まるで生き物のようにうごめく超巨大積乱雲「スーパーセル」、その美しくも荘厳な姿

まるで生き物のようにうごめく超巨大な積乱雲、スーパーセル。この凄まじい気象現象を追いかけ、写真に記録している男がいる。写真家のミッチ・ドブロウナーはスーパーセルの荘厳さに魅せられ、毎年夏になると経験豊富なストームチェイサーとペアを組んで米中西部を旅するという。そんな彼が捉えた美しくも迫力のある写真の数々を紹介しよう。

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写真家のミッチ・ドブロウナーはこの10年ほど、夏になると数週間にわたって、米中西部で発生する凄まじい気象現象を追いかけている。同行するのは、経験豊富なストームチェイサー(嵐の追跡者)であるロジャー・ヒルだ。『ギネスブック』によると、ヒルは歴史を通して、最も数多くの竜巻(650回以上)を目撃した人物でもある。

ドブロウナーとヒルが初めて一緒に嵐を追いかけたのは、2009年のある日のことだ。ふたりはその日の正午、サウスダコタ州ブラックヒルズで、高降水型スーパーセル(超巨大積乱雲)を発見。ヒルの運転する8人乗りヴァンで追いかけ始めた。追跡は、その日の深夜12時にネブラスカ州ヴァレンタインで断念するまで続いたという。

ヒルはそのスーパーセルについて、「まるで宇宙船のようでした」と語る。ヒルは、ツアー会社のシルヴァー・ライニング・ツアーズ(Silver Lining Tours)を運営し、毎年11回の嵐追跡ツアーを企画・実施している。「雹はグレープフルーツくらいの大きさで、稲妻が3~4秒おきに光るんです」

まるで肖像写真を撮るように臨む

ドブロウナーが撮影したこうした気象現象の記録は増える一方だが、なかでもメガストーム(巨大嵐)を白黒で捉えた写真は圧巻だ。メディアは竜巻ばかりを取り上げるが、ドブロウナーが関心を寄せるのはスーパーセル[日本語版記事]。竜巻を発生させることもある超巨大積乱雲だ。

「わたしは(スーパーセルを)生き物だと考えています」とドブロウナーは言う。「美しくゴージャスな嵐もあれば、風が吹き荒れて猛烈な嵐もあります。そして、長続きすればするほど、形状がさまざまに変化しますが、やがて成熟し、消滅していきます。だから撮影には、肖像写真を撮るような気持ちで臨んでいます。人間を相手にするようにね」

スリルを求めるストームチェイサーもいるが、ドブロウナーは違う。彼が写真に収めようとしているのは過激な荘厳さであって、危険さではない。

「嵐がときに破壊的であることはわかっていますが、わたしが撮影したいのはそのことではありません」と、ドブロウナーは語る。「嵐の破壊力を捉えた写真は、それを得意とする人たちに任せたい。わたしは嵐を、美しい事象だと考えています」

キングコングを前にしたような心境

嵐の専門家であるヒルと同行することで、ドブロウナーは撮影に集中できる。「とても混沌とした状況です。強風が吹き、稲妻が光り、つんざくような音がして、雹も降ります。おまけに状況は刻一刻と変化するので、周囲にしっかり気を配らなくてはなりません」とドブロウナーは話す。「ロジャーの『逃げるぞ!』という声を聞き逃さないように、集中しています」

ドブロウナーはニューヨーク州ロングアイランドで生まれ育ったので、21歳のときに米国南西部をクルマで横断するまで、こうした厳しい気象現象についてリアルには知らなかった。何年にもわたって嵐を撮影してきたいまでさえ、スケールの大きな自然の猛威を前にすると、立ち尽くしてしまうことがあるという。

「キングコングを前にしたような感じです」とドブロウナーは言う。「怖くはありません。目撃できて光栄だという気持ちになります。見るのをただ楽しみたくて、写真を撮らないときもあるんです」

竜巻を産む巨大積乱雲「スーパーセル」、至近距離からの撮影に成功(動画あり)

フォルクスワーゲン(VW)グループが、自律走行車にルミナー製のLiDARを採用した。競争が激化するセンサー分野で、ルミナー製LiDARの測定距離と解像度に魅力を感じてのことだ。PHOTOGRAPH COURTESY OF LUMINAR

