IOCの言うとおり、東京五輪は「開催可能」だ…その理由を説明しよう 改善するワクチンの接種状況
東京五輪「GO」の判断について
仏国営放送の東京五輪CMがネット上にあったので、まずそれをご覧いただきたい( https://twitter.com/tourismjaponais/status/1395626855860953095)。なかなかクールだ。
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五輪の主催者はIOC(国際オリンピック委員会)だが、21日、東京が緊急事態宣言下でも今夏の大会を開催する考えを示した。
東京における新型コロナの状況、五輪が国際ビジネスになっていることを考慮しても、筆者にとっては「そうだろうな」という感想だ。
IOCは、各種テスト大会ができていることやワクチンの接種状況を理由としたが、それらも2ヵ月のイベントビジネスとして考えれば、違和感はない。
世界の新型コロナの状況については、以下の図を示しておく。誤解があるといけないので、数字を表記しているので、それの読み方は読者に委ねたい。
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このIOCのスタンスについて、筆者は次のようなツイートをした( https://twitter.com/YoichiTakahashi/status/1395725868966694914)。
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これに対して、共同通信が噛みついたが、共同通信は筆者のツイートに掲載した図も出さず、筆者への批判も読者の感情を煽るだけになっていた。これは残念だ。
ちなみに、筆者がツイートで用いた図は、5月3日付け本コラム〈日本は本当にコロナ封じ込め「失敗国」なのか?データから「客観的事実」をお伝えしよう〉で使ったものだ。このstringency indexに興味のある方は、本コラムなどを参照していただきたい。
実際にワクチン接種の予約をしてみると
さて、IOCも言及していたワクチン接種の進捗であるが、5月24日から本格的に大規模接種が東京、大阪でスタートする。
私事に渡ることだが、高齢者である筆者のところに先々週末にワクチン接種券が届いた。筆者の住んでいる自治体では、近場の医療機関と一定規模の集団接種会場の二本立てだ。
17日(月)、まずかかりつけの医者に電話したらすぐつながった。「次のいつ来院するか」と聞かれたので、その日を言うと、「その日にワクチン接種の具体的な相談をしましょう」といわれた。考えてみれば合理的な話でワクチンを医療機関でスムーズにやる方法だろう。ただし、地元医療機関での予約は取れなかった。
次に、集団接種会場の予約のためにネットを見たところ、予約は既にいっぱいだった。
まあ仕方ないかと思っていたところ、17日11:00ごろから、自衛隊による大規模接種センターの予約が始まることを思い出した。早速予約サイトにアクセスすると、そのまま待ってくれという指示画面になった。ちょっと待っていると、予約が進められることになった。
混雑しているかと思ったが意外とすんなり予約できた。予約の際、接種券に書かれている自治体コード、接種券番号、生年月日の入力と地元自治体で予約を取っていないことの確認だけの簡単な方法で予約方式だ。
接種券の発行は全国自治体であるので、防衛省がその情報を持っていないのは仕方ない。全国自治体と防衛省で情報共有のないのは以前からわかっていた。ただし、実際の接種は接種券がないとできないので、あくまで予約段階で簡易な方法で行うのは合理的だ。
お店の予約で、名前だけでよく、本人確認をしないのと同じだ。予約には一定のドタキャンがあるので、変な予約が殺到しかぎり、特に問題はない。今回の場合、予約のドタキャンの余ったワクチンは自衛隊員に打ってあまらせないようにするという。
「不正入力」は犯罪にあたるのか
ところが、この予約システムについて、架空の番号などでも予約可能だと報じられた。
朝日新聞出版(AERA dot.)および毎日新聞は、架空の接種券番号で予約ができることを確認した上で、報じた。それに対して、岸信夫防衛相と河野太郎ワクチン担当相は異議を唱えた。記者による「不正入力」に当たるという理由だ。しかし、一部の野党幹部はメディアの役割として、岸大臣らの発言を問題視している。
