#KuToo ツイート引用の著作権訴訟、出版差し止め及び賠償請求退ける【東京地裁】

職場でヒールやパンプスを強制することに声を上げた「#KuToo 運動」を立ち上げた石川優実さんの著書内でのツイートの引用が著作権法に違反しているなどとして、ツイートを引用されたとするアカウントの主が出版社の現代書館と石川さんを相手取り、出版差し止めや約220万円の損害賠償を求めた訴訟で、東京地裁は5月26日、原告の訴えをいずれも棄却した。

訴訟の経緯は

石川優実

判決を受け、記者会見を開いた石川優実さん。

撮影:竹下郁子

争点となったのは、2019年1月に刊行された石川優実さん著『#KuToo 靴から考える本気のフェミニズム』(現代書館)においてのツイートの引用だ。本書籍は、職場で女性にのみヒールやパンプスを強制するのは女性差別であるとして抗議する「#KuToo」運動や、これを主導した石川優実さんに対して寄せられた非難・中傷のツイート、通称「クソリプ」を複数引用し、「バックラッシュ実録 140字の闘い」と題する章を設けて批評を試みたものだ。

原告はこの書籍の中でツイートを引用された、匿名アカウントを運用するK氏。書籍では

「逆に言いますが男性が海パンで出勤しても #KuToo の賛同者はそれを容認するということでよろしいですか?」

という原告のツイートに対して、石川さんが

「そんな話はしてないですね。もしも #KuToo が「女性に職場に水着で出勤する権利を!」ならば容認するかもしれないですが、 #KuToo は「男性の履いている革靴も選択肢にいれて」なので。

と反論したツイートを引用し、女性の靴の問題が水着に飛躍している点などを批判する論評を掲載している。

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ツイートの引用と著作権

石川優実

『#KuToo 靴から考える本気のフェミニズム』内の原告のツイートの引用箇所。

撮影:竹下郁子

書籍に引用された原告のツイートは、#KuTooに賛意を示す匿名のツイッターアカウントと原告との複数回に及ぶやり取りのうちの1つだ。

訴状によると、原告は当該ツイートは服装に関するTPOについて会話していただけであり、これを石川さんや #KuToo運動を批判する「クソリプ」として掲載することはツイートの趣旨を歪める行為であり、著作権を侵害していると主張。

これに対し判決では、当該やり取りは「#KuToo に反発する人へ」と題する引用ツイートから始まったものであり、#KuToo運動に賛意を示すアカウントに対して原告が批判・反論するツイートを繰り返していることなどから、「ツイートの趣旨が本件活動(=#KuToo)への批判・非難にあることは明らか」と指摘。

また、原告のツイートで「#kutoo」と小文字で表記されていたものが、書籍では「#KuToo」となっていたことが同一性保持権を侵害しているという訴えについても、「誤記」であると認めるのが相当として退けた。

「全て理由がないので、これらをいずれも棄却する」

石川優実

会見にて。右から2人目が神原弁護士。

撮影:竹下郁子

加えて、原告が書籍内で「へんてこりんな人」「Twitterになると急にバグる」などの批評が加えられて名誉感情が侵害されたと主張している点に関しても、「これらの表現が社会通念上許される限度を超える侮辱行為に該当するということはできない」ため、「名誉感情侵害による不法行為は成立しない」とし、原告による出版差し止め及び損害賠償請求は「全て理由がないので、これらをいずれも棄却する」と結論づけた。

判決を受けた記者会見で石川さん及び現代書館の代理人の神原元弁護士は、本書籍の発売当初から、ツイートの引用方法が改変や捏造にあたり、「著作権法に違反している」として石川さんを攻撃する投稿がTwitter上にあふれた経緯などに触れ、「声を上げる女性に対する一種のスラップ訴訟ではないか」との見解を述べた。

一方、原告代理人の小沢一仁弁護士は判決について「一部原告側の主張を正確に理解いただけなかった」とし、控訴する旨をTwitter上で明かしている。

被告となった石川さんは「この本が何の問題もないと証明されてホッとしている」と話し、約2年間に渡って続いたSNS上での誹謗中傷について、「こうした嫌がらせを止めるには死ぬしかないと思ったこともある」と振り返った。

(文・竹下郁子

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