英ハリー王子、母を失った痛みを隠すため大量飲酒 1日で1週間分

ダルシー・リー、BBCニュース

Prince Harry

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ハリー王子

イギリス王室のサセックス公爵ハリー王子は、母ダイアナ元妃の死による精神的ショックに対処しようと、1日に1週間分の酒を飲んでいたと語った。20日配信の米アップル映像配信サービス「アップルTV+」の新シリーズ「The Me You Can't See(あなたに見えない、私のこと)」の中で明らかにした。

米著名司会者のオプラ・ウィンフリー氏がホストを務める「The Me You Can't See」は、メンタルヘルスに関する配信番組。

ハリー王子はその中で、ダイアナ元妃の死から10年以上もの間、「自分の感情をあまり感じないようにする」ために進んで薬を飲んでいたことを明かした。

また、主要王族として抱えていた不安やパニック発作、母親の葬儀などについても語った。

チャールズ皇太子と離婚した後に「プリンセス・オブ・ウェールズ、ダイアナ」の称号が与えられたダイアナ元妃は、1997年8月、フランス・パリでパパラッチに追われる中、トンネル内の衝突事故で亡くなった。

ダイアナ元妃をめぐっては、BBCの独立調査が20日、1995年放送のインタビューについて、取材手法などにおいて「誠実さと透明性の高い基準」を満たしていなかったと結論付ける報告書を公表した

これを受けハリー王子は、メディアの「搾取の文化と不道徳な慣行による連鎖反応が」、究極的に母親を死に追いやったなどとする声明を発表した。兄ウィリアム王子も、インタビューが「両親の関係を悪化させた」などとする声明動画を公開した

「悪夢のような時期」

ハリー王子はウィンフリー氏に対し、28歳から32歳まではパニック発作や深刻な不安感に襲われるなど、「自分の人生の中で悪夢のような時期」だったと述べた。

「私は精神的に参っていた」

「スーツを着てネクタイを締めるたびに(中略)役を演じなければならず、鏡を見て『よし、やるぞ』と、『よし、行くぞ』と言っていた。自宅を出る前からすでに汗が噴き出していた。闘争・逃走反応が出ていた」

そして、「私は進んで酒を飲み、薬を飲み、自分の感情をあまり感じないようにできることを進んで試していた」と付け加えた。

金曜日や土曜日の夜に1週間分のアルコールを飲んでいたのは「楽しいからではなく、何かを覆い隠そうとしていたからだった」とハリー王子は述べた。

Prince Harry and his family standing beside his mum's hearse at her funeral
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ダイアナ元妃の葬儀は1997年9月6日、ハリー王子(中央)の13歳の誕生日の9日前に執り行われた。葬儀にはウィリアム王子(中央左)やチャールズ皇太子(中央右)らが参列した

ハリー王子が母ダイアナ元妃の葬儀で兄ウィリアム王子や父チャールズ皇太子、おじや祖父らと共に棺の後ろを歩いたことは誰もが知っている。

「1番記憶に残っているのはザ・マル(バッキンガム宮殿前の大通り)を走る馬の蹄の音だ」

「まるで自分が自分の肉体から抜け出して、求められていることをしながら歩いているような感覚だった。みんながあらわにしていた感情の10分の1しか感情を見せなかった」

現在36歳のハリー王子は、メンタルヘルスについてごく普通に議論できるようにする取り組みを行っている。最近では自身の個人的な経験について詳細を語るようになった。

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メガン妃とハリー英王子 メンタルヘルスや家族について米番組で語る

ハリー王子は先週放送のポッドキャストで、自分の子供を育てる際に「痛みの連鎖を断ち切る」決断をしたと語り、セラピーを受けたことを明かした。

Prince Harry and Meghan being interviewed by Oprah

画像提供, Harpo Productions - Joe Pugliese

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テレビ司会者オプラ・ウィンフリー氏のインタビュー(3月放送)に答えるサセックス公爵ハリー王子とメガン妃

「特別扱い」のない陸軍時代が幸せだった

ハリー王子は人生で最も幸せだったのは陸軍で過ごした10年間だと語った。自分に対する「特別扱い」がなかったからだという。

30歳で陸軍を除隊し、その1年後に妻となるメガン妃と、共通の友人を通じたブラインドデート(知らない相手といきなりデートすること)で出会った。

王子は過去に、家族から「堂々と行動すればもっと楽に人生を送れる」と言われたと語った。

「しかし、私の中には母親のとてつもなく辛い出来事が残っている」、「今は王室のシステムの外にいるような気がするが、まだそこから抜け出せずにいる。自分を解放して抜け出すには真実を話すしかない」

アップルTV+のストリーミング・シリーズでは、ハリー王子やウィンフリー氏、レディー・ガガ氏、グレン・クローズ氏らがメンタルヘルスやウェルビーイング(健康で幸せな、良好な状態にあること)について、自らの経験などを語る。

この番組の制作が初めて発表されたのは2019年4月。ハリー王子夫妻が主要王族の立場から身を引くと発表するよりも1年近く前のことだった。