ようこそ異世界帰還者がいる教室へ   作:菅野ゆーじ

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結構早い投稿です。

ハイスクールD×Dの話も書いているのですがこっちの方が捗ってしまい放置しています。どうしよう……。


入学式後と暗示

俺が自己紹介でやらかした後、入学式は無事終了し、すぐ解散になった。自由な時間を手に入れた俺はこの学校の敷地内を回る事にした。

 

 

因みに誰とも一緒ではなく俺一人だ。

 

 

「まあ自己紹介でやらかしたし当然と言えば当然だけど……」

 

 

俺は自虐の台詞を吐きながら敷地内を歩いていく。特に印象に残ったのはケヤキモールというショッピング施設であり、パンフレットの説明通りここでは様々な商品に加えカラオケ、映画館といった施設が充実していた。これなら生徒たちに不満が出ることはないだろう。

 

 

「まあそれも学校の真相を理解しない事には、楽観できないけどな」

 

 

そう思い周囲を見渡すと、そこには数多くのレンズが俺を捉えている。

 

 

それにしてもこの学校は本当に監視カメラが多い。教室にまであるのを見るに茶柱が言っていた「この学校は、実力で生徒を測る」という言葉はこれに来ていると分かる。

 

つまり生徒たちへの監視・評価は現在進行形で行われているという訳だ。

 

 

「となると机をぶん殴った俺は評価が下がったのかね……まあやった事に今更後悔はないし別にいいか」

 

 

あれは山内が俺を舐めてきたのが悪いし、別に孤立しても問題はなかった。

 

元々俺は異世界に召喚される前もそこまで友人はいなく、オタクという事で同じ趣味のやつとは会話していたが一緒に遊びに行くほどの中ではなかったので一人でいる事が多かった。

 

 

それに異世界で受けた仕打ちを通して俺は仲間なんて必要ない、むしろ邪魔者でしかないと結論付けていた。

 

 

「……駄目だ、またイライラしてきた。コンビニでなんか買おう」

 

 

そう言ってコンビニに立ち寄り店内を見渡すとあるコーナーに目線がいく。

 

 

「無料コーナー…ラッキー、貰おっと」

 

 

俺は籠の中に無料の品を入れていく。思えば自動販売機にも無料の水があるのを見かけた。おそらくこれはポイントがない奴のための救済措置。これによりポイント増減の説は濃厚になってきた。

 

 

 

 

「……なあ、ちょっといいか?」

 

 

 

会計を終え、袋を持つととある男子生徒に声をかけられる。

 

 

確か名前は綾小路清隆。自己紹介の時に特に印象に残った奴だった。

 

【鑑定】した際、こいつの全ステータスが常軌を逸していて、筋力値や敏捷値は俺の素のスペックと同等。知能値に関しては俺が異世界で戦った最も優秀だった魔王軍幹部の一人《魔宰相ジークベルグ》以上の数値を秘めていた。

 

 

初めてみた時は【鑑定】スキルが壊れたのかと思ったが、紛れもない事実である事に俺は驚いた。

 

もしかして俺と同じ異世界に召喚された者かとも考えたが、それにしてはスキル欄に習得しているものがなかった為、その可能性は消えた。

 

 

「確か、同じクラスの綾小路だな。何のようだ?」

 

「いや、さっき無料の商品を買っていたのを見てな。どう思ったか聞きたくてな」

 

 

 

 

……白々しいな、こいつ。

 

 

 

俺は綾小路の問いにそんな感想を抱いた。どう思ったか? そんな質問をしなくてもこいつ程の知能値があればポイントの増減があり得ることも少しは分かるはずだ。

 

なのにこうして無知な生徒のように聞いて来るとは、もしや俺はこいつに試されているのだろうか。カチンときた俺はこいつを睨みつける。

 

 

「……別に。どうとも思わない。タダなら何でもいいんじゃねえか?お前なら何か気づいてるだろう」

 

「いや、オレには分からない。というか、急に不機嫌じゃないか。オレは何か悪い事をしたか?」

 

「突然話しかけてきてそんな事を聞けば誰だってそうなるわ。少しは考えたらどうなの?」

 

