ようこそ異世界帰還者がいる教室へ   作:菅野ゆーじ

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よう実で新しい話を作ってみました。


村上光太の独白

俺は中学二年の時、異世界に召喚され冒険をしたことがある。

 

 

 

……いきなりこんな発言をしても困惑するだろう。最悪中二病患者か? と馬鹿にされるのがオチだ。

 

しかしこれは嘘ではない。確かに俺は中学2年の春、突如として現れた魔法陣によって異世界へ転移させられたのだ。

 

 

 

そこは正に剣や魔法のファンタジー。大きな島が空を浮かび多くのモンスターが蔓延る世界だった。

 

 

 

そんな世界に突如として魔王が現れ世界は支配されそうになり、俺ーー村上光太がそれを打破すべく選ばれたのだ。

 

 

召喚された当初はそれは喜んだ。オタクな俺にとって異世界に召喚されるなんて夢のような出来事だったし王国での生活、仲間との冒険、ハーレム…ラノベなどで読んだ展開を大いに期待してたからだ。

 

 

 

だが、現実はそんな甘くなかった。

 

 

 

 

俺を召喚した王国は俺を使い捨ての駒のようにぞんざいに扱い、僅かな資金だけ持たせて国から追い出し冒険を強制させた。

 

 

仲間は国から派遣されたにも関わらず、玉の輿狙いの聖女や文句ばかり言うボンボンの戦士、俺に戦うよう命令するだけの女騎士などロクな奴がいなかった。お陰で冒険は俺にだけ負担がかかり疲労とストレスが溜まる一方……。

 

 

ハーレム? 権力ばかり目のいった性格悪いクソ女や着飾るだけのブス貴族しか寄ってこなくて、パーティーにいた聖女や女騎士は隣国にいたイケメンの王子達に媚を売り、俺は最後まで眼中にされなかった。

 

 

 

故に俺が改めて出したこの世界の結論はーー

 

 

「異世界なんてクソ喰らえ」

 

 

……という考えだった。

 

 

なので俺は足手纏いだった仲間……もとい邪魔者を解雇し、己のチートのみを使って異世界のモンスターを蹴散らしながらソロで魔王討伐に挑んだ。

 

勿論簡単な事ではなく何度も死にかける羽目になった。しかしこんなロクな世界で死ぬわけにはいかないと意地を見せ、俺は一人で戦い続けた。

 

そして、ついに俺は魔王を倒すことに成功したのだ。

 

 

その後、異世界の奴らはやっと俺に感謝するのかと思った矢先、魔王を倒した者を国に引き込もうとする権力争いに巻き込まれ、何の褒賞もなく元の世界に返されたのだ。

 

 

「この世界の奴ら、全員死ねっ!!」

 

 

転移される中で叫んだ俺は、決して悪くないと思う。

 

 

まあそれで結果オーライというか…俺は無事元の世界へと帰って来ることに成功した。

 

 

 

 

 

 

だが俺の不幸はまだ続いた。

 

 

なんと元いた現代世界では俺が召喚されてから1年そのままの時が流れていて、その間俺は家で引きこもっている事になっていたのだ。両親は俺を見放し弟に愛情を注ぐようになり、俺は家でいない者扱い。学校では引きこもりとクラスの連中から馬鹿にされた。

 

 

はじめは異世界や現実世界の奴らがやった仕打ちに憤りを覚えた。そしてお先真っ暗な人生を送るのかと絶望もした……だが神は、そんな俺を見放さなかった。

 

 

なんと俺が異世界で手に入れた力ーースキルや魔法はこの世界でも使用する事ができたのだ。勿論色々と制約がついたがこの世界でその力を使えるのは俺だけ……つまり特別な人間になったのだ。

 

 

この時俺は恩恵とも言える異世界の力で、勝ち組人生を謳歌すると決意した訳だ。

 

 

 

 

そして現在俺は……

 

 

 

「このまま俺を落としたらお前を殺す。死にたくなかったら空いてる推薦枠で俺を指名しろ」

 

「ひぃいいいっ!?」

 

 

進路希望先の内定を手に入れる為、職員を脅していた。

 

 

勝ち組人生を送ると決めた俺はとある高校を受験しようと思った。

 

 

それは、高度育成高等学校。

 

 

日本政府が作り上げた未来を支える人材を育成する全国屈指の名門校。希望する進学、就職先をほぼ100%応える。

 

3年間外部との連絡網は遮断。学校の敷地内から出るのは禁止され寮生活になるが、60万平米を超える敷地内は小さな街になっており不自由なく過ごせる楽園のような学校とされている。

 

ここに入れさえすれば、俺を空気扱いする家族とも離れられるし、引きこもりと馬鹿にした奴らに一矢報いる事ができると考えた。故に俺はこの学校を受験したのだ。

 

 

しかしまたもや俺に邪魔が入る。何とこの高校、裏の顔として推薦にあった生徒に対して事前調査を行い、入学に値する生徒を決定して他の志願を全て取り消していたのだ。

 

 

何故そんな事を知ったのか……俺は受験の始願書を提出しようと職員室へ向かった際、担任と高度育成高等学校の職員が「受かるはずないのに間抜けだな」と喋っているのを【聴覚拡大】スキルで聞き取ったのだ。

 

 

そんな訳でその調査をしてた職員を拉致し、こうして脅している訳だ。職員はしばらくパソコンを操作するとエンターキーを恐る恐る押しメールか何かを送信した。

 

 

「……今、学校へ連絡した。君の合格は、すぐに知らされるだろう……」

 

「そうかそうか。ご苦労さん。これで俺の入学は決定したって訳だ」

 

「き、君は一体なにものなんだ……小学生頃のデータを見たが、特にこれといって突出した特技はなかったはずだ。なのに今の君の能力は異常に高い……まさか、引きこもっていた一年間の中で何かをーー」

 

 

職員の言葉はそれ以上続かなかった。何故なら俺の手には突如としてゲームに登場しそうな西洋剣が握られていて、職員の首に突き立てられていたからだ。

 

俺が持つ異世界から持ってきたアイテムを貯蔵、使用することができるスキルーー【収納】の力である。

 

 

「(こいつ、嫌な事を思い出させやがって……異世界の連中にロクな奴がいないから過酷な環境下で己を高めるしか生き残る道はなかったんだよ)」

 

 

俺は内心で愚痴を吐きながら余計な事を言った職員を睨みつける。そいつはいつの間に剣を出したのか、というか何で剣があるんだと驚きの表情を浮かべたが、すぐに自分の身の危険を感じたのか青ざめる。

 

 

「俺の詮索はしない方が身のためだぞ? 深追いしたら最後…お前の命がなくなるからな……」

 

「わ、分かった! これ以上干渉はしない! 君の推薦も約束するから殺さないでくれ!!」

 

「……うん! 聞き分けのいい奴は嫌いじゃないぞ? 今回は許してやろう」

 

 

わざとらしい笑顔をつくり、俺は持っていた剣を下げ、虚空へと消滅させた。

 

 

「なっ……剣が消え…」

 

「詮索はするなと今言ったはずだぞ?」

 

 

最後に釘を刺すと職員はコクコクと首を振る。それを見た俺は興味を失うかのようにその場を去るのだった。

 

 

 

 

 

そしてそれから数ヶ月後……俺の元に高度育成高等学校の合格通知が届いた。




独白は長くするのが難しいです。すみません。

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