公益社団法人
日本獣医師会
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会長短信「春夏秋冬(29)」
「驚きのニュース」
12月15日(火)の昼、耳を疑うような驚きのニュースが飛び込んできました。
午前中に開催された国家戦略特区諮問会議において、国家戦略特区3次指定が決定されました。
全国16の獣医学系大学、日本獣医学会、日本獣医師政治連盟、本会等が揃って長年にわたり設置に反対してきた獣医師養成系大学・学部の新設案件です。
このような情報は、先週、北村政連委員長のご尽力により入手はしていましたが、事実か否か疑う余地もありました。
本件については、本年6月30日に閣議決定された「「日本再興戦略」改訂2015」において、「⑭獣医師養成系大学・学部の新設に関する検討」として特区指定の候補とされました。しかし、検討に当たっては次の4条件が明記されていました。
①現在の提案主体による既存の獣医師養成でない構想が具体化
②ライフサイエンスなどの獣医師が新たに対応すべき分野における具体的な需要が明らかになること
③既存の大学・学部では対応が困難な場合
④近年の獣医師の需要の動向も考慮しつつ、全国的見地から本年度内に検討
このように大きな壁が4つもあるため、実質的に獣医学系大学の新設は困難であると考えていました。しかし、今回は、このような条件について検証することなく、特区指定が決定されました。その記載内容は、「〈教育〉国際教育拠点の整備(獣医師系(ライフサイエンスなどの新たに対応すべき分野))」というものです。
今後は、提案主体である学校法人等が、内閣府、文部科学省等と具体的な区域計画等について協議を進めていくことになります。その協議過程においては、上記の4条件や大学・学部の設置基準等への適合状況等について審査が行われるものと見込まれます。獣医学系大学、政連等における獣医学部新設反対の活動は、これからが本格的な山場に入ったとも考えられます。
そして更に注意を要することは、本件を契機として次々と設置申請が認可されることは、何としても阻止しなければなりません。今回の特区指定は、文部科学省、獣医学系大学等多くの関係者による30年以上にも及ぶ獣医学教育の世界水準達成に向けた努力と教育改革に、全く逆行するものです。
本年10月にはTPP協定交渉も大筋合意に達し、近い将来において獣医師の越境サービスが認められることも視野に、早急な教育水準の引上げが必要です。
そして、人と動物の共通感染症や越境性感染症等の防疫、畜産物の生産性の向上と安全性の確保、医薬品等の研究・開発、動物福祉・愛護等、獣医師が担う広範かつ専門的な業務は、豊かで安全な国民生活の実現に直結するものばかりです。
今後とも、国民全体の利益を守るために、皆様方の一層のご理解とご支援をお願いいたします。
最後になりましたが、平成27年を締めくくる会長短信となりました。
この1年、愛読いただいた読者の皆様に感謝するとともに、良き新年を迎えられますことをご祈念申し上げます。
平成27年12月18日 公益社団法人 日本獣医師会 会長 藏内勇夫
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