豊橋市の豊橋駅前の焼き鳥専門店「むさし」が新型コロナウイルスに伴う緊急事態宣言期間の今月三十一日まで、昼食時に通常の半額ほどで定食メニューを提供している。調理を担うのは、店で働くベトナム人の技能実習生。コロナ禍で客足が遠のく中、一日でも早く一人前となってほしいとの願いを込め、店の先輩らは「母国で店を開く彼の夢を応援したい」と話している。 (酒井博章)

 「炭の上に灰がかぶると、火力が落ちる。かき出して串の根元にある肉までしっかり火を通して」。五月中旬、店長の夏目陵平さん(28)が、グェン・トウアン・アインさん(24)を指導する声が店に響いた。期間中、ランチで出す串焼きはアインさんが担う。真剣な表情で指示を聞き、炭と格闘していた。

 アインさんはベトナムの首都ハノイから近い北部・ニンビンの出身。二〇一七年に来日し、当初は別の仕事をしていたが、毎日口にする日本食の味にほれ込み料理技術を身に付けたいと考えていたという。スタッフを募集していた同店を知り、今年四月から特定技能実習生として働き始めた。

 だが間もなくして、新型コロナの感染拡大で緊急事態宣言が再発出され、豊橋市を含む愛知県も対象地域に。酒類提供の自粛や時短営業を要請されたことで、店は期間中、夜間休業を決めた。「焼くだけなら簡単だが、絶妙な塩加減や火の通り具合の見極めには長い経験がいる」と夏目さん。限られた期間で技術を身に付けられるように、宣言解除までの間、アインさんが調理したランチ提供を考え付いた。

 夏目さんがアインさんの後ろに立ち、指導しているとはいえ、まだまだ新米店員。使う食材は同じだが半額で提供することにした。アインさんは「ベトナムは薄味の料理が多いので、しっかりと塩が効いた味にするための加減が難しい。いろいろなことを学び、国に帰ってから自分の店を開きたい」と決意を述べた。

 ランチ営業は午前十一時〜午後二時。焼き鳥定食など三種類を五百円で提供している。(問)むさし=0532(52)1710