おもちゃの組み立て方法を知ろう!:おもちゃの設計とプラスチック(8)
(執筆:おりも みか/製造業ライター)
おもちゃの組み立て方法
おもちゃの製造はほとんどの工程が手作業によって行われています。現在おもちゃの製造工場が多いのは中国やタイ、ベトナムなどです。工場ではベルトコンベアに作業員が配置され、1つの工程ごとに次の人に渡していく「ライン生産」方式が一般的な方法です。
おもちゃは多くのパーツによって成り立っていますが、これらのパーツの組み立て方法にはいろいろな種類があります。
ビス(ねじ)を用いた組み立て
最も一般的なのは、ねじを使用した組み立てです。作業員は電動ドライバーを用いて、パーツとパーツを締結します。
おもちゃで使用されるねじは「BO形タッピングねじ」と呼ばれるねじで、先端が平らになっています。通常「ビス」と呼びます。おもちゃでは先端がとがっていることは安全上NGなので(第2回参照)、ホームセンターなどでよく目にするような先端がとがっているねじ(「A形」や「木ねじ」と呼ばれるもの)は使用しません。締結箇所やおもちゃの特性によって、ねじ頭の形や素材なども選定します。
ビスで締結したパーツは締め直しが可能なため、もし不良などが出てしまっても、一度分解して再度組み立てなおすことができます。パーツに合った治具を準備したり、電動ドライバーのトルク管理を適切に行ったりすることで、経験の少ない作業員でも比較的容易に組み立てが可能です。
溶剤・接着剤を用いた接着
続いて多いのは、「MEK(メチルエチルケトン)」と呼ばれる溶剤を使用した接着方法です。プラスチックを溶かして接着するため、少量で接着強度が強いのが特徴です。毒性があり独特な臭いがするため、換気が必要です。
またプラスチック同士でなければ接着できないため、異素材同士では瞬間接着剤を使用します。瞬間接着剤はMEKに比べ高価で、扱いも難しいです。接着剤をつけ過ぎてしまい、パーツから接着剤がはみ出してしまうと、白化してしまって外観に影響を及ぼしてしまいます。
瞬間接着剤は幼児向けでは基本的に使用されませんが、大人向けのフィギュアなどではよく使用されます。
熱による接着
そのほか、熱による接着方法もあります。「超音波溶着」は、超音波の振動による摩擦熱で接合箇所を溶かして溶着する方法です。超音波溶着は独特な音(超音波らしい「キーン」という音)がするため、工場の周辺環境によっては使用できなかったり、パーツに合った治具を製作できる業者が限られていたりなどの問題がありますが、溶剤などを使用せず、強い接着力があります。
亜鉛ダイキャストを用いたミニカーなどでは、ダイキャスト部品とプラスチック部品の組み立ての際に、はんだごてによる焼き留めもよく用いられます。
その他
フィギュアの関節部分によく使われるのは「スプリングピン」です。スプリングピンは薄板を筒状にしたピンのことで、挿入した穴の中で広がるため「抜けにくい」という特徴があります。スプリングピンはピンの外径よりも小さな下穴に圧入する必要があるため、手動の圧入台を用いて、テコの原理で圧入します。
この圧入台は、手で嵌めるにはきつすぎるパーツを嵌め合わせる際にもよく利用されます。おもちゃの組み立ては手作業で行うため、作業者の負担にならない工夫が必要です。
たとえ熟練者でもミスを完璧に防ぐのは不可能
人の手で行う組み立て作業では、必ずバラつきが出ます。いかに熟練の作業員でも、全くミスなく行うことは不可能です。
不良品が後工程に流れてしまわないように、適切なタイミングで検査が必要ですが、検査工程が増えすぎてしまうとコストアップにもなりますし、検査だけで不良を全て防ぐことはできません。組み立て作業に必要なのは、いかに不良を出さず、手戻りなく、効率的に生産するかということです。そのためにはプラスチックの特性を知り、適切な組み立て方法を選択することも重要なのです。
(次回へ続く)
おりも みか 新卒入社した玩具製造メーカーにて品質・生産技術担当として日本国内・中国工場での新規ライン立ち上げを経験。玩具、アミューズメント機器、医療機器、健康雑貨など主にプラスチック製品の開発・製造に携わる。結婚を機に退職し、現在は育児の傍ら製造業ライターとして活動中。
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