 

綾小路の近くにいた女子生徒がそんな冷たい言葉を放った。

 

 

こいつも確か同じクラスで名前は堀北鈴音。

 

自己紹介はしてなかったので後で【鑑定】したがそれなりに数値が高い生徒なのを覚えている。

 

 

黒髪のロングでスレンダーな体格をしていて顔立ちも整っている。目つきは鋭いが男子の目を引くのは間違いないだろう。

 

だが今の態度のように辛辣さが丸見えになっていてその容姿を台無しにしていた。

 

 

 

…話は変わるが、この学校の女子はレベルが高い。特に目に入ったのはBクラスにいたストロベリーブロンドの少女だ。スタイルも良く特に胸は同年代に比べ一回り大きいように思えた。

 

是非ともお近づきになりたいが、他クラスである以上接触は困難であり自分から行くほど社交性がある訳ではない。

 

俺が持つスキルや魔法も乱用するとバレる可能性もあるので、現時点では見送ることにした。

 

そんな事を考え、俺は堀北と会話を始める。

 

 

「ああ…同じクラスの堀北か。いや、別に何でもない。こちらが話しかけられたから応じただけだ」

 

「……何で私の名前を知ってるの? まさか綾小路君、勝手に教えたの?」

 

「いや、違うな」

 

「教室に入る前、掲示板に貼られたクラス表を見ただろ。それを覚えていただけだ」

 

「だとしてもどの名前とどの人物が一緒かまでは分からないはずよ」

 

「分かるさ。俺は覚えていた女子生徒の名前と自己紹介してなかった奴を当てはめただけだ。てか、どうでもいいだろそんな事。なんだ? お前は名前を覚えられるのが嫌なのか?」

 

「ええ。貴方のような不気味な生徒に名前を覚えられるなんて不快でしかないもの」

 

 

 

………

 

 

        イマ、ナンツッタ?

 

 

 

俺はその言葉に力を込めた腕を堀北に向けようとしてーー。

 

 

しかしそれを静止させるかのように綾小路が間に入る。

 

 

「やめろ堀北。村上は馬鹿にされる事が嫌いなんだ」

 

「……ああ、そういえばクラスの人達が言っていたわね。入学早々野蛮なことをするのね。私からしてみれば理解できないわ」

 

 

……オーケーオーケー。たった今こいつの評価は決まった。そこまで強気な態度を見せるなら後で後悔させてやる。

 

そんな事を考え、俺は堀北に向けて言葉を言おうとした。しかしそれは叶わない。

 

 

「舐めてんじゃねえぞ! ああっ!」

 

 

突然、コンビニの外から怒声が聞こえて来る。何事かと外を見ればクラスにいた赤髪の不良と上級生らしき生徒が3人いた。

 

 

「お前、一年のDクラスだろ」

 

「あ? だからなんだよ」

 

「お〜酷え口の聞き方だな。上級生に対してよぉ」

 

「うるせぇ! やんのかコラ! 相手してやるからかかってこいよ!!」

 

「おー怖い怖い。まあ今日の所は見逃してやるよ」

 

「惨めなお前ら不良品を、これ以上虐めちゃ可哀想だからなぁ。アハハハハ」

 

 

そう言って上級生は去っていった。須藤(たった今【鑑定】で調べた)はそれにイラつくと持っていたカップ麺を地面に投げ捨てて何処かへ行ってしまうのだった。

 

 

「はあ……誰も彼も野蛮ね。私はもう帰るわ。これ以上いたら私の品位まで下がるもの」

 

「待て、俺に何か言う事があるだろう」

 

「ないわ。馬鹿にした事を謝れというなら断るわ。私は間違ったことは言っていないもの、さよなら」

 

 

そう言って堀北も帰路につく。俺はその後ろ姿をただ一瞥していた。

 

 

「……いつか、その品位をぶち壊してやる」

 

「……ッ」

 

 

俺が漏らしたその言葉に綾小路は目を少し見開くと俺の肩を強く掴んだ。

 

 

「待て、何をするつもりだ」

 

