となると、いまの共産党を巻き込んだ野党共闘は、絶対に許せないのでしょうかね。
確かに、立憲民主党の支持母体である「連合」には、いまだに強い共産党へのアレルギーがあります。
先の衆参補欠選挙においても、共産党の人たちと、同じ壇上に立つことを連合は極端に嫌っていました。立憲民主党議員にも、共産党議員と横並びに立ってテレビなどに映ることを避けるように要請していたようです。
安倍前総理を輩出した「清和会」に近い思想
国際勝共連合の運動方針には「共産主義の脅威から我が国を守る」とありますが、その他にも
・ジェンダーフリーや過激な性教育の廃止
・「選択的」夫婦別姓に潜む共産主義の索道を阻止
・男女共同参画基本法の改廃
・憲法改正
・緊急事態宣言基本法の制定
・スパイ防止法の制定
・日本版NSC(国家安全保障会議)の設置
・集団的自衛権の行使容認
・非核三原則の改廃
・武器輸出三原則の改廃
・防衛産業を成長戦略に盛込む
・宇宙の軍事利用を促進
などなど、安倍前総理を輩出した「清和会」に実に近い思想となっています。日本会議や神道政治連盟にも通じるところがあります。
おそらく国会議員の中には、日本会議、神道政治連盟、国際勝共連合(統一教会:家庭連合/天の父母様聖会 世界平和統一家庭連合)どれとも接点がある人も、保守勢力にはいると思います。
ネット上では、統一教会(家庭連合/天の父母様聖会 世界平和統一家庭連合)主催の各地イベントに、自民党議員が参加しているという記事をよく見かけます。
※参考:自民党国会議員と統一教会のコロナ“1万人”イベントが中止に。教団関係者「政治家に迷惑が掛かりそうなので」- ハーバー・ビジネス・オンライン(2021年4月2日配信)
また統一教会(家庭連合/天の父母様聖会 世界平和統一家庭連合)関連の企業も多くあり、表向きではわからないまでも、国会議員が間接的に関係している現状もあるように思われます。
Next: 菅政権の閣僚にも9名いる?政教分離の日本でどう説明するのか
菅政権との関係
日本会議や神道政治連盟もそうですが、保守系シンクタンクといえばそうなのでしょうが、政教分離が憲法にある状況で、政党と宗教との関係をどう説明するのでしょうか。
現菅政権下では、閣僚の中に、統一教会(家庭連合/天の父母様聖会 世界平和統一家庭連合)系と思われる人が9人います。
安倍政権下では11人でした。大臣以外の役職者や党4役まで広げると15人になります。
あくまでも数字からの印象ですが、菅義偉総理大臣よりも、安倍晋三前総理大臣のほうが、統一教会(家庭連合/天の父母様聖会 世界平和統一家庭連合)との関係は強いのでしょうかね。
ちなみに菅政権になって、日本会議及び神道政治連盟に関わる閣僚や役職者の数は、安倍政権時よりも増えています。
日本会議の主張、神道政治連盟の主張、統一教会(家庭連合/天の父母様聖会 世界平和統一家庭連合)の主張……今の政権と深く関わっているこれらの団体側から今の政権を見れば、どうしても選択的夫婦別姓が認められる社会が、同性婚を容認する社会が訪れるとは、とても思えないのですがね。
社会のこういった問題よりも、経済優先、安全保障に積極的な姿勢を好む人達にとっては、今の政権を支持したいということなのでしょう。
それが、いわゆる「組織票」の本質なのかもしれません。
日本の政治は変わるか?マスコミが作る「組織票 vs 浮動票」の構図
昨今、選挙において、マスコミがそういう構図を作っているのかもしれませんが、「組織票vs浮動票」「コアな政党支持者層vs無党派層」の対立構造が見て取れます。そういう言い方をすれば、労働組合もしかりです。
一人ひとりが自分の意見をしっかりと持ち、「あれは良いけどこれはダメ」という部分をしっかりと意識することです。そして「ダメ」というところに重きを置き、利益誘導を重視しない姿勢で選挙に臨むべきなのかもしれません。
その政治家の思想を、その考えに至る背景も含め、しっかりと政治家を見ることが大事なのではないでしょうか。
間違っても雰囲気で、イケメンとか美人とか、若いとか女性だとか、はっきりと物を言うだとか、そんなことで投票しないでほしいものです。候補者が、どのような考えと理念、信念があるかを知るようにしましょう。
私達の政治リテラシーを高めないと、本当にこの国は終わってしまいます。世界の笑いものになってしまいます。その国の政治が笑われているということは、その国の「国民が笑われている」ということになるのですから。
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本記事は『マネーボイス』のための書き下ろしです(2021年5月16日)
※記事タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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