そもそも、記者のやった行為はどうなのか。刑法第233条の偽計業務妨害罪や、刑法第161条の2の電磁的記録不正作出罪にあたるおそれがある。
ちなみに、筆者は次のようなのツイートをした( https://twitter.com/YoichiTakahashi/status/1395989647587569667 )。
ネット予約サイトに架空発注し、営業妨害とされたケースもあった。防衛省サイトでも、次のような警告をしている。
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岸大臣から抗議を受けたメディアは、報道の公益性を主張しているが、それは記者の行為の違法性より公益性が大きいという主張だ。
もちろん、公益性が違法性阻却になるほど大きいという議論はありえる。しかし、報道により防衛省がシステム改修するか一般の人が模倣しなくなるより、報道で模倣が増える可能性のほうが大きいだろう。
なによりメディアの記者の行為で、本当に希望する方の機会を喪失させたのは間違いない。今回の場合、メディアはあらかじめ防衛省にシステム不備の連絡をし、防衛省が改修してから報じればよかったのではないか、と筆者は考える。
ワクチンの「打ち手」超法規的措置について
メディアには、情報を盗んでも報じたいという体質を感じることもしばしばだ。我先に報じることは、メディアの性ともいえるが、その端緒としても違法行為まがいがあってはいけない。
その上で、自治体と防衛省で連携が取れていないのは半ば周知の事実なので、特ダネというほどのモノでない。防衛省に必要以上の予約ドタキャン対応を強いただけで、それを上回る公益性は乏しいと思う。
違法性阻却といえば、5月10日付け本コラム〈マスコミが報じない…コロナワクチン「打ち手不足解消」のための「超法規的措置」〉で触れた、歯科医師についての超法規的措置について、相変わらずマスコミはきちんと報じていないが、河野大臣は「薬剤師も検討」と言い出している。
大手マスコミは、4月26日の通達を正しく報じていないので、歯科医師と薬剤師で何がどう違うのかが、さっぱりわからない。その通達は、(1)歯科医師の協力なしにはワクチン接種ができない状況にある、(2)筋肉内注射の経験か研修を受けている、(3)被接種者の同意という条件があれば、医師法第17条との関係では違法性が阻却され得る、と書かれている。
本コラムで書いたが、このロジックであれば、米国で行われている薬剤師、英国で行われている研修生も可能だ。そこで、河野大臣は、薬剤師を検討対象として上げたのだ。
この種の議論は、国会でも既に行われているおり、東徹参院議員らが既に厚生労働委員会などで政府に要求しているものだ。これはマスコミにとって不都合なのか、どうしてマスコミが報道しないのか不思議で仕方ない。
いずれにしても、日本のワクチン接種状況は日に日に改善している。本コラムでも書いたが、菅首相が訪米の際、ファイザー社から1億本の早期提供の約束を取り付けており、後は国内の打ち手の問題だった。それが、4月26日の超法規的措置などで一気に解決の方向になってきた。これらもあまり報道されていない。
東京五輪はコロナに打ち勝った…?
ワクチン接種については、5月3日付け本コラムで、原則として感染の拡大が深刻な国・地域から行われていることを指摘し、1ヶ月前の4月19日時点で、世界84ヶ国で日本は71位と下位であるが、感染度合を加味すると、日本はほぼ平均の45位だった。
現時点の5月21日ではどうか。世界112ヶ国で日本は80位であるが、感染度合を加味すると42位と平均よりやや良くなっている。
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5月24日から大規模接種が東京、大阪でスタートするので、日本でのワクチン接種は加速するだろう。
もし、これから新型コロナ感染状況が極端に悪化せず、ワクチン接種が予定通りに進むのであれば、他国が今の順位のままで単純に考えると、2ヶ月後の五輪開催時に、日本の順位は感染度合を加味しない場合で25位程度、加味すれば10位程度と予想される。その予測通りなら、東京五輪は新型コロナに打ち勝ったといってもいいだろう。