「……別にどうもしねえよ。俺もただ帰るだけだ。カップ麺の処理ならしといた方がいいぞ。監視カメラに撮られてるからな」

 

 

その言葉を最後に、俺もその場から去る。その時、背後にいた綾小路から観察するような目線を向けられている事を感じていた。

 

◇◇◇

 

 

ところ変わって先程去っていった3人の上級生。彼らは愉快に笑いながら先程の不良について笑っていた。

 

そんな彼らを俺は【気配遮断】で追跡し、人気のないところまでくるのを確認する。先程堀北のクソアマと話していた最中気になった事を言っていたのでそれを吐かせようと思ったのだ。

 

俺は気持ちを切り替えると【気配遮断】を解いて話しかけた。

 

 

「いや〜先輩方。こんにちは」

 

「「「っ!?」」」

 

 

突然そんな呑気な言葉が聞こえ、上級生達は振り向く。気配が全く感じ取れなかった事に3人は困惑するも、目の前の俺に話しかけてきた。

 

 

「だ、誰だお前は?」

 

「一年の村上光太と言います。実は先程の会話を少し耳にしまして……何でもDクラスが不良品だとか」

 

「は?……ああ成る程、お前もしかしてお前もDクラスか?」

 

「ええ、実はそうなんですよ」

 

「はっ! だとしたら何のようだ? 俺たちは何もおかしな事をしていない。ただ単に事実を述べただけで……」

 

 

『黙れ』

 

 

俺が言った言葉に、突然3人は黙り込むとまるで人形のようにその場に佇んだ。

 

 

『……本当はもっと時間をかけようとしたが、今俺は気分が悪い。だからさっき気になった事を簡潔に聞く。だからお前らも簡潔に応えろ。この学校のシステムについて』

 

「「「……はい」」」

 

 

俺が今行使しているのは中級暗示魔法。

 

こちらが質問した事に対して応えさせたり、行動をある程度強制させる事ができる。中級なので完全な洗脳はできないが一般人相手ならとても効果的な力だった。

 

 

その力を使い、俺はこの学校についての話を聞いた。

 

 

すると重要であろう単語が発せられた。

 

 

 

Sシステム。

 

リアルタイムで生徒を査定し、数値として算出するようで、各クラスを統制するために設けられている制度のようだった。これを3年次修了の時点で全クラスと競い合い最後にAクラスだった者達の進路を保証するらしい。つまり、この学校が掲げている就職率・進学率100%というのは一部の生徒のみに限定されたものという訳だ。

 

 

「つまり、現時点でDクラスにいる奴らは入学当初から評価が低い生徒…不良品という事になる訳か」

 

「「「はい、そうです……」」」

 

「ちっ、あのクソ職員。言う通りにやったかと思えばそんな事しやがったのか。後で絶対にぶっ殺してやる……」

 

 

俺は舌打ちをしながら入学手続きをした職員へ殺意を抱いた。

 

 

思えばあのコンビニの無料商品も俺たちに学校のルールを気づかせるヒントだったという訳だ。

 

 

なお、詳しい査定方法は非公開らしく、少なくとも分かっているのはポイントの増減がある特別試験がある事、普段の生活で問題を起こしたらクラスポイントが引かれるという事だった。

 

 

「他に重要な情報はないか……て、クソ。思ったより減ったな」

 

 

と、ここで俺は魔力の残量が大幅に減っている事に気づく。

 

 

魔法を使う為には魔力が必要だ。魔力というのは体力と同じで使えば消費させるし乱用すればバテてしまう。これの消費を抑え、すぐに魔力を回復させるのに一番効率的なのは空気中に存在する魔素を体内に取り組む事だ。

 

もちろんこの世界には魔素というものが存在しない為、回復効率はすごく悪い。魔力を回復させるのは俺が持つスキル【自然魔力回復上昇】しかないので迂闊に使用すると魔法が使えなくなる。故に俺はここで暗示魔法の行使を止める事にした。

 

 

「あ、あれ…? 俺たち一体何を……」

 

 

そんな呑気な事をほざきながらポカンとする3人を一瞥すると、俺はその場から離れるのだった。




村上光太のデータベースはもうすぐで公開します。

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