VWグループは、あのスタートアップのセンサーで自律走行車の開発を加速する

フォルクスワーゲングループのアウディ子会社が、自律走行車の中核的な技術であるレーザーセンサー「LiDAR(ライダー)」のスタートアップと提携した。トヨタ自動車やボルボも注目するルミナー製のLiDARは、250m先まで測定でき解像度も非常に高いという。アウディ車への先行採用が見込まれるこの技術によって、いかに自動運転は進化するのか。

フォルクスワーゲン(VW)グループは、2021年までに大都市圏に完全自律走行車を導入したい考えでいる。つまり同社は、限られた時間内に完全な自動運転を実現しなければならない。

自動運転技術における最大の問題は、ロボットに周辺環境を細部まで正確に理解させることだ。例えばクルマの周囲にある小さな物体が子どもなのか、消火栓なのか、周辺の環境を正しく認識できれば、この技術に関するほかの問題も非常に容易になる。

VWグループはどのようにこの問題へアプローチするのか。2021年の実現を目指し、同グループ内で自動運転技術を開発するスタートアップが、その鍵を明らかにした。

提携先は、トヨタ注目の企業

VWグループのアウディの子会社であるAID(Autonomous Intelligent Driving)は、シリコンヴァレーを拠点とするルミナー(Luminar)との提携を12月に発表した。ルミナーは、クルマの周囲の3Dマップを構築するレーザーセンサー「LiDAR」のスタートアップだ。

AIDには数十ものLiDARメーカーからオファーがあったが、ルミナー製LiDARの性能がずば抜けていたという。同社のLiDARは約250m先まで測定でき、同時に解像度も非常に高かった。

「ルミナー製LiDARの測定距離には驚いています」と、AIDの最高技術責任者(CTO)であるアレクサンダー・ハーグは語る。測定距離が長ければ、前方の障害物を発見してからそこにたどり着くまで、十分な時間を稼ぐことができる。また解像度が高いと、コンピューターが個々の障害物(クルマ、歩行者、自転車など)を正確に認識しやすい。

アウディが先行採用?

AIDは2018年の夏から、ドイツ・ミュンヘンを中心にVW「e-Golf」の自律走行モデルを走らせている(十数台あるが、まもなく「Audi e-tron」に切り替わる予定だ)。このe-Golfのルーフには、前方を認識するルミナー製LiDARが2台搭載されている。LiDARはそれぞれ前方120度に向けて、1秒間に何百万回もレーザーを発射する。その反射時間を計測することで、周囲の3Dマップを構築するのだ。

また、ルミナー製のLiDARはレーザー光の波長に特徴があり、一般的な905nmではなく、1,550nmで光のパルスを発射する。この波長を使えば、人間の眼球にダメージを与えることなく、より強力なレーザーを飛ばすことができる。結果として非常に遠くまで測定できるのだ(このe-Golfはほかにも、センシングシステムとしてカメラ、レーダー、および他社製のLiDARを使用している。このLiDARは測定距離が短く、バンパーに搭載されている)。

アウディ車のドライヴァーは、AIDが完全自律走行車を発売するより前に、ルミナー製LiDARの恩恵を受けられるかもしれない。

アウディは、半自動運転システム「トラフィックジャムパイロット」(テスラ「オートパイロット」のアウディ版のようなものだ)の適用条件を、現時点では時速60kmに制限している。これより速いと、測定距離の短いLiDARでは前方の障害物(例えば停車中の消防車など)を検知できない恐れがあるからだ。

「スピードを上げるための次のステップとして、アウディはルミナー製LiDARのような技術が必要になるのです」と、AIDのハーグは語る。

見えてきた「ゴール」

とはいえLiDARセンサーは高額なので、導入は一筋縄ではいかないかもしれない。AIDが計画しているように、タクシー車両として自律走行車を運用できれば、そのコストを償却できるだろう。個人消費者向けに販売するほうがずっと難しいのだ。

しかし、ルミナーはコスト削減に取り組んでいる。同社の最高経営責任者(CEO)であるオースティン・ラッセルは「量産車に搭載できるようにすることが重要です」と語っている。

いずれにせよ確かなのは、社員数150名ほどのAIDが、目に優しいルミナー製LiDARとともに、自動運転に残された問題に集中できることだ。LiDARで構築した3Dマップを読み解き、周辺環境を理解することもその一部である。2021年はすぐそこまで迫っているが、ドイツのエンジニアたちには、ゴールテープがよりはっきりと見えているに違いない。

フォルクスワーゲン(VW)グループが、自律走行車にルミナー製のLiDARを採用した。競争が激化するセンサー分野で、ルミナー製LiDARの測定距離と解像度に魅力を感じてのことだ。PHOTOGRAPH COURTESY OF LUMINAR

