公益社団法人
日本獣医師会
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会長短信「春夏秋冬(35)」
「外圧に屈せず一枚岩の団結で」
昨年12月の「春夏秋冬(29)」でお知らせしましたが、6月になって再び国家戦略特区による新たな獣医師養成系大学・学部の新設案件の情報が入りました。
本件は、学部新設を希望している大学が地元の地方自治体と連携して、しかも同地区内の府県知事との連名で関係府省に要請活動を行ったというものです。
既に、国家戦略特区における新たな獣医学部・大学院研究科の設置について規制改革メニューの追加を提案しているとのことです。その要請内容は次のようなものです。
①iPS細胞等再生医療の開発を推進するため、健康・医療分野における国際的イノベーション拠点の形成を目指す。
②再生医療技術や医薬品開発の加速化には、創薬分野に携わる動物実験を担う獣医師を育成し、製薬企業等に供給する。
③鳥インフルエンザ等の感染症防疫を担う獣医師を育成し、アジア地域の研究機関等への供給や留学生受入れによる人材育成を行い、アジア諸国との防疫体制強化を行うとともに、畜産物の輸出等「攻めの農林水産業」を支える産業動物獣医師を育成する。
④上記の目的を達成するため、一学年80名(実験動物管理獣医師分野50名、産業動物分野20名、海外活動分野10名)とする。
⑤獣医学部の新設・定員増は、文部科学省により抑制されているため、上記目的のための 獣医学部設置について、この抑制解除を求める。
ご承知のとおり、本会は、平成26年6月27日に開催された第71回通常総会において、「我が国の獣医学教育の改善・充実に関する決議」として、①獣医学分野の入学定員の抑制方針の緩和と獣医学部・獣医学科の新設には反対である。②これまでの議論を踏まえた獣医学教育の国際水準への改善・充実を強く要請する。との決議を全会一致で行っています。
今回の案件において特に注意を要することは、地元自治体から本会会員地方会に対して本件に協力するよう強い要請があったため、当該地方会は断り切れずに、形式的とはいえ協力する旨の文書を発出せざるを得なかったということです。
本件は現在、規制改革メニューに追加提案されたのみですが、昨年6月に閣議決定された「日本再興戦略」における次の4条件に該当するとは到底思えません。
①現在の提案主体による既存の獣医師養成でない構想が具体化
②ライフサイエンスなどの獣医師が新たに対応すべき分野における具体的な需要が明らかになること
③既存の大学・学部では対応が困難な場合
④近年の獣医師の需要の動向も考慮しつつ、全国的見地から本年度内に検討
しかし、上記のような事態も発生することがあるため、十分な注意が必要です。
本会は、全国16の獣医系大学、日本獣医学会、日本獣医師政治連盟等とも連携し半世紀にわたって獣医学教育改革を推進してきましたが、本件はこの取組に全く逆行するものです。関係者の皆様方が「外圧に屈せず一枚岩の団結で」活動されますよう、改めてお願いいたします。
平成28年6月24日 公益社団法人 日本獣医師会 会長 藏内勇夫
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