おもちゃの包装もプラスチックだらけ:おもちゃの設計とプラスチック(9)

この記事では…
おもちゃ本体だけではなく包装にもプラスチック製品は使用されています。商品には不可欠な包装資材や包装方法について、開発の事情をお教えします。

(執筆:おりも みか/製造業ライター)

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おもちゃの包装とは?


読者の皆さんは、おもちゃの包装といえば、どのようなイメージがありますか?

まず思い出すのは、紙製の箱ではないでしょうか? おもちゃの包装によく使用される紙箱は「コートボール紙」と呼ばれます。おもちゃの価格帯や大きさ、重さなどによっても変わりますが、基本的には少し薄めで、表面はつやつやのカラー、裏面はガサガサした灰色の箱です。

コートボール紙の表面加工にも「プレスコート」「ニス引き」「PP貼」などがあり、一部が透明のPETシートで内部が見えるようにウィンドウが付いている場合もあります。

一番使われるのはビニール袋


おもちゃの包装はそれだけではありません。まず量的にもっとも使われるのはビニール袋です。その中でも特に多いのがPE(ポリエチレン)袋です。袋のみの包装など、美しさが必要な時はOPP(オリエンテッドポリプロピレン)袋を用います。OPP袋はPE袋よりも透明度に優れ張りがあるため、高級感が出ます。ただしOPP袋は「サイドシール」という、両サイドを切断しつつ熱圧着する製法で作られているものが多く、この圧着部が破れやすいというデメリットがあります。

おもちゃの入っている大きな袋には、いくつも穴が空いていることはご存じですか? ビニール製の袋やシートは、子どもがかぶって遊ぶことで窒息してしまうことを防ぐため、一定の面積ごとに穴を開けなくてはならないという決まりがあります。

組立式のおもちゃでも、小さなパーツが一つ一つ袋に入っていて、面倒だなと思った経験があるのではないでしょうか。これはパーツに傷をつけないという目的ももちろんありますが、パーツの入れ忘れを防ぐための工夫でもあるのです。

大きく見せたい時に使われるのは


おもちゃの包装としてメジャーなものに「ブリスターパック」があります。卵パックのような透明のプラスチック製の包装です。PET(ポリエチレンテレフタレート)製のシートを真空成型して作られます。

ブリスターの利点としては、見栄えが良いこと、動かないように固定がしやすいことが挙げられます。多少落としても製品を守ってくれるので、壊れにくくなります。デメリットとしては金型が必要なため、イニシャルコストがかかってしまうことです。

また、近年ではエコの観点から、プラスチック製の包装は避ける傾向にあります。変身ベルトや戦隊ヒーローの武器など高価格帯で大きいおもちゃでは「ペーパーモールド」(紙製の成形品)が使用されています。ペーパーモールドはブリスターよりもさらに高価なため、通常のおもちゃではなかなか使用できません。

包装に関わる基準とは


おもちゃの包装に関わる法令や基準としては過大包装の禁止があります。これは東京都の条例などに定められているもので、包装の大きさに対して、商品の大きさがどの程度なのか空間容積率を定めています。
製品の大きさに対して、あまり大きな箱などは使用してはいけないという項目です。ブリスターやペーパーモールドなどを使うと箱が大きくなり見栄えが良くなりますが、その分ゴミもたくさん出ますし、エコという観点から見るとあまりエシカル(第6回参照)ではありません。

その他、コートボール紙や段ボールでできた台紙にビニールタイや結束バンド、セロハンテープなどを用いて固定する包装もよく見られます。

おもちゃは輸送中に包装内で動いてしまい、傷になってしまったり包装から外れてしまったりすることはNGなので、いかに固定するかが重要です。そのためにさまざまな包装資材を用いるわけですが、しっかり固定するということは外しにくいということになります。そのため子どもがおもちゃを開封しても、なかなか遊ぶことができないという事態になるのです。

コストを抑えたいのが本音


包装のためのこれらの資材ももちろんコストですので、遊びに使えないもののためにおもちゃの値段が上がってしまうなんて、消費者としても納得にしにくいことでしょう。開発側としても本意ではありませんし、包装資材によるコストアップは避けたいところなのです。

振動試験や輸送試験の基準に耐えるために、どのような固定方法がいいのか、なるべくコストアップしない方法はないものかと試行錯誤していますが、どうしても過剰包装気味になってしまう傾向にあります。中に入ったおもちゃが守られて、見栄えが良くて、なおかつコストが抑えられて、エコな包装はできないものか……! 開発担当者は今日も頭を悩ませているのです。

プロフィール

おりも みか  新卒入社した玩具製造メーカーにて品質・生産技術担当として日本国内・中国工場での新規ライン立ち上げを経験。玩具、アミューズメント機器、医療機器、健康雑貨など主にプラスチック製品の開発・製造に携わる。結婚を機に退職し、現在は育児の傍ら製造業ライターとして活動中。

Twitter ID;@jilljean0506

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PlaBase編集部
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