VWグループは、あのスタートアップのセンサーで自律走行車の開発を加速する

フォルクスワーゲングループのアウディ子会社が、自律走行車の中核的な技術であるレーザーセンサー「LiDAR(ライダー)」のスタートアップと提携した。トヨタ自動車やボルボも注目するルミナー製のLiDARは、250m先まで測定でき解像度も非常に高いという。アウディ車への先行採用が見込まれるこの技術によって、いかに自動運転は進化するのか。

フォルクスワーゲン(VW)グループは、2021年までに大都市圏に完全自律走行車を導入したい考えでいる。つまり同社は、限られた時間内に完全な自動運転を実現しなければならない。

自動運転技術における最大の問題は、ロボットに周辺環境を細部まで正確に理解させることだ。例えばクルマの周囲にある小さな物体が子どもなのか、消火栓なのか、周辺の環境を正しく認識できれば、この技術に関するほかの問題も非常に容易になる。

VWグループはどのようにこの問題へアプローチするのか。2021年の実現を目指し、同グループ内で自動運転技術を開発するスタートアップが、その鍵を明らかにした。

提携先は、トヨタ注目の企業

VWグループのアウディの子会社であるAID(Autonomous Intelligent Driving)は、シリコンヴァレーを拠点とするルミナー(Luminar)との提携を12月に発表した。ルミナーは、クルマの周囲の3Dマップを構築するレーザーセンサー「LiDAR」のスタートアップだ。

AIDには数十ものLiDARメーカーからオファーがあったが、ルミナー製LiDARの性能がずば抜けていたという。同社のLiDARは約250m先まで測定でき、同時に解像度も非常に高かった。

「ルミナー製LiDARの測定距離には驚いています」と、AIDの最高技術責任者(CTO)であるアレクサンダー・ハーグは語る。測定距離が長ければ、前方の障害物を発見してからそこにたどり着くまで、十分な時間を稼ぐことができる。また解像度が高いと、コンピューターが個々の障害物(クルマ、歩行者、自転車など)を正確に認識しやすい。

アウディが先行採用?

AIDは2018年の夏から、ドイツ・ミュンヘンを中心にVW「e-Golf」の自律走行モデルを走らせている(十数台あるが、まもなく「Audi e-tron」に切り替わる予定だ)。このe-Golfのルーフには、前方を認識するルミナー製LiDARが2台搭載されている。LiDARはそれぞれ前方120度に向けて、1秒間に何百万回もレーザーを発射する。その反射時間を計測することで、周囲の3Dマップを構築するのだ。

また、ルミナー製のLiDARはレーザー光の波長に特徴があり、一般的な905nmではなく、1,550nmで光のパルスを発射する。この波長を使えば、人間の眼球にダメージを与えることなく、より強力なレーザーを飛ばすことができる。結果として非常に遠くまで測定できるのだ(このe-Golfはほかにも、センシングシステムとしてカメラ、レーダー、および他社製のLiDARを使用している。このLiDARは測定距離が短く、バンパーに搭載されている)。

アウディ車のドライヴァーは、AIDが完全自律走行車を発売するより前に、ルミナー製LiDARの恩恵を受けられるかもしれない。

アウディは、半自動運転システム「トラフィックジャムパイロット」(テスラ「オートパイロット」のアウディ版のようなものだ)の適用条件を、現時点では時速60kmに制限している。これより速いと、測定距離の短いLiDARでは前方の障害物(例えば停車中の消防車など)を検知できない恐れがあるからだ。

「スピードを上げるための次のステップとして、アウディはルミナー製LiDARのような技術が必要になるのです」と、AIDのハーグは語る。

見えてきた「ゴール」

とはいえLiDARセンサーは高額なので、導入は一筋縄ではいかないかもしれない。AIDが計画しているように、タクシー車両として自律走行車を運用できれば、そのコストを償却できるだろう。個人消費者向けに販売するほうがずっと難しいのだ。

しかし、ルミナーはコスト削減に取り組んでいる。同社の最高経営責任者(CEO)であるオースティン・ラッセルは「量産車に搭載できるようにすることが重要です」と語っている。

いずれにせよ確かなのは、社員数150名ほどのAIDが、目に優しいルミナー製LiDARとともに、自動運転に残された問題に集中できることだ。LiDARで構築した3Dマップを読み解き、周辺環境を理解することもその一部である。2021年はすぐそこまで迫っているが、ドイツのエンジニアたちには、ゴールテープがよりはっきりと見えているに違いない。