舞台のエピソードのひとつとしてもうひとつ印象的なのが、千代の演劇の師匠・山村千鳥(若村麻由美)の十八番『清盛と仏御前』である。平清盛の寵愛を受けた仏御前が彼に捨てられて京都嵯峨野の祇王寺で尼になる物語であった。だが仏御前は「そうして私はだんだんと上様に捨てられていくのでしょう」と嘆きながら「私はまだ死にませぬ。生き栄えてゆかねばなりませぬ」と前を向く。今思えば、千代の人生を暗示していたようでもあった。千鳥自身も結婚していたが夫が愛人をつくったため離婚して俳優として身を立てていた。
ほかにも鶴亀家庭劇に一時参加していた高峰ルリ子(明日海りお)も婚約者を若い劇団員に奪われ、劇団を追われた。このように、『おちょやん』ではおりにつけ、男性にほかの女性ができて傷ついた女性が登場した。彼女たちは瞬間瞬間、千代に鮮烈な印象を与えて去っていく。
最終回の時点で、千鳥もルリ子も姿を見せない。それが少しさびしい。でもきっと彼女たちは千代のなかで生きていて、男性に裏切られた女性の恨み、辛みを、全部まとめて千代が、『お家はんと直どん』で成仏させたと解釈すればまとまりがいい。『おちょやん』は積年の恨みを抱えた女たちの逆転勝利の物語だったのだ。
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番組情報
連続テレビ小説『おちょやん』<毎週月曜~土曜>
●総合 午前8時~8時15分
●BSプレミアム・BS4K 午前7時30分~7時45分
●総合 午後0時45分~1時0分(再放送)
※土曜は一週間の振り返り
<毎週月曜~金曜>
●BSプレミアム・BS4K 午後11時~11時15分(再放送)
<毎週土曜>
●BSプレミアム・BS4K 午前9時45分~11時(再放送)
※(月)~(金)を一挙放送
<毎週日曜>
●総合 午前11時~11時15分
●BS4K 午前8時45分~9時00分
※土曜の再放送
作:八津弘幸
演出:梛川善郎
音楽:サキタハヂメ
主演: 杉咲花
語り・黒衣: 桂 吉弥
主題歌:秦 基博「泣き笑いのエピソード」
木俣冬
取材、インタビュー、評論を中心に活動。ノベライズも手がける。主な著書『みんなの朝ドラ』『ケイゾク、SPEC、カイドク』『挑戦者たち トップアクターズルポルタージュ』、構成した本『蜷川幸雄 身体的物語論』『庵野秀明のフタリシバイ』、インタビュー担当した『斎藤工 写真集JORNEY』など。ヤフーニュース個人オーサー。
@